肝心なときにリーダーシップを取れない二番手な自分は、未来で『世界一の二番手』と呼ばれているようでして。それはもう、未来から刺客が送り込まれてくるほどだそうでして。

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書き出ししか思いつけなかったので供養。
何も知らないオリ主を消しにやってくるベータを描きたかっただけかもしれない、と曖昧に動機を語るくらいには勢いで作ったものなので、なるべくおおらかに見ていただければ。


日常が非日常に変わる瞬間

「あなたから、サッカーを奪いに来ちゃいましたーっ!」

 

 通い出して間もない中学校の帰り道、自分は得体の知れない少女が率いる集団に行く手を塞がれていた。

 しがない住宅街で身に纏うには前衛的すぎる格好をしたその面々は、サッカーボールらしき球体を携えこちらを見据えている。

 

「自分から……サッカーを奪う? 何を言ってるんだよ」

 

 言われたままを返しながら、目の前の集団に問いかける。あまり穏やかな状況でないことは分かっていたが、せめて理由程度は訊いておきたかった。

 すると、応えたのは最初に口を開いた少女だった。

 

「ふふっ♪ じゃあ自己紹介を。私はベータといいます。未来から派遣されたルートエージェント……もとい、プロトコル・オメガのキャプテンなんですよっ!」

 

 そう愛嬌たっぷりに名乗る彼女だったが、だからこそ不気味に思えた。本名を言っているとは思えないし、飛び出す固有名詞も意味が知れないものばかりだったからだ。

 

「未来からって、何の冗談だよ……」

 

 唯一拾えたワードを基に返すが、相手はどう見ても本気だ。

 

「うーん、まぁ信じてもらわなくてもオッケーです。あなたにすることは変わりませんから」

 

 言うが早いか、手にしていた球体に灯を入れたらしいベータは、そこからドーム型の結界らしきものを展開させる。

 

二宮(にのみや)(じゅん)さん。あなたはサッカーを進化させうる、危険な存在なんです」

 

 そうこちらの名を呼んで宣告する彼女を前に逃走はおろか、悪態をつく暇すらなく、ドームに自分はベータらもろとも飲み込まれていった。

 

「な、ちょ、おいおい……」

 

 気がつけば見知らぬサッカーグラウンドへ飛ばされていた自分はそう呟くしかなかった。ニコッと笑むベータは間もなく、さらなる理不尽を突きつけてくる。

 

「というわけで、あなたにはこれから、私たちと試合をしてもらいます」

 

 な、とその言葉に目を瞠る。なぜ自分の名前を知っているのか、なぜこのようなところに連れてこられているのか──。飲み込めていないことは多いが、少なくともこちらにとって不都合な条件を突きつけられていると分かったからだ。

 

「ふざけるな、こちとらズブの素人なんだぞ」

 

 付き合ってられない、とばかりに抗議してやる。スポーツの経験がないとは言わないが、少なくともサッカーについてのそれは人並み以下だ。加えて、目の前の人間すべてが敵に回るというなら、間違いなく勝ち目はない。試合を成立させる見込みすらもないと言えた。

 

「あれー? 円堂守さんのときは、すぐに刃向かってくれたらしいんですけど……ま、好都合かもですね」

 

 だが、相手にこちらの事情を慮る気はさらさら無いらしい。円堂と呼ばれた人間が誰を指しているのかは分からないが、それを詮索している暇は与えられなさそうだ。

 

「あなたがサッカーを嫌いになるよう、頑張っちゃい……ますっ!」

 

 言い切る直前にこちらへ蹴られたサッカーボール。とても少女の脚から放たれたとは思えない威力のそれは、寸分の狂いなく自分の顔面へと吸い込まれ──。

 

「──でやあああっっ!!」

 

 ──あわや衝突といった直前に、ふたりの少年に阻まれることになった。空中で交錯するようにボールを防いだ彼らは、弾き返したものを尻目にこちらへ向き直る。

 

「大丈夫ですか!? 二宮コーチ……いや、二宮さん!」

 

 快活さを感じさせる声でまずこちらへ呼びかけてきたのは、特徴的な茶髪の少年だった。

 

「今度は何だ……?」

 

 見知らぬ人物が次々に介入してくる状況へ、そう洩らす。なぜ自分の名前を、と突っ込むところなのだろうが、もうこの状況では周回遅れな疑問でしかなかった。

 

「間に合ってよかった! 俺、松風(まつかぜ)天馬(てんま)といいます。サッカーを守るためにここに来たんです!」

 

「あ、ああ……」

 

 生返事をしながら、天馬と名乗った茶髪の少年と相対する。見れば彼が着ている制服が自分と同じようだったので、同校の生徒なのだろうか。

 

「気をつけて、やつらはサッカーを消そうとしているんだ」

 

 そう訳知り顔で続けたのは、もう片方の爽やかな浅緑色の髪の少年。彼の言葉を鵜呑みにするなら、いちスポーツを消さんとするほど大きいスケールの話であるそうだったが、もはや驚く気力は自分にない。

 

「サッカーを消すため、って……。いやいや、そんなにちっぽけなのかよ、サッカーってのは」

 

 スケールの割には遠回しに見えた手段に、そう毒づく。そもそも、サッカーは世界で盛んに行われているスポーツだ。まだそこに関わっているわけでもない特定の個人を除いた程度で、滅ぼされる種目には思えなかった。

 

「ちっぽけ? 違いますぅー。……少なくとも、あなたが思っているよりは大事(おおごと)なんですよ?」

 

 大袈裟に退けるベータの言葉から、その規模感はてんで読み取れない。だがいま置かれている状況は、もはや自分の手を離れたものなのかもしれない。

 

「大事かどうかは知らないが……それで狙われるのが、なんで自分になる?」

 

 分からないことは多いが、やはりいち個人の抹消がスポーツを滅亡させるなど、とても信じがたかった。言い返しながら緑髪の少年に視線で発言を促すと、あいにくと返されたのは肯定の──そう表すには出鱈目が過ぎるものだったが──言葉だった。

 

「……将来『世界一の二番手』と呼ばれるあなたを排除することで、雷門中サッカー部の躍進を阻止し、サッカーを抹消しようとしているんだ」

 

「ハァ!?」

 

 唐突な人生規模の暴露に間抜けな大声を洩らす。とはいえ少年の発言は自分にとって片手落ちでしかない。雷門とは自分が通う中学校の名だが、そこにある部活動の中にサッカーの四文字はなかったと記憶している。あとから作られたのだと取れなくもないが、その躍進というのは、まだサッカーの経験のない自分が三年もかからずに貢献・実現できるものなのだろうか。

 

(だいたい二番手って……当てつけなのかよ?)

 

 己にとってコンプレックスと言えるそのワードに、内心で舌を打つ。何をしてもトップまであと一歩届かない苦しみを何度も味わってきた自分には、かなり頭にくる物言いだ。

 

「フェイの言ってることは本当なんです。このままじゃサッカーが消えてしまうんですよ! 信じてください!」

 

 そう緑髪の少年──フェイに加勢する天馬。何もかもを処理できたとは言いがたいが、彼らに乗じておくほかに穏やかな道はなさそうだ。

 

「……わかったわかった。あんたを信じる、これでいいな?」

 

「ありがとうございます!」

 

 調子を合わせてみると嬉々として礼を告げる天馬に気圧されながら、今一度ベータらを見据える。

 

「行こう! 二宮准! 僕たちのサッカーを守るんだ!」

 

 そう頼もしく啖呵を切るのはフェイだ。同時に彼が指を鳴らすや否や、その背中から数多の人間が召喚された。う、とぐぐもった動揺の声が洩れたが、事ここに至ってはこれしきのことで大騒ぎできるような状態ではなかった。

 

「頼もしいな……じゃ、あとは任せた!」

 

 人数の多寡が解決された以上、未経験の自分がいては枷にしかならないだろう。

 

「はい! ……いやいや、そうじゃなくて!」

 

 そそくさとベンチの方向へ退こうとしてすぐに、自分は天馬に呼び止められてしまった。

 

「一緒に戦ってくれるんじゃないんですか!?」

 

「……は?」

 

 護衛対象に戦わせる者がどこにいる──そう言い返しそうになるが、裏表なく驚いている様子の彼、そしてフェイを前に固まっていることしかできない。

 

「……天馬、もしかして今の彼はまだサッカープレイヤーじゃないのかい?」

 

「えっと、いや、どうだったっけ……円堂監督と一緒だと思ったんだけど……」

 

 何やら声を潜めてやり取りをし出すフェイと天馬。自分がサッカー経験者でないことを不思議がっているようだが、どう弁明したものかと悩んでいるうちに、今度はベンチからの叫びがこだます。

 

「心配ぬぁぁぁぁぁいい!!」

 

 声の大本を見やれば、青いクマらしきなにかがドンと立ち姿を晒していた。

 

「……なんだ、ぬいぐるみが喋ってるだけか」

 

「コラー! ワタシはぬいぐるみじゃなーい!」

 

 先ほどまでの出来事に比べれば拍子抜けする事実に気が抜けてしまう。

 苦情を飛ばしてくるクマだが、正直これから何を告げられても今まで以上に驚ける自信がない。

 

「このチームの大監督、クラーク・ワンダバット様であーる!」

 

 高らかに名乗るクマ──ワンダバットは、堂々とした構えを崩さないままこう続ける。

 

「ここでは奴らの介入によってパラレルワールドの共鳴現象が起きている……つまり、別世界の君が力を貸してくれるのだ!」

 

 何を言っているのか分からないが、ベンチにいるのは不都合であるらしい。ルールを知らないどうこうは力を貸されてもどうしようもない気がするが、思えば顔面にシュートを撃ち込んでくる輩が、排除すべき対象がコート外へ向かった程度で放っておいてくれるとも考えづらいのは確かだ。

 

「……わかったよ、やればいいんだろ?」

 

 渋々といった形で引き下がると、いくらか輝いた目をしている天馬のもとへ戻った。

 

「……へっ、ならしょうがねえ。この俺がまとめて叩きつぶしてやる!」

 

 そう吠えるのは態度を明らかに豹変させたベータだ。これ以上突っ込まねばならないことを増やされると頭がショートするので勘弁してほしい。

 

「今度こそいきますよ二宮さん、俺たちのサッカーを守るために!」

 

「……ああ。なるべく手加減してくれよな」

 

 気を取り直した天馬にそう応えると、フェイのフィンガースナップと同時に自分が着ていた制服が一瞬でユニフォームへと変えられていた。

 

「それが僕たちのユニフォームさ! チーム名は『テンマーズ』!」

 

 そう爽やかに告げるフェイ。極めて安い感想が脳裏をよぎったが、おそらく由来となったのだろう人間の気まずげな顔を見ると口にする気にはなれなかった。

 

 少し締まらないが、退けねばならない相手をもう一度見据えた。

 

 ──突如未来から降り注ぐ非日常。それは今日を人生でとびきり理不尽に満ちた日へしてしまったが、万年ナンバー2でしかなかった今までよりは、いくらか面白い日にもしてくれそうだった。




続きはない。この時空介入を切り抜けた先は、多分他の投稿者様が辿った無印シリーズの流れをなぞるだけになると思うので。
さすがにやりたいところだけ飛ばし飛ばしでやるのも違うと思いますし。

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