インフィニット・ストラトス ~An Irregular Bound~   作:れみんとぅ

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こんにちは、れみんとぅです。
自分は寝つきが異様にいいのですが、一昨日くらいに驚くべき体験をしました。
なんと、目を閉じて開けたら朝だったのです。寝た感覚ゼロ。

今回で無事、原作1巻が終了となります。とりあえず一区切りといったところでしょうか。長いようで短かった…実際9話しか投稿していないし。
原作2巻にいつ入るかはわかりませんが、これからも小説を面白くする努力は惜しまぬ所存。生暖かく見守っていただければなと。

では、第8話をお楽しみください。(タイトルを書くのが面倒になったとかでは断じてありません)


第8話 Abnormal Force/Perfect Fire

「…一夏、いくら俺が来たのがわかっていても、敵の攻撃は避けろ」

 

「お前が撃ち落としてくれるから大丈夫だろ?」

 

一夏は自分の事をどうも信用し過ぎのような気がする。クラウスは苦笑いを堪えながら問いかけた。

 

「で、あいつはどこのISだ?」

 

「わからん」

 

「全くか?」

 

「おう」

 

「……」

 

まあわからないものは仕方ない。敵ISは全身装甲(フル・スキン)タイプだ。顔だけでなく、体格もわからないような鎧を纏っている。

 

「それと、何故か俺たちがこうして話してる間は攻撃が来ないんだ。まるで聞いてるみたいに」

 

「…確かにな」

 

人間が乗っているのなら、普通はこの状況を好機と見て攻撃が来るはずだ。

それがない、という事は…

 

「…あの中は人工知能(A I)か?」

 

「そうなのか?じゃあ何も気にせず戦えるな」

 

「…もう少し人を、特に俺を疑う事を覚えたほうがいいと思うが」

 

「え?だってクラウス嘘とか言わないだろ?」

 

「……」

 

もう突っ込んでも無駄だと判断し、放っておく事にする。

 

「…よし、あいつは無人機だと仮定して行動に移るぞ。お前は後ろで不測の事態に備えていてくれ」

 

「おう、わかっ…はぁ!?お前、1人であいつと戦う気か!?」

 

普通に話したのでは反対される事は目に見えていた。なのであまり関係のない話を入れたのだが、通用しなかったようだった。

 

「俺だって戦う!なんのために残ったと思ってんだ!」

 

「白式のエネルギー残量は?」

 

「…30%くらい」

 

「それだけしか残っていないのに1人でやる気だったのか?死ぬだけだぞ」

 

一夏が言葉を詰まらせる。考えなしだったことが丸分かりだった。

 

「いざという時、お前が観客席の皆を守るんだ。瞬時加速(イグニッション・ブースト)はあと何回できる?」

 

「…多分、一度が限界だ」

 

スラスターにエネルギーを圧縮し、それを一気に噴出させる事で一瞬でトップスピードまで加速する技。

ただし、普通よりも大きくエネルギーを消費してしまうため、何度も使えるわけではない。燃費の悪い白式ではなおさらだった。

 

「温存しておかなければ救えるものも救えなくなる。もう一度言う、後ろにいろ」

 

「…わかった」

 

一夏の返事に頷くと、クラウスは地表へと降下。着地するとすぐに拳銃で無人機の注意を自身に向ける。

 

「…初撃から50秒だ」

 

何かを呟き、高周波IS刀『天叢雲』を鞘から抜き放つ。

しゃりん、と音をさせて現れた刀は、表面の特殊コーティングにより、高周波が流れると同時に紅に輝く。

そして、一夏が鈴の龍砲を相殺した時と同じく、右肩に担ぐように構えた。

 

無人機がレーザーを連射。4本の光が迫る。

 

クラウスが刀を振り下ろす。鈍い金属音を響かせて、最初の光がふたつに分かれ、彼の後ろへ飛んでいく。

 

続けて連続で金属音が響く。放たれた全てのレーザーが両断され壁に当たって消えた。

 

スラスターを開き、全開。無人機へと突進する。

敵は腕を振り下ろす。クラウスはそれに刀を合わせる。

 

そして、(しのぎ)に滑らせ腕の軌道を逸らした。

そのまま右腕を斬る。だが、装甲を削るのみで切断はできない。

 

敵の攻撃。凌いで反撃、装甲をまた削る。

2機のISが火花を散らしてせめぎ合う。しかし実際は、クラウスが一方的に無人機の鎧を削り取っていく。

 

「…すげぇ…」

 

見守る一夏はひとり呟く。

初めて見る、異次元とも思える動き。彼は呼吸も忘れて見入っていた。

 

やがて無人機の胸の装甲が砕け、コアが姿を現した。

クラウスが大きくテイクバックし、刀を敵の腕と打ち合わせる。

 

両機ともに大きく仰け反る。だが一瞬早く無人機が立て直し、腕を振りかぶった。

 

クラウスは言う。勝利を確信した笑みを浮かべて。

 

「…狙いは?」

 

『完璧ですわ!!』

 

無人機のコアを、一筋の光が貫いた。再び仰け反り、敵が後ろへ倒れる。

 

「…オルコット、狙撃が2秒遅い。肝を冷やしたぞ」

 

『貴方が3秒早いんですのよ』

 

「そちらが合わせてくれ。こっちはそんな余裕はない」

 

『もう…人使いが荒いんですから』

 

アリーナのシールドに空いた穴の先には、セシリアがレーザーライフルを持ち飛んでいた。クラウスと何やら言い合っていて、時折頬を膨らませる。

彼女の姿を確認した一夏が声を上げる。

 

「セシリア!どうやってここに?ピットにいたんじゃないのか?」

 

一応クラウスもピットにいたはずなのだが、特に彼については疑問を感じなかったようだ。

 

『え、あー、それは、秘密、ですわ♪』

 

思い人に対して、シャッターをISで蹴破ったとは言えず、セシリアは適当に誤魔化した。

 

「ふぅん?まあいいけど…クラウスがあのまま倒してもよかったんじゃないか?セシリアの射界まであの無人機を誘導しなきゃならなかったんだし」

 

一夏の言う通り、クラウスがあのまま倒していればもっと単純だった。誘導の必要が無いのだから、何も気にせず戦える。

 

「ああ、それは俺のISが持たないからだ」

 

そう言うと同時に、クラウスのISが解除され、指輪に戻った。

 

「お、おい、お前ISが」

 

「この通り今のエネルギー量だと、全開は1分と持たないのさ」

 

「はぁ!?そ、それじゃ白式より燃費悪いじゃねぇか!」

 

「ああ。だから彼女の協力が不可欠だった」

 

それについてはセシリアも初耳らしく、驚いて言う。

 

「そんな!ですが訓練の時はそんな事一度も…」

 

「そうだ!エネルギー切れなんてなかったじゃないか!」

 

問い詰める一夏たちに、クラウスは首を傾げて返した。

 

「全開じゃないだろう」

 

「「ああ…そういうこと(ですの)…」」

 

2人はがっくりと肩を落とす。それを見て、笑いながら彼は続ける。

 

「2人とも会った時に比べて随分強くなっているさ。特に一夏はセンスの塊だ。まるで別人だな」

 

「そうか?なんか照れくさいな…」

 

褒められて一夏は頭をかく。セシリアは次の台詞がなんとなくわかっていたが尋ねた。

 

「あの、私は…?」

 

「……。相変わらず、ずば抜けた射撃精度だ」

 

「成長していないならそう言ってください!逆に惨めですわ!」

 

憤慨するセシリアを笑いながら、クラウスはふと無人機の方を振り向く。

 

 

そして、敵の腕が数人残っている観客席に向けられているのを見た。

 

 

「!!」

 

考えるより早く、クラウスは生身のまま敵の右腕に体ごとぶつかり軌道を逸らす。

 

「撃てオルコット!!」

 

「なっ!?」

 

クラウスが生身のまま側にいるために、一瞬セシリアが躊躇った。その間に無人機は再び腕を上げる。

 

「させるかぁぁぁぁぁ!!」

 

今度は一夏が瞬時加速で無人機の射線上に入りながら突進。だが距離が離れていたためギリギリで発射に間に合わない。

 

一夏は、眩い光の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一夏」

 

保健室のベッドで眠っている彼の横で、鈴は小さく呟いた。

怪我は無いが、大きな衝撃によって一時的に気を失っていると聞かされている。起きるのはもう少しかかりそうだ。

 

(…今なら誰もいないし、バレないわよね…?)

 

そう1人で確認すると、鈴はゆっくりと一夏の顔に自らの顔を近づけて行く。

自分の心臓の音がはっきりと聞こえ、早鐘のように打つのがやかましい。距離はあと10cm。

 

だが、そこで一夏が勢いよく起き上がった。

 

ゴッ、と鈍い音をたて、2人ともぶつかった額を押さえて呻く。鈴は涙目になりながら憤慨する。

 

「い、いきなり起き上がんじゃないわよ!」

 

一夏も涙目で言い返す。

 

「ぶつかるようなところに顔を持ってくるなよ!何しようとしてたんだ一体!」

 

「へっ、え、いや、それは…」

 

顔を真っ赤にして黙る鈴。だが一夏はそれ以上追求する事なく話題を変える。

 

「そんな事よりあの無人機は!?」

 

「えっ?ああ、それなら先生たちが無力化したわよ。怪我人も一夏だけ」

 

「そうか、よかった…」

 

心底安心したようにベッドにぼすっと体を預ける。そして安心したからか、模擬戦の前に鈴を怒らせた事を思い出す。

 

「…鈴」

 

「ん?」

 

「約束の意味、教えてくれないか?」

 

その言葉で鈴も思い出し、再び顔を真っ赤にしてあたふたとし始めた。

 

「い、いや、その事は…」

 

「俺じゃ考えてもわからなくてさ…謝ろうにも、鈴が何に怒ったのかわからないんじゃ反省したことにならないし」

 

「も、もういいわよそんなの」

 

マズイ。このままでは非常にマズイ。そう思い鈴は全力で話を終わらせようとする。

 

「俺がよくないんだって。他の奴らははっきり教えてくれないし、本人に聞かないとダメだと思ってな」

 

だが一夏は変に拘り、話を続けようとした。

 

「そ、その時点でどういう意味だったのか察しなさいよ!」

 

「それが全然わからないからもうお前に聞くしかないんだって!」

 

「説明したくないって言ってるでしょ!?」

 

「それじゃ謝るに謝れないんだよ!!」

 

2人はヒートアップしていく。これではまた前と同じになってしまうと思うものの、自分では止められない。

 

「…夫婦喧嘩か、お前ら」

 

「「んなわけないだろ(でしょ)!!」」

 

いつの間にかクラウスが後ろにいた。彼のコメントに2人同時に突っ込む。夫婦と言われ鈴が顔を赤くして叫ぶ。

 

「いいいいつからいたのよ!」

 

「今来たばかりだ」

 

「そ、それならいいわ…」

 

鈴が胸を撫で下ろす。だがまたクラウスのコメント。

 

「お前たちの痴話喧嘩は外からでも聞こえたがな」

 

「「それも違うっての!!」」

 

また声が重なる。こうして見ると、2人はかなり仲がいい事が傍目にもわかった。

 

「…クラウスは怪我とかなかったか?」

 

「ああ。俺は全く問題ない」

 

一夏の問いに答えながら、クラウスは手に持つペットボトルを差し出す。

 

「ほら、飲み物だ。ずっと何も飲んでいないから脱水症状が出るかもしれん」

 

中に入っている液体を見て、一夏は急激に喉の渇きを覚え、思わず喉を押さえる。

 

「…なんか、見たらめちゃくちゃ喉渇いた」

 

フタを開けると一気に呷り、ぐびくびと飲み干していく。半分ほどになったところで一夏は大きく息を吐いた。

 

「はぁぁぁぁぁ…生き返るな…」

 

「それならよかった。それじゃ、俺はこれで帰るよ」

 

踵を返すクラウスに、一夏はつい呼び止めてしまう。

 

「何か用があったんじゃないのか?」

 

「特にない。お前が気絶してる間に落書きでもしてやろうと思って来ただけだ」

 

「おま、油性とかシャレになんねぇぞ!?」

 

「よくわかったな。油性で書くつもりだった」

 

ポケットからマジックを出して見せる。更に一夏が焦る。

 

「俺の学園生活を潰す気か!?」

 

「安心しろ。周りの一夏に対するイメージが変わるだけだ」

 

「大問題だ!」

 

そして笑いながらクラウスは保健室を出て行った。ドアが閉まるのを見てから、一夏は苦笑い。

聞いていた鈴が苦笑混じりで秘密をバラした。

 

「あんな事言ってるけど、あたしが来る前に見た時はかなり心配してたわよ。やたらそわそわしてたし」

 

「ぷっ、お産待ちの父親かよ」

 

「本当よね」

 

笑い合ったあと、少しの間沈黙が続く。

暫くして鈴が口を開いた。

 

「…あの、さ。その、約束の話なんだけど…」

 

「ん?ああ、あれは結局どういう…」

 

「あ、あたしの買い物に付き合って。それで許してあげる」

 

鈴にしてみれば、この一言にもなけなしの勇気を振り絞らなければならなかった。言い終えると口を引き結び、一夏の返事を待つ。

 

「わかった。それくらいお安い御用だ」

 

返事はかなりあっさりしたものだった。だが、鈴の内心は飛び上がるほどの喜びであふれた。

 

「どうせなら、弾も呼ぶか?」

 

「ううん!2人でいいわよっ!」

 

2人きりがいい。今はまだ言えない。言ったとしても一夏は何とも思わなかっただろうが、鈴自身はとても気になる。

 

「そうか。でも、帰りにあいつの家に寄って夕飯食って行こうぜ。きっと喜ぶだろ」

 

「えー、あー、うん、そうね…」

 

正直あまり出向きたくはない。もう1人の男友達、弾に会いたくないというのではなく、その妹に会いたくない。

だが、一夏にそんな事が分かるはずもなく、久々の幼馴染との再会を楽しみにしているようだ。

 

 

一方その頃、保健室の前では。

 

「…いつまでそうしてるつもりなんだ?」

 

セシリアがいた。中に入るでもなく、ドアの前をウロウロしている。クラウスは保健室に入る前にも見たそれを見兼ねて声をかけたのだ。

 

「なんでもありませんわ」

 

「お産待ちの父親みたいになってるぞ」

 

「私は女です」

 

また黙ってウロウロ。さっきからその繰り返しである。

クラウスには何がこうさせているのかなんとなく見当は付いているのだが、こちらから言うことはできなかった。

 

「…私があの時仕留められていれば…」

 

セシリアがひとり呟くと、クラウスはすかさずフォローを入れる。これ以上ここでウロウロされても不審者にしか見えないと判断しての行動。

 

「一夏は気にしないと思うぞ。むしろ『無事でよかった』とか言うと思うが」

 

「私が気にするんです。自分のミスで人を危険な目に遭わせてしまったんですから…」

 

なるほど、自分で自分が許せないということか。彼は少し考え、話し始める。

 

「…俺が砕いた装甲の直径は約30cm。コアがその中心にあり、直径約10cm。セシリアの狙撃地点からコアまでの距離は50m。極め付けに的は不規則に動く(・・・・・・・・)

 

セシリアは、あの時の状況を説明する声に黙って耳を傾けていた。声は続ける。

 

「距離から考えたコア、つまり的の大きさはスコープを通しても恐らく5cm(・・・)程度しかなかっただろう。そしてたった1発の弾丸でその的に当てるには」

 

少しの間。次に聞いた数値は、とても人間にできるとは思えないものだった。

 

「許される照準誤差は約0.21度(・・・・)。それをクリアしたとして、当たる確率は約0.12%(・・・・)だ。君の弾丸はコアを掠め、甚大な機能障害を起こしていた。だから奴は右腕しか動かせなかったんだ」

 

彼女の表情が変わる。クラウスは、最後の言葉を紡ぐ。

 

「オルコット。君は成功率0.1%(・・・・・・)の精密射撃を、成功寸前まで持っていったんだ。誇りこそすれ、気に病む必要は微塵もない」

 

「…慰めてくださっているんですの?」

 

幾分表情が明るくなったセシリアが問う。返ってきたのは、否定だった。

 

「いや、懺悔、かな」

 

言いながら手で顔を隠すクラウス。何故そうしたのか、セシリアにはわからない。

 

「話を聞いていればわかっただろうが、これはどう考えても俺の作戦ミスだ。だから責任があるとすれば全て俺にある。不可能に近い作戦の要を押し付けて、すまなかった」

 

頭を下げる。セシリアは慌てて言った。

 

「そんな事はありませんわ!貴方が居なければあそこまで行く事すら出来ませんでしたし、貴方が居たからこそ私は狙撃に集中できたのですから!」

 

「…ありがとう。そう言ってもらえると救われるよ」

 

顔を上げたクラウスは笑う。その笑顔に思わずセシリアの心臓が高鳴った。頬を染めて顔を逸らす。

 

「い、一夏さんに会って来ますわ!」

 

そう言って足早にドアへと歩く。だが、セシリアが開ける寸前に一夏たちが中から出てきた。超至近距離で一夏とバッチリ目が合ってしまい、さらに顔を赤くしてフリーズ。

 

「お、セシリアじゃないか。クラウスもまだここにいたのか」

 

一夏はそんなセシリアに首を傾げつつ、クラウスにも気付いた。

 

「ああ。ちょうどオルコットと会ってな。少し話していたんだ」

 

「ちょうどいいや。一緒に帰ろうぜ」

 

そう言って先頭に立って歩き出す。そのすぐ後ろを鈴が上機嫌でついて行く。

その様子を見たセシリアは頬を膨らませて追う。

 

(…今度、セシリアに教わらなきゃな)

 

成功率0.1%…実はあれらの数字は全く計算せず適当に言ったものだった。

実際の確率は、きっとさらに何倍も低い(・・・・・・・・)だろう。

 

 

イギリス代表候補生の隠れた力に、クラウスは静かに敬意を抱いていた。




髪の毛を自分で切るようになりました。
そのために購入したカットハサミとスキバサミが中々当たりのようで、使い易くて楽しいです。
一度パッツンにしてからギザギザにするのが特に楽しい。他は全部スキバサミなので。
以上、ここまでどうでもいい話でした。ごめんなさい。

次回から原作2巻に突入します。3人目の男子が転入してきたり実は女の子だったり軍人が転入してきて一夏に絡んできたりするのが楽しみです。

では、次回もよろしくお付き合いください。
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