偉大なる先生方。
この様な場末の二次創作小説に来てくださり
大変恐縮です。
ブルアカも遂に5周年アニバーサリーを迎えました。
おめでとうございます!!めでたい!
今日は、あの白い少女達との約束を守る為に、労働の対価で購入したお菓子を持ってトリニティに来ていた……のだが、実はあれから何日も通っているのに、あの四人組に出会えた試しがない。
あの日は夢でも見てたのか?いやそんなはずはと今日も懲りずにトリニティへ来ている。
夜のトリニティは、静かで厳かな雰囲気漂う神秘的な場所だ。
だがその日は違い、あちこちで警報や警察車の回転灯の明かりや捜索用の投光器が夜空を明るく照らし出す。そのせいで星一つ見えやしない。
何事かと見聞色の覇気を広げて、眼下で走り回る正義実現委員会の部員や、何故かトリニティ自治区まで出張って来ているヴァルキューレ警察学校の生徒達の声を拾う。
──慈愛の怪盗が出たって!
──美術品は盗まれたのか!?
──目標は今も逃走中。
──野郎オブクラッシャー!
今なんか変なのいたな?
っと、それよりも慈愛の怪盗って何だ?美術品が盗まれたってことは泥棒なんだろうが、手間取ってるみたいだし、俺も手伝うか。
久々に見聞色の覇気の範囲を限界まで広げる。
「──いた」
一人だけ、美術品を大切に抱えている奴がいる。多分そいつだと当たりを付けて、走り出した。
建物の屋根にワイヤーを引っ掛け、某蜘蛛男の様な移動をしている白い人物を発見。ちょっと危ないが、その機動力を削ぐとしよう。
「嵐脚」
視認すら難しい、高速の蹴りで発生した文字通り嵐の刃は正確にワイヤーを切り裂き、一瞬の浮遊感から犯人はバランスを崩す。
それでも美術品を守ろうと、体を丸めてお腹に抱える犯人。
剃で先回りして、落ちてきた彼女を先回りして地面で抱えれば、間髪入れずにマスケット銃の長い銃身が振り抜かれ、顔を仰け反らせる。
至近距離で発砲したが、首だけ動かして銃弾を躱すと、腕の中にいたはずの彼女の姿がない。
「助けていただき感謝します。ですが、私は捕まる訳にはいかないのです」
「お前だろ?美術品を盗んだっていう、慈愛の怪盗は」
「ええ、そう名乗ったことは一度もありませんが、中々洒落のきいた呼び名なので、私も気に入っているのですよ」
横抱きに受け止めた時に、美術品は取り返している。目的はほぼ達成だが、それを目の前の彼女が見逃すかといえば、そうはいかない。
「一つ、お聞きしても?」
「何だ?」
「その美術品は、元々悪人の盗品で、私がこうして取り返し、本来あるべき場所に置く為にしたこと。果たして、本当の悪はどなたなのでしょう?」
「なんだ、じゃあお前がやったのは怪盗じゃなくて、鼠小僧みたいな義賊なのか?」
「ふふ、そうですね。やってることはそうかもしれません」
「だがよ。お前は元の持ち主に返す気もないだろ」
「……何故そう思いに?」
「何となく。昔お前みたいな奴に会ったことがある。独特の倫理観を持ってて、そこに他人は介在しない、そんな奴だ。お前にもあるんだろ?自分だけの美学ってのが?」
「──素晴らしい!私と同じ美学を持つ方がこの世に存在したとはっ!では早くその美」
「だとしても!」
軽い威圧によって怪盗の言葉を遮る。
「俺の正義はそれを見過ごさない!」
覇気によって発生した風に、肩に掛けただけの正義のコートがはためく。
「『愚直なまでの正義』。誰かの為じゃない、救われぬ者の為に俺は、孤独なお前を救ってやる」
「……大層な正義ですこと」
彼女の、マスケット銃の閃光により、戦いのゴングが鳴る。
手に持っていた美術品は、傷付けないよう紐で縛り背中に背負っている。高速で迫る銃弾を前に走り出しながら、首を横に移動させてやり過ごし、さらに接近する。
発砲と同時に、無数の薔薇の花弁が彼女の姿を隠すが、見聞色の覇気の前ではあまりに薄い壁だ。
「指銃、斑」
連続の指銃は、正確に花弁を貫き視界は開けたが、既にそこに彼女の姿はなく、再びワイヤーで空中に上がっていた。
「猫みたいに身軽だな」
このまま逃げる気か?すぐに自分も追いかけようと足に力を入れれば、足元に何かが転がっているのに気付く。
シュー!と俺を覆う程大量の白いガス。催涙系じゃない、毒でもない。ただの目眩しなら足止めにすら──。
遠くでバァンと銃声が鳴り、音の鳴った方向で怪盗の居場所を把握するが、同時に、視界を遮る煙を破って現れた銃弾に意識を割かれる。
不意に訪れる既視感。直後弾が爆発し、煙ごと俺を吹き飛ばした。
「……やり過ぎましたかね。さて、美術品を回収しなければ」
屋上でその様子を見ていた彼女は目元の仮面を弄り、興味をなくした無表情でそう呟く。
「その必要はねえよ」
「なっ」
「手品師が驚いてちゃダメだろうが!」
俺に向けたワイヤーは拘束用。掴んだり触れた瞬間、体に巻き付き動きを封じる物。
だが、関係ないな!
むんずとワイヤーを掴み、巻き付きが始まろうとも構わず引っ張り、逆に彼女を此方へ引き寄せる。
「くっ」
マスケット銃を向けられるが、彼女は撃てないだろう。
なにせ、さっきまで背負っていたはずの美術品が前に移動してるからな。
「捕まえた」
予想通り、賭けに勝った俺は何もできずに首根っこを掴まれている慈愛の怪盗をワイヤーでぐるぐる巻きにする。
「……ぐ、油断しました」
「油断じゃないだろ」
「はい?」
「お前は罪を犯した。だから捕まえる。だが、俺はお前の美学まで否定したつもりはねえよ」
「いや、貴方は先程」
「わかった気にはなってたが、それは気になっただけだ。お前の口から詳しく聞いた訳じゃないしよ。でもあの時、確かに美術品を庇ったし、これを撃てないだろうって予想しただけだ」
「貴方は……」
「何が何でも美術品は守る。そんなお前の美術品に対する慈愛は本物なんだろうよ」
ま、俺には美術品はさっぱりわかんないんだけどな。
戯けた態度でそう締め括り、彼女を掴む反対の手を握り締める。
「え、あの……その拳は、なにを」
「ああ、これか?これは、おいたした子供にだけすることにしてんだ」
「いえあの、理由を聞いた訳じゃ」
「歯ァ食いしばれよ。ちっとばかし効くぞ……!」
「ヒッ!」
「愛の鉄拳制裁!」
ゴチンッ!!!
彼女の脳天に黒化した拳を落とした音が、夜のトリニティに響く。
自分の頭くらいの大きなたんこぶをこさえた慈愛の怪盗を米俵を担ぐ様に抱え直して、近くにいたヴァルキューレ警察学校の生徒に引き渡した。
勿論、取り返した美術品はトリニティのセイア宛に届けてもらい、怪盗が集めた悪事の証拠を同封したから、これで文句はないだろ。
──
後日、逮捕協力したお礼に、一度だけ面会を許された俺だが、担当したヴァルキューレの生徒──尾刃カンナから、いつの間にか俺自身も指名手配中だと聞かされて軽くショックを受けた。
まだ正式な発表はされてないが、直に手配書も配られるだろうと。
懸賞金の出資者は、限りなく黒に近いグレーな阿漕な商売をしてる悪徳企業連だと。
あの鉄屑共、面会が終わったら土地ごと消し飛ばしてやる。
刑事ドラマでしか見たことない部屋に通され、硝子越しに慈愛の怪盗が、囚人服を着て座っている。
何故か、白のドミノマスクはそのままだったが。
「数日振りですね」
「そうだな。あの時挨拶してなかったと思ってよ」
「挨拶、ですか?」
「おう。俺は乙事ススム。今は退学した子達を保護しながら悪徳企業をぶっ潰して回ってる」
ん?これ、ここ(警察学校)で言って大丈夫か?
「……貴方も私と同じようなことをしてるじゃないですか」
案の定呆れ顔でため息を吐く彼女。
後で控えていたカンナも頭痛がするのか頭を抱えている。
あ、やっぱダメっぽい。
「そうだな。だからもうすぐ俺にも手配書ができるんだと」
「当然かと。寧ろ、この場で捕まっていないのが不思議ですね」
「だな」
「ですが……そうですか」
慈愛の怪盗、彼女は手錠が繋がった手で口元を隠し、クスッと笑う。
「私には私の美学が、貴方には、貴方が信ずる美学があるのですね」
「美学ってもんじゃねえよ」
前世からこの生き方しかできないんだ。
力のない俺は、誰かの矢面に立つことでしか、誰かを守れないし、それでも全員は救えない。
「ですが、そうですね。同じ志を持つ貴方にだけ、名乗らせるのは私の美学に反します」
顔を硝子に近付け、ちょいちょいと指で誘われる。
言う通りに従うと、微かな吐息と共に彼女の本名と思われる名前が、俺の鼓膜を擽った。
「覚えておいてください。私を捕まえた好敵手」
「ああ、覚えててやるよ。『慈愛の怪盗(清澄アキラ)』」
面会時間は終わり、ヴァルキューレを出たが、流石に俺を尾行する度胸のある奴はいなかった。
天井分のガチャ石がないのはいつものことなので、これからぶん回してきますね。
お気に入りに登録ありがとうございます。
馬鹿ドラさん はやてsirakawaさん カルンさん バイティングエッジさん SOLVAさん