復讐鬼じゃなく決闘者としてオレの前に現れた時は…いつでも闘ってやるぜ!
そこではアメリカ国旗のバンダナを頭に巻いたサングラスの男、かつてアメリカで賞金稼ぎとして活躍しバンデット・キースと恐れられたキース・ハワード主催によるカードバトルが行われていた。
「ダイレクトアタック! 勝った!」
喜ぶ少年の頭をキースはこづく。
「何するんだよ、にいちゃん!」
意味も分からず殴られ怒る少年にキースは怒鳴り返す。
「バカ野郎! デュエルは相手がいるから成立するものだろ! 喜ぶよりも戦ってくれた相手に感謝するのが先だろうが!」
「……」
キースの言葉に何も言えない少年にキースは続ける。
「日本は『礼に始まり礼で終わる』という文化があるんだろ?」
「あ、ありがとうございました」
キースの言葉に反省した少年は対戦相手に頭を下げた。対戦相手も「こちらこそありがとうございました」と頭を下げた。
「ねぇ、キースにいちゃん! 俺のデッキどうやったら勝てるようになるかな?」
別の少年が悔しそうにキースに尋ねる。
「バカ野郎」
少年の負の感情を吹き飛ばすようにキースはニッ! と笑う。
「勝った負けたと一喜一憂するのもいいがよ。デュエルってのはカードをただ出せばいいってもんじゃねぇ。相手がいて初めて成立するんだ。勝ったら感謝、負けても感謝。それが真の
その言葉に少年は目を丸くする、が再び悔しそうにポツリと呟く。
「でも……負けたら悔しいよ」
「ふっ、バカ野郎」
キースは笑ったまま少年の肩を掴む。
「その悔しさがお前を強くするんだ。オレだって何度も負けてきた。だがその負けを糧に立ち上がって今がある。いいか、デュエルは人生の縮図だ! 常に勝つことなんてあり得ねぇ。どんなに強力なカードを揃えて高度な戦術を携えても負けることはある。逆にクソのようなデッキでも運と知略で連勝することだってある……」
少年から離れ、集まる人々にキースは高々に言った。
「いいか! 皆デュエルを楽しめ! そして学べ! 勝ち負けに
その言葉に聴衆は「はい!」と声を上げる。公園の空気は熱気に包まれ、まるで小さな大会のような雰囲気になっていた。
夕方。
あれほど賑わっていた人だかりは嘘のように静まり、風と木々が微かに揺れる音が響く。
「……」
ベンチに腰掛けたキースはサングラスの奥で目を閉じる。
まぶたの裏に映るのは過去の栄光と
全米一の賞金稼ぎとして名を轟かせ、札束と
『自分こそが最強だ!』
そう信じて疑わなかった過去の自分。
それを証明するためペガサスに挑戦したこと。そしてペガサス本人ではなくペガサスの代役として召喚された素人同然の少年に負け、富や名声を失った自分が酒やドラックに溺れ、闇の世界に落ちたこと。
自身が転落する原因を作ったペガサスを倒すことが地獄からの脱出と考え決闘者の王国へと乗り込んだこと。そして待ち人との対戦で敗北後にペガサスによって殺された後、
そして決闘者の王国で自分に苦渋を舐めさせた青年に再び負け、邪神イレイザーに魅入られ闇に沈みかけた所を救われたこと。
邪神の闇から解放され再戦を挑もうとするが今の自分とは戦わないと言われ拒否。その後《時の機械-タイム・マシーン》を返され
今は…復讐鬼みたいになっちまったがよ、お前だって最初にカードを手にした時には違ってたハズだ…。ただ…ただ純粋にデュエルを楽しんでいたそんな頃が――へっ…テメーのそんな時なんて想像出来ねーな…。…こいつはテメーに返すぜ…。このカードで純粋にデュエルを楽しんでいた頃の心を取り戻して来いよ!
復讐鬼じゃなく決闘者としてオレの前に現れた時は…いつでも闘ってやるぜ!
と言われたこと。
キースはゆっくりと目を開ける。
わずかに公園に残された赤い日は消え失せ、漆黒の闇と街灯の白が公園を支配していた。
ザッ!
砂を踏む音にキースは視線を向ける。
「待たせたな、キース」
そこには自分が身に着けていたブラックデュエルディスクを左腕につけた青年がいた。
「待っていたぜ。この時よぉっ!」
立ち上がったキースはサングラスをポケットに入れる。青年を見るキースの笑みは相手を侮辱するような傲慢な笑みではない。純粋にデュエルを楽しみたい、全力の勝負が出来る喜びに満ちた決闘者としての笑みだった。
キースがカードをデュエルディスクにセットすると同時に青年もカードをセットする。
「行くぜ!」
こうしてバンデットを捨てた