インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~ 作:れみんとぅ
かなり更新が遅くなってしまいました。餅食ったり野球やったりパワプロやったりインフルかかったりしていました。
今回、模擬戦後日談と初の実践訓練の模様を書いてあります。鈴の初登場?すっかり忘れとったわ…。次は書きます。きっと。
では、第4話 昨日の敵はなんとやら お楽しみください。
模擬戦の次の日、クラウス達1組は食堂へ集まっていた。
壁には空中ディスプレイで『織斑一夏 クラス代表就任パーティー』と表示されている。
「…なあクラウス」
「なんだ」
「なんで勝ったのはオル「それじゃー!織斑君のクラス代表就任にー!かんぱーい!」
「「「「かんぱーい!!!!」」」」
「…こんな事になってるんだ…?」
涙声混じりで一夏はクラウスへと尋ねていた。
しかし、当のクラウスは澄まし顔でコーヒー片手に本を読んでいる。タイトルは『レ・ミゼラブル』。
「俺に聞かれても困るな」
「えぇ〜…」
更に一夏が悲壮な顔になる。そこへ、本来クラス代表となるはずだった人物が姿を現した。
「私が辞退したのですわ」
それを見て一夏は悲壮な顔に面倒そうな顔をブレンドして彼女の方を見た。
「…オルコット…さん…」
「冷静に考えてみれば、模擬戦に私が勝つのは自明の理。それでは不公平ですわ。それに、下品に相手を罵った事を私自身も反省しまして…。クラス代表の役を譲る事に致しました」
「おぅふ…一夜明けてすっかり真ん丸になってる…」
昨日とは見違えるほど人相が変わっているセシリアに、一夏は動揺を隠せない。
「そ、そうか…。俺も君の国を馬鹿にするようなこと言っちまったから、お互い様だよ。ごめんな」
「い、いえ、私は気にしておりませんので…」
会話が続かない。
一夏は苦手意識が消えておらず、セシリアは顔を赤らめ、はにかみながら彼を見つめている。
クラウスはそんなセシリアを見て、苦笑いを堪えていた。
(…天然、女たらし…)
微妙な空気が流れる中、1組の人溜まりをかき分けてカメラを持った生徒がこちらへと歩いてきた。
「はーい。ちょっとごめんねー。私新聞部の黛薫子。織斑君、オルコットさん、あとアマーリア君も、写真撮らせて貰っていい?」
薫子と名乗ったその生徒は、言いながら既にシャッターを切っていた。
「話題の専用機持ちだからねー。せっかくだし並んで写ってよ」
「私は構いませんわ」
「いいですよ」
「俺も構いません」
3人は返事をすると、立ち上がり1列に並ぶ。だが、そのうち一夏だけはやけに緊張しているようだった。
「織斑くん!もっと力抜いてー!顔が固いよ!」
「そ、そんなこと言われても…」
「つべこべ言わない!ほら!ちゃんとポーズとって!」
「え、えぇ〜…」
一夏は助けを求めて右のクラウスを見る。
「俺を見られても困るが」
「デ、デスヨネー」
ここで薫子の大声が入った。
「は、や、く!!!」
「は、はい!」
ぎこちなくポーズを取る一夏。
彼の右にクラウス、左にはセシリアがおり、2人はスッとポーズをとり既にカメラを見ていた。
「はい、チーズ!」
カシャッ
フラッシュが焚かれる直前。1組の生徒全員が3人の周りに集まり、集合写真のようになっていた。
「な、なんで全員入っていますの!?」
これまで黙っていたセシリアが、その行動に憤慨し抗議する。
「いやー、さすがにねー」
「セシリアさんだけ抜け駆けはないでしょー」
「そうだそうだー」
「むうぅ〜…」
だが、多勢に無勢のようだった。
「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」
4月下旬、桜ももう散った頃。
鬼教官こと織斑千冬の声が、IS学園のグラウンドに聞こえている。
「織斑、アマーリア、オルコット。試しに飛んで見せろ」
その声に、3人は頷いた。
ISは一度フィッティングを終えると、アクセサリーとなって待機している。これを『待機状態』という。
セシリアは左耳のイヤーカフス。一夏はなぜか防具である右腕のガントレット。
そして、クラウスは…
「…ってあれ?クラウスのISは?」
一夏は彼の体を見回してみたが、ISと思しきアクセサリーが見当たらない。
「俺か?俺は…」
そう言って、クラウスは首元からチェーンが通った指輪を取り出した。
「本当はただの指輪だったんだが、チェーンを通してネックレスにしたんだ」
「へぇ〜、かっこいいな、それ」
などと話していると、千冬の鋭い声が響く。
「早くしろ織斑!」
「は、はい!」
視線を戻すと、一夏以外の2人は既にISを展開しようと意識を集中していた。
セシリアは目を閉じ、顔を少し上に向けた。すると彼女の体を光が包み、次の瞬間には青い機体が彼女を覆っていた。
「おぉ〜…早いもんだ」
一夏が感心して声を漏らす。その横で、今度はクラウスが自機を展開する。
目を閉じ俯いて、首に下げたネックレスを握る。その瞬間、手の隙間から光が迸る。
彼が目を開けた時には、体にISを纏っていた。
一見すると日本の第2世代型『打鉄』に見えるが、彼の機体を彩るのは底無しの『黒』。
本来赤色の帯のような部分が、鈍く光を反射する銅色になっている。
そして何よりも目立つのは、背中に搭載された大型の可変ウイングスラスター。
大きく広げられた合計10枚のウイングの隙間から、血のようなどす黒い赤の粒子が噴出していた。
「「「………」」」
その場にいた全員、あの千冬ですら、彼の機体に目を奪われ、言葉を失った。
『彼は、この機体は、普通ではない』…そんな思いが、根拠もなく頭に登ってくる。
最初に疑念を振り払ったのは、当然と言うべきか千冬だった。
「…織斑。お前もさっさと展開しろ」
「えっ?あ、はい」
ハッと我に帰り、一夏は白式を呼び出すため右手のガントレットを左手で握り、頭上へと掲げた。
「…来い、白式!」
パァッと彼の体を光が包み、次の瞬間には、純白のISが体を包んだ。
「よし、飛べ」
その言葉に、まずセシリアが飛び立つ。ふわりと機体が浮くと、次の瞬間には急加速。轟音を響かせ彼女はすぐに見えなくなった。
次は一夏が機体を浮かせる。だが、白式は安定せず、右へ左へふらつきながらやっとセシリアの側へと飛んでいく。
「どうした。白式の方がスペックでのの出力は上のはずだぞ」
通信回線で早速お叱りの言葉を千冬から浴びた。
「そんな事言われても…そもそも空を飛ぶ感覚自体まだあやふやなんだけど…」
通信の向こうで一夏の言い訳が聞こえる。
そして、最後にクラウスが飛び立った。危なげなく離陸し、そのまま急加速する。
音速を超えた衝撃による円錐状の雲を残して、1秒もかからず先を行く2人に追いついた。
「おっ、速いなお前のIS」
「ウイングスラスターを使えばこんなものだ」
2人に並んで飛んでいる今はウイングスラスターは閉じ、背中のバックパックと腰のアーマーに装着された純正スラスターのみが動いている。
「それにしても…『自分の前方に角錐を展開させるイメージ』って意味わかんねえよ…そんなイメージすぐにはできないだろ…」
飛ぶことにまだ違和感がある一夏は、今も若干ふらついてしまう。そこへ、セシリアがここぞとばかりにアドバイスした。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
あの試合から、セシリアは何かと一夏のコーチを買って出ている。有難い事ではあるが、クラウスのスパルタ訓練が2人になる事で更に厳しいものになるため、一夏は遠慮したかった。
「よろしければ、また放課後に指導してさしあげますわ。その時は、ふたりきりで…」
「3人とも、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10cmだ」
セシリアが続けようとしたが、途中で千冬の通信に遮られた。少しムッとした顔をした彼女だったが、すぐに表情を引き締めた。
「了解です。では、お先に」
すぐさま方向転換。ぐんぐん小さくなる姿を一夏は感心した様子で見つめていた。
「一夏」
そこへ、クラウスが横から声をかける。
「お前はこの環境をどう思う?」
「どうって…男子が俺とお前しかいなくてちょっと窮屈だとは思ってるけど…」
一夏の見当外れな答えに、思わずクラウスは吹き出した。
「はははっ、お前はあれだな、アホの子だな」
「なんだと!?アホの子ってなんだよ!」
「俺は
彼の憤慨を完全に無視し、クラウスは突然真剣な口調になる。一夏もそれを察し、黙って続きを待った。
「ISはファッションじゃない。15歳程の子供が扱っていいものじゃないはずだ。これは、
「クラウス…?」
「…オルコットが着いたらしい。一夏、先に行くぞ」
「あ、ああ」
クラウスは方向転換し、グラウンドへと急降下していった。あっという間に小さくなり、やがて着地する。無事にクリアしたようだ。
「じゃあ、俺も行くか」
一夏も地面へと急降下を始める。だが、途中でバランスを崩してしまった。
「え!う、うおぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドォォォォォン……!!
地面に大穴を開けて、一夏と白式はグラウンドへ墜落した。
大きな溜息をついて、千冬が頭をこめかみを押さえる。
「…誰がグラウンドに穴を開けろと言った」
「いってぇ…すいません」
後頭部を押さえながら答えていると、先にISを解除していたセシリアがクレーターへと飛び込んできた。
「一夏さん!?大丈夫ですの!?」
「え?ああ、俺は大丈夫だけど…」
「念のため保健室に行きましょう!お連れしますわ!」
やけにテンションが高いセシリアがまくし立てているところに、もう1人。
「絶対防御があるのだ、怪我するはずがないだろう」
箒は不機嫌そうな顔で一夏の元へと近付く。セシリアは馬鹿にしたように言い返す。
「あら、思いやりは大切ですわよ?」
「うるさいぞ、この猫被りめ」
「なっ、鬼の皮を被っているよりマシですわ!」
「な、なんだと!?」
バチバチと視線の火花を散らして2人が睨み合う。その間をわざわざ通って、火花を振り払いながらクラウスが一夏へ手を伸ばした。
「五十歩百歩」
「「えっ」」
伸ばした手を握り立ち上がる一夏。
その顔には苦笑が浮かび、恥ずかしそうに頭を掻いていた。
「大丈夫か、一夏?」
「ああ、さんきゅ」
「織斑、グラウンドはちゃんと埋めておくように」
当然そうなるなと、皆が思った。
ただ、一夏だけはうへぇ〜と顔をしかめていたが。
「安心しろ。俺も手伝うさ」
「本当か!?さんきゅー!!」
パァッと顔を輝かせる一夏。
クラウスには、彼の後ろでぶんぶんと振り回される尻尾が見えたような気がした。
「では、次に行くぞ。アマーリア、中近距離用の武装を展開しろ」
千冬の声に頷き、クラウスは両手を前へ伸ばす。次の瞬間、その手には二丁の拳銃が握られていた。その時間、約0.5秒。
「よし。次は遠距離射撃武装だ」
今度は腰だめに構える仕草をする。その時には既にロングバレルのビーム砲が展開されていた。同じく時間は0.5秒だった。
「いいだろう。織斑、武装を展開しろ」
ちなみに、クラウスの近接武装『天叢雲』は彼の腰部装甲に常に装着されている。白鞘の刀が漆黒に塗られ、妖しく光を放っていた。
「…よし」
一夏が近接武装『雪片弐型』を展開し、満足げに頷く。しかし、千冬からは厳しい言葉を浴びせられた。
「遅い。1秒以内に展開できるようになれ」
「…うう…はい…」
「次はオルコットだ。ライフルを展開しろ」
「はい」
返事をすると、セシリアは左腕を真横へと突き出す。一瞬爆発的な光を発し、彼女の手にスナイパーライフル『スターライトmkIII』が握られていた。
「さすがだな、代表候補生。だが、そのポーズはやめろ。銃身を横に向けて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」
「で、ですがこれは私のイメージをまとめるために」
「直せ。いいな」
「…はい…」
反論しようと口を開いたセシリアを、一睨みで黙らせる千冬。続けて次の指示を出す。
「次は近接武装を展開しろ」
「えっ、あっ、はいっ」
おそらく脳内で文句を言っていたのだろう。驚いてセシリアの反応が鈍った。
ライフルを収納し、新たに近接武装を展開。
だが、手の中の光は像を結ばず、空中でさまよう。
「まだか?」
「い、いえすぐに。…ああもう!『インターセプター』!」
武器の名前を叫ぶことでイメージがまとまり、光が武器として構成された。
しかし、これは教科書の序盤に書かれているいわば『初心者用』の手段であるため、彼女にとっては屈辱的なようだった。
「何秒かかっている。お前は実戦でも敵に待ってもらうのか?」
「じ、実戦では懐に入らせませんので問題ありませんわ!」
「ほう?その割には模擬戦で織斑に簡単に懐を許していたようだが?」
「うっ…」
言葉に詰まると、何やら
大方、一夏に何か文句を言っているのだろうが、八つ当たり以外の何物でもない。
一夏は返事をしていない、というかできないらしく、言われるがままになっていた。
「時間だな。今日の授業はここまでとする。織斑、グラウンドの片付けを忘れるなよ」
「はい」
こうして、一夏達初の実践訓練は無事(?)に終わりを告げたのだった。
セシリアが丸くなる回ですね。ここで可愛くなるわけです。それまでただの高飛車女ですから、変わってくれてよかった。うん。
次回こそは鈴を!なんとか!書きます!書けたらいいな!
それはそうと、実はオリヒロインを考えているんですが、どのタイミングで登場させようか迷っています。
早いとこ出して主人公とワッショイワッショイ↑↑してもらおうとも思うんですが、あんまり本編ブレさすのは…。
では、次回もよろしくお付き合いください。