インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~   作:れみんとぅ

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こんにちは、れみんとぅです。

今回、なんといきなり7000字を超えてしまいました。
本当は5000〜6000字に出来ればと思っていたので予想外です。

主人公、クラウスのキャラクターというか感じは、ガンダムOOの刹那をイメージにしています。上手く雰囲気を出せるよう頑張っていきます!

では、第1話 胃が痛い初日 お楽しみください。


第1話 胃が痛い初日

 

 

 

 

 

「全員揃ってますね。それじゃあSHR(ショートホームルーム)始めますよー」

 

先程自己紹介を済ませたこのクラスの副担任、山田 真耶(やまだ まや)が黒板の前で微笑む。身長は低め、服もゆったりとしたもの、メガネも大きめなのか少しズレていて、どこか幼さを感じさせる。

 

「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますね」

 

「………」

 

そんな真耶が生徒達へ声をかける。だが、妙な緊張感に包まれる教室内には物音ひとつしない。

 

「…えっと、じゃあ、自己紹介をお願いします。出席番号順で…」

 

生徒の反応に少し狼狽える真耶。この緊張感の理由は、最前列中央の席にいる2人の生徒が原因だった。

1人は緊張した面持ちで目線を泳がせていて、もう1人は手に持つ本に目を落としている。しかし重要なのはそこではない。

この教室内に男子はこの2人だけ(・・・・・・・・・・・・・・・)という状況が、緊張感の理由である。

 

「次は、織斑 一夏(おりむら いちか)くん、お願いします」

 

真耶がその2人のうち、どうにも落ち着かない方へ声をかける。しかし、彼からの反応はない。仕方なく、彼女はもう一度、声を大きくして呼びかけた。

 

「織斑君?織斑一夏君っ!」

 

「はいっ!?」

 

突然の大声に驚き、裏返った声を上げる一夏。クスクスと笑い声が聞こえてくる。それによってますます彼の落ち着きがなくなる。

 

「あの、大声出しちゃってごめんなさい!怒ってるかな?ごめん、ごめんね!でも、自己紹介、『あ』から始まって今『お』で次は織斑君なの。だから、ごめんね、自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」

 

ぺこぺこと何度も頭を下げる真耶。メガネがずり落ちかけている。見れば見るほどに、本当に教師なのか疑わしくなる仕草をする副担任だった。

 

「いや、あの、そんなに謝らなくても…します、自己紹介しますから…」

 

「本当ですか!?約束ですよ!?絶対ですよ!?」

 

一夏の手を掴み詰め寄る真耶に若干引きながら、彼は振り向いてクラスメイトの方を向く。女子全員の視線が、一夏に集中した。

 

「…えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

言い終えると、彼は頭を下げる。だが、周りはまだ彼の自己紹介を終わらせるつもりはないようだった。

全員が黙って一夏に話を続けろと期待に満ちた視線を送る。少しの間視線を泳がせてから、彼は再び口を開いた。

 

「以上です」

 

ガタッ、とずっこける生徒が何人か現れた。それを見て彼はまた困惑。副担任である真耶も困惑。涙声混じりに彼女は口を開いた。

 

「…あ、あのー…」

 

その時。一夏の背後に人影が現れ、手に持つ長方形の物を躊躇いなく振りかぶった。

パァァァンッ!!

大きな破裂音が響き、一夏が頭を抑え呻く。

叩いた人物は、黒のスーツにタイトスカート、すらりとした長身、刀を思わせるような鋭い眼光。しかし、誰もが認めるであろう美貌。

その姿を見て、クラスの女子全員が反応する。

 

「「「キャァァァァ!!!!」」」

 

高周波の轟音が巻き起こり、教室を揺るがした。

 

「本物!本物の千冬様!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様のためなら死んでも構いません!」

 

口々に叫ぶ女子生徒達を、彼女は鬱陶しそうな顔で見た。

 

「…毎年毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ…まさか私のクラスに集中させてるのか?」

 

女子生徒だけではなく、声こそ上げないが叩かれた一夏も驚いた顔で見つめている。そんな一夏に彼女は厳しい口調で話しかけた。

 

「それで?挨拶もまともにできんのか、お前は」

 

それに対して一夏は弁明しようと口を開く。

 

「い、いや、千冬姉俺は」

 

パァァァンッ!!

再び破裂音。また頭を抑える一夏。

 

「織斑先生と呼べ」

 

「…はい、織斑先生」

 

テンションがおかしくなっていた女子生徒達だったが、このやり取りに敏感に反応した。

 

「え?織斑君って、あの千冬様の弟…?」

「じゃあ、男性でISが扱えるのもそれが関係して…?」

「…代わってくれないかなぁ…」

 

そう、この女性は一夏の実姉なのだ。

織斑 千冬(おりむら ちふゆ)。ISの世界大会であるモンド・グロッソの第1回総合優勝者であり、『ブリュンヒルデ』の称号を得た最初の人物である。

そして何より、公式試合での記録は、無敗(・・)である。

 

「…あのー、自己紹介の続きを…」

 

と、ここで真耶がおずおずと千冬へ声をかける。

千冬は一夏への向けるものとは対極に優しげな表情を浮かべ、それに応えた。

 

「ああ、すまない。続けてくれ」

 

「それじゃあ次は…」

 

その後数人の女子が自己紹介を終えると、教室内が再びあの緊張感で満たされた。心なしか緊張した面持ちで、真耶が次の生徒の名を呼ぶ。

 

「次は、クラウス・アマーリア君。自己紹介をお願いします」

 

「はい」

 

低く、よく通る声。手に持つ本を机に置き、振り向きながら声の主が立ち上がる。

180cmに届きそうな長身。

目立たないが、よく鍛えられ無駄のない体。

強い意志を感じさせる瞳。

少なくとも日本人女性は誰もが『イケメン』と称するだろう容姿。

クラウスは少し間を置くと、ゆっくりと口を開いた。

 

「初めまして、クラウス・アマーリアです。趣味は読書で、最近は日本語の勉強も兼ねて日本の小説をよく読んでいます。まだ日本に来て日が浅くて、わからないことだらけで不安なので、皆さんから教われたらと思っています。どうぞよろしくお願いします」

 

流暢な日本語で自己紹介をすると、紳士然とした動きで丁寧に頭を下げる。その様子を、女子生徒たちは惚けた顔で見つめていた。

すると、顔を上げたクラウスがもう一度口を開く。今度は破壊力抜群の笑顔をつけて。

 

「以上です」

 

「「「キャァァァァ!!!!」」」

 

再び巻き起こる叫びの嵐。千冬も再び鬱陶しそうな顔。女子は気付かずテンションMAX。

 

「イケメン!!すごいイケメン!!」

「織斑君の日本男児な顔もいいけどアマーリア君もいい!!」

「ああ、もうだめ幸せ過ぎて死にそう!!」

 

「黙らんか、馬鹿者!」

 

千冬の一喝。それだけで嵐が嘘のように収まり、静けさが教室を包んだ。そしてそこでちょうどチャイムが鳴る。

 

「さあ、SHRは終わりだ。お前達にはこれからISの基礎知識を半月で学習してもらう。その後実習に入るが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいな」

 

千冬の言葉にあわせて、真耶が教壇に立つ。そして、ISの基礎知識を学ぶ授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(このレベルなら苦労せずについて行けそうだな)

 

1限目のIS基礎理論の授業が終わり、今は休み時間。クラウスは自分の脳のスペックに感心していた。あの入学前の参考書を読むだけでここまでは順調に理解できている。そして、隣で机に突っ伏し、ダウンしているクラスメイトのようにはなりたくないと密かに思った。

 

「…そうだ、アマーリアだっけ?」

 

「…クラウスでいい」

 

そんな彼、織斑一夏が、思い出したようにクラウスへと話しかけた。クラウスも本を読むのを中断し一夏へと顔を向ける。その顔は少々呆れた表情だったが。

 

「そうか…じゃあ俺のことも一夏でいいぞ…」

 

「わかった」

 

「ところでさ…『これ』は結構辛くないか?」

 

『これ』というのは、今2人の置かれている状況である。

現在、廊下には他クラス、更には2、3年の女子が押し鮨のごとく詰めかけている。しかし女子だけの空間に馴染んでしまっているせいか、誰ひとりとして彼らに話しかける者はいない。

従って、その全ての視線がこの男子2人に集中しているので、見世物にされている感は否めない。

 

「俺はあまり気にならないが」

 

「すげえなお前…」

 

平然と本に目を落とすクラウス。感心した声を上げる一夏。ふと一夏が女子達へ視線を送ると、慌ててそれまで彼らに向けていた視線を逸らす。『話しかけて!』という雰囲気は残して。

 

「ちょっといいか」

 

「え?」

 

と、ここで一夏へ話しかける1人の女子。周囲がざわめく。一夏には彼女が誰だかすぐにわかった。

 

「…箒?」

 

「………」

 

彼女は6年ぶりに再会する彼の幼馴染、篠ノ之 箒(しののの ほうき)だった。肩下まである長い髪を、白いリボンでポニーテールに結っている。身長は平均的な女子のそれだが、姿勢がいいので長身に見えた。そして少し不機嫌そうに見える目。本人曰く、生まれつき。

 

「廊下でいいか?」

 

言うが早いか、スタスタと廊下へと歩いていく箒。

そこに集まっていた女子がザァッとモーゼの海渡りのごとく道を開ける。一夏はちらりとクラウスの方を見た。クラウスは「行ってこい」と目配せをする。

 

「早くしろ」

 

「お、おう」

 

箒に急かされ、廊下に出る一夏。だが、教室内と大して状況は変わらない。むしろ悪化した。

2人から4mほど離れて包囲網が形成され、全員が聞き耳を立てている。そんな中、居心地の悪さを感じながら一夏は箒へ声をかけた。

 

「久しぶりだな、箒。お前だってすぐにわかったぞ」

 

「な、なんでわかったんだ」

 

「ほら、6年前と髪型が一緒だからな」

 

彼は自分の頭を指差しながら笑う。それを聞いて箒の顔は赤くなっていた。

 

「よく見てるものだな…」

 

「そりゃあ、幼馴染のことだし当然だろ」

 

ますます顔を赤くして、ゆでダコのようになる箒。一夏は怪訝そうな顔をする。

 

「どうした?熱でも…」

 

「な、なんでもない!も、もう授業が始まる!戻るぞ!」

 

「お、おう…」

 

それが合図だったかのようにチャイムが鳴る。蜘蛛の子を散らすように2人を囲んでいた包囲網が霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なので、ISは基本的に国家の認証があって初めて運用でき、枠内を逸脱したIS運用をした場合、刑法によって罰せられ……」

 

「………」

 

ドカッと机に積まれた教科書。その全てがやたらと分厚く、辞書程もある。

真耶がすらすらと教科書を読む。

しかし、一夏は全くついて行けなかった。

 

(お、俺だけなのか…?皆わかるのか…?)

 

周りの女子は、時折頷きながらノートを取っている。隣のクラウスは黒板を見たまま綺麗にノートへ写していた。

 

「織斑君、どこかわからないところはありますか?」

 

「うぇっ!?え、えっと…」

 

「わからないところがあったら遠慮なく聞いてくださいね!なにせ私は先生ですから!」

 

えっへん、と言わんばかりに胸を張る真耶。一夏は机の教科書をパラパラとめくり、閉じて、口を開いた。

 

「それじゃあ、はい」

 

「はい!織斑君!」

 

どこか嬉しそうに、笑顔で真耶は一夏を指名した。

対して一夏は申し訳なさそうに弱音を吐く。

 

「ほとんど全部わかりません…」

 

「ほとっ…え?」

 

真耶の笑顔が引きつる。数秒の間。互いに困惑した表情で見つめ合っていた。

 

「…織斑、お前、入学前の参考書は読んだのか?」

 

教室の端に待機していた千冬が口を開く。一夏は衝撃の事実を告白した。

 

「古い電話帳と間違えて捨てました」

 

スパァァァンッ!!

3度目の破裂音。

 

「必読と書いてあっただろうが。後で再発行してやるから、1週間で覚えろ」

 

「い、いやさすがにあの厚さは」

 

「やれ」

 

「…はい」

 

千冬の鋭い眼光に、蛇に睨まれた蛙になる一夏。

彼女は一夏から視線を外すと、真耶へと声をかける。

 

「山田先生、授業の続きを」

 

「え?は、はい」

 

ぼうっと2人のやりとりを見ていた真耶は、慌てて教卓の前へ戻ろうとした。

そして教壇に引っかかって転んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「へ?」

 

「………」

 

2限目の休み時間。再びあの視線攻撃を受けるかと思われた男子2人に、話しかける人物がいた。

鮮やかな金髪。白人特有の透き通るブルーの瞳が、やや吊り上がった目で一夏達を見据えている。

クラウスは無言で本を置き、一夏は変な声を出す。

彼女はどうやら2人の反応が気に食わなかったようだ。

 

「まあ!なんですのそのお返事。私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではなくて?」

 

「悪いけど、俺、君が誰だか知らないし」

 

高飛車な態度に少し面倒そうな口調になる一夏。クラウスは相変わらず無言だ。

 

「知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、首席入学のこの私を!?」

 

「おう。ところで代表候補生ってなんだ?」

 

「…すまない、俺はまだISに関わり出してから日が浅い。だから各国の代表候補生の名前までは…って一夏、代表候補生の事からわからないのか」

 

これまで無言だったクラウスが弁明しようとするも、思わずノリツッコミのようになる。セシリアに至っては絶句。その他女子生徒はギャグ漫画のようにずっこけた。

 

「あ…あなた本気で言っていますの!?」

 

絶句から復帰したセシリアが一夏へ詰め寄る。青筋が見えてきそうなほどの剣幕だ。

 

「おう。知らん」

 

「………」

 

再び絶句したセシリアの代わりに、クラウスが口を開き説明した。

 

「各国には国家代表操縦者がいる。そしてより強い操縦者を育てるために、国内外の優秀な者を候補生として選出し実績を競わせる。それが代表候補生だ」

 

「なるほど」

 

「候補生に選ばれただけでほとんど将来は約束される。つまりはエリートだ」

 

「そう!エリートなのですわ!」

 

セシリア再び復帰。一夏へビシッと人差し指を向ける。近過ぎて少し鼻に掠った。

 

「本来なら私のような選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡。幸運なのよ!その現実をもう少し理解して頂ける?」

 

「そうか、それはラッキーだな」

 

「…馬鹿にしていますの?」

 

またしても一夏の態度が気に食わないセシリア。

 

「ISについてなにも知らないクセに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いて、少しくらい賢いと思っていましたが、期待はずれですわね」

 

「…俺を一夏と一緒にしないで貰えるか」

 

「おい待てそれは酷えぞ!?」

 

クラウスと一夏のやり取りに、セシリアはますます不機嫌そうな顔になる。

 

「あなた達…揃いも揃って馬鹿にして…!!」

 

「まあまあ落ち着けって」

 

「これが落ち着いていられ」

 

キーンコーンカーンコーン…

ここで3限目のチャイムが水を差す。

 

「っ!また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

引きながら頷く一夏。クラウスは無言。フン!とセシリアは長い髪を翻し席へ戻っていった。

そして、1、2限目とは違い教壇に立つのは千冬。

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明…ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなければな」

 

話を始めようとして、ふと思い出したように方向転換をする千冬。生徒は皆疑問を浮かべた表情をする。

 

「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議、委員会の出席など、まあクラス長のようなものだな。ちなみに、クラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。一度決まると1年間変更はないからそのつもりでな」

 

ザワザワと教室内が少し騒がしくなる。一夏は完全に他人事で面倒そうな役だなと考える。クラウスは意に介さずといった様子だ。

 

「自薦、他薦は問わん。誰かいないか?」

 

勢いよく女子達の手が上がった。そして、口々に推薦を始める。

 

「はい!織斑君がいいと思います!」

「私はアマーリア君を推薦します!」

「どっちもいい!というか2人でやってほしいです!」

 

「では候補者は織斑とアマーリア…他にはいないか?いないならこの2人で決選投票を…」

 

予想外の推薦に一夏は思わず立ち上がる。視線の一斉射撃が襲う中、彼は焦って千冬へ訴えた。

 

「お、俺!?いや、俺はそんなのやらな」

 

「他薦されたものに拒否権はない」

 

「待ってください!それは」

 

反論しようとした一夏を、甲高い声が遮った。

 

「納得いきませんわ!」

 

怒りの形相で立ち上がったのは、先程一夏達に絡んできたセシリアだった。

 

「このような選出は認められません!大体、男がクラス代表なんて恥晒しですわ!この私にそのような屈辱を1年間味わえと仰るのですか!?」

 

ここでクラウスが鬱陶しそうに小さな溜め息を吐き、読んでいた本を閉じた。

 

「実力からいけば私がクラス代表になるべきですわ!それなのに、物珍しいからとそれを極東の猿に任せられては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをしに来たのではありません!」

 

いよいよエンジンが暖まったセシリア。更にアクセルを踏み込み、言葉を荒げる。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき!!そしてそれは私ですわ!!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体、私にとっては耐え難い苦痛なのに」

 

ここで頭に来た一夏が思わず言い返した。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

 

「なっ…!!あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」

 

顔を真っ赤にして怒るセシリア。一夏はやってしまったという表情で立ち尽くしている。

 

「…喧嘩なら他所でやってくれないか。やかましい」

 

不意に、冷ややかな声が2人の間に入った。

声の主…クラウスは、振り返らずに続ける。

 

「オルコットさん、貴方にだけは言われたくないな。数秒前に日本を文化後進国だと侮辱した貴方には」

 

「っ!!」

 

彼の言葉が、セシリアへと突き刺さる。先程まで怒髪天を突く勢いだった彼女が凍りつく。

 

「ついでに言えば、ISを開発したのは篠ノ之束。貴方の言う極東の猿(・・・・)だ」

 

「あ…」

 

「そして、この学校の約半数は日本人。オルコットさん、貴方は学校の生徒半分を敵に回したいのかな。女性のいじめは過酷(・・・・・・・・・)だと聞くけれど」

 

「………」

 

止めの一言。セシリアは完全に沈黙し、クラス内は騒然となる。クラウスは再び溜め息を吐き、提案した。

 

「このまま言い合っても水と油だろう。ISで決闘して決めたらどうだ」

 

それまで呆然としていた一夏は、こちらを見るクラウスにハッとして答える。

 

「あ、ああ、俺は構わない。四の五の言うよりわかりやすい」

 

一夏の言葉を聞いてやっと我に帰ったセシリアも続いた。

 

「わ、私もそれで構いませんわ」

 

「…話がまとまったようだな。それでは、勝負は1週間後の月曜。放課後、第3アリーナで行う。織斑、オルコットは準備をしておくように。それでは、授業を始めるぞ」

 

千冬の声で皆が我に帰り、授業へと集中し始める。その中で、一夏とセシリアはクラウスのあの冷ややかな声に恐怖心から寒気がしていた。

 

 

 

 

 




自分は趣味でギターを弾くのですが、これがなかなか上手くならないもので、理想のギタリストは夢のまた夢です。
ちなみに、理想とは「2、3回聴けば完全再現できるギタリスト」です。プロでもきっといません。神様です。

次回は箒が一夏を素手で殴るシーンと、竹刀で殴るシーンと、木刀で殴るシーンがあります。痛い。
考えてみたら一夏はめちゃくちゃ優しくて懲りない人ですね。いくら殴られても許すし、でも繰り返すし。殴られるのは嫌ですが、一夏のようにモテる男になってみたいです。

では、次回もよろしくお付き合いください。
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