六式使いの元海兵   作:和ん子

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 明けましておめでとうございます!(素振り)
 餅つきやら大掃除やらですごく大変でしたが、皆さんはどうお過ごしですか?
 
 え?こんな時間に投稿するな?それはそう。
 
 今年最後の投稿なので、初投稿です。


元海兵、敗北す

 

 

 逃げた賞金首を追って、砂漠地帯の街──アビドスまで来る事になったのは良かった。

 ここまで逃げられるのは久しぶりだが、全く無い訳じゃないし。

 だが、現地の生徒を人質に取ったり、潜伏してたヘルメット団と組むなど、少し面倒だったが何とか無傷で倒すことができた。

 捕まっていた水色髪の生徒の猿轡を外そうと手を伸ばした時、背筋に悪寒が走り、剃でその場から飛び退く。

 

 見聞色の覇気を使うまでもない。明確な殺意を感じ取り、そちらを向いて拳を握った。

 

 「お前……ユメ先輩に何してる?」

 「ごか」

 誤解を解く為に口を開いたら、ピンク髪の少女が持っていたショットガンを躊躇なく撃った。

 

 こちとらヘイローもない一般人なんだが??

 

 咄嗟に遮蔽物に隠れてやり過ごすが、撃った瞬間にはもう向こうは動き出しており、この場に留まるのもまずい。

 少女が死角から飛び出してきて、銃口を向けるが俺はそこにはいない。遮蔽物を飛び越えて反対側に出ると、少女の背後を取る。

 

 ショットガンの様な制圧力の高い範囲攻撃を有する武器は、相性が悪い。

 これが神秘の少ない豆鉄砲なら銃弾くらい武装色の覇気で防げたりするんだが、見るからにあの少女は別格。今までの賞金首がひよこに見える。

 保有する神秘の量が段違いに多く、それでいて密度というか純度というか、質も高い様に感じる。確実に今まで出会った生徒の中じゃ断トツで一番だ。

 

 生憎俺の覇気はまだそこまで強くない。六式も鍛え直す為に日夜賞金首狩りをやっているのだから、この生徒の相手は無理ゲーというもの。

 

 だが、実力が足りませんでしたで、ただ負けるのもこっちが納得できる訳がない。

 近接であのショットガンを封殺する。これしかない。

 

 背後から近付くが、少女はこちらに目も向けずに銃口を向けて発砲。それを予知した瞬間にその場から横に跳んで回避。

 避けられても冷静にポンプアクションで再装填するその表情に、この世界に来て初めてゾクっと背筋が凍る、明確な死のイメージを感じた。

 

 

 ──だが、その程度で足が止まる程、柔な鍛え方はしていない。

 

 ダンッ!!

 更に踏み込む。世界が灰色に色が抜け落ちていき、全てがゆっくりと流れる。

 

 少女がショットガンの引き金を引く。

 

 覇気で黒化した右腕を引いて、前に押し出す。

 

 銃口から炎と共に無数の弾丸が放たれる。

 

 全てを掴むことはできなかったが、銃弾を払い除けた右手の甲が犠牲になる程度で済んだ。

 流石に銃弾を掴むのは予想外だったのか、少しだけ目が開かれたが、すぐに弾を再装填して構える。

 

 銃身の横腹を叩いて射線を逸らす。散弾が放たれたが、少女の体勢は崩れておらず、片手構えて引き金を引く。

 

 放たれる前に銃身を下から持ち上げて躱す。

 

 もう片方で腹を目掛けて拳を繰り出すが、少女の手が横から手を押し退ける。そのまま掴んで平行棒にぶら下がる様に跳び上がり、全体重をかけたドロップキックを俺の腹へぶち込んだ。

 

 「てっ──!?」

 背後へ飛んで衝撃を減らすのは、腕を掴まれているから不可能。ならば──。

 

 咄嗟の判断で、六式の鉄塊を集中させたが、それでも耐え切れずに内臓への負担は計り知れない。口から血を吐き出しながら、少女が手を離したことで廃倉庫の壁まで吹っ飛んだ。

 

 「かふっ……やっぱ強ぇな」

 「事情は後でゆっくり聞きます。今は寝てなさい」

 

 砂埃が晴れる頃、ゆっくりとした足取りで近付いて来たホシノは、先程と何ら変わらない表情で油断なく銃を構えており、その視線には殺意すら宿っていた。

 正直身体中が悲鳴を上げており、生命帰還による回復も追い付いていない。

 銃口は彼女に蹴り潰された腹を狙っており、今仮に手足で射線を逸らしても、二発目で詰み。

 万事休すかと、瞼を下ろした時だった。

 

 「待ってホシノちゃん!その人は悪くないのっ!」

 「……は?」

 

 突如聞こえてきたもう一人の声。どうやらその声のお陰で、目の前のホシノと呼ばれた少女は、銃を構えたまま動きを止めた。

 

 「どうゆうことですか?こいつが誘拐犯なんじゃ」

 「違うよ!この人は私が捕まった悪い人達を倒して、助けてくれたの!」

 「で、でも……」

 

 見るからに狼狽えるホシノに懐から少し血の付いた手配書を出して、離れた場所で倒れてる奴の方を指差した。

 

 「あ……ごめんなさい」

 「っぺ!いいっていいって、誤解は解けたんだし。何より久しぶりに格上と戦えた。貴重な経験ありがとな」

 「……変な人ですね。ヘイローもないのに銃弾を弾いたと思えばって、怪我は大丈夫ですかっ!?」

 「ええっ!?手当するから見せて!」

 

 ホシノが奪う様に俺の右手首を掴んで自分の方へ引っ張る。小さいのに凄い力で、覇気で強化しないと力負けするな。

 

 「あれ……?傷が、ない?」

 「他の傷も塞がってます。あなた、何者ですか?」

 

 折角ユメの助けで、ホシノの警戒が緩んだのにまた不信感がふつふつと湧いてくる。

 

 「あー……えっと、俺は君らみたいなヘイローが無い代わりに多少身体が丈夫なのと、回復が早いんだよ。それでも銃弾を何発もくらったら死ぬけど」

 「そうなんだ。じゃあせめて服を綺麗にさせてよ。血とか砂とかすごいよ?」

 「そうですね。私の勘違いが原因ですし、それくらいはさせてください。断っても引き摺っていきますけど。それでチャラです」

 「それ、どう足掻いても連れてかれるやつじゃん」

 

 女子に背負われるのは、汚れてるし断って自分の足で立つ。それから大人しく二人の後を追って廃校寸前のアビドス高等学校に向かった。

 

 手配書の賞金首は、ユメがロープでぐるぐる巻きにして引き摺っていた。

 

 

 ──

 

 

 洗濯機がごうんごうん回っている間、学校にあった予備の体操服を借りて過ごしている。

 ただじっとしているのもアレなので、ちゃちゃっとDU区のヴァルキューレ警察学校に賞金首を引き渡し、換金してもらってアビドスに蜻蛉返り。

 月歩を使えば一直線だし、そこまで不便はないし、地図がなくとも上から眺めて場所を確認できる。

 

 グラウンドに軽く着地すれば、俺に気付いたホシノがユメを伴って迎えてくれる。

 

 「おかえりなさい」

 「お、おかえりなさい。早かったですね」

 「空を走って来たからな。それにほら、早く捕まえたからか、若干上乗せして換金してもらえたぞ」

 「ああ、さっきのアレですか。ほんと不思議な人ですねあなた……」

 「わあ!すごいお金!これだけあれば……」

 

 ホシノは俺の行動に呆れた表情を浮かべるが、ユメは俺の持っていたお金に目が行き、初めこそ興奮していた声色が、何故かだんだんと弱々しくなる。

 

 「何だ?金に困ってるのか?」

 「……ユメ先輩」

 「ご、ごめんよホシノちゃ〜ん」

 

 ジト目のホシノがユメを嗜めている。やがて、はぁ……とため息を吐いた後、ホシノが説明してくれた。

 

 「9億以上の借金!?」

 「そうなんですよ。所謂闇金に昔の生徒会がお金を借りて、今はその利子を返すので手一杯なんです」

 「利子を返せないと、学校の所有権が銀行に移っちゃって廃校になっちゃうの」

 「今回ユメ先輩が攫われたのも、度々アビドスの校舎や土地を狙ってる不良やヘルメット団に誘拐されたからでして」

 

 「なるほどな。大体の事情はわかった。ならこれやるよ」

 「「え?」」

 

 手に握っていた大金が入った鞄を丸ごと二人に差し出せば、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした二人が慌てて手を突き出して断る。

 

 「いや!いやいやいや!恵んで貰おうと思って話したわけじゃないよ!」

 「そうですよ!しかもこれは元々あなたが稼いだ賞金じゃないですか!アビドス生徒ですらないあなたには関係ないでしょう!」

 

 「そうは言っても今の話を聞いて、はいばいばいは人としてどうかと思うし、それに俺が稼いだ金なら俺がどう使おうと文句はないだろう?」

 「「ぐぅ……!」」

 「それに、折角知り合ったんだ。これからもよろしくってことで、アビドスが無くなったら困るのは俺もだ。それでも納得できないなら……そうだなぁ、ホシノには偶に模擬戦の相手をしてほしい。ユメはアビドスの美味い飯屋を教えてくれ。それでいいだろ」

 

 二人は納得はできないが、折れそうにない俺の言い分に仕方なく頷いて、賞金が入った鞄を受け取った。

 

 「ありがとう。そう言えば名前を聞いてなかったね」

 「今更ですね」

 

 「確かに。俺は乙事ススム。ブラックマーケットで賞金稼ぎをしてる。学校とかは特に通ってない」

 「私はアビドス高校の生徒会長、梔子ユメだよ」

 「小鳥遊ホシノです」

 

 「「「よろしく」」」

 

 こうして、廃校寸前のアビドスと交流して、俺の六式の鍛錬相手と食没の供給先を得た。

 ユメに紹介してもらった柴関ラーメンはマジでコスパいいし、美味いしで最高だった。預かってる生徒達とも一緒に行くほど常連となった。

 

 

 

 ──

 

 

 「──という訳で、今回の報酬は無し。貯蓄を切り崩すことになりそう。ごめんなさい」

 ブラックマーケットの拠点に入った瞬間から、床に頭を擦り付けて土下座した。

 

 「……チッ」

 

 拠点にいたメンバーの一人が小さく舌打ちして、コツコツと足音が近付いてくる。

 

 「いつまでそこで膝ついてるつもりだ?稼ぎがねぇならさっさと動け」

 「お、おう……怒ってないのか?」

 

 俺の首根っこを掴んで無理矢理立たせられる。持ち上げられて、パッと手を離されれば地面に足が付いてそこで棒立ちになる。

 俺が立ったのを確認して、シュラはそっぽを向いて腕を組んだ。

 

 「はぁ?何で怒んだよ。ススムがそういう奴だってのは初めから知ってるし、それでアタシらは助かってる。不良時代じゃ考えられなかったいい暮らしをさせてもらってる。だから……アタシが言いたいのは……他の奴らに示しがつかねえってことだよっ」

 「え、やっぱ怒ってんじゃん」

 

 「うるせぇっ!帰って来たら訓練に付き合え!」

 「わかったよ」

 

 




 
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