インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~ 作:れみんとぅ
今度の土日に泊まりがけでスキー場に行く予定です。楽しみですが、いい温泉があるところに泊まりたいと思っています。
今回は初の重要なバトルシーンを描く回だったので、うんうん唸りながら書いていました。その割に間を空けず投稿したのは、俺が不真面目で授業中も別の事を考えているからに他なりません。故に成績も猛烈に悪いです(笑)
では、第3話 クラス代表決定戦 お楽しみください
「…なあ、まだ届かないのか?」
「俺に聞かれても困るな」
月曜日。決闘の当日である。
だが、用意されると聞かされていた一夏の専用ISがまだ届いていないのだ。
不安げな表情の一夏に、クラウスは笑った。
「安心しろ。もし専用機が届かなくても、訓練機で充分戦えるはずだ。そのための特訓だったんだからな」
「そうは言うけど、やっぱり性能がいい方がいいじゃないか」
「それはそうだがな」
対戦相手、イギリスの代表候補生であるセシリアが、どれ程の実力なのかはわからない。
それでも、配られたカードで勝負するしかないのが現実。無い物ねだりなど許されないのだ。
「あー、打鉄でやるしかないのか」
「そうなるな。まあ、あがいてこい」
その時。
プシュッとピットの扉が開き、真耶がつんのめりながら駆け寄ってきた。
「お、織斑君!織斑君織斑君織斑君!!」
「そ、そんなに叫ばなくても聞こえてますって!落ち着いてください山田先生!」
「は、はい…すぅ〜〜〜…はぁ〜〜〜…」
「それで、どうしたんですか?そんなに急いで」
「あ!!そうでした!!」
「この数秒で用事を忘れかけたんですか…」
一夏が呆れた声を漏らす。真耶は構わず身を乗り出して言った。
「届きましたよ!!織斑君の専用IS!!」
言うと同時にピットの搬入口が小気味いい機械音を響かせて開く。暗闇からひとつの塊が姿を現した。
「織斑君の専用機、『
「これが、俺の専用機…。白式…か」
一夏の視線の先には、真っ白なISが鎮座する。美しい曲線を描く各部の装甲。目立つのは背中部分に装備された、大型のウイングスラスター。
何も言わず見入っている一夏へ、千冬が近付いて指示を出した。
「時間がない。さっさと装着しろ。
「はい!」
返事をすると、一夏はするすると白式を装着していく。
そこへ、箒が不安げに話しかけた。
「一夏…」
「大丈夫だ、箒。信じて待ってろ」
「!!…ああ、勝ってこい」
一夏が微笑んで彼女の言葉に頷くと、今度はクラウスの方を見た。
2人の間に言葉はない。
ただ一夏が右拳をクラウスへ向け、彼もそれを返す。
『白式、発進してください!』
真耶のアナウンスが響く。一夏は短く息を吐くと、覚悟を決めて叫んだ。
「白式、行きます!!」
ゴァァァァ!!
同時に、ピットのカタパルトが一夏と白式をアリーナへ弾き出す。
純白に彩られたISが、青空へと舞い上がった。
アリーナ上空。そこにひとつの影があった。
青い機体を身に纏うセシリアは、ピットからこちらへ飛ぶ一夏と白式を見据え、嘲るように笑った。
「逃げずに来たこと、褒めて差し上げますわ」
一夏は彼女の正面に来ると、視線を真っ直ぐに受け止める。
「そりゃどうも」
「最後のチャンスをあげましてよ。今ここで謝るというのなら、小間使い程度で済ませてあげますが?」
ビィィィィッ!!
試合開始のブザーが少しの間を作り出す。
一瞬苦笑した後、一夏はセシリアを睨みつけ言い返した。
「そういうのはチャンスとは言わねえよ。さっさと来い」
「そう…残念ですわ。それでは」
残念がっているとはいえない嘲笑を顔に浮かべたまま、セシリアはスナイパーライフル『スターライトMkIII』を構えた。
「踊りなさい!私とこの『ブルー・ティアーズ』が奏でる
引き金を引く。ビームが一夏へ迫る。
一夏の視界がスローモーションになる。
額を正確に狙うそれを、一夏は首を傾けて避ける。
同時に急旋回。距離を取る。
アラーム。左に回避。ビームが耳を掠める。
今度は背中。身体を捻り紙一重で躱す。
右。左。上。下。アリーナ内を飛び回り、回避する。
攻撃は止まない。隙を見つけられず逃げ回る時間が続いた。
「ブルー・ティアーズ!!」
遠くからの声。再びアラーム。四方から4つ。
同時にビームが迫る。バレルロールで回避。
直後に被弾。一夏は体勢を崩し落下。
地面スレスレで立て直す。
「くそっ、何か武器は…!!」
回避を続けながらウィンドウを開くと、そこには『雪片弐型』の文字。
「無いよりはマシか!!」
叫び、雪片を展開。ビームの雨を避けきると、一夏は後ろへ振り返った。
純白の剣を構え、睨む。
「私とブルー・ティアーズの攻撃にここまで耐えたのは、あなたが初めてですわ」
余裕たっぷりという感じのセシリア。一夏は何も言わず、構えたままだ。
「ですがこれで終わりです。墜ちなさい!私とブルー・ティアーズが奏でる
セシリアの言葉と同時に、ビットが4基、セシリアの機体から離れ四方へと散る。
一夏は、特訓の時のクラウスとのやり取りを思い出していた。
『イギリスが研究していたのは、確かBT兵器だったな。遠隔操作でビットを操ることでのオールレンジ攻撃が特徴だ』
『…よくわからん』
『どこからでもビームが飛んでくる』
『…勝てる気がしないんだけど』
『そうでもない。その兵器の特性上、相手の機体は確実に射撃型。懐に入ればこちらが有利だ』
『その前に、懐に入れないだろ。オールレンジ攻撃なんて』
一夏の言葉に、クラウスは不敵に笑って否定した。
『どこからでも撃てる、という事は、確実にお前の反応が遅いところから狙ってくる。それを利用すれば、
『そう上手く行くか?』
『まあやってみろ。ビットを全基墜とせば、あとはあの高飛車女を殴るだけだ』
ビットの動きに合わせ、一夏も動き始める。
右後ろからビーム。後ろへ避ける。
続いて左。今度は前へ躱す。
セシリアの射撃。体を捻る。脇腹をビームが掠めた。
再びビットが右後ろへ回る。
同時に一夏が動いた。
「ここだ!!」
振り向きざまに一閃。
ギィン!!と金属音を響かせてビットが両断される。
左前に1基。最大出力で接近。雪片を縦に振り抜き、切り裂く。再び金属音の後、爆発。
左後ろに1基。右脚で蹴り飛ばし、奥を通過するもう1基へと衝突させ諸共破壊。
4基全てのビットを破り、一夏はもう一度セシリアを睨みつけた。
彼女は信じられないといった表情で固まっている。
「そんな…私のブルー・ティアーズが…」
「お前、操作してる時は自分は攻撃できないんだろ。お陰でビットの破壊に集中できた」
「くっ…!!」
悔しそうにしながらも、セシリアは切り替えて素早くライフルを放つ。
一夏はニヤリと微笑み、避けながら隙を伺い始めた。
「ビット無しのライフルなんて、全然怖くないぜ」
じりじりと気付かれぬよう距離を詰める一夏。
あと数メートル近付けば懐に飛び込み勝負を決められる。
彼は無意識に左手を握っては開くを繰り返していた。
「…あの馬鹿、浮かれているな」
「えっ?どうしてわかるんですか?」
「さっきから左手を閉じたり開いたりしている。あれはあいつの昔からのクセだ。あれが出ているときは大抵、簡単なミスをしでかす」
ピットの中。リアルタイムのモニターを見る真耶と千冬。
IS起動が2度目とは思えぬ健闘ぶりに感嘆する真耶。対照的に千冬は忌々しげな顔をする。
「へぇ〜…さすがご姉弟ですね〜。そんなに細かい事までわかるなんて」
なんとなくそう言う真耶に、千冬はハッと少しだけ顔を紅潮させる。
「…まあ、なんだ、あれでも一応私の弟だからな…」
「あれ〜?照れてるんですか〜?照れてるんですね〜?」
「………」
ニコニコとからかおうとする真耶。千冬は顔をいつもの狼のような表情に戻すと、冷ややかに言った。
「山田先生、あいつらが終わったら今度は私達で模擬戦をしましょうか」
「うっ…それはちょっと…」
ビクッと身を竦ませる真耶を睨みながら続けた。
「私はからかわれるのが嫌いなんだ」
「す、すいません…」
2人はモニターに視線を戻す。映像はちょうど、一夏が勝負を仕掛けようと加速したところを映し出していた。
右肩への射撃。半身で回避。
左足。その場で回り躱す。
「…今だ!!」
直線軌道にシフト。スラスターを全開にしてセシリアに向け突っ込んでいく。
ライフルのビーム。最小限の動きで躱し、雪片を大きく振りかぶった。その時。
一夏ははっきりと捉える。
「かかりましたわね!!」
彼女のISから更に2基のビットが一夏へ砲口を向ける。
「ぐっ…!!」
慌てて彼は減速し、避けようと距離を取る。
しかし、発射された弾丸はビームではなかった。
一夏の後を正確に火を噴く弾丸が迫る。
残った2基のブルー・ティアーズは、ミサイルを装填していたのだ。
数秒後、一夏と白式は爆煙に包まれた。
アリーナ中が息を呑む。
だが、クラウスと千冬だけは表情を変えず、モニターを見つめていた。
「やれやれ」
やがてクラウスがモニターを見て、笑う。
「機体に救われたな、馬鹿者」
千冬も同様に呆れて笑った。
視線の先で、画面を包む爆煙が晴れる。
そこには、ゆっくりと顔を上げる一夏と、
彼はセシリアを見据え、再び不敵に微笑む。
顔を驚愕に染め、彼女は思わず叫んでいた。
「あ…あなた、まさか今まで初期設定で戦っていたというのですか!?ありえませんわ!!」
「よくわからないけどな。でも、これでやっとこいつは俺専用になったってわけだ」
ギリリッ、とセシリアが歯をくいしばる。
一夏の頭を狙い、スターライトMkIIIを放つ。
だが、首を傾けるだけで避けられる。今度は一夏が、雪片を構えた。
すると刀身が開き、光の剣が現れる。
「もう、守られてばかりじゃダメなんだ。今度は…俺が大切な人を守ってみせる!!」
「!?あなた何を言って…」
一夏の瞳に強い意志の光が宿る。彼はセシリアへ真っ直ぐに向かってきた。
セシリアもビームを放つ。だが簡単に躱される。
彼が雪片を振りかぶる。セシリアはミサイルを装填したブルー・ティアーズで狙った。
だが、
「!?」
直後、
「なっ!!」
短い叫び声を上げ、一夏の機影を捉えようと周囲に意識を向ける。
すぐに、真後ろから高速で迫る影を捉えた。
「もう一丁おぉぉぉぉぉ!!!!!」
「くっ…!!」
超至近距離で雪片を振り下ろす一夏。
防御は間に合わない。確実に入る間合い。
スウゥゥゥゥン………
だが、光の刃が届くことはなかった。
「え?あれ?」
雪片は、セシリアに届く寸前で元の無骨な鉄塊に戻っていた。一夏の視界の右下には、『エネルギー残量0』の文字。
ビィィィィッ!!
続いて試合終了のブザーが鳴り響く。
『勝者、セシリア・オルコット』
誰もが「何が起きた?」といった表情でぽかんとしている。
「そんなぁ…」
気の抜けた声を出しながら、一夏はクラウスや箒達が待つピットへと戻った。
狙い澄ましたように手元へスポーツドリンクが飛んで来る。キャッチしフタを開け、一気に呷ると、心地よい感覚が喉を満たしていく。
「惜しかったな、一夏」
タオルを持って側へ行きながら、クラウスが一夏へと声をかけた。
「悪い。負けちまった」
「何を言ってる。模擬戦2回目にしてはかなりいい戦いぶりだったさ。代表候補生を相手にあそこまで追い詰めたんだからな」
「そうだぞ一夏。取り敢えずは誇っていい。それに、その…格好良かったぞ…ゴニョゴニョ」
後半が全く聞き取れないが、箒も一夏を褒め称える。
落ち込んだ顔をしていた彼も、2人の言葉に笑顔を取り戻した。
「けど、なんでいきなりエネルギーが無くなったんだ?」
「ああ、それは」
「『バリア無効化攻撃』を考え無しに使うからだ。大馬鹿者」
一夏の疑問に答えようとしたクラウスの後を引き継ぎ、歩きながら千冬が答えた。
「バリア無効化攻撃?」
今度はクラウスが彼の疑問に答える。
「相手のエネルギーバリアに関係なく、それを切り裂いて敵本体にダメージを与えられる攻撃の事だ。…確か、織斑先生がモンド・グロッソで優勝した時の武器『雪片』も…」
「ああ、同じ能力だ。優勝出来たのも、その力が大きい」
だが、一夏はまだ納得がいかない様子で続けて尋ねる。
「でも、それといきなり白式のエネルギー残量が無くなって負けたのとは何も関係が」
「何を言うか馬鹿」
「…ヒドイ」
「そんな能力が何の代償もなしに使えると思うのか?少しは頭を使え」
「すいません…」
2人のやり取りに苦笑を漏らしながら、クラウスは説明を始めた。
「バリア無効化攻撃を当てれば、相手のISの絶対防御が発動して、シールドエネルギーを大幅に削ることができる。だがその能力を発動させるためには、自身のエネルギーを攻撃に転化する必要があるんだ」
「…まさに諸刃の剣、か」
「そうなるな。捨て身の攻撃だから、百発百中の精度が必要になる」
「…うへぇ」
「まあ、それはこれから身に付けて行けばいいさ。俺だって出来る限り協力はする」
「おう。さんきゅ」
笑い合う2人。それをどこか嬉しそうに、それでいて寂しそうに、千冬は見つめていた。
「それにしても腹減ったな。クラウス、箒、飯食いに行こうぜ」
「ああ、そうするか」
「私も構わん」
各々返事をすると、ピットを後にする。去り際、一夏は千冬へと向き直った。
「千冬姉」
「何度言わせる。織斑先生だと」
「俺さ。今は弱っちいけど、いつか…できるだけ早く、強くなるから。今まで守ってもらった分、今度は俺が千冬姉を守れるように」
そう言い残して去っていった弟に、千冬は長いため息をついた。横から真耶がニコニコと話しかける。
「織斑先生、嬉しそうです」
「そんな事はない。気のせいだ」
言いながら千冬も歩き出す。
彼女の顔は、少しだけ紅潮し、照れ臭そうだった。
学生寮の一室に、微かにシャワーの音がきこえてくる。浴室の中には、長い金色の髪を濡らし俯く少女がいた。
(今日の対戦…勝ったのは私でしたのに…どうして…)
少女…セシリア・オルコットは、胸になにか言いようのない感覚を覚えていた。
(どうして、こんなに胸が苦しいんですの…?)
一夏が「大切な人を守る」と言った時の目には、強い意志が感じられた。
他者に媚びることのない、真っ直ぐな眼差し。
それは、何故かセシリアの父親を思い出させた。
(父は、他人の顔色ばかり伺う人だった…)
対照的に、母はとても強い人間だった。厳しく、しかし優しく。彼女はセシリアにとって憧れの存在だった。
そんな両親は、3年前に列車の脱線事故で2人とも帰らぬ人となった。
まだ12歳だったセシリアの手元には莫大な遺産が残り、彼女はそれを守るためにありとあらゆる知識を身につけた。その一環で受けたIS適性テストで、A判定が出たために、今こうしてこの学校にいる。
そして出会った。理想の、強い瞳を持った人と。
「…織斑、一夏…」
彼の名を口にすると、不思議と胸が熱くなる。胸が高鳴る。なんとも言えない高揚感に包まれる。
意識しすると、途端に胸がいっぱいになり、苦しく、切なく、しかし、どうしようもなく嬉しい。
(もっと、知りたい…彼のことを…)
浴室には、シャワーの音だけが響いていた。
何故か多機能フォームで「自動一字下げ」のボタンを押してもある時点から下がってくれないんですが、これは何が原因なんでしょうか…気になるんですが聞くのも面倒くさいので忘れます。
次回は遂に主人公クラウスの専用機が一夏達へお披露目される回!に、したいです。書ける…と思います…たぶん。
書いているとどんどん言葉が浮かんでくるので、それを全部書き込むと凄いことになってしまい後から削りまくる羽目になります。いつもです。
では、次回もよろしくお付き合いください。