お久しぶりです。
最近デカグラマトンだとか周年ガチャだとかでブルアカしてました。
いやぁ、強かったなお姉様。ギミックのおかげでキヴォトス最強のドリームチームが組めたのはすごく楽しかったです。
では、ユズ&エイミPU用の石がなかったので初投稿です。
普段ブラックマーケットで活動している俺だが、時には、ここと大差ない治安のゲヘナ学園にも赴くことがある。
ブラックマーケットは自他共に認める犯罪の温床だが、そのやり口は程度あれど、悪徳企業連や退学処分や停学中の学生が主な弱者の集まりでしかない。
しかし、ゲヘナは文字通り学園に所属する生徒の大多数が問題児で構成されてそうな、日に幾つもの凶悪犯罪が起こる無法地帯。
それも、比較的神秘の多い強者が徒党を組んでいる場合が多く、テロリストとして手配書も出回っている。
だからこそ、ゲヘナに行けばそこを拠点とする指名手配犯に簡単に遭遇できるということ。
……なんて、思ってた時期が俺にもあった。
陰湿さでは類を見ないトリニティと正面から対立しているゲヘナが、何故そんな無法地帯にも関わらず、キヴォトス三大マンモス校として今も君臨できているかと言えば、数多の問題児や凶悪犯罪者を束ねても余りある圧倒的強者が君臨しているから。
ゲヘナ自治区に入ってすぐ、ゲヘナ生徒から絡まれた俺は、自己防衛として拳で鎮圧した。
立っている者がいなくなり、ほっと一息ついたのも束の間、突如巨大で暴力的な気配が、空から背後に降り立った。
全身の毛が粟立つのを感じ、ほぼ反射的に振り返れば、そこにいたのは──可憐な姿の魔王だった。
「大丈夫?……貴方、どこかで見たかしら?」
身の丈程ある巨大なマシンガンを肩紐で背負っている、小柄な白髪少女に話しかけられる。
「初対面だと思う……って凄いクマだぞ!?ちゃんと寝てるか!?」
「……もう5日もベッドで寝てないわ」
「五徹!?死ぬぞ!?」
「知ってるかしら?座ったまま意識を飛ばすと、何かあった時すぐに起きられるのよ」
「ダメだ末期だこの子」
何で未成年の女の子が、労基もびっくりな社畜ムーブをかましてるのか。
海軍時代も、そもそも労基なんて概念はないから、大将幹部職の皆も書類漬けでグロッキーだったような……。
業務に病的なほど真面目なサカズキさんが、気分転換に度々特訓に付き合ってくれたっけ。
兄弟子のクザンさんは、完全に自業自得だけど。
そんな光を失った目とげっそりとした表情の少女が、問答無用で銃口をこちらに向けて発砲してくる。
少し範囲が広くてギリギリ避けるのは間に合ったが、避けた後ろの壁は見るも無惨に蜂の巣になり、支え切れずに崩落した。
「……思い出したわ。貴方、手配書にあった顔ね」
「手配書……はぁ。ついに俺もお尋ね者か」
トホホ。肩を落とせば、銃口は向けたまま少女が近付いてくる。
「抵抗すれば容赦はしない。でも、大人しくすればすぐに解放するわ」
優しいな。俺も一応投降勧告はするが、それは形式的なもので、海賊が大人しく投降することはなかった。
「ありがとう。でも俺も捕まるわけにはいかないから……全力で抗わせてもらう」
「そう……残念ね」
ジャキ。焦点の合わない虚な目から、暴力的な覇気を感じ、構える。直後、重厚感溢れるマシンガンが濃紫の神秘を纏う銃弾を吐き出した。
狭い通路はあの範囲攻撃を見れば不利と判断し、壁を越えて屋根に登れば、羽を広げて小さな魔王が飛翔しながら追従する。
マシンガンの掃射には少し溜めが必要らしく、インターバルがある。
だが、それがデメリットにならない広範囲かつ、並の生徒なら一撃で昏倒する威力の攻撃が雨霰と降り注ぐのだ。弾幕系シューティングかよ。
今も見聞色の覇気をフルに使い、回避に専念しているが、不思議なのは相手の少女から何が何でも捕まえるという執念というか、仕事に対するやる気というか、あんまり乗り気じゃない雰囲気を感じるのだ。
目は据わってるし、徹夜漬けでせいでゆらりと動く様は亡者のようだが、見聞色を介してそう感じた。
「……なぁ」
「……何かしら?言い訳なら後で聞くわ」
「いや、言い訳じゃなくてな。どんな理由で俺は指名手配されたのかな、と」
「……」
ふいに銃撃が止む。滑空していた彼女は羽をたたみ、屋根に着地してこてん、と小首を傾げた。
「……」
「……」
「……確か、カイザーグループの支店を強盗、壊滅させたとか、だったかしら?」
カイザーグループ……ああ、悪徳企業連の名前にあったな。
その一つが武力で俺に対抗できないからって表の秩序を頼ったわけか。
「確かに、そのカイザーだったか?詐欺師共に報復はしたが、あちらが先に手を出してきたんだぞ?」
「……企業を敵に回すとはそういうことよ」
「どこの世界も同じか。バカが権力を持つとロクなことがない」
「……おしゃべりはここまでよ。大人しく捕まりなさい」
銃を構え直してあの掃射が来る。上に跳んでから、さらに空気を蹴って少女の頭上を飛び越え、反対側に降り立つ。着地を狙われなくてよかった。
「……捕まっても、矯正局で数ヶ月過ごすだけ」
「その数ヶ月すら惜しいんだ」
「そう……」
再び彼女の体から立ち昇るように噴き出すプレッシャー──濃紫の神秘が彼女の銃へと収束する。
「『終幕──』」
「『イシュ・ボシェテ』」
その王権を象った晄輪と悪魔のような角、こちらを射抜く冷たさすら感じる眼光。
それらが妖しく輝き、周囲から集めただろう光の奔流が、幕引きとして俺を飲み込んだ。
──
ゲヘナ学園は今、創立以来最悪のお祭り騒ぎだ。
生徒会長の就任期間こそ短いが、己の欲を最優先に、多少倫理観のない行動を取るゲヘナの生徒達を、鉄拳政治により蹂躙し、抑圧し、支配して来た雷帝がクーデターによって卒業(意味深)に追い込まれたから。(お前はいったいどこの上院議員だ)
キヴォトスの全てを蹂躙して支配しようとしていた雷帝の存在は、ある意味抑止力として機能していたのもあり、ゲヘナの治安部隊である風紀委員会メンバーは、文字通り地獄のデスマーチに追われている。
「委員長!また市街地で複数の同時テロが!」
「現場から救援要請です!」
「情報部から通信!指名手配中の──!」
この通り、仕事が回らず猫の手でも借りたいくらいの有り様で、情報部から期待の新人を投入してみても、状況は変わらず──。
「たのもー!」
その時、場違いに明るい声が、開け放たれた風紀委員会本部の扉から聞こえた。
「なんだ!?」
「あ、あいつは!」
「指名手配犯の!?どうしてここに!?」
「あっ空崎さん!?」
青髪のオペレーターが一人、入って来た人物が抱えていた風紀委員の生徒を見て悲鳴を上げながら近付く。
「過労で倒れてたから寝かせてやってくれ。それと、風紀委員長はいるか?話がしたい」
この場にいるのは、戦闘よりも指揮やサポートを得意とする頭脳派。
連邦生徒会から指名手配されている凶悪犯を捕らえられる特記戦力は、存在しない。
「手短にな。私達は暇じゃない」
震える手を押さえて、あくまで気丈に振る舞い、弱みを見せない。
「勿論。この騒ぎの終結に手を貸そうと思ってな」
「戯言を……言っただろう暇じゃないと。お前は指名手配中の凶悪犯だが、空崎を連れて来てくれた礼に見逃してやる。さっさと──」
「今から五秒後に、中央広場を温泉開発部が爆破する」
「「「……は?」」」
ススムが言い終えたとほぼ同時に通信があり、オペレーターの一人が青褪めた表情で振り返ると言った。
「……現場から通信です。中央広場を中心に爆発があり、大人数の温泉開発部の姿を確認したと」
「お前……!」
「いやいや。俺がやったんじゃないって。俺は感覚で、そういうのがわかるんだよ。限定的な予知能力ってやつ?」
「ふぅ……では、お前はその予知とやらで私達に協力すると?」
「おう」
今の状況も不明瞭だが、何より一番の謎は男の目的だ。指名手配犯に容易く本部まで侵入された挙句、最高戦力は疲労によりダウン。
こちらが何もできない間に力の一端を見せて交渉の席を用意する。風紀委員長は思考の渦に囚われた。
「疑われるのはわかってた。俺はただ、安全に街を歩いて仲間に買う土産を吟味したいんだ。仲間が多いからな。好みもバラバラだし」
「……は?」
「ほら、俺ってヘイローがないだろ?だから銃弾一発で当たりどころが悪いと一発で死ぬ。だからあっちこっちで銃撃戦や爆破なんてされてたら安心できないんだよ」
「理屈はわかるが……いや、わかった。深く考えない方がよさそうだ」
「委員長!?」
「全オペレーターに告ぐ!今から彼奴の予知能力を作戦に組み込み、戦闘員の再編成を行う!ただし混乱を招くのを危惧し、彼奴の存在は伏せよ!動け!」
「「「はっ!」」」
男を呼び、テーブルに広げられたゲヘナ自治区の地図を元に、予知の内容を仰いだ。
──
ようやく事態が治まりそうだと、安堵の息を漏らす。
見聞色の覇気を意図的にこの場の作戦本部に集中させて、これから報告に来るだろう生徒達を未来視で先読みする。
「次は?」
「ここだ。第一校舎の正面玄関を占拠したデモ隊。人数は二十人程度」
「わかった。第二班に伝えろ。次だ」
「校内公園の東側に不良グループが屯してる。人質がいるな。そのまま第二校舎に移動するから背後から強襲すれば被害が抑えられる」
「次!」
「市街地でカイザーグループとヘルメット団が何か取引してる。場所はこの辺り。だが何故か仲間割れで爆破する。突入は爆破を待って両方が混乱してる時に」
「わかった!突入は早まるなと伝えろ!」
「あっ……」
「今度は何だ!?」
「ここから少し行った北側で、温泉開発部が爆破した結果、源泉が湧いたらしい」
「……なに?」
「あと、市街地の飲食店を爆破した連中がいる」
「ばくはぁ!?」
「最後に、人質を取っていた不良グループが包囲網を突破して逃走中だ」
「そんな……」
委員長は頭を抱えて絶望してる。俺は未来視の内容を伝えてただけだが、彼女はそれに必要な人員の配置と残存戦力の運用に追われていたのだ。
多分もう対応できる戦力がないんだろうな。
ここまで楽させてもらったし、あとは任せてもらおう。
「帽子と学生服借りるぞ」
「……そこにある……ってどこに行くつもりだ?」
「あとは任せろ。規則違反者は風紀委員会本部の前に積み上げとくから。回収は頼んだぞ」
窓を開ければ、縁に足をかけて飛び出した。
空中を蹴って加速。一番近くの温泉開発部を空から強襲する。
数は多かったが、強かったのは一人くらいで他はあまり実力に差はなかった。
続いて市街地の飲食店を爆破して逃走中だった連中を、走って追いつくと驚いてる間に鎮圧した。
途中、自分を狙って余計なチャチャを入れてきて邪魔した悪徳企業の雇われ部隊をついでにぶっ潰した。
最後に人質を取っている不良グループの場所へ向かうが、その人質というのが同じゲヘナの中等部の子だということ。
ゴリゴリの銃社会で治安が最悪なキヴォトスでも、他の最低値を軽く下回るゲヘナ学園の生徒なら日常茶飯事だろうが、やはり人質になる経験は怖いもの。
それが幼い子供だというなら尚更。
人質をこれ見よがしと前面に押し出して自分達はその陰に隠れ好き放題やっているのを見て、腹の底から怒りが込み上げて来たが、集団の中にとある生徒の姿を見て冷静になった。
彼女達の前に降り立ち、進行を食い止める。
「止まれ。お前達の悪行もここまでだ。抵抗するなら、文字通り拳骨をお見舞いしてやる」
「おいおいおい、その服装風紀委員か?人質の姿が見えねぇーのか?邪魔するなら怪我すんのはそっちだぜ!」
前方の子達が一斉に銃を構えて掃射。
照準もバラバラな、周囲へ撒かれた銃弾の雨霰。
道路のアスファルトを砕き、砂埃が舞うがそれすら問題にならない。
これが豆鉄砲に感じる程の広範囲掃射を、ちょっと前に経験したばかりだからな。
「けっへっへ!それ見たことかよ」
「調子に乗って一人で出て来たからだ!」
「あ……そんな……」
鬱陶しい砂埃が晴れる頃、ニヤニヤと口角を上げていた連中は、俺の姿を見て頰を引き攣らせる。
「今、何かしたのか?」
無傷で、道路の真ん中で仁王立ちのまま、相手を軽く威圧する。
「今だ!」
俺の合図で、瞬時に周囲を警戒する何人かを嘲笑うかのように、頭上に伸ばされた腕には、一丁の拳銃が握られていた。
鼓膜を劈くような破裂音と共に、周囲一帯にばら撒かれた敵意は、込められた神秘により深く他者の精神を揺さぶった。
ある者は腰を抜かし、ある者は意識を飛ばし、ある者は恐慌状態に陥り、ある者は恐怖のあまり幻覚すら見えてそうだ。
「人質を頼む!じゃあ覚悟はいいな、不良共」
「ま、まって……!」
「あぁ……ああ……!」
「歯ぁ食い縛れ……」
人質の少女を抱えて、協力者は集団から横の道に飛び出して射線から脱した。
「魚人空手……唐草瓦正拳!!」
空気中の水分を伝って、前方の広範囲の敵に衝撃を伝えて吹っ飛ばす。
言葉にするとそれだけなんだが、不良達は訳もわからず放たれた拳の拳圧によってかなり吹っ飛ぶ。
全員漏れなく目を回してダウンしており、仕事の終わりを確信した俺は、避難していた二人に声をかけた。
「協力感謝する。嬢ちゃんも大丈夫だったか?」
「噂に違わず……無茶苦茶だね」
「……!……!」
不良グループに紛れていた毛先にかけて白から黒のグラデーションが綺麗な髪の生徒が変装用のバッテンマスクを外し、人質だった子を連れて近づいて来る。
眼鏡をかけた赤い髪の少女は、何故か目をキラキラさせながら、言葉にならない興奮を全身で表していた。
よかった。捕まったトラウマとかは無さそうだな。
「助かったのはこっちの方。潜入したはいいけど、タイミングがなくてね。私一人じゃ、あの人数からこの子を守れたかもわからなかった」
「あっ!た、助けてくれてありがとうございます!かっ、かっこよかったです!!」
「もう危ないことはするなよ〜?そっちがそう言うなら……。俺は乙事ススム。風紀委員長に秘密裏に雇われた傭兵ってとこかな」
「鬼方カヨコ……元情報部の捜査官。今は、部自体が解体されちゃって、ただの生徒だよ」
「わ、わたしは陸八魔アルです!中等部三年で来年はゲヘナ高等部に進学します!二人ともかっこよかった!わたし、貴方達みたいなアウトローになるのが夢なんです!」
これが、後に頭角を表す便利屋68の社長達との出会いだった。
後日、よく休んで完全復活した空崎ヒナは、一年ながら、その実力を遺憾無く発揮し、悪鬼羅刹の如く八面六臂の活躍で、ゲヘナに地獄を作り上げたそうな。
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