インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~ 作:れみんとぅ
ギターを買おうと思って宝くじを買いました。結果600円当たりました。やったね昼飯代だ!(泣)
一殴られるシーンじゃなくて、声だけでした。本当は一夏サイドも書こうと思ってたんです。本当です。
そして、今回は6000ちょいで書けました!いい感じ!
では、第2話 短期強化プログラム、始動 お楽しみください
その日の放課後。一夏は机の上で項垂れていた。クラウスは本を読みつつ帰る支度をしている。
「い、意味がわからん…なんでこんなにややこしいんだ…」
「…お前が参考書を読まずに捨てたからだろう。ほら電話帳、織斑先生の所へ取りに行くぞ」
「頼むからいい加減その呼び方をやめてくれ…」
クラウスはあの話以降一夏のことを『電話帳』と呼んでいた。真顔でからかっているのである。
「電話帳、早く行かないとまた出席簿を食らうぞ」
「だからやめろって…ああもうわかってるよ…」
疲れ切った表情で立ち上がる一夏。
ちなみに、未だ他クラス、他学年の女子生徒達が押しかけ、小声で話し合っている状態である。
2人が教室の外へ向かうと、そこにいた者達はザッとモーゼの海渡りのように道を開け、そのまま塊でついて行く。
「…ってあれ?なんでクラウスも職員室に?」
「織斑先生が話があるそうだ。何の話かは知らんがな」
「ふぅん…失礼します。織斑です」
一夏が先に入り、クラウスが後に続く。
中には千冬がいるだけで、他の教師達は皆出払っているようだった。
「ようやく来たか織斑。ほら、さっさと持って帰れ」
そう言って彼女が一夏へ分厚い参考書を投げ渡す。慌てて彼が受け止める。
「ありがとうございます。それじゃ俺はこれで。クラウス、食堂でな」
「ああ。また後でな」
手短に挨拶を交わし、一夏は職員室を出て行った。
残された2人。暫くして千冬が口を開く。
「アマーリア。お前の母の名はなんという?」
「…シンディ。シンディ・アマーリアです」
「…やはりか…」
千冬がやや懐かしむような表情を見せた。
言葉は続く。
「彼女は、私が優勝した時のモンド・グロッソ決勝で戦った相手だ。勝ちはしたが、かなりギリギリの勝負だった」
「…そうでしたか。確かに、母はドイツの代表操縦者としてモンド・グロッソに出場しました。そして、準優勝でした」
「こんな所でその息子と会うことになるとはな。どうだ?彼女は元気にしているのか?」
千冬の表情は、今日の彼女からは想像できない程優しい笑顔だった。だが、クラウスは彼女の質問に逆に表情を曇らせる。
「…母は、死にました」
「なっ…」
驚愕に染まる千冬。彼は続ける。
「つい最近、死にました。…俺を庇って」
「…そうか。嫌なことを思い出させてすまなかった」
「いえ、
そう言うと、クラウスは踵を返して続けた。
「では、俺もこの辺で。食堂で一夏が待っていますから」
「ああ、わかった」
「失礼しました」
彼が退出し、1人だけになった職員室。
千冬は椅子に背中を預け、長い溜め息をついた。
「…そうだったのか…。あの人が…。そして、その息子がこの学園に来るとは…」
独り言を呟き、目を閉じる。
千冬は真耶が職員室に戻り、彼女の椅子の足を蹴って転ぶまでそのままだった。
クラウスが食堂に行くと、『女子溜まり』の先で四人掛けのテーブル席に、一夏と、彼に箒と呼ばれていた人物が向かい合って座っていた。
クラウスはモーゼとなってそこまで行くと、2人へ声をかける。
「一夏、待たせたな。それと…箒さん、か」
すると、いきなり名前で呼ばれたからか、彼女は警戒したような視線をクラウスへ向ける。
苦笑しながら彼は釈明した。
「ああ、すまない。今日一夏に話しかけた時は一夏が『箒』としか呼ばなかったから、苗字がわからないんだ」
「…そうか。おい一夏、あの後何も言っていなかったのか」
「え?あ、そういえば…悪い」
「まったく…。私は
「篠ノ之さんだな。こちらこそ」
「自己紹介も終わったみたいだし、クラウスも早く晩飯頼んでこいよ。一緒に食おうぜ」
彼の言葉を聞いて、キッと睨む箒。縮こまる一夏。
それを見てクラウスは箒にだけ聞こえるように話しかけた。
(…邪魔なら周りの女子もろとも消えるが)
(!!…い、いや、私は別に構わないぞ?)
一瞬顔が輝いたよな、とは言わなかった。
3人になって食事をしていると、再び声をかけてくる人物が現れた。リボンの色が3人とは異なる。つまりは上級生だ。
「あ、君達が噂の織斑君とアマーリア君?」
「え?あ、はい、そうですけど…」
「…何か御用ですか?先輩」
呼ばれた2人が各々返事を返す。その女子生徒は、IS操縦を見てやると申し出た。
「どうかな?私は上級生だし、上手く教えてあげられると思うんだ」
話は普通に感じられるが、残念なことに噂の男子に近付きたいという魂胆が全身から迸っていた。
一夏が返事をしようとしたのを手で制し、クラウスが口を開く。
「有難い申し出ありがとうございます。ですが、俺にISの訓練は必要ありません。一夏についても、俺とこちらの
篠ノ之、の名前に上級生の笑顔が少し引きつる。しかしまだ食い下がってきた。
「…必要ないっていうのは、どういうこと?入学したての1年生よりは上手いと思うけど」
「俺は、
「…そう、なら大丈夫だね」
クラウスの言葉に、彼女は口惜しそうに去っていった。
一夏は言葉の意味がわからないようで、頭の上に疑問符を浮かべている。そして箒と女子溜まりの皆さんは、目を見開いて驚いていた。
「…なぁクラウス、専用機持ちってなんだ?」
「世界にISのコアは467個しかない。その限られた数の中で、国に認められた者にだけその人専用のISが渡される。それが専用機であり、その所有者を『専用機持ち』と呼ぶんだ」
「へぇー、って事はクラウスはすげーんだな!」
「俺の場合はデータが取りたいから渡されたって感じだがな」
本当にわかっているのか怪しい一夏がクラウスを褒め、彼もそれに応える。
その後は、なんでもない雑談を3人でしながら夕食をとった。
「さて、そろそろ帰るか」
3人とも夕食を摂り終え、いざ帰宅となったその時。
息を切らせて真耶が彼らのもとへ駆け込んできた。
「織斑くん!アマーリア君!やっと見つけました…ゲホッ…ハァ…ハァ…」
「山田先生?どうしたんですかそんなに急いで」
「2人の…部屋が…ゲホッ…決まったので…知らせに…ハァ…ゲホッ」
「と、とりあえず水飲んで落ち着いてください」
「あ、ありがとう…ございます…」
一夏の差し出した水を一気に飲み干す真耶。それで少し落ち着いたのか、もう一度話し始めた。
「部屋が決まったので、鍵を渡そうと教室に行ったんですけど、2人とももう居なくて、今まで探し回ってたんです」
「そうだったんですか…なんかすいません…」
「いえ、見つかってよかったです。はい、これが2人の部屋の鍵ですよ」
真耶の差し出した鍵を受け取り、番号を確認する。
一夏は1025号室、クラウスは1026号室と書かれていた。
「…って別の部屋!?」
「…うるさいぞ電話帳」
「おまっ、やめろって!!」
クラウスと一夏のやり取りを見ながら、少し申し訳なさそうに真耶が続けた。
「強引に決めたので、女の子と相部屋になってしまいますけど、しばらくすれば別の部屋が用意されるはずなので、それまでお願いします」
「それなら…まあ、わかりました」
「同室の人に連絡は行っているんですか?」
クラウスの質問に、なぜか「うっ」と変な声を出す真耶。そして申し訳なさそうに口を開いた。
「…それが、まだなんです…ごめんなさい!」
「いや、謝る必要はありませんよ。そうなると、部屋に入る時間とタイミングは考えた方がいいぞ、一夏」
「え?そうなのか?」
「万が一シャワーから出た時に鉢合わせたら3年間変態扱いだぞ」
「…それは今以上にキツイ…」
「そういうことだ」
一夏はノック無しで部屋に突入しそうだと感じたので、一応脅しておく。
そして、腕時計で時間を確認すると、クラウスは出口へと足を向けた。
「山田先生、わざわざありがとうございました。それではこれで失礼します」
「あ、はい。まっすぐ帰るんですよ?道草食っちゃダメですからね?」
「ははは、食える道草がありませんよ」
そう言って自己紹介の時のように笑顔になる。それは自然な分、あの時の何倍もの破壊力を持っていた。
それをまともに食らった真耶は顔を真っ赤にして彼を見返していた。
「ほら、一夏行くぞ」
「え?あ、おう。それじゃ、山田先生おやすみなさい」
「うぇっ!?あ、お、おやすみなさぃ…」
やけに驚いて変な声を出した真耶が少し心配になった一夏だったが、もう歩き出しているクラウスを慌てて追いかけていった。
「なあ、山田先生大丈夫かな?」
「そのうち我に帰るだろう。心配ない」
「だといいけど…」
2人は程なくして寮に到着し、自分達の部屋を探し始める。
現在の時刻はまだ7時頃である。
「…お、あったあった。へぇ〜、結構いい感じじゃん」
「…あの場所とは全然違うな…」
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんでもない。一夏、ちゃんとその参考書読むんだぞ」
「わかってるよ。それじゃあな」
そう言って、部屋へと入っていく一夏。
「おい、ノックくらい…」
言う前にドアは閉じていた。クラウスはため息を漏らす。
一夏については同室の女子が優しい人である事を祈ることにして、彼も自分の部屋のドアと向き合った。
3度ノックし、少し待つ。
「はーい。開いてるから入っていいよー」
中からの返事を確認すると、彼はドアを開けて中へと入る。
ガタタッ、と音がした。
クラウスの視線の先には、驚いていて、逃げ出したそうにしていて、しかし喜んでいる女子生徒。
彼女のすぐ側には倒れた椅子。手には『これであなたもアメリカ人!愉快なアメリカンジョーク集』と書かれた本。
「「………」」
2人は数秒見つめ合った。
先に口を開いたのはクラウス。
「…確か、鷹月さん、だよな」
「…う、うん…
「急で驚いただろうが、俺がこの部屋で君と同室になったんだ。しばらくしたらまた引っ越す事になるが、それまでよろしく頼む」
「うん…よろしく…お願いします…」
「ああ」
歯切れの悪い静寐をどうしたものかと思いながらも、クラウスは荷解きを進めていった。
粗方片付いた時、彼は静寐の本を見て口を開く。
「そういえば、その本、面白いよな」
「え!?」
やたら驚く彼女。クラウスは苦笑しつつ続けた。
「俺も少し前に読んだんだ。特にブロンド女のやつは傑作だった」
「そ、そうなの!!私こういうの読むと気分がスーッとするんだ!!」
「そ、そうなのか」
突然目を輝かせて詰め寄る静寐。
彼は気圧されつつも、元気になってよかったと思うのだった。
ー…イチカキサマァァァァドゴォッ…ウグゥ…ー
隣の部屋から怒声と殴打音と呻き声が聞こえてきた。
どうやら、一夏の同室の女子は武闘派で、優しくない人のようだった。
ー…ハジヲシレイチカァァァァバシィィィン…グハァ…ー
「………」
ー…テンチュウゥゥゥゥドスゥッ…カハッ…ドサッ…ー
「…やり過ぎだろう」
次の日。
午前3回、午後4回、計7回千冬の出席簿スマッシュを食らった一夏。まだ頭の痛みが残る放課後。
人気のないアリーナで3人、一夏が打鉄、クラウスがラファール・リヴァイヴ、箒はIS無しで集まっていた。
「それにしても、こんなにあっさりと使用許可が出るなんてな」
「だが書く書類が多くて大変だった。2人も連れて行けばよかったな」
「だから私も手伝うと言ったのだ」
訓練用のISを借りるには、書類を提出する必要があることは知っていたが、予想を遥かに超えた量だった。
許可だけなら人数はいらない、と1人で職員室に行ったクラウスは大変な思いをしたのだ。
「とにかく、借りられたんだしよかったじゃんか」
「そうだな。始めるぞ」
「おう!あ、箒。危ないから下がってろよ」
「い、言われなくともわかっている!」
何故か顔を赤くして睨む箒に驚いた一夏だが、すぐに真剣な顔でクラウスと向き合った。
「一夏。まず『ISを動かす』事に慣れる事から始めるぞ。動き回ってみろ」
「おう」
返事をすると、一夏がアリーナ内を動き回り始めた。クラウスはそれを見て感心する。
「まだ2度目なのにそこまで動けるのか…よし、次に移るか。一夏!」
「ん?なんだ?」
クラウスは不敵に笑みを浮かべ言った。
「今からお前を撃つ。避けてみろ」
「はぁ!?」
一夏が驚いて動きを止める。クラウスは構わず展開したアサルトライフルのトリガーを引いた。
タタタタタタッ
乾いた音が連続して聞こえ、鉄の塊が一夏へと迫る。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
叫びながら弾幕から右へ左へ逃げ回る。
カキンッ
弾幕が止む。弾切れだ。
クラウスは空のマガジンを外すと左手で腰から次のマガジンを飛ばす。同時に自分も回転。
回転中にマガジンをはめ、1回転した時には正確に一夏へ照準を合わせていた。
再び乾いた音が響く。
「んげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
変な叫び声をあげて再び一夏が逃げ回る。
その繰り返しが10分程続いた時、最後のマガジンが底をついた。
クラウスが銃を降ろす。視線の先には地面と抱き合う一夏。
「篠ノ之さん、いくつだった」
「20だ」
一夏の被弾数である。それを聞いて満足そうにクラウスは彼へと声をかけた。
「1000発近く撃って被弾数20とは、大したもんだ」
「………」
一夏の返事はない。微動だにせず地面とキスをしている。
クラウスは彼のところへ近付くと、顔が汗でびっしょりだった。恐らく、冷や汗も混ざっている。
「…大丈夫か?」
「…ぉぅ…」
弱々しい声が返ってきた。クラウスは呆れて笑いながら彼へと手を伸ばす。
「お前はISに乗る以前に体力作りからだな。篠ノ之さんから剣道の手解きを受けるといい」
「…おう、そうする…」
「任せておけ。どれくらいのものか見てやる」
クラウスの手を取り、起き上がった一夏は苦笑した。
グゥゥゥゥ…
すると彼の腹が鳴った。ぷっとクラウスと箒が吹き出す。
一夏は顔を赤くして腹を押さえる。
「悪いがこれから1時間は耐えてもらうぞ」
「…マジか…」
悲壮な顔をする一夏。そんな彼を見て2人は再び吹き出した。
「さて、一夏。今からお前にひとつテクニックを教える」
「テクニック?」
「簡単な事さ。ただの『フェイント』だ」
そう言ってクラウスが笑う。一夏はどういう事だかわからず首を傾げた。
「まずは俺がやって見せる。それを真似ればいい」
「??わかった」
リヴァイヴと打鉄が、互いにナイフとブレードを構えて向き合う。
「行くぞ」
「ああ!来い!」
リヴァイヴに乗るクラウスが一夏へと突進し、ナイフを後ろへ引き付ける。一夏は打鉄のブレードで受ける構え。
クラウスが刺突を繰り出した。一夏は横から弾きにかかる。
だが、
クラウスは体を沈め下からナイフを振り上げる。
意表を突かれた一夏が無理矢理ブレードを合わせる。
ギイィィィン!!
不快な金属音が響き、打鉄のブレードが空高く舞った。
「…!!」
「どうだ?簡単だが、効果的だろう?」
一夏の首へナイフを突きつけ、クラウスは不敵に笑う。
「…簡単には見えないんだけど…」
「大丈夫だ。3日もあればできるようになるさ」
「本当かよ…」
こうして、決闘に向けた一夏の短期強化プログラムが始動したのだった。
Let It Goっていい曲ですね!原曲一度も聴いたことないけど!
しばらくタイトルは、前に「一夏の」が入るような感じで付けています。
本当は最初の2つは第1話に入れたかったんですが、訳あって今回に…もう少し考えて書かないとな…
では、次回もよろしくお付き合いください。