殺し屋達がクリスマスに酒を飲む話

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第1話

———12月25日 ホテル『カイン』にて

 

「おう!キャット、ようやく来たか」

 

一人の白髪の老人が視界に映った黒髪の女を呼ぶ。

 

「オウル、あんた馬鹿なの?自分と同業者二人集めてクリスマスパーティーって……と言うか、それに参加してるレオンと私も馬鹿か」

 

キャットと呼ばれた女はテーブル席に座っている二人の男にそう言いながら席に着く。

 

「そこは同意する。と言うか、俺もクリスマスくらいは息抜きがしたいからな」

 

レオンと呼ばれた男はそう溢す。

今日は12月25日、クリスマスだ。

 

「まぁ、いいじゃねぇか!ほら、見てみろよ。『カイン』の酒場がいつも以上に繁盛してらぁ!他の奴らも今日くらいははっちゃけたいんだよ」

 

オウルの言うように『カイン』の酒場はいつも以上に人が溢れている。

平時は精々10人いたら多いくらいなのだが、今日に限ってはフロア全体がほぼ満席だ。

 

「……まぁ、そう言うことにしてあげる。とりあえずお酒と料理頼まないかしら?」

 

そうして殺し屋達のクリスマスパーティーは始まった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「て言うかさぁ!最近の女殺し屋短命すぎでしょ!私の同期みんな死んじゃったわよ!あはははは!」

 

2本目のロゼワインで酔いが回り始めたキャットは笑いながらそう告げる。

 

「そら、どいつもこいつも儲けがデカい仕事をバカみたいに受けるからだ!お前らみたいに堅実じゃねぇとこの業界生きていけねーってぇの!」

 

オウルはウイスキーを煽りながら二人にそう答えた。

 

「確かに俺とキャットは堅実派だな。知名度なんてゆっくり上げていけばいいし、食うのに困らない程度に金が稼げればいい」

 

レオンはカシスソーダを味わいながらそう呟く。

 

「あんたねぇ、食うに困らないってどう言う状況よ?!普通に依頼こなしてたら大金が手に入るってもんよ、普通はね!」

 

「ものの例えだ。後キャット、お前だいぶ酔ってるだろ?そろそろ水をだな……」

 

「残念!私酔ってませーん!キャットちゃんは元気でーす!」

 

キャットは既にベロベロに酔っているようでテンションがやけに高くなっていた。

 

「……こりゃダメだな。レオン、諦めろ。どうせ醜態晒すのはキャットだ」

 

「同席してる俺たちもその醜態に巻き込まれるんだが?」

 

「なぁに?二人してどしたの?もっと飲みましょうよぉ!マスター!3本追加!後、サーモン使った料理ちょうだい!」

 

「承知致ました」

 

「また酒追加して……と言うか何故サーモンなんだ?」

 

レオンが不思議そうにキャットに問う。

 

「この前、日本で仕事してた時に何故か知らないけどクリスマスには鮭!って宣伝がいっぱいあったからよ!」

 

キャットは上機嫌にそう答えた。

 

「何故サーモンなんだ……まぁ、不味いわけじゃないからいいんだが……」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「だぁから!オウルの爺さんは楽観的すぎるんだよ!いつか現場で死ぬぞ!」

 

酔いが回ってきたレオンはオウルに怒鳴る。

 

「この歳まで生きてりゃ上出来だ!先に寿命でおっ死ぬかもしれんがな!がはは!」

 

そんなことは知らんとばかりにオウルは追加で酒を煽ぐ。

 

「死んだ時には預金は全部貰ってあげるからね!オウル爺ちゃん!」

 

「だぁれがテメェに何ぞやるか!死蔵した方がマシだ!」

 

3人ともかなり酔っているのか言動がめちゃくちゃになり始めた。

 

「と言うか、なんでこんな会開いたわけぇ?別に1人飲みでもいいじゃん」

 

キャットはオウルに疑問を投げかけた。

 

「そりゃ、何人か集まって飲んだ方が楽しいからだろ!まぁ、後はこうやって友達関係を作っとくとな、いざという時に役に立つかもしれねぇからだよ」

 

「何それ?」

 

「相手の情に付け込むんだよ!仲がいい相手は殺しづらいだろ?それだけじゃねぇ、1人でできない依頼を貰った時に手伝ってもらえるかもしれねぇ!なぁに、つまりは利益になるからってことだよ!」

 

「うわぁ……セコいなぁ」

 

「なんと言うかやり口が汚いな、オウルは」

 

「なんとでも言え!……まぁ、後はあれだ。この歳になると同期はほとんど死んじまってるからな……純粋に友達付き合いしてくれるやつが欲しいんだよ。そう言う意味では感謝してるぜ」

 

「なんか急にいい話にしようとするじゃん」

 

「だな。まぁ、この業界は友達はそうそうできないからな」

 

少ししんみりとした空気が広がる。

キャットはそれが嫌だったのか別の話をふることにした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「そう言えば、私がこの業界入った頃に流行った御伽話あったじゃん。え〜と、なんだっけ?あ!そうだ、『紅い獣』だ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、オウルの顔が青ざめた。

 

「ありゃ、御伽話なんかじゃねぇ……アレは実在する」

 

「なんだよ、オウルの爺さん?別にあれはただの都市伝説みたいなもんだろ?」

 

レオンはサーモンのチーズ焼きをつまみながらそう聞いた。

 

「……俺は一回だけ『紅い獣』を見たことがある」

 

「え?!マジ!ちょっと教えなさいよ!」

 

「確かに、俺も気になる」

 

「あれはもう十年以上前の話だ。俺は仕事である国の首脳の殺しの依頼を受けた、いつも通り夜中に遠距離からのスナイプで殺す予定だったんだ。夜になって、ターゲットが帰宅した時に引き金を引こうとした時にアイツは現れた……俺はあの光景が忘れられねぇ、小さなガキが武器も無しに人を紙を千切るみたいに首から上をちぎり飛ばしやがった!近くにいる護衛もターゲットの家族もみんな殺しちまった!そうして真っ赤な髪と真っ赤な瞳が俺のスコープに映った。アイツはこっちをじっと見てたよ、まるでいるのがわかってるようにな……俺は恐怖のあまりにその場からさっさと逃げた。これが俺が見た最初で最後の『紅い獣』だ」

 

「……なんか肝が冷えるわね」

 

「オウルの爺さんがここまで真剣に語るとなると間違いないんだろうな……」

 

「「「…………」」」

 

その場の空気が重くなる。

だが、最初に空気を変えたのはオウルだった。

 

「か!やめだやめ!酒追加で飲むぞ!夢に出てきちまいそうだ!マスター!適当な酒とツマミ作ってくれ!」

 

「承知致しました」

 

「……そうね!お酒飲みましょ!この話題やめやめ!」

 

「振ったのお前だろうが!まぁ、酒飲んでる方がいいな」

 

そうして3人の殺し屋は夜中まで飲み明かした。

 

「で、会計なんだが……髑髏金貨10枚ってマジ?」

 

※髑髏金貨1枚=10万円くらい

 

オウルが酒場のマスターに聞く。

 

「はい。御三方、今日は大変飲んでいましたので。特にキャット様は高額なものを何点も」

 

「おい、キャット。お前が払えよ」

 

「はぁ?!そこは普通割り勘でしょ!ちなみにレオンが多めに出してね!」

 

「しゃあねぇ、あれで決めるか」

 

オウルは拳を握りしめる。

 

「じゃんけんだ」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「なんで私が多く払わせられてるのよぉ!もうやだぁ!」

 

「ははは!残念だったなキャット!自分の運のなさを恨みな!」

 

「得をした」

 

「もうクリスマスパーティーなんてこりごりよぉ!」

 

そんな叫びと共に12月25日は終わる。

そうして彼らはまた仕事に戻るのだ。

愉快な友達とまた会う為に……

 

「あ、次は年末な!」


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