インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~ 作:れみんとぅ
昨日、楽器屋様から連絡があり、自分の注文したギターがラス1でギリギリだった事を知らされました。
楽器屋様の迅速な対応に心からお礼を申し上げるとともに、ギリギリ買えなかった皆様に心から高笑いをお送りします。HAHAHA。
さて、今回から原作2巻へと入ります。書いていて何度となく「シャル」と書き、「シャルル」と書き直しました。後半になるとこれが逆になりそうです。
では、第9話 3人目 其ノ壱 お楽しみください。
学生寮、そのロビーに1組の男女がいた。
消灯時間の30分前、2人は互いに向かい合っている。
「さて、しのののの」
「の、がひとつ多いのだが…」
その男女とは、クラウスと箒である。
「ああ、悪い。篠ノ之」
何故こうして向かい合っているのか。それは5分程前の箒の行動が原因だった。
「お前はアホか?」
「アホとはなんだ!」
憤慨する箒。だが、もう寝ている生徒もいる中であまり大きな声は出せず、ボリュームは普段の会話と変わらない。
「あの一夏だぞ。『付き合って』の意味が買い物くらいしかない奴だ。あの言い方で伝わると思ったのか」
「それは…だが…しかしだな…」
そう言われてしまうと反論できない。
箒は先程、一夏に「1ヶ月後の学年別トーナメントで私が優勝したら、付き合ってもらう」と叫んだのだ。
そう、
「あいつに告白するのなら、『恋人になって欲しい』くらい言わなければ全く伝わらない」
「うぅ…」
数日前に一夏と箒の部屋割りが変更され、別々の部屋になったため、彼の部屋のドア前で言う事になった。
つまり、
「明日には尾ひれのついた噂でも立っているだろうな」
「返す言葉もない…」
箒がどんどんシュンとしていく。だが、クラウスは追い討ちをやめない。
「そもそも何故大声で言う?気合を入れ過ぎだ。夜なのだからまずそこから間違っている」
「…うむ…」
ちなみに、その声のせいでウトウトしていた静寐が驚いて起きてしまっていた。眠気には波があるので、一度覚めてしまうと次が来るまでなかなか眠れない。
「周りの迷惑を考えて行動しろ。そもそも告白を叫ぶな。他人の告白を聞いて何が楽しい。夜は寝る時間だ。黙って部屋で布団に入れ」
「…すまなかった…」
意気消沈した様子で縮こまる。それを見てクラウスはため息。そして立ち上がる。
「…わかったならいい。部屋に戻れ」
「ああ…」
トボトボ歩いて自分の部屋へ戻る箒は、普段とは別人。まるで親に叱られた子供のようだった。
次の日、朝の教室。いつも通り皆がそれぞれ雑談をする中、クラウスと一夏が入る。
「クラウスって饅頭めっちゃ好きなのな」
「初めて食った時は5つ平らげたな」
「ふ、太るぞ…」
自分の席につく。するとクラウスが後ろから誰かに
「…布仏。動き辛い、離れてくれ」
「うっへへへ〜。あまちゃんはかんちゃんとも仲良くなったんだね〜」
「かんちゃん?…ああ、更識か」
絡まった女子生徒。
簪曰く幼馴染という事だったが、今までクラウスが彼女と関わりがある事は知らなかったからだろう。
「よろこんでたよぉ〜すっごく〜」
「それはよかった。ところで離れてくれないか」
「専用機を完成させる目処が立ったって〜」
ちなみに、本音はクラウスの事を『あまちゃん』と呼ぶ。
某朝ドラのタイトルのようだが、本音自身は気に入っていて変える気はないらしい。
「本当か?それなら学年別トーナメントで見られるかもしれないな」
「そだね〜。楽しみ〜」
「痛い痛い痛い。絡まったままで動くな」
体が密着しているので、女子の
しかし彼は動じない。鋼鉄の理性をもって煩悩を抑えている。
「あぅ〜、動き辛いよ〜」
「なら離れてくれ。というか初めから絡まるな」
「あまちゃんは絡まり心地が最高なのです」
「絡まり心地ってなんだ。いいから離れろ」
離れろと言いつつも無理矢理剥がさないのは、彼の優しさか。それとも上手く動けないからか。
話していると、教室に真耶が入ってきた。バタバタと生徒が自分の席へと戻る。
出席確認の後、真耶がこう口にした。
「今日は、転入生を紹介します。入ってください」
教室の外へ向けて声をかける。
現れたのは、
「初めまして、シャルル・デュノアです。こちらに同じ境遇の人がいると聞いて、転入して来ました。よろしくお願いします」
笑顔で一礼。そして顔を上げるも、女子生徒全員が目を見開き、彼を凝視している。
クラウスと一夏は、黙って耳を塞ぎ俯く。
1.5秒後。
「「「…キャァァァァァ!!!!!」」」
黄色い嵐が巻き起こった。前にいるシャルルはそれを正面から食らい、遅れながらも耳を塞ぐ。
「3人目!!3人目の男子!!」
「癒し系!!守ってあげたくなる系の!!」
「ああ、もうだめ死にそう…」
死者を出しながら、シャルル・デュノア歓迎の嵐はこの後2分ほど続いたのだった。
嵐が過ぎ去った。死傷者計15名という凄惨な自然災害は、『
…冗談はさておき、男子2人にシャルルを交えて、3人は次の授業の準備にかかっていた。
「あ、2人とも、僕は」
「待てデュノア。今はまだいい」
「女子が着替え始めるから、さっさと移動しちまおう」
「え?う、うん…」
シャルルは首を傾げながらも2人について行く。
「走るぞ」
「くそっ、前より早い!」
「え?えっ?」
突然走り出した2人。慌てて遅れて走り出すシャルル。
門を曲がり、なおも走る。
もう一度門を曲がる。その先には、
「いた!転入生!」
「キャー!美男子!」
「新聞部です!写真を撮らせて!」
彼らを見つけるやいなや押し寄せる。即座に3人は180度ターンし、逆方向へと走り出す。
「デュノア!手を出せ!」
「え?う、うん…」
クラウスに言われるがままシャルルが手を伸ばす。
その手を掴むと、彼は一気に引っ張り自分の体に引きつける。
そして、お姫様抱っこをし、何事もないかのように走り出す。
「うぇっ!?うわ、うわわ…」
「悪いが余裕がない。しばらく我慢してくれ」
人1人を抱えているにもかかわらず、全力で走る一夏と並んで走るクラウス。
腕の中ではシャルルが仔猫のように真っ赤な顔で彼を見上げていた。
「階段だ!跳ぶぞクラウス!」
一夏の声。眼前に下り階段が迫る。
「掴まれデュノア!」
「っ!!」
シャルルは言われるがままクラウスの首に手を回す。
1秒後。一夏とクラウスは、宙に身を躍らせた。
着地。勢いを殺さずまた走り出し、すぐに左折。
そしてひとつのドアが見えてきた。一夏がすぐにドアセンサーに触れ開く。
クラウスとシャルルがそのまま突っ込み、一夏も遅れて入る。
ドアが閉まる。同時に一夏とクラウスが息を吐いた。
シャルルを降ろしながら、クラウスが。
「悪かったな。あのままだとデュノアだけ捕まるかもしれなかった」
「う…ううん…きにして…ないよ?」
何故か疑問系で、更に顔が真っ赤なシャルル。
「どうしたんだよ?顔赤くして」
「なっ、なんでもないよ!なんでもないよ!は、早く着替えちゃわないと!む、向こう向いてて!」
「お、おう…」
2度繰り返して否定すると、いそいそと着替え出す。慌てて一夏も着替え始める。
「しっかし、もう少し何とかならんのか?このISスーツ。引っかかって着づらいぜ」
「ひっ、引っかかる?」
「え?引っかかるだろ?」
反応したシャルル、再び赤面。対して一夏は首を傾げている。
クラウスが歩き出して言う。
「先に行くぞ」
「はやっ!?ってシャルルももう着替え終わってる!」
「う、うん…」
ますます慌てて一夏もISスーツを着る。
結局、一夏は間に合わずに千冬の出席簿を食らうのだった。
1組、2組合同のIS実習。そのため、それなりの人数がグラウンドに並んでいる。男子3人は身長と視線の関係で1番後ろの列だった。
「これより、専用機持ちに模擬戦を行ってもらう。凰、オルコット、前へ出てISを展開しろ」
指名を受けた鈴とセシリアが前へ出る。だが、やる気があるという顔ではなかった。
「めんどくさいわね…なんであたしなのよ…」
「こういう時、見世物にされている感は否めませんわね…」
ブツブツと何か言っている2人。千冬はニヤリと笑い、彼女たちの側でこう呟く。
「そう言うな。あいつに良いところを見せるチャンスだぞ?」
「「!!」」
瞬間、表情が変わった。2人は勝気に笑い、胸を張る。
「まあ、こういうのは専用機持ちの役目だものね!」
「エリートととして当然の事ですわ!」
やる気満々といった様子。千冬の言葉は、単純だが効果的だったようだ。
「それで、対戦相手は誰なんですか?」
「私は別に鈴さんが相手でも構いませんが…」
「言ったわね!返り討ちにしてあげるわ!」
互いに睨み合う。2人の視線が火花を散らす中、千冬は少し呆れたように否定した。
「早まるな。お前たちの対戦相手は別だ」
すると、何やら音が聞こえ始めた。
ー…ゥゥゥゥゥ…ー
まだ遠い。だが、近付いて来ているようだ。
シャルルがふと上をみる。そして顔が引きつる。
「う、上だよ!逃げて!」
彼の言葉に皆上を見、クモの子を散らすように逃げ出した。
その物体とは。
「ど、どいてくださぁぁぁぁぁいっ!!!!!」
真耶であった。訓練機ラファール・リヴァイヴを身に纏い、一直線にグラウンドへ墜落してくる。
その落下地点。クラウスは迫る彼女を見据え、天叢雲の待機状態である指輪を手で握った。
「クラウス!!逃げろって!!」
一夏の声。だが彼は動かない。
次の瞬間、眩い光が迸り、クラウスの体を漆黒のISが包み込んだ。
そして。
ドッ、と音を立てて、彼は真耶を
クラウスの腕の中にいる真耶本人は、まだ目を瞑っていて現状を理解していない。
「…あれ?え?…なんでアマーリア君が?え?あれ?」
目を開け、今自分のいる状況を理解し、顔を真っ赤にしてあたふたとする真耶。残念ながら、そこに教師の面影はない。
「怪我はありませんか、山田先生」
「ふぇっ!?はっ、はいっ!!」
クラウスの言葉に過剰に反応してしまう。彼は気にかけることなく真耶を降ろす。
降ろされても、ぼーっと突っ立っているだけの教師を放って、クラウスはISを解除。一夏たちの元へ。
「…おう、お疲れ」
「ああ」
一夏とよくわからないやり取りをする。
その間に、千冬が真耶へと声をかけた。
「…山田先生」
「はいぃっ!?」
やけに驚く。呆れながらも千冬は続けた。
「凰、オルコット。今回のお前達の対戦相手はこの人だ。2対1でやれ」
「「なっ!?」」
代表候補生、そして専用機持ちとして、それはプライドが傷付くセリフだったのだろう。2人は思わず反論した。
「ですが流石に2対1は」
「そうですよ!せめて1対1で」
だが千冬は不敵に笑い一蹴した。
「安心しろ。今のお前達ではすぐに負ける」
「「!!」」
2人の闘争心に火がついた。同時に鋭く真耶を睨みつけるその口元は、笑みを形作っていた。
それに気がついた真耶はビクッと肩を跳ねさせていた。
3人がそれぞれの武器を構え、開始の合図を待つ。
「では、始め!」
その声に3人は同時に動いた。空に躍り出ると、戦闘を開始する。
その様子を眺めながら、千冬が今度はこう言った。
「デュノア。山田先生の使っているISの解説をしてみせろ」
「はい」
一呼吸置いて、シャルルは話し始める。
「山田先生の使うISは、デュノア社製第二世代型のラファール・リヴァイヴです。第二世代最後期の機体ですが、その性能は初期第三世代型にも劣りません。最大の特徴は操縦の簡易性によって操縦者を選ばないことと、地域や操縦者によって自由に装備を変えられる
「よし、そこまででいい。勝負がついたようだ」
え、早くね。
誰もがそう思う中、皆視線を上空に向けた。
すると今まさに、2人が撃たれグラウンドに揃って墜落した。
「アンタねぇ!何面白いように回避先読まれてんのよ!」
「鈴さんこそ!衝撃砲をばかすか撃ち過ぎですわ!」
2人が絡まったままいがみ合う様子は、滑稽以外の何物でもなかった。
彼女たちを無視して千冬はまた声を上げる。
「次は…アマーリア。お前も対戦しておけ」
「了解です」
返事をすると、クラウスは前へと歩き出す。
地上に降りてきていた真耶の正面に入ると同時に、彼を光が包みISが展開される。
「連戦ですが、体調の方は大丈夫ですか?先程の事もありますし」
クラウスの呼びかけに真耶はボッと顔を赤くした。
「だっ、だだ大丈夫ですから!ほ、ほら!行きますよ!」
しどろもどろにそう言って、再び武器を構える。
彼女の反応につい笑みを漏らしながら、クラウス自身も腰の刀を抜き放つ。鈴のような美しい音を立て、無人機襲来時とは対照的な純白の刃が現れた。
「始め!」
千冬の声。すぐさま真耶のアサルトライフルが火を噴く。
無数の弾丸が彼へと襲いかかる。
だが、クラウスは笑ったままで前へと歩き出した。
自ら弾幕へ向かっていく彼の行動に、生徒は皆息を呑む。
しかし、彼の手前で全て弾き飛ばされた。
射線が身体にかかる弾丸は全て、刀で弾きながら彼は歩む。笑みはそのままで。
真耶の顔が驚愕に染まる。
直後にライフルは弾切れを起こす。
即座に投げ捨て、次はグレネードランチャーを展開した。
手榴弾がクラウスへ。
腰を落とし、刀を両手で持ち下手に構えをとった。
爆煙。彼の機体は見えない。
真耶は目を凝らし、奇襲を警戒する。
煙が貫かれ、彼女へ1発の弾丸が迫る。
即座に回避。最小限の移動で射線から外れる。
そしてクラウスの機体へ目を戻すと。
彼は目の前にいた。
既に首筋へ刀をあて、不敵に微笑んでいる。
そして余裕綽々といった様子でこう言うのだった。
「近距離での爆発系武装は敵機を見失います。威力は凄まじいですが、外した時のリスクを考えなければ」
「そこまで!」
千冬の声で首筋から刃が退く。真耶は思わず息をついた。
専用機持ち2人をいとも簡単に倒した彼女を、クラウスは
生徒の中には、彼に対して恐怖心を抱く者もいる。
「あの2人との対戦で、教員の実力はわかっただろう。以後は敬意を持って接するように」
あの2人、とはもちろん2対1で真耶にやられたあの2人の事である。
さらに千冬はこう続ける。
「そして…その後の対戦で恐怖心を抱いた者も、この中にはいるだろう。だが、それでいい。それが普通の感覚だ。ISに対する恐怖心は、どんな時も忘れるな」
皆の顔が心持ち引き締まる。確認し満足げに頷くと、千冬は次の指示を出した。
「ではこれより、訓練機を使った実習に移る。専用機持ちをリーダーに、出席番号順にグループを作れ。今回は起動から歩行までだ」
「「「!!!」」」
そう言われれば、当然と言うべきか男子3人のグループに入れるかどうかが気になるところだ。
そして、残念ながらなれないとわかった生徒達。
「ああああ!あと2つ番号が若ければ!」
「うん…知ってた…私は無理だって…」
「この苗字にした事、末代まで呪ってやる…」
惜しいところで逃したり、全く関係のない自分の子孫を呪ったりしながら、それでもしっかりと別れていくのは、鬼教官織斑千冬の出席簿は偉大だということを示していた。
現在、1/144HGBFライトニングガンダムを製作中です。自分は何日もかけてノロノロ組み立てるタイプで、あと2日程でできるかと思います。
少し長くなってしまいました。どうも文字数調整が難しいです。更新のペースが上がっているから?いやいやそんな事は。
次回は実習編です。お姫様抱っこですね。
そういえば、お姫様抱っこは男子がやられるとまた別の意味で恥ずかしいと思うのですがどうなんでしょう?経験者の方は…まあまずいませんよね。
では、次回もよろしくお付き合いください。