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猫又から譲り受けたキャロットを頼りに邪兎屋が待っているであろうポイントを目指す。ふと思い出したが、たしか猫又が言うにはあの列車にあんな数の人間はいないはずだったが…まぁ思い通りにならないのは世の常だ、さほど気にするようなことでは無いだろう。
仮になにか猫又の方に思惑があったとして、パエトーンの二人が見逃すはずがない。大人しくしごかれてくれ。
にしてもデッドエンドホロウだからだろうか、はたまた例のエーテリアスのせいかは知らないが不気味なほど静かである。まぁこちらとしてはジャンク品に目星が付けれるから願ったりなんだけども。
尚、このせいで予定到着時間に大きく遅れているが、これは気にしない方針で。すべてエーテリアスが悪い。おのれTOPS。
ふんふーんと気分よく目指していると、遠くから地響きが鳴り響く。キャロットを覗いても二コらが待っている地点はまだ十分先だ。仮に近くても住民が近い地点で邪兎屋はドンパチやらないだろうし、十中八九例の大物エーテリアスだろう。
できるだけ壊すなよ~とボヤいた瞬間、複数の犬型エーテリアスに囲まれる。油断していたわけではないが、奴から逃れるときに偶然にも自分を見つけたのだろう。
ツイていないなと恨みながら装備を構える。といっても持ち物はナイフと拳銃、グレネードなどの投擲物しかないのだが。目の出力を上げ、撃退の構えをとる。
間髪入れず、エーテリアス全員…4匹が襲い掛かる。しかし、その軌道はどれも攻撃するものではなく自分の真横を通り過ぎるだけであった。
正直拍子抜けも良い所だ。この振り上げた拳を何処にしまえばいいのやら。
まぁ戦わないに越したことはないと、構えを解こうとしたがふと思い出す。先ほどのエーテリアスは何から逃げていたのか。そして基本見たものは全て襲い掛かるはずなのに脇目も降らず逃げ出したのか。
最悪な事をイメージしてしまう。すると先ほどまで離れていたはずの地響きがこちらまで迫ってきている。
面倒な方を猫又に押し付けたはずなのにどうしてこうなったのか。せめてもの救いは住民たちがいる地点からは遠く離れていることだ
はぁ、とため息をつきながら集中する。地響きの原因は目の前まで迫っている。
突然、目の前の倒壊したビルの残骸が大きな音を立てながら崩れ落ちる。原因はまさにそのぽっかり空いた穴で叫び声を上げているアイツ、デッドエンドブッチャーだ。
「ーーーーーーーーーー!!!!!」
ぎゃあぁぁ、とも、ぐおおぉぉ、とも聞こえる妙な叫び声を上げている。にしても何故こうも嫌な予感とは当たるのだろうか。
ヤツの方をみると猛烈な勢いで突撃してくる。周りにある建物の残骸もアイツにとってはただの置物なのだろうか。しかもその直線状にはしっかり自分がいる。
「まぁ、それだけデカイと避けやすいわな」
所詮直線に動いてくるだけだ。目の前でやられるとどうしようもないが、十分に距離があるので簡単によけられる。
ホーミング機能が無いことに安堵するも、相手は避けられたことに激高しているのか今度は高く飛び上がり押しつぶそうとしてくる。
着地点から脱出し、さらに相手の大きな両腕から逃れるために距離をとる。すると予知した通りに、着地と同時に両腕で自分の周囲をすりつぶしように振り回し始めた。
つい先ほど猫又にやらされて目覚めた身体能力のおかげで難なくやり過ごせた。さて、問題はここからだ。自分に振り回されないよう立ち回らねば。
しばらくして目当ての自分がいない事に気づいたのか、じっとこちらを見つめてくる。
「登場シーンにしては…やり過ぎだな。もっとコンパクトにできるか?」
全てを破壊せんとする凶悪な力と雄たけびが、ホロウ内に響き渡った。
━━━━
「ちょちょちょ、なによこの揺れは!?猫又、まーたアンタ何かやったんじゃないでしょうねぇ!?」
「んにゃ!?そんなことはないぞ!さすがにこれに関しては無罪を主張する!」
カンバス通り…つまりは爆破エリア内にいる住民たちと邪兎屋と戻ってきた猫又はまとめて怯えていた。
つい先ほどそそくさとアキラと共に脱出した猫又は、事の経緯と自分の全て、そして何を成したいかをすべて話した上でここにいる。
「というかカイはどこなんだ!?プロキシと停車中の列車を奪うって作戦が…」
と猫又が言いかけたところでアンビーが反応する。少し前に彼に戦闘に関してアドバイスしたこともあってか、姿を見せない彼を心配しているのであろう。
「もしかして…この揺れはカイの仕業!?あんっのバカ!これじゃあの列車ごと吹き飛ぶじゃないの!」
ニコの言う通りだろう。しかし許してあげてほしいのだが、彼はその肝心の作戦を聞かされていない。それを知るのは現状だと猫又だけだが、今のニコに下手なことを言うと自分の首が閉まりそうなため黙っていることにした。
「ま、まぁ幸いここから遠いわけだし?さっさと動いて強奪した方がいいんじゃないか?」
うーん、としばらく頭を悩ませるニコ。しかしそれもほんの一瞬で「ま、アイツならしぶとく生き残るでしょ」と結論付けた。
そうと決まれば、住民を落ち着かせようとしているビリーを引っ張り出し、早速パエトーンが割り当てたポイントまで向かうことにした。
アンビーはちらちらと震源の方に顔を向けていたが、それに気づく者はいなかった。
━━━━
『な、なんだい?この揺れは』
『何者かがデッドエンドホウロ内に存在する脅威、デッドエンドブッチャーと交戦中による揺れと推測されます』
『Fairy、何者かってまさかカイなのか?』
『不明。しかし、その可能性は大いにありえるでしょう』
猫又に渡した合流ポイントを目指してポテポテと歩くパエトーン。先ほどの交戦により、一時的に停車中の列車までもうすぐ、といったところでニコらと合流する。
「やっときたわね、カイがやらかす前にさっさと片づけるわよ!」
もしやと思ったがやはりデッドエンドブッチャーと交戦しているのはカイらしい。メンバーを見ても彼の姿は見当たらない。
『ニコ、一つ聞いてもいいかい?この揺れの原因ってまさか…』
「まさかも何もカイよ!きちんと情報共有しときなさいよ!」
『あはは…面目ない。既にカンバス通りに到着している予定だったから、うっかりしていたよ』
まったくもう!、とプリプリしながら戦闘準備を進めるニコ。停車している列車の近辺には武装している保安局の格好をした連中がぞろぞろと待機している。うかつに飛び込めば戦闘は苛烈になるだろう。
そして、その中でも無装備の存在であるパールマンの姿がよく目立つ。あの低慎重かつボンプのような体型だ。見間違いことはないだろう。
「にっしても数が多すぎるぜ。玉の節約もできやしねぇ」
「今回に関しては遠慮なしでいくわよ。ぶっ放しちゃいなさい!」
「了解。音量最大で行くわ」
「訂正するわ!音量控えめ!弾薬多め!さくっと捕らえるわよ!」
そうニコが宣言すると同時にビリーとアンビーが前に出て殲滅を開始する。猫又も相手集団の中腹に飛び込み相手をなぎ倒していく。
ニコはパエトーンを守りながら、打ち漏らした者を倒していく。何度かニコの手伝いはしたことあるが、こう見ると邪兎屋は対人戦が得意ではないかと思う。それも猫又がいることでその脅威度は上がっていることだろう。
そうこうしている内にあっという間に片が付いたらしい。簀巻きにされたパールマンがニコに言い詰められている。
するとザザッとパールマンの通信機が鳴る。
新たな敵の応援かとも思われたが、そうではないらしい。聞くと本来ならカンバス通りを封鎖するために爆破する予定だった線路を今さっき爆破したとの事だ。その事実にまたもパールマンがぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。なんとも哀れである。
しかし、そう悠長にはしていられない。今この瞬間にも相手はぞろぞろと集結しようとしている。その場しのぎだが、1度列車内にパールマンごと引き連れ立てこもる事にした。
立てこもる際にパールマンを人質にしてこちらへの攻撃を抑制する。盾としては非常に優秀な点は邪兎屋からお墨付きをもらえたらしい。
しかし、自分たちの作戦は破綻してしまった。住民たちを運び出せる列車はあるが、そのルートを潰されてしまった。どうすればあの住民達を避難できるのか。
しばらく考えていると猫又が写真入りのロケットを手にしながら。ポツポツと語りだした。
自分がどのような生い立ちなのか、なぜ邪兎屋を狙ったのか、そして今からどうするのか。
猫又はパールマンを引き連れてヴィジョンへ直接交渉するらしい。あくまで殺されはしないと高はくくっているようだが、猫又はかつて自分が信じた赤牙組の恩を返そうとしてるらしい。
いくらニコたちが止めても無駄だった。猫又はパールマンを連れてホロウの出口へ向かった。なんとか力づくで止めようとしたが直前で列車内のシャッターが下ろされる。
パールマンの指示で特別に補強されたのであろう、とてもじゃないがこれを破るには時間がかかる。実際、かなりの時間を割いてしまった。開けたころには猫又らの姿はなく、Fairyによると30分ほどでホロウの外へ出てしまうらしい。
「で、どーするよ店長?」
『うん、正直に言うと手が無い訳じゃない。ただ危険な橋を渡ることになるよ』
「お、どんな危険な橋だろうと店長と親分がいれば百人力だぜ!」
『デッドエンドブッチャーを倒して強引にホロウを縮小させる。放浪が縮小すれば住民はみんな安全に脱出できるんだが…』
「……えっとぉ、親分パス!」
「はぁ、まぁそんな事だろうとは思ってたわ。さ、さっさと終わらせるわよ」
「は、いやニコの親分!?相手はアイツだぜ?俺たちで何とかできる算段があるってのか?」
「うっさいわねぇ!さっさと準備する!じゃないと猫又もカイのバカも間に合わなくなるわよ!」
「ビリー…もしかしてビビってるの?」
「アンビーや親分にも言われちゃ黙ってられねぇなぁ…」
これに関してはビリーの反応が正しいだろう。少々可哀そうな気もするが。
デッドエンドブッチャーが暴れている地点を目指しながら、邪兎屋のメンバーも少しずつ戦闘準備を進めていく。
道中で猫又の状況をFairyに映像で映してもらったが、パールマンに人質の価値はさほどなかったらしく麻酔銃で速攻眠らされてしまった。もたもたしていたら猫又の状況も危うくなるだろう。
『…これは、急いだほうがいいね』
『この先、デッドエンドブッチャーが戦闘中。さらに雷雨が発生しています。注意してください』
「分かったわって、プロキシ、アンタはどうするの?さすがに庇えきれないわよ」
『そのことなんだが…ニコ、作戦があるんだ。あの爆弾列車をFairyと僕がハッキングして無理矢理走らせる。ちょうど相手が戦っている位置が脱線するコースに近いからそこまで誘導してほしいんだが、できるかい?』
「ようするに爆弾列車をあのでデカブツにぶつけるわけね。いいわよ!やったろうじゃないの」
ニコがそういうと残る2人も頷いてくれた。こういう時は頼もしい三人組である。
『それじゃぁ、頼んだよ』
━━━━
「まーた元気よく叫びやがって、ご機嫌斜めか?」
大きな両腕が周囲のがれきを投げつける。なんとも芸がない攻撃だが、人1人を押しつぶすのには正しく正攻法と呼べるだろう。しかし、それは一般人だったならという前置きはいるが。
辺りに散らばるがれきを避けながら接近する。闇雲に切りかかってもコアではないためダメージは少ないだろう。かといって大きく振るわれる巨体に少しでも掠れば無傷ではいられない。ならばどうするか…
「…正直どうしようもないんだよなっと」
接近はする、しかしそれは近接攻撃のためではなくなるべく射撃の命中率を底上げするためだ。確かに身体能力は上がっただろう。しかし、それが筋力や攻撃に加算されるかと言われると不明点が多い。
よって大人しく拳銃をぶっ放した方が話は早いのである。カイは新エリートで育ってから、前世と比べて甚だ疑問に思っていることがある。
(というかナイフやより拳銃の方が攻撃力高いだろ、普通に考えて)
ホロウ内で過ごしていると非常に多いのだが、対ホロウに特化した軍人諸君らだって機関銃を使用しているのになぜ上澄みの連中はこぞって近接型なのだろうかと、常々考えていた。
確かに装備の差はあるのかもしれない。エーテルの適性や特殊な環境、生まれはあるのかもしれない。にしても限界はあるでしょう、と思っている。
まぁデッドエンドブッチャーに関して言えば、今のカイの攻撃力ではナイフだろうが拳銃だろうがさほど差はないのかもしれないが。
と、執拗にコアを狙ってきているのに嫌気がさしたのかデッドエンドブッチャーは身体全身をグルんとその場で回転した。
即座に身を引くことで回避する。するとその回転で体幹が崩れたのか隙ができる。ものは試しだという風に肉薄する。もちろんその場で振っても空振りするだけなので、無防備となった腕を足場に跳躍する。
その落下エネルギーと向上した身体能力でコアをナイフで切りつける。すると自分が想像するより深く切り込めた。いや、今までチクチク打っていた拳銃以上の傷を負わせることができていた。
カイはぎょっとした。自分の力で切ったわけではないのは感覚で理解した。即座に距離を取り理解しようとする。このナイフは自分がホロウ内で活動してきてから1度も手放したことのないナイフだ。
刃こぼれは何度かしてきたが、その度に新品同様に磨き上げ続けてきた。ただそれが原因ではないと思う。これは仮説だが、長期間カイと触れ合い続けた結果ナイフ事態にエーテルに対する特攻が付与されたのではないかと思う。
要するにエーテルに汚染された結果、奇跡的に軽エーテル合金になった、もしくは対エーテリアス特攻がエンチャントされたかの二択である。
とりあえずヨシと結論づけ、再度デッドエンドブッチャーと対峙する。今まで豆鉄砲しか浴びせてこなかった相手が十分な傷を負わせたことに怒ったのか、近づいてきたと思ったら乱暴に両手を振り回し殴り飛ばそうとしてくる。
「ちょ、お前さんさっきからずっと怒ってないかぁ!?」
周囲は薙ぎ払うかのように吹き飛ばされ、そしてヤツの怒りが届いたのか辺りに雷雨が立ち込める。
自分も息も絶え絶えも良い所だ。全力で予知し、かわし、攻撃している。これがいつまで続くかも分からないし、未だ決定打も見込めない。だがやるしかないのだ。
相手の空いた股下をスライディングのように潜り抜け、振り向きざまに発砲する。乱暴に振り向いたことで一瞬隙ができた身体を足場に、再度切りつける。
それでも相手は止まらない。しかも相手もバカではない。次の攻撃には対処できるよう少しずつ攻撃方法が変わってきている。直進的な攻撃ではなく、様々な方向から死が迫ってくるのが分かる。
避ける、撃つ、避ける、たまに切るの繰り返しだが、次第に避けるだけで手いっぱいになってきた。足元がぬかるみ雨で体力が奪われる。
「ぜぇ…おえぇっ、はぁ…最悪な気分だ」
今まで以上に能力を酷使した結果だろう。頭が悲鳴を上げ、視界も揺らいでくる。動きを予知するエーテルの波も見るだけで酔いそうになってきていた。
一瞬ぬかるみに足をとられかけた瞬間、デッドエンドブッチャーが全体重をかけて地面を強打する。周りに振動と吹き飛ばさんとする暴風がカイの身体を吹き飛ばす。
「ぐぉわ!っと範囲攻撃には弱いんだよなぁ…ハァ」
と丁度良く相手からの射線が切れたため、しゃがんで1度呼吸を整える。すると近くに見慣れた姿が見える。
「うわっ、本当に生きてたってか満身創痍じゃない!」
「あん?あぁ…邪兎屋か。丁度よかった、一人じゃ手が余る。手を貸してくれないか?」
「おう!元よりそのつもりだぜ!俺らがいればあんな奴一瞬よ!」
「ほら、じっとして。回復させるから」
そう言ったアンビーが俺の身体にブスッと注射器を刺し込んだ。多少の痛みはあるが、これでエーテル侵食症状が和らいだ。
立って、と刺し伸ばされた手を俺は…掴んで俺の方に引っ張った。一瞬邪兎屋の連中がざわついたが、先ほどまでアンビーの頭があった場所に猛烈な勢いで鉄板が投げ込まれる。
あのままアンビーが突っ立っていたら、頭と身体が永久的に離れ離れになっていただろう。邪兎屋の連中もその事実に息をのみ、戦闘態勢に入る。
デッドエンドブッチャーは少し体をこわばらせたと思うと、新たに腕を2本生やした。合計4本の剛腕ができあがると、空気が揺れるほどの咆哮を上げた。雷雨がさらに強まったような気がする。
「ふぅー……第2ラウンドだクソ野郎」
もう第1章切り上げたかったんだけど…まぁいいでしょう。
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