プライマーたちと魔法少女系地球侵略   作:鈴木颯手

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当たり前ですが今年最後の投稿です


第七話「転機」

『テレポーションシップが東京都に向かってきています。総数は約500隻。それを受けて政府は緊急避難命令を発令しました。対象地域は関東地方及び静岡県です。また、アースイーターが九州地方に飛来しており、九州地方にお住いの方は直ちに非難を開始してください。繰り返します。テレポーションシップが———』

「大変な事になったわね……」

 

 四天王筆頭にして日本最強の魔法少女、アークルミナはテレビでしきりに放送されるニュースを見てため息をついた。しかし、それは周囲の悲鳴が混じった雑音によってかき消され、本人でさえ聞き取る事が出来なかった。

 テレポーションシップが南より飛来すると判明して直ぐに避難命令が発令され、緊急避難が開始された。到着までどれだけ見積もっても1時間ほどしかない為に誰もが着の身着のままの状態での避難であり、東京都を中心に関東地方は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっていた。

 

「アークルミナさん。お疲れ様です」

「あら、お久しぶりです」

 

 その時、アークルミナに声をかけてくる人物がいた。連合軍大佐を勤め上げ、アークルミナと共に何度も魔獣と戦った連合軍の兵士だった。

 

「避難は順調そうですか?」

「遅々として進んでいませんね。とはいえ政府機能は既に松代に移転が完了しており、国家が機能不全に陥る事はありませんな」

「松代大要塞。本当に使用する日が来るなんて思わなかったわ」

 

 第二次世界大戦でも建設されていた松代大本営跡地を利用して魔獣対戦時より建造が開始された大要塞。魔獣対戦が終結に向かいつつあった時も整備が行われ、万全の体制が保たれる事となっていたがそれがまさに実戦に投入される時が来たのである。

 

「魔法少女の魔法も最大限に利用して作られた強固な要塞。あれなら地上がアースイーターに覆われようとエルギヌスだろうとアーケルスだろうとビクともしないわね。それで戦局が好転するわけじゃないけど」

「あれを使用する時点で本土を捨てているとの動議ですからな」

 

 使用しないといけない事態が訪れない事を祈って建造・維持された大要塞が今まさに全力稼働しようとしているという事にアークルミナも大佐も悔し気に表情を崩した。

 

「……ところで、連合軍はもう展開が完了したのかしら?」

「とっくにな。プライマーが1時間も時間をくれたおかげで防衛準備はばっちりだ。流石に市民もそうとは言えなかったがな」

「仕方ないわ。彼らに常日頃備えていろと言う方が酷だもの」

 

 大佐の言う通り東京湾に沿って連合軍兵士の展開が完了していた。その数は1万を超えており、東日本に存在する兵士の大半が集まっていた。

 

「そちらこそ魔法少女は準備万端か?」

「集められるだけは集まったはずよ。恐らく、1000はいるわ」

「1000……。魔獣相手ならこれほど心強い者はないんだがな……」

 

 日本が保有する4分の1の魔法少女がこの場に集っている。かつての魔獣対戦であれば勝ちを確信できる数だったがプライマー相手ならば違う。これだけの数がいようと勝てるとは思えない。それほど強大な敵なのだ。

 

「テレポーションシップの総数は500。1秒間で敵は5体程が投下されるわ。つまり、全てのテレポーションシップから怪物が投下され始めれば1秒で2500体も出てくる事になる。北海道の防衛戦の方がまだ良心的よ」

「2500……。はは、上等だな。対魔獣連合軍の意地を見せてやる。相手が決して落とせない厄介な輸送船でも投下される怪物を一匹残らず駆除してやるさ」

「……そのことだけど」

 

 絶望的な状況でも闘志を見せる大佐にアークルミナは口を開く。それは彼女も確証がないもしかしたらの話であった。

 

「テレポーションシップを落とす事が可能かもしれないわ」

「っ! それは本当か!? あの黄金の装甲を破れると!?」

「それは無理よ」

 

 流石のアークルミナでもテレポーションシップの黄金の装甲を破る事は出来ない。何度も攻撃して得てしまった絶望的な確証であった。

 

「だけど、装甲を攻撃する必要は無いわ。怪物が投下される、あの内部を狙うのよ」

「テレポーションの装置を狙うって事か? あの赤く光っている……」

「そう。実は北海道で何度かあの装置に攻撃を加える機会があったのよ。そしたら攻撃は弾かれる事はなく装置に損害を与えたように見えたわ」

「……それが事実なら希望になりえるぞ。テレポーションシップを破壊出来るなら反撃に転じることも出来るだろう。確証はどのくらいだ?」

「五分、と言ったところね。私も攻撃を与えたと言っても1隻に一回くらいだったし。それにどれだけ攻撃すれば破壊出来るのかも分からないから最悪破壊出来ない可能性もあるわ」

「そん時はそん時だ。どちらにせよあの赤い部分を狙って攻撃すれば敵を投下前に倒せるだろうしな」

 

 テレポーションシップのハッチの内部を攻撃する。そういう発想に至らなかった理由としては人類が想像以上に劣勢である事が挙げられるだろう。投下される途中の怪物よりも投下された後の巨大生物に対応する方が最優先であったためだ。更にテレポーションシップを攻撃するためには近づかなければならないが接近できる程人類は戦力が豊富ではないのだ。テレポーションシップを攻撃するには現状のように予め防衛体制が整っている状態でしか不可能だったのだ。

 

「とにかく、可能性がある以上やるしかないだろ。上に相談して攻撃できるようにしてみる」

「そういう事ならこちらも攻撃できるように上に報告してみるわ」

 

 確証がないために報告をしなかったアークルミナも大佐の前向きな様子を見て決断を下した。これで失敗したとしても巨大生物を倒すことは出来る。成功すれば儲けもの。そう言う思いでアークルミナと大佐はそれぞれ上に報告し、彼らの考えは即座に反映されていく事になるのだった。

 

 

 

 

 

『速報です! テレポーションシップの大船団が東京湾に侵入しました! 付近でまだ避難が完了していない人は直ちに避難を開始してください。戦闘が始まれば連合軍も魔法少女も市民の安全を保障することは出来なくなります。戦闘が開始次第自らの命は自らで守らねばならなくなります。なので急いで避難をしてください! これが最後の警告となります!』

 




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