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のときはそう、まだあの子の事をはっきり「好き」とは思っていなかった。
仲はとても良かったし、大切な友達だと思っていたし、メッセを送るのにもずいぶん考え込むし、返事がこないと落ち込むし、きたらきたで開くのにずいぶんどきどきする。
だから実際のところはすでにかなり意識していたのだと思う。
でもそれがはっきりと「好き」とはわかっていなかったし、ある意味では目を逸らしていたのかもしれない。そんなはずはないんだって。ただの親友なんだって。
そんなある日の、まだ暑さが残る放課後。あの子は両手で段ボールの箱を抱えて歩いていた。
備品を仕舞ってくるよう担任に頼まれたのだという。
別に担任に恨みはないが。力仕事なんて適当な男子に頼めばいいものを、よりによってあの子に任せるなんて。わたしがその場にいたら全力で割って入る。なんなら男子じゃなくてわたしが代わってもいいくらいだ。
本人はたいして重くはないというものの、あの子の小柄な身体と大きな段ボール箱の組み合わせはいかにもあぶなっかしい。
だからわたしは、せめてと箱の上に載せてあったファイルを取り上げて、あの子を手伝うことにした。
本当は代わろうとした。けれどもわたしが頼まれたのだから、こっちはわたしが運ぶのだとあの子は言い張る。
まったく、変なところ真面目なんだから。
増築した校舎は少しおかしな形をしていて、旧校舎の用具室は少し遠い。だからそんなところに用事がある生徒はほかになく、わたしたちはふたりだけ。
でも、もともと一緒のことが多かったからあらためて話す内容はなく。かといって黙るわけでもなく。あーだこーだとおしゃべりしながら、静かな放課後の校舎を歩いて行く。
そしてようやく用具室の前についた。
古びた用具室の戸はもちろん閉まっている。
両手に抱えた段ボール箱を一度おろせばいいものを、めんどくさがったあの子はわたしにポケットから鍵を出してと言う。
他人のスカートのポケットに手を入れるという行為を深く考えなかったわたしも悪かった。
二つ返事でさっそく手を入れてみると、なんだか不思議な感じがする。自分のポケットではないものだから手元がまったく掴めない。これがひとつめの間違い。
もうひとつは、あの子がハンカチやら入れていたものだから鍵がまるでわからない。だから奥まで探ってみた。これがふたつめの間違い。
結果、脚の付け根の敏感なところをなぞってしまい、たまらずあの子の腰が引ける。
「くすぐったいっ」
「鍵ないよ」
「ええ?そんなはずないよ」
ああ、ここで引き返せば良かったのに、言われるがままあの子のポケットの中をさらに探る。
指でなぞるあの子の腿や下腹部の感触を隠せるほどポケットの生地は厚くない。
それは逆の立場でも同じ事で、撫でられてあの子は悶える。それでもわたしは探る。
「・・・んんっ」
また腰が引けたあの子はついにわたしに身体を預ける格好になってしまった。
その身体を受け止めて左手をあの子の腰にまわす。
正直に言って、とても可愛かった。
ショートで少し跳ねた髪が、ふわっと漂う匂いが、小柄だけど締まった身体が、漏れてしまった甘い声が。もうなにもかもが。
「ねえ、やっぱりない?」
そう言われて初めて、わたしはあの子のポケットの中をずっと探っていたことに気がついた。
指先は下腹部どころかさらにその先にまで触れている。
あの子は真っ赤。
気がついたわたしも真っ赤。
慌てて手を抜くと、あの子は箱と一緒にずるずると座り込む。わたしも座り込んで、あの子をぎゅうっと抱きしめていた。
あの子に感じてしまった気持ちがなんなのか、いまのわたしははっきりと自覚している。
ああ、鍵?
実は戸に鍵はかかっていなくて、あの子は初めから持っていなかったという・・・