オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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モモンガ様のクラス説明会です。


第7章 第6話 -白夜の神-

 

 

「……うん、やっぱりユグドラシルの魔法やスキルはほぼすべて使えると考えて良いかもな。それにアイテムも殆どそのままの効果っぽいな」

 

 

サトゥルヌスことモモンガは、深夜の自然の祈りの教会(ネイチャーズ・チャーチ・オブプレイヤー)の私室で呟いた。

 

部屋の中には、使用した低レベルアイテムの残骸——例えば使用したポーションの空瓶などが転がっている。

 

“殆どそのまま”と言った理由としては、ここでは使用したアイテムの残骸、例えば空瓶などが消えることは無い。

これは現実では当たり前の事なのだが、ゲームであるユグドラシルでは使用済みアイテムの残骸は何か別の利用可能性が無い場合は、使用と同時に消滅していたからである。

 

つまりここまでの何日かで推定した様に、やはりこの世界?は現実で、自分はユグドラシルの設定のままで存在している。

 

匂いも、味も感じるし、なんなら排泄も出来るし、人間種の状態で指輪等していなければ夜には眠くなり、一方でアンデッドである死の支配者(オーバーロード)状態では、およそ欲求というものが消えるか希薄になり、感情も薄くなる。

 

 

魔法も、当然全てを試したわけではないが、なぜかコンソールなどは開けないが、頭の中で検索して魔法発動を意識するとほとんどの魔法はユグドラシルと同じように発動し、その効果もほぼ同じだ。

 

例えば死の支配者(オーバーロード)状態で、森で倒したモンスターを利用?して死者召喚(サモンアンデッド)を行った場合、召喚されるアンデッドは死体を利用して産まれ、このパターンで産まれたアンデッドは何故か償還後数日経った現時点でも消滅していない。

 

おかげで自然の祈りの教会(ネイチャーズ・チャーチ・オブプレイヤー)の入り口には死の騎士(デス・ナイト)が門番のように入り口を守り、上空には骨のハゲワシ(ボーン・ヴァルチャー)が何羽か飛んでいる。

 

彼らは、モモンガが人間種の姿をとっている時も問題なく命令に従っている。

 

 

『にしてもまだ800近い魔法については調べていないし、戦闘ではぶっつけ本番にならないようにスレイン法国の神殿に戻った時に色々と実験しておこう…特に上位の回復系とか人間側のクラスで取得したスキルは充分に試せてないしな…』

 

基本的には慎重派であるモモンガは心の中でそう呟いた。

 

 

 

モモンガが、とある隠しクラスを取得したのは、ユグドラシルサービス終了の実に1か月前で、このクラスが最大の5レベルまで上がって、人間種状態でも100レベルに到達したのは、サービス終了の1週間前だった。

 

そのため、ユグドラシルの中で【死の超克者(オーバーカマー)】、そしてその先のクラスの特殊な魔法やスキルを充分に検証する時間が無かったし、ましてやガチ戦闘で使うことは一度もなかった。

 

 

 

 

 

ロキの指輪(リング・オブ・ロキ)を手に入れたモモンガは、はじめ新たに得た種族——人間となり、方向性としては【聖騎士】を目指した。

 

これは言うまでもなく、憧れの存在である、たっち・みーの影響や、仲良くなったギルド『ネコさま王国』のギルド長である輝煌天使ねこにゃんが、聖騎士の効率的なビルドを教えてくれたからである。

 

正直なところ、モモンガとしては2つ目の種族はあくまで敵を油断させる戦法の一環として考えていて、聖騎士→死の支配者(オーバーロード)という種族変化によって、より敵の弱点を突きやすいということで、2つ目の種族そのものにガチビルドのような戦闘力を求めているわけではなかった。

 

だが、転機が訪れたのは、餡ころもっちもちが【スクナミカミ】という隠しクラスというか種族を取得したことだった。

彼女はこのクラス解放でワールドアイテム【世界紅玉(ワールド・レッド・オーブ)】を贈られ、知り合いの中では、輝煌天使ねこにゃん、モモンガに続いて3人目の取得者となった。

 

そしてその取得条件を聞いたところ、その条件は明らかにロキの指輪(リング・オブ・ロキ)取得が前提であると思われるものだった。

 

ここでモモンガに迷いが出た。

 

この時点でサービス終了まであと7か月。

 

餡ころもっちもちさんのように、ここから何らかの条件をクリアして隠し職や隠しスキルなどに到達することは可能か…?

そして、ロキの指輪(リング・オブ・ロキ)を活用して初めて達成できそうなそうな極端な構成などはあるか?

 

まず思い返すと自身がユグドラシルで初めて取得した隠しクラスである【エクリプス】は死の支配者(オーバーロード)5レベル+死霊系統魔法職に特化で総95レベルに到達という極端な構成で初めて可能となるものだった。

 

この事実や餡ころもっちもちさんの事例を合わせて考えると……。

 

 

死の支配者(オーバーロード)】の対になる、とよく言われるクラスに、【死の超克者(オーバーカマー)】というものがある。

 

これは枢機卿(カーディナル)というクラスを最大の5レベル+神聖系魔法のうちの回復と蘇生に特化で総90レベルに達した者が取得できるクラスである。

 

ただしこのクラスについてもユグドラシル解析班の中では様々な憶測が出ていた。

まず、【エクリプス】のようなその先にある隠しクラスが発見されておらず、【死の超克者(オーバーカマー)】でなければ絶対に使用できないようなスキルもない。

 

また回復術師(ヒーラー)系を目指した場合、特に苦労しなくても大体の場合【枢機卿(カーディナル)】には自動的に到達するし、結果的に【死の超克者(オーバーカマー)】になることも珍しくはなかった。

 

そして極めつけは、【死の超克者(オーバーカマー)】を最大5レベルまで上げた場合、その時点では95レベル。

 

明らかにもう1つ、何かの隠しクラスがある気がしてならない。

 

これは餡ころもっちもちの選んだ【コㇿポックㇽ】と同様、ユグドラシルではずっと言われていたことだが、結局誰もその謎を解明できていなかった。

 

モモンガは考える。

 

名前として対になっている雰囲気がある、【死の超克者(オーバーカマー)】と【死の支配者(オーバーロード)】あるいはそれらに加えて【エクリプス】を同時に最大5レベルまで習得したらどうなるのか…もちろんこれはロキの指輪(リング・オブ・ロキ)が無ければ絶対に不可能。

 

習得する魔法の方向性が真逆なため、100レベルでそれら2つのクラスに必要な魔法を覚えきることが出来ない。

〈黒の叡智〉では神聖系魔法は追加取得することが出来なかったことも、逆に怪しいと感じていた。

 

モモンガはその時点で計算をしてみた。

 

仮にロキの指輪(リング・オブ・ロキ)による設定を1度リセットして、新たに魔法詠唱者の人間となった場合、既に取得している職業レベル60は消えない。

消えたぶんの種族レベル40を全て神聖魔法の回復と蘇生に全振りした場合どうか…

 

 

神聖系が第10位階に到達できないので取得魔法が足りない。

 

では現在、職業レベル60で覚えている魔法のうち、【エクリプス】並びに【死の支配者(オーバーロード)】取得に影響がない魔法を忘れて、それらの空きを当てればどうか。

 

 

ギリギリ足りる。

 

残り6か月弱…。

 

 

モモンガはまず、アインズ・ウール・ゴウンの皆に、自身の予想している可能性と、それにチャレンジしたいこと、そしてそのためにレベル上げや装備調達の手伝い、アイテム融通をお願いできないかと頭を下げた。

 

仲間達は、モモンガのこのゲームに対する執念に畏怖を覚えるとともに、普段我儘を言わないギルマスの我儘に、何だか逆に嬉しい気持ちになった。

 

そして『しょうがないにゃあ……いいよ』とか言いながら全力でサポートしてあげることにしたのだった。

 

 

またモモンガは、ここまで【聖騎士】のビルド構成などで相談に乗ってくれていた、たっち・みーと輝煌天使ねこにゃんに頭を下げた。

 

2人とも、あまりに畏まって、申し訳なさそうにしているモモンガに逆に恐縮してしまうほどだったが、最終的に、ねこにゃんなどは『せっかくだから全力でやってみなよ!隠しクラスドリームを見せてもらえるだけで嬉しいよ!!』と応援をしてくれた。

 

 

そういう訳でモモンガは、サービス終了までの時間、もう1つの種族をリセットし、新たに神聖系魔法特化の人間としてビルドを組み始めた。

 

転機が訪れたのは、【枢機卿(カーディナル)】を極め、【死の超克者(オーバーカマー)】のクラスに到達したとき。

 

モモンガがロキの指輪(リング・オブ・ロキ)で設定した人間種アバターの姿は黒目黒髪で、リアルの自分本来の容姿に似せたものだったが、そのタイミングで特に設定していないのに髪色が白髪となった。

 

フレンド情報や掲示板でも、そういった現象は今まで確認されておらず、モモンガのチャレンジを知っている2ギルドの面々は誰もが『これは、もしかすると、もしかするかもしれない』と考え始めた。

 

そしてついに【死の超克者(オーバーカマー)】の職業レベルが最大の5レベルに到達したとき。

モモンガのコンソール内の、クラス選択欄に、今まで誰も見た事が無いクラスが出現。

 

お世話になった2ギルドの集まれるメンバー全員を集めた場で、モモンガそのクラスを選択すると、モモンガのアバターの瞳の色が赤色に変化した。

 

 

 

サービス終了の1か月前に到達した彼のクラス。

 

その名は【白夜の神(ノクス・アルバ)】。

 

 

サービス終了直前であった事から情報が伝わることは無く、この事実はユグドラシルのwikiでも特に扱われることも、ゲーム内ニュースにもならなかったが、2ギルドの仲間達は皆で大いにモモンガを祝福した。

 

モモンガとしても、積極的にこの隠しクラス解放を公表はせず、表向きのクラスは【死の超克者(オーバーカマー)】ということにしていた。

 

 

だが本当の驚きは、そこから先の1か月。

白夜の神(ノクス・アルバ)】は非常にレベルが上がりにくく、AOGの皆が協力してレベル上げをしていったのだが、レベルが1つ上がることに覚えるスキルがどれも常軌を逸していた。

 

 

例えば、スキル・〈世界輪廻(ワールド・リンカーネーション)〉は、体力を5%以下まで削った敵を一定確率で強制死亡させ、その直後、異なる種族に強制変更して蘇生させ、自身の召喚モンスターのように操る効果を持つ。

 

これを覚えてから試す時間が十分になかったので、モモンガは比較的強い野良モンスターや、ある程度のレベルまでのダンジョンのボスにしか試せなかったが、どちらにも効果を発揮し、特に複数ボス戦などでは敵が同レベルの別種族モンスターとして寝返るというぶっ壊れ効果であった。

 

そもそもこの効果は、他プレイヤーやNPCにも有効なのか?——もしそうであれば、WIを使用せずに何回も種族変更が出来るということになる——とか、NPCに効果があった場合、蘇生後にそのNPCをモモンガが操れるのか?などは検証する時間が無かった。

 

 

なのでモモンガは、正直この【白夜の神(ノクス・アルバ)】のクラスで取得したスキルと魔法を使ってみたくてしょうがない。

 

魔法だけで言えば、最終的に【白夜の神(ノクス・アルバ)】のクラスを最大の5レベルまで上げたモモンガは999種の魔法を行使でき、当然全てを暗記しているのだが、彼的には時間が足りなくて全ての魔法を充分に検証できたとは言えないのだ。

 

 

 

ちなみに、【白夜の神(ノクス・アルバ)】のクラスを習得したことで、モモンガは密かに期待していたことがある。

それは2個目の【世界紅玉(ワールド・レッド・オーブ)】の入手。

 

餡ころさんの件から考えても、このクラス解放はどう考えても、その対象となる偉業だと考えていた。

 

だが、運営から贈られてきたのは予想とは異なるもの。

 

 

サービス終了2週間前に、贈り主:『ウンエイ』というタイトルがついた小包が贈られてきて、それは【エクリプス】を解放したときと同じものだったから、モモンガの期待は最高潮に高まり、ナザリックの円卓(ラウンドテーブル)の間でギルメンを集めてお披露目会を開いたが、そこにはトロフィー——それはRPGで実績解除したときに表示されるものに酷似していた——が入っていた。

 

そのトロフィーの台座には『ギルド:アインズ・ウール・ゴウンのモモンガ様。偉業達成、オメ。』とだけ書かれていて、解析したところ詳細は以下の通りだった。

 

アイテム名:トロフィー・オブ・ユグドラシル・メモリーズ

希少度:なし

効果:なし

説明:ユグドラシルで2つ以上の偉業を達成した者に贈られるトロフィー。ギルド武器と同じくらい頑丈で壊れない。特別な効果はないので部屋にでも飾ってください。

 

 

この説明を見たペロロンチーノは笑い転げ、タブラも『ブッ』と変な音を漏らし、るし★ふぁーはスクショを撮りまくっていた。

 

モモンガにとっては、運営によって、何度目か分からない軽いトラウマがまた1つ産まれたのだった。

本当に何の効果も無かったので、そのトロフィーはナザリックの自室に飾られることになり、だがそれは最後の2週間で、ギルメンがモモンガの自室を訪れる口実みたいになったので、モモンガとしては『それはそれでよかったのかもな』と最後は考えた。

 

 

 

 

そんな事を思い出しながらモモンガ——今はサトゥルヌスは、明日の行動を考える。

 

少しずつ西に向かって、この大森林を進んでいるが、エルフの住む領域に入ってからもしばらくは、村のエルフたちはエルフ王のことを悪く言ってはいなかった。

正確に言えば、会った事が無い遠い存在のような物言いだった。

 

しかし、今日の昼に訪れた村では、明確に幾人かのエルフ、特に若い女性のエルフは王に対して悪感情を抱いていたように感じた。

 

曰く、王の配下の者が、若くて比較的魔法などの能力が高い女エルフを王城に連れ去るという話が伝わっていて、そういった者はその後二度と帰ってこないという噂があるとのこと。

 

次に訪れる予定の、ここよりさらに西の村では、実際に連れ去られた子供がいるという話だ。

 

 

 

「さて、そろそろエルフ王とやらからの監視とか覗き見がある事を念頭に置いて行動した方がいいかな…次の村に行く前に一度パンドラと相談するか」

 

 

サトゥルヌスはその赤い瞳を瞑ると、伝言(メッセージ)の魔法を唱えるのだった。

 

 




ユグドラシル2発売が叶っていれば、『神種』とされる予定のクラスでした。

裏設定として、まさか世界紅玉を2個も取得するプレーヤーが現れるとは想定していなかったイガラシさんは、世界紅玉のデータ量を2こ持てるような設定にできていなかったので、モモンガさんがクラス解放した後、2週間ほど、何とかならないかとシステムをいじってみましたが、何ともならなかったので、仕方なくトロフィーを贈りました。
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