自分、漫画は週刊誌派なんですが、
あ、勿論好きな漫画は単行本買ってますよ。
でも、今のジャンプとか呪術廻戦とかしかちゃんと読んでないんですよね。
では、初投稿です。
いつもの様にブラックマーケットの拠点で、仲間の訓練を見たり、賞金稼ぎや喧嘩を売ってきた悪徳企業を返り討ちにしたりしていた俺は、以前セイアから指示を出されていたのを思い出し、トリニティ自治区を散策する事にした。
知り合いを増やせと言われてもと、セイア達は派閥のトップ。自治区の人間でさえ、そう簡単に会える人物ではない。
彼女達の紹介なしに、人脈を増やそうにも土地勘もないんじゃ……あ、そう言えば。
近くにいた生徒を捕まえて場所を聞けば、目的地へと急いだ。
何処も彼処も似た様な街並で、少し迷った末に辿り着いたのは、大聖堂。
ここを部活動の拠点としているのが、シスターフッド。あのスイーツ騒動で俺と戦った団体の一つがシスターフッドで、最後まで戦わずにいたあの子がここの次期首長なんだとか。
初日に複数のお偉いさんとエンカウントしていたのは驚いたが、後にしてみれば幸運だったと思う。
金属の扉を押し開けると、中は聖域と称するのが相応しい程の存在感を感じた。
壁から天井までびっしりと描かれた、天使や聖人と思われる人物の壁画に目を奪われる。
奥の部屋には幾つもの椅子が並び、様々な色で表現された神か天使の姿のステンドグラスから、眩しいくらい陽光が差し込んで、そこで祈る人物を照らし出していた。
聖堂内に勝手に入ってしまった俺だが、光の中で真摯に祈りを捧げるその少女に話しかけるのを躊躇してしまった。
しばらくその光景を眺めていれば、祈りを終えた少女はすっと立ち上がり、こちらを振り返る。
「ようこそおいでくださいました。主の家はいついかなる時も歓迎しております」
「あ、あー、お邪魔します。俺の名前は乙事ススム。この間、騒動に巻き込んだお詫びをしに来たんだ」
持っていたスイーツの紙袋を前に出して、ここに来た理由を述べる。
「もしかしてあの時の!そんなお詫びだなんて……!こちらこそ、組織の者が申し訳ありませんでした。っと、ご挨拶がまだでしたね。歌住サクラコと申します。若輩者ですが、シスターフッドの次期首長候補という事で、首長に代わり、代表して謝罪します」
ピシッと腰を九十度に曲げて頭を下げたサクラコに、慌てて頭を上げるよう言うと、申し訳なさそうに形の良い眉を寄せて目を伏せていた。
「とりあえず、あの時の限定スイーツより見劣りするかもだけど、貰ってくれるか?」
「わざわざありがとうございます。はい、確かに受け取りました。ですが、こちらは何も用意が……」
「気にしないでいいよ。結果的に怪我もしなかったし」
「いえ、あの後、騒動に加担した者は厳しく罰しましたので。今度、改まってお詫びをさせて頂きます」
「……程々にな?」
「はい」
長椅子に座って二人きりで話してみると、意外と気さくで──トリニティのお嬢様像としてあっているのかわからないが──世間知らずなのか、聞き齧った話題の真偽を確かめたり、普段俺が何をしてるか、どうしたらあんなに強くなれるのか、ヘイローの無い身体は脆弱で銃弾一発でも致命傷になり得るのに、怖くないのか、など。
彼女からぽんぽん出て来るので話題に困ることはなかった。
「怖くないか、か……正直死ぬのは怖いけど、大切なものを失うのはもっと怖い」
「大切なもの、ですか?」
「ああ。俺は今まで無力で世界の広さを知らない子供だった。理不尽なことや、どうにもならないことも確かにあるけど、もしあの時、俺に力があったら救えた命もあったはず」
「……」
「だから、俺は手の届く範囲で守れる命は、俺の命に変えても守ると決めてる。それに、最近筋がいい仲間ができたし、俺に何かあっても今のあいつらなら大丈夫」
「一つ、ススムさんに言わせて頂きます」
「うん?」
「あまり、自分を粗末に扱わないで下さい」
「でも、俺は」
「私は!今の貴方の信念を聞き、心が震えました。ですが、それは尊いものであると同時に、ススムさん自身を軽んじる行為です。この世に絶対などあるはずがないのは私も理解していますが、それでも!命に優劣などありはしないのです」
サクラコの表情は心配や懇願の色が浮かんでいる。偶々知り合った俺にさえ、死んでほしくないと本気で思うなんて、人が良すぎやしないか?
ここで何を言っても彼女は引かないだろうし、俺もその時が来れば、迷わず危険に飛び込むと思う。
「わかったよ。少なくとも死に急ぐことはしない」
「まだ何か隠してそうですが、取り敢えずは納得しておきます。あっ」
「何?」
「あの……ススムさんがもしよろしければ、私と連絡先を交換しませんか?」
サクラコと連絡先を交換して、とりあえずセイアとの約束は守れたかな。女の子の連絡先なんてどう聞いたらいいかわからなかったから、向こうから言い出してくれて助かった。
サクラコも甘いものが好きだそうで、機会があれば今度は一緒に食べに行こうと約束して、大聖堂を後にする。
これで二度目だが、トリニティのお嬢様が持たせてくる手土産が毎度高級そうな上に、こっちの事情を汲んでくれた個包装だったりで、申し訳なさが立っちまうな。
──
結構長居してしまって、すっかり遅くなってしまった。
街灯もあるが、やはり夜のトリニティは暗く、静寂に包まれ、少し寂しさを感じる。
点在する優しい灯りに、古くて格式高そうな建物が多いから、眠らない街のブラックマーケットとはまた違った眺めは、それはそれは良いだろうな。
そんなことを考えていれば、道のベンチに人の気配を感じた。
オーバーサイズの白いパーカーと、仮面で顔を隠した少女だが、その視線は向かいの花壇に咲く白い花に向けられている。
「トリニティの生徒……じゃなさそうだな?迷子か?」
違ったら、その時はその時。軽い気持ちで少女に声を掛けた。
「どうした嬢ちゃん。迷子か?」
「?……」
少女は少し固まって、自分に話しかけてるのがわかり、喋らずに両手をスッスッと動かし、此方に何かを伝えようとする。
「あー、確か手話だっけか?すまん、手話はわかんねえな」
「……」
「でも、迷子じゃないのはわかったぜ。お姫様」
「!?」
喋んないのに、感情が伝わってくるから、その様子から無邪気な悪戯っ子を連想させた。
見聞色の覇気で相手の気持ちを読み取っただけのズルなんだが、まあ、喜んでもらえて良かった。
「俺の名前は乙事ススム。トリニティが比較的治安はいいとは言え、キヴォトスだからな。夜の散歩も程々にしろよ。またな」
迷子じゃなかったし、不良とかの悪い子でもなさそうだから、軽く注意だけしてその場を立ち去ろうとしたら、軽く服の裾を掴まれる。
何だ?と振り向くと、少女の指は向かいの花壇に咲く花──月下美人に向けられていた。
「あの花が、気になるのか?」
コクリと頷く白い少女。相変わらず言葉はないが、俺にはそれだけで、充分伝わる。
正直女の子の好きな話題なんてわからないが、ここ数日で仲間の子達に教えてもらった知識を披露する時だと、少し得意気に説明する。
「あの花はな。月下美人っていう名前なんだが、実はサボテンの仲間なんだ」
「……?」
「あ、サボテンを知らない……そっか。んで、あの花は夜に咲いて朝には萎んだり、年に一回しか咲かないって有名なんだよ。花言葉も儚い美や儚い恋、ただ一度だけ会いたくてとか、他にも秘めた情熱とか真実の時だったか?そんな感じ。参考になったか?」
白い少女はやはりこういう話というか、花に興味がある感じか。無骨な銃を持っててもやっぱ女の子なんだなと再認識。
それに、この少女の服が白いせいか、その儚げな印象か、暗闇に一輪だけ咲く、あの月下美人とダブった。
「まるで、月下美人みたいだな」
「?」
「え?声に出てたか?いや、お前とあの花が似てるなって。こんな夜に会ったのもそうだし、それにさっき何となくお姫様って呼んだが、今じゃ何でそんなこと言ったのか……」
自分でも似合わないと思う台詞を吐いてしまって、若干気まずくなるが、それよりもずっと少女から視線を感じる。
「自分はどれかって?……うーん、儚い美?いや、秘めた情熱も……やっぱただ一度だけ会いたくてかな?」
「どうして?って、理由?理由か?っておい、あんまり揶揄うなよ。この悪戯好きのお姫様め。……そういや迎えが来るんだったな。これ持ってけよ」
「……?」
「人様の貰い物を横流しするみたいで悪いんだが、元々お土産は別に用意してたからさ。証拠隠滅に付き合ってくれ。丁度個数もあるし、仲間が多くても喧嘩にはならないだろ」
サクラコから貰ったマカロンの詰め合わせを少女に渡す。
「動くな。動けば撃つ」
後頭部にグリッと強めに銃口を突き付けられる。
気配を消すのが上手いな。
直前まで気付かなかったし、どうやら少女の反応を見るに本物のお迎えらしい。もしかしてマジでお姫様なのか?
「何もしてないって。その物騒なもの早く退けてくれ。こちとらヘイローが無いんだから死んじまう」
「動くな、と言ったぞ」
背後の少女の殺意が高まったのを機に、引き金を引くより速く振り返り、裏拳で銃の横を叩き、少女を射線から外す。
少々手荒だが、怪我で済むとはいえ、引き金を引いた罰にお灸を据えてやらねば。
見聞色の覇気は相手の声を聞いたり、周囲の気配を探るだけじゃない。極めた奴は数秒先の未来すら見えるようになる。
次の瞬間、頭を撃ち抜かれた既視感が脳裏に浮かび、その射線から首を傾げて銃弾を避ける。
「何っ!?」
「腕の良いスナイパーがいるな。それともう一人、こっちはいいとして……どうした?近くに彼女がいると戦えないのか?」
わざと撃ってくるよう隙を晒したのに、攻撃して来たのはスナイパーだけ。
動揺したのか、目を見開く帽子と機械マスクの少女に、こちらから一歩踏み出した。
「場所を変えるぞ」
帽子少女を小脇に抱えて建物を軽く飛び越える。
途中スナイパーから狙われそうになり、人質を盾にして無事着地。どんな訓練を受けたら人質抱えた標的に躊躇なく撃てるのか。
「俺は乙事ススム。お前は?」
「」
「だんまりね。お前は体術の才能がありそうだ。一つ、手解きしてやるからかかって来い」
言い終えるかどうか、無骨なアサルトライフルをぶっ放す帽子少女。その容赦の無さに好感が持てる。
仲間内での手合わせもだが、完全に敵意しかない相手じゃないと緊張感がないからな。
「紙絵」
銃弾の僅かな風圧にも対応し、紙のように手応えを感じさせない最小限の動きで銃弾を躱す。
「俺に銃は当たらないぞ。防いでみろ」
剃で目の前に移動し、指銃の速度で拳を放つ。流石にこの程度死ぬとは思わないが、怪我させたい訳じゃないからな。
銃で防ぐかと思いきや、咄嗟に後ろに跳んで衝撃を逃したか。やはり、この子はいいな。
「どんどん行くぞ!」
近付かせないと銃を乱射するが、狙いが定まっていないし、未来視も合わせて避ける避ける。弾切れになった瞬間に加速し、リロードの隙を与えず銃を持つ手を狙って飛ぶ指銃で弾く。
「飛び道具!?」
「余所見する暇は無いぞ」
時折撃ってくる狙撃を躱しながら、帽子少女がギリギリ反応できる速度の拳や蹴りを放ち、徐々に速度を上げていく。
「ぐ、うっ!……この!がっ」
「これぐらいか。うちの連中より筋がいい」
止めのアッパーカットで少女の体が宙に浮き、その際に帽子が外れてポスっと地面に落ちた。
「はいお疲れ。そこの二人も、もう出て来ていいぞ」
建物の影に隠れていた白い少女と、もう一人マスクの少女が、倒れたまま荒い息を整えている帽子少女を心配して出てくる。
「中々だったよお前ら。お菓子はお姫様に渡してあるから付き合ってもらった礼に皆で食べてくれ。あと、トリニティのよく効く軟膏らしい。殴って悪かったな」
「き、さまは……情けをかける、のか?」
「情けって、殺し合いをした訳でもないのに大袈裟だな。まあ、別嬪さんの顔に傷が付いたら流石の俺も責任取れないしな。今度またお菓子持って来るから許してくれ」
「ぐぅ……クソッ!」
殺意も敵意程度に収まったし、もう大丈夫だな。
「ああ、あと一つ。良い狙撃だったとスナイパーに言っといてくれ。またな!」
剃でその場からかき消える様に立ち去る。もうスナイパーも狙ってないだろうが、万が一だ。
「……姫。奴は何者なんだ?」
「……」
スッスッと手話で返す。帽子少女こと錠前サオリは体を起こして落ちた帽子を被り直す。
「……乙事ススム。ヘイロー無しであの体術……化け物め」
「で、何でお姫様って呼ばれてたの?」
「……」
マスク少女が白い少女に尋ねれば、彼女は、片手で顔の前に広げると窄める動作で返事をした。
「えぇ……マジ?」
五千文字だやったぜ。
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