クリスマス?何それ美味しいの?ってことで初投稿です。
相変わらずの見切り発車なので、ご容赦ください。
あ、別作品の『熱砂の巨獣』も、未完の作ですが皆さんどうぞ読んでください!作者の創作意欲が湧いてきます。
では、どうぞ!
「生きてる。よかった。ホントに。顔見せてくれ」
「あ、アニキ……」
「行け、走れ、ルフィを連れて……絶対に逃げ延びて、生きろ」
「お前は俺の義弟だ。他の誰が何と言おうと、お前を愛してる。へへっいざ口にすると照れ臭えなゴホッ……だからエース!生きろ!正々堂々海賊らしく、胸張って、自由を求めて生きろ!俺はお前達の為なら、この命、惜しくない」
「ごめんなガープ師匠、いや、爺ちゃん。俺の事を孫と呼んでくれて……嬉しかった。まだまだこっちに来んじゃねーぞ。来たら殴ってでもぶっ生き返す!」
──
心地良い揺れで目を覚ますと、夕暮れの日差しが眩しい電車の中にいた。
未だ尾を引く睡魔にどうにか打ち勝って、周囲を見渡す。
この電車は、どこに向かっているのか。
何故誰もいないのか。
向かいの椅子に座る、血を流した少女が何か喋っているが、よく聞き取れない。
「──だから、どうか」
「……今なんて、」
「──────」
車窓から差し込んだ西陽に堪らず目を閉じると、そのまま意識を失った。
──
随分と固い枕と布団に、寝心地の悪さを感じて不快感を隠さないまま目覚める。
何だか夢を見ていた気がするが、内容がとんと抜け落ちていて、思い出せなかった。
手をついて上体を起こすが、床が冷たく、視線を下げる。
薄暗い路地のコンクリートが見え、続いて辺りを見渡すも、高いコンクリートビルの壁に所狭しと積み上げられた配管やエアコンの室外機で生暖かい空気が降りてくる。
空を見上げても曇り空、それも片手で丸を作った時の範囲しか見えない。
どこだここ.....?
腹は減るし、コンクリートは冷たいし、行く宛もなく彷徨う様に、路地を出て電灯の光で明るい夜の街を歩く。
財布もない、家もない、知り合いも頼れる仲間もいない。
「おうおう。兄ちゃんよう」
「ん?何だ?俺か?」
「そうだよ。あたしらちょいと金欠なんだわ。金恵んでくれよ」
呼び止められ、振り返るとそこに現れた三人のスケバン姿の女子高生。あら怖い。
でも不思議と冷静だ。もっと怖い経験したからかな?
そんな三人が、文無しの俺を囲んでオヤジ狩りってか?彼女達にも事情があるかも知んないが、生憎これでも昔は正義を掲げてたのよ。
「だから、更生の時間だ。クソガキ共」
「こいつヘイローもねーくせにやる気だぜ?うける」
「痛い目見さすぞ、調子乗ってんなよ!」
さっきからチラチラと黒光りする銃をこちらに向けられるが、それ自体に恐怖はない。
何故か撃たれる未来が見えて、既視感を抱えながら俺に向けられたそれを、タイミングを合わせるだけで銃口を横に逸らし、代わりに握られた拳が少女の顎に下から突き刺さり、軽く後ろに飛んだ。
「リーダー!?」
「てめっ!仲間に手ぇ出したの後悔させてやるからな!」
先に手を出してきたのはそっちでしょうよ。理不尽だと思いつつ、ミニガンを構える少女とライフル銃を構える少女に接近して拳を握る。
「愛の鉄拳制裁!」
「「ごはっ!?」」
二人の脳天に拳骨を叩き込み、一発で白目を剥いた彼女達がアスファルトの床に転がった。
「……モデルガンかと思ったが、本物、だよな?話してるのも日本語だったし、この子の袖の文字も漢字だし。日本はいつから銃社会になっちまったんだ?」
いつまでも年頃の娘っ子を地面の上に寝かせておく訳にもいかず、よっこらせと三人と銃を肩に担いで、適当な場所を目指した。
歩きながら考えていたが、どうやらここ、日本じゃないらしい。
街並みもそうだが、通行人もこの子達みたいな女の子がいたかと思えば、スーツを着た黒っぽいペッパー君に、二足歩行で歩く服を着た犬猫が普通に喋ったり店番したり。
これが所謂異世界ってやつなのか?
試しに記憶の整理をしてみるが、自分の名前は乙事ススム。
こんななりでも転生者だ。
サブカルチャー溢れる現代日本に生まれたどこにでもいるライトなオタクだったが、天寿を全うする前におっ死んだ親不孝者。
転生してすぐ、孤児だった俺をガープ師匠に拾ってもらって、名前も貰った。まあ、候補を考えてくれたのはおつるさんなんだが。
そんで、海軍と白髭海賊団の頂上戦争で、エースとルフィを救えたから後悔はないと思っていたのに、まだ未練たらたらに生き延びてしまったのか。
それか、今までのは全部夢で、現実の俺はこんなにもちっぽけな存在だったのか?
なんだか体も重く感じる。夢の中で散々鍛えてたからかな?夢が覚めたら運動不足気味の体に元通りか。
自間自答しても答えは出ない。
使ってないと思ったビルに入ったのだが、先客がいたらしい。
「ここは私らカチカチヘルメット団の事務所だぞコラ!何勝手に入ってきてんだ!」
「そうなのか?不良娘が屯してるだけじゃ?」
「言ったなこの野郎!?お前らやっちまえ!」
話しながら、肩に担いでいた子達を下ろし、意識を戦闘に切り替える。これをする事で、不思議と冷静になり恐怖心が無くなる。
「図星かよ」
数秒後、頭がヘルメットで防御されていたので、全員腹を抱えたまま、床に蹲っていた。
「しっかしここは治安最悪だな。これじゃあ六式の鍛錬もゆっくりできやしない。よしっ!お前達はここで待ってろ。俺がここら一帯を〆てくるから、金があれば食い物でも持ってきてやる」
痛みでしばらく返事できないだろうから、彼女達の返事を待たずに二階の窓から飛び出して、記憶を頼りに覇気と呼んでいた力で周囲を探る。
さっきの様な既視感ではなく、レーダーの様な周囲に広げる感じ。
其処彼処から悪意を感じて、一番近い反応へとパルクールの要領で向かう。
もう正義の海兵じゃないが、自分の周囲くらいは静かにしてもいいだろ。スーツを着た悪徳ペッパー君に殴り掛かった。
一時間とちょっと過ぎた頃、さっきの事務所に戻った俺は、机に積まれた端金から少し取り、食料を買いに行った。
店員にふっかけられたが、ちょっとOHANASHIしたら、親切にも転売前の適正価格で売ってくれた。
それを言ったら少女達はカタカタ震えていた。そんなに寒かったか?
食料を分けてやり、久しぶりに満腹まで食べたと泣きながら食べる彼女達を見て、思う。
この世界がどんなとこなのかも知らないわからない。でも、知り合ってしまったからには、年長者として彼女達を更生させるまで面倒を見るしかないだろう。
「まずは自己紹介だな。俺は乙事ススム。元海兵で、今は宿無し文無しの無職だ。よろしくな!」
少女達は互いに顔を見合わせて、恐る恐ると言った感じに口を開いた。
「恵比寿」
「大黒」
「多聞」
「弁天」
「布袋」
「寿」
「吉祥っす」
……なんか、縁起のいい名前ばっかだな。偶然だろうけど。
──
なし崩し的に少女達と半同居の生活が始まった。
俺と同じ様に、彼女達もまた住む場所を失っていたからである。
だからまずは、集まっていた廃ビルの掃除から始める。
これから軍資金やメンバーが増えるかもしれないし、住む場所もきちんとした場所に移るかもだが、今住んでる場所を、今日初めて会った仲間と協力して何かをする事で、仲間意識を芽生えさせる。
勿論俺も一緒に掃除してるぞ。集めた資金から掃除道具は用意したけど、天井とかは掃除しにくいもんな。
吹きかけるだけ待つ事五分が売りの洗浄液をいたる所に掛けて、魚人空手の真髄『水の制圧』の副次効果、歩くだけで空気中の水分を通した振動によって、壁や天井の汚れを浮き上がらせる。
家具や床の掃除をしていた少女達が、変なものを見る様な目でこちらを見ていた。こう、本当に人間?みたいなニュアンスで。
「失礼な。銃で死ぬ程度には人間だよ」
「私らを数秒で制圧した奴が言う台詞じゃないね」
「ヘイローもないのにね」
「というかどうやってるっすか!?」
「武術とかそういうレベルじゃないと思うんですけど」
本当なんだから、嘘は言ってない。
そうだ。魚人空手を含め俺の得意な六式も彼女達に教えてみよう。力の強さが正義みたいな世界だし、強くなって損はないからな。
ここの住人というか、生徒で一括りにされている女子高生達。俺が肉眼で生身の人間だと判断できる女の子の頭上には、天使の輪っかに似たヘイローが浮かんでいる。俺にはない。
最初こそこの世界は天国なのかと勘違いしたが、ペッパー君や犬猫達にはないのを見ると違うらしい。
あまり難しいことはよく分からないが、このヘイローの有無で、超人的な力を発揮したり、不思議な力が使えるのが生徒と呼ばれる彼女達らしい。
とりあえず昔の制服姿を見せてもらった。
本人達は気恥しいだの文句を言っていたが、全員紛れもなく美少女だった。
あ、化粧品とかはちゃんと買い揃えました。かなりの値段がしたけど、年頃の女の子なんだからオシャレしなきゃな。そう言うのに糸目をつけない。
ヘルメットとジャージ、あとスケバン姿は辞めさせました。周りからの印象が悪いったらありゃしない。
これから、真っ当に働いたり生きる上で、他人からの評価は大事だ。気にし過ぎも悪いが。
それなのに、態々印象を悪くするイメージがある格好は以ての外。
皆、それぞれ違う学校出身だったのか、よく見ると角やら羽やら尻尾やら、ヘイロー以外にも普通の人間じゃない特徴が幾つもあって驚いたが、ここじゃ普通らしいし、単なる個性でしかない。
学校同士、種族同士のいざこざもあったが、集団意識の様なもので、個人としてみたら話してみるといい奴といった風に打ち解けていた。
「さて、衣食住と来たら、次は……何だっけ?」
「知らねーのかよ」
「礼節じゃない?」
「しかもちょっと使い方違うし」
「そうそれ!レイセツな!知ってたって。んで、何するんだっけか」
「おいおい」
「ススムちゃん大丈夫〜?」
「しっかりしてくれよリーダー?」
そうなのだ。早くも打ち解けたらしい皆が、俺をなんて呼ぶか話していたので、好きに呼んだらいいと言ったところ、リーダーと呼ばれる様になった。
確かに保護者的な意味では、リーダーと呼ばれても違和感はない。
「リーダーって柄じゃないんだが……まあいいか。とりあえず社会貢献の為に悪徳企業をぶっ潰そう!」
「「「いやちょっと待て!?」」」
全員から猛反対されたが、既に今まで得た資金源は襲って来た企業連合のアジトからぶんどって来たものだ。
盗みではない。正当な報酬である。
ドス黒い感情を隠さずに、俺を騙して尻の毛まで毟り取ろうとした奴らの末路を誤魔化しつつ、ここブラックマーケットは基本的に他人は信用ならない。
上手い話には裏があるとか言うように、ヒョロくて雑魚そうな見た目の俺は最高のカモに見えるらしく、出会う奴は例外なく人間基準で屑だった。
そんな奴らは生きている価値なんてない。
今まで他人にして来た略奪行為で幕引きなんて、奴らにはお似合いの最期だ。
おっと、思わず世界政府の屑共を思い出して、覇王色の覇気が漏れるところだった。
「マイクOK、映像問題なし。超簡単、悪徳企業壊滅RTAはっじまっるよー!」
『緊張感の欠片もないな……』
『何だか楽しそうですね』
緊張感がないのはそっちもだと思うぞ。
ほぼ任せてしまったが、自分達に必要な通信機材と撮影用のそこそこ高いドローンを、何と機械に強い吉祥が一から組み上げてしまった。
ミレニアムの生徒って全員そんな感じなの?って聞けば、あっけらかんと「いや、そんな事ないっすよ」と否定していたが、ミレニアムは天才達の学校だと他の娘から聞いて、恐らく凡ゆる分野の天才がいるんだろう。
気を取り直して、今回の攻略対象であるビルの玄関前に立つ。
「ノックしてもしもーし!!」
右腕を限界まで引き絞り、俺を見つけて取り押さえようと走って来たガードマンごと、一階のエントランスをただの拳圧がぶち抜き、支柱は残らず折れて一階部分は押し潰される形で崩壊した。
「んー、大分衰えたな……ビルで達磨落とししようと思ってたのに。こりゃ鍛え直しだな」
『『『……』』』
耳に付けたインカムが無音になり、今ので壊れたか?と色々弄ると呼吸音は聞こえたので大丈夫そうだと結論付けて、二階だった割れた窓から侵入する。
「どうも〜三河屋でーす。ここの会長さんに用があるんだけど、通してくれるか?」
「ぐ、何なんだお前は!」
「通す訳ないだろうが!」
マーケットガードと呼ばれていたゴツい装甲の警備ロボが複数立ち上がり、銃を構える。
断られるのは想定内。寧ろ、わざとああいう言い方をした。
だって、こう言えば面子を潰されたプライド高い奴は向かってくるからな。
「撃て撃てぇ!」
サブマシンガンやフルオートのアサルトライフル、機関銃がばら撒いた銃弾の雨霰が面となって襲いかかるが、足元にあった防護盾を踏んで垂直に立たせると銃弾の弾幕を防ぐ。
弾幕が収まれば、盾の側面を掴んでフリスビーの投げ方で前方に飛ばし、何機かのロボの機体を上下で泣き別れさせる。
未だ混乱している兵士を次々と叩きのめして、フロアを制圧。
カメラ目線でピースサインをして、意識を切り替える。見聞色の覇気は続々と降りて来る兵士の気配を捉えていた。
「おかわりが来たな。それじゃあ第二ラウンド、開始」
階段から現れた兵士に襲い掛かった。
「──とまあ、大体こんな感じ。どう?参考になった?」
「「「無理に決まってるだろ」」」
超人がデフォルトのヘイロー持ちがなんか言ってる。普通の人間の俺がちょっと鍛えた程度でできるんだから、君らなら朝飯前でしょうに。
「そんな君らに朗報。俺の戦闘を見て気付いたと思うが、アレ──具体的な名前は六式と覇気。この二つを教える」
「いいのか?」
「普通あんな戦い方できるなら、門外不出とか一子相伝とかなんじゃないの?」
「ヒルコ、詳しいじゃん」
「もしかして漫画とか好きっすか?なら今度おすすめ貸すっすよ」
「お、あんがとー。で、どうなのリーダー?」
「別にそういう規定は無いぞ。俺が所属してた組織が使ってたし、修得した奴からどんどん出世してたな」
「へぇ。アタシらもそれが使えるようになんのか」
「六式は単純に体を鍛えたり、身体能力が高ければ使えるから、優先的に教える。でも覇気は正直使えるかわからない。こればっかりは本人のセンスというか、俺が聞いた話じゃ死ぬまで修得できなかった奴もいるみたい。だからまあ、使えたら御の字程度に考えといてよ」
魚人空手や魚人柔術はどうしよう。ここら辺水場がないからな。