そんな物語です。(読んだ方が理解するの早い)
分からない事や、こう感じた、こう捉えた、こう解釈した。等の感想を書いて頂けると、今後の参考になりますので是非お書きください。
高度6000を飛んだ時、風防から見える世界は白銀だ。
そんな世界で私と、仲間達は駆け巡り、戦う。
まるでタイガの白銀で走り回り自由に生きる兎達のように。
そうだ、私達は兎なのだ。そしてそれと同時に人間なのである。
兎の様に逃げ回り、人間の様に殺し殺される。
兎の様に走り回り、人間の様に頭を使う。
カルバノグの殺人兎は言った、”我々は自由を求め駆け巡り、いつかを信じて明日を生きる者たちだ”と。
だが、いまやその”いつか”は何処にも見えやしない。なら、何を信じればいい?
私達は兎であり、人間だ。
白銀の荒野を駆け巡り、お互いの血を見ようと必死になる者だ。
ならせめて最期まで貫こうではないか。
自由を求める心を、明日を生きようと必死になる姿を。
そこに信念も正義も無い。あるのは己の意思だけである。
さぁ、時間だ。行こう。
————独立第301航空隊 白雪ナズナ
雪もちらほらと見えてきた11月の始め、私は夜空を眺める。
「オリオン座か...」
南方の空に浮かぶその姿は、まさに私達を死地へと誘う狩人のように見えた。
「明日の夜は、満月だと良いな」
見れもしない明日の夜に、そんな事を願う。
今度の赴く地は南方500海里先の、洋上。再び夜空を眺める頃には、私が一番遅い星に、きっと成ってみせよう。
そんな時、声を掛けられる。
「こんな場所にいたんですか、中佐」
声のする方に視線をやる。そこに居たのは、真っ直ぐな瞳で私を見つめ、迷いの無い幼気な姿の子兎。
私はやるせない感情に襲われ、喉に何かが込み上げてくるように息がしずらくなる。
「君か、」
息を殺しやっとの思いで絞り出した声も、その一言で止まってしまう。私は再び夜空へと目をやる。
「オリオン座ですか、綺麗ですね」
だけど君は私とは違う。まだ16の君の純粋な心は、時に強く、恐れを知らない物へと成る。
私はそんな純粋さをいつしか忘れてしまった。
「オリオン座のモデルを知っているか?」
私は、君にひとつ問う。だがこれは知識を問うものではない。
「オリオン座のモデルですか...?いえ、存じておりません....」
どこか怯えた声色を含んでいた様な、君の答えに私は静かに微笑する。
「狩人オリオンだ、古の聖書に登場する人物でね」
その私の説明に、君は笑顔で答える。
「やはり、中佐殿は博識ですね」
君の目にはそう映る私の姿は、きっと美化されている。本当の私は博識なんかでは無くて、強さを忘れ恐れを知ってしまった、臆病な兎。
「そんな狩人オリオンは、月の女神と恋をした。狩人が兎に恋をしたんだ」
私のその言葉に、君は黙ってしまう。
「あの人が死んだ時も、夜にはオリオン座が輝いていた」
どこか懐かしむように、私は言葉を続ける。
「あの人とは、大佐殿の事ですか...?」
大佐、か。君には大佐として見えていたかもしれない。だけど、私には殺人兎に見えていた。そして、それと同時に、もっとも敬愛していた人だった。
「あの人は、兎としてオリオンに狩られた。きっと、そうなる運命だった」
あの人はとても強かった。自ら殺しに行く兎だっだ。だけど、カルバノグの殺人兎として生きている以上、死ぬ運命だったのだろう。
「私はこの部隊が、嫌いだよ。このカルバノグ隊のせいで、あの人は死んだと思っている」
私の一人勝手な逆恨みだと理解している。志願してこの部隊に入ったのに、あの結果になった途端、嫌うなんて。
「...すまない、私勝手に話してしまって」
そう謝ると、君は慌てて答える。
「い、いえ!お気になさらず...」
かくして私は部屋に戻り、手記を取り出す。これが最後のページになるのか、それは明日の私に委ねられた。
「私は、カルバノグの兎なのか?」
さっきの会話を思い出し、そんな事を呟く。そして手記を開き、ペンを走らせる。
—————カルバノグの兎たち 短編小説
一応説明します。
なんで最後に「私は、カルバノグの兎なのか?」と呟いたかと言うと、これはこのシーンの後、1番最初の手記の内容に回帰するんです。
そして、そこに書かれている内容は信念を失っても、己の意思で生きる事を選んだっていう内容でした
つまり、本編の中では、明日の出撃で死ぬつもりだったけど、この”子兎”と会話して、自分の思いを言葉にした結果、自分が嫌っているカルバノグ隊の為に、命を捧げるのは、本望なのか?カルバノグ隊に命を捧げた”あの人”を追うのは、正解かもしれないけど、それは私の意思なのか?という疑問を抱いた事を表現してるんです。