人は生まれながらにして平等ではない
それが生後3日後、自分の心情とは正反対な程美しい夜の星空を見上げながら思ったことだった
今の自分の状況を簡単に説明する。あの後自分は赤ん坊に転生した。だが目覚めた場所に父と母の姿はなかった。目に入ったのはさっきも言ったように一面真っ暗な夜空と細々と散りばめられている星達だった
それで察した、自分は捨てられたのだと
幸い捨てられてた場所の近くに交番があったらしく、すぐに警察に保護されすぐに施設に引き取られることになった
それから年月は流れ、自分は5歳。平凡な日常を施設の子供達と一緒に過ごしている。因みに名前は捨てられていた自分を包んでいた手紙に書かれており、前世と同じく『
「創破くん、そろそろ寝る時間よ。本は片付けて早くベッドに入りなさい」
「はーい」
「またスケートの本読んでたの?飽きないわねぇ~」
「だって面白いんですもん。先生も読んでみれば分かりますって」
「あ~そう、とにかく早く寝なさい。寝ない子は背が伸びないんだから。おやすみ」
「おやすみなさい、先生」
この施設の先生に注意され、俺はスケート教本を本棚にしまいベッドの中に潜り込む
「(………)」
目を瞑るが睡魔はまだ来ない。それもその筈、まだ夜の8時。精神年齢20歳以上の俺にとってはまだまだ目がパッチリしている。転生してから約5年、ここ最近考えていることがある
「(どうやってスケート始めるか━━━━)」
前世の時には出来なかったスケートをどうやって始めようかというもの。施設に入りまず始めに調べたのはフィギュアスケートのことだった。スケートを習うにはどうすれば良いのか、具体的にどういう競技なのか等━━━━━
気になったことは徹底的に調べ上げた。そして分かったことは━━━━━
「(めっちゃ金がかかる)」
そう金がかかるのだ。まぁ色んなスポーツには出費がかかるのが当然。剣道だって竹刀とか剣道着とかを買わなければ出来ない。でもスケートはそれとは比較にならないくらい費用がかかる━━━━━
「(…………)」
専用のスケートシューズ、フィギュアスケートクラブ通称FSCに入る為の費用、バッジテストと呼ばれる試験を受けるための受験料、他にも色々とある
「(…………)」
親も親戚もコネもない。施設育ちの5歳には到底無理な世界。この施設だってそれ程金銭に余裕のあるものでない。たとえ受け入れてくれる人が見つかったとしても、それは何年後になるのか分からないし、時間が過ぎていけばスケートを学べる時間はどんどん減っていくのだ━━━━━
スケートを始める年齢は大体小学生ぐらいが良いと言える。中学生や高校生になってしまうと殆どの場合、見てくれるコーチやFSCはない。費用だってはね上がる
「フィギュアスケートが出来る世界に転生させてくれって言ったのに……なんでだよ女神さま」
今の所スケートが出来ない未来しか見えない
せめて孤児からのスタートでなければと心の中で思いながら創破は眠りについた
「いっち、に、さん、し、ごー………!!」
「がんばれがんばれ~!!」
「ろ~く、し~ち、は~ち、きゅ~う……!!」
「最後だよ!!頑張ってお兄ちゃん!!」
「じゅ~……うぅ!!」
「やったーー!!」
崩れるように地面へと倒れる俺の身体。そして俺の身体にさっきまで乗っかっていた黒髪の少女が「凄い!」を連呼しながら顔を覗いてくる
「そうお兄ちゃん、大丈夫?」
「あぁ大丈夫だよ……光」
自分より一つ年下の少女、光の頭をよしよしと撫でる。光は俺と同じくこの施設で生活している4歳の子だ。ここで一緒に暮らしている子供は20人近くいるが光とは特に仲が良く本当の兄弟みたいな関係である
「次は呼吸やるんでしょ?早くみたい早くみたい!」
「分かった、分かったから」
先程まで俺は光を背に乗せて腕立て伏せをやっていた
転生してからも俺は毎日身体づくりに精を出している
今の俺は5歳児の身体であるため極端に激しい運動は出来ない。だが普通の子供よりも体力はある方だと思っている。俺より年長組の男児との腕相撲では一度も負けたことがなく、明らかに普通の5歳児よりも身体能力が高い。もしかしたら女神さまが何かしたのかと頭の中で呟きながら、今か今かとわくわく期待しながらこちらを見ている光の方を向いた
「今日は水?それとも風?」
「いや、久々に日の呼吸をやるよ」
「ホント!?でもあれって他の呼吸よりも疲れるんでしょ?」
「たしかにそうだけど、一番あれが鍛えられるからな。だから疲れるけどやるよ、先生達には内緒な?」
「うん、分かった!」
俺は外に落ちていたほどよい長さの木の棒を持ち、日の呼吸の型を舞う
この世界には『鬼滅の刃』という作品は存在しない。若しくはまだ描かれていない世界
週刊少年ジャンプという漫画雑誌はあるものの、『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』とかの有名作品とは違う似たり寄ったりの作品が載っており俺はもう二度と読めないかと生まれてから一二を争うぐらいショックを受けてしまった
何時かスケートを始める時のため、そして『鬼滅の刃』の呼吸を忘れないようにするため、こうして毎日舞い身体に染み込ませている
「ハァァァ~~!!…………フゥゥゥ…………!!」
頭のてっぺんから手足の指の爪先まで力を入れ、日の呼吸……ヒノカミ神楽を舞う
円舞、碧羅の天、烈日紅鏡、灼骨炎陽、陽華突、日暈の……ヤベッ!
「プハッ!!……ハァ…ハァ…ハァ」
息が、続かなかった……
「(きついなやっぱ……ハァ…ハァ…ゴホッゴホッ!)」
「お兄ちゃん大丈夫!?」
光が心配した顔でこちらに駆け寄ってくる。
「ゴッホゴッホ……あぁ大丈夫だ光。何時ものようにちょっと息切れしただけだから。少し休めば回復するから」
「そっか……良かった。あのね、今日もお兄ちゃん凄くかっこよかったよ!」
名前通りのキラキラしたまるで眩しい光のような笑顔は、疲れきっている俺の心を癒してくれる
光は基本的に施設の子達とは仲が良く、子供とは思えないくらい気配りも出来る優しい子だ。何時も俺の舞いをキラキラした目で見てくれるため、特訓のモチベーションアップにもなっている
光は周囲の人達をよく観察おり、相手の気持ちに共感することが出来る能力が子供ながらに高い。それは施設の大人達にとってとてもありがたいことなのだが、彼女は無理にそう振る舞っていると俺だけが気付いた
まだ4歳の子供がずっとそういうことを続けていればきっといつか限界を迎え、本来の自分を見失ってしまう
だから少しの間、2人きりで話してみたのだ
その結果心を開いてくれて、兄妹のようによく一緒にいるようになった
前世では兄弟姉妹もおらず、父母だけが俺の家族だった。竈門家のように沢山の兄妹がいる家族に憧れはした。それが今世では光を始めとした沢山の人達と家族になれた
スケートが出来ない環境だが、兄妹ような存在を持つことが出来たことには、俺はここに来れて良かったと思っている
いずれ引き取ってくれる里親が見つかり、離ればなれになったとしても一緒に過ごせるこの時間を大切にしようと思う
読んで頂き、ありがとうございます
感想や評価もよろしくお願いします
ここで、次の話を少しだけ
「この子を私の養子にしようと思います」
「いやだよ……どこにも行かないでよ」
「光……離れていても、ずっと俺達は兄妹だ」
次回『Score2 マリア』