江戸川コナンは、
「ねえ灰原サン。エドガー、どうしちゃったのさ」
「先日の秋葉仁美女史の魔法的大量殺人未遂事件について、まだ引き
「なるほどねえ。探偵である自分が、いくら事件解決目的だからって、魔法的手段……現在の法規では処罰されない手段を用いて、いわば処罰されないだけで非合法な手段でもって、証拠を関東白鶴組の本部から奪って来たってのに
「それもあるし、あと結局のところ秋葉仁美女史を救えなかったのと、正しい処罰を与えられなかった事もね。彼女、結局のところホームレスを5人殺害してるんだから」
灰原のその台詞を聞いて、正太郎は正太郎で、ちょっと遠い目になる。
「ああ、その件に関しては僕も少し反省だな。もっと早期に彼女の身柄を確保できてれば、5人目のホームレスの被害者は阻止できた可能性が高い。ホームレスたちの命を助けられなかった事も、エドガー苦悩してるんだろ?」
「まあそうね」
「割り切らないと、犯罪捜査系の探偵とかやっていけないと思うんだけどな。僕もハント探偵は犯罪捜査系じゃないけどアクション系で、893とかとヤりあったりとか日常茶飯事とまでは言わないけど、まあでもザラにあるし。その辺は割り切っているつもりなんだがなあ」
そうして正太郎は、コナンが座している応接セットへと歩み寄ると話し掛ける。内容は、直球だ。
「エドガー。割り切れ」
「ぶふぉ!? げほっ! ぐぼふぉっ!」
コナンは啜っていた途中の、メイ姉さんが
「まず第一に。救えなかった者は居たが、救えた者も多いんだからさ。救えた者をまず見ろよ。救えなかった者ばかり見てると、潰れっちゃうよ?」
「げほっ……。ま、まあ、頭では分かってる。それに俺も、見た目通りの歳じゃないし、さ。復元剤飲んだ結果の姿とも、実際の年齢はズレてるし。重ねた年齢の半分以上が時間加速状態での鍛練・研究三昧だから、精神年齢は経過時間そのまんまじゃねえだろうし、もっと甘いガキのままじゃねえかとも思うが」
「それはわたしにも言えるわね。ざっくりと雑に数えて35以上40未満ぐらい? でも人生経験は薄いから、実際の精神年齢は30にも満たないというか、いえ成人レベルの経験も積んでないかもね」
肩を
「まあでも、それでも多少は、ね。ただ、多少でしかない、とも言えるけど。どうにもできなかった事はどうにもできなかったし、5人目のホームレスを救えなかったのも君のせいだけじゃない。僕のせいも多分にあるし。
厳しい事言わせてもらうと、能力がある者は落ち込んでるヒマなんて無いよ。僕が勝手に思ってるだけだけどさ。能力がある者は、それ相応の責任があるとも思ってる。だから能力がある君らは、落ち込んでるなよ、そんなヒマない、ってコト。ただ、その責任の範囲も自分が思ってるレベルに等しいけどさ」
「どういうこと?」
「ああ例えばだけど。僕は君らに教えて無い、まだまだ無駄に強大な力を秘めている。けど僕は、人類全てを救おうとか考えてなかったりするんだわコレが。君らみたいに付き合いが深くなった連中は、全身全霊をもって助けようと思うし、僕や君らの周囲の安全を守るためなら周辺での人工麻薬取引とか率先して潰しに行くし。
ああ、あとは『黒ずくめの組織』を調査中に、NOCとして頑張ってる自A官さんとか、見つけて気に入った人は積極的に助けるかな。だけどそこから一歩でも外れたら、積極的には助けようとはしない」
事務所の窓に歩み寄った正太郎は、無感情な瞳で外を眺めつつ語った。
「僕は初代エイトマンやエイトマン・ネオの
だけどせめて……。せめて、気に掛けている者たちは守る。護る。気に入った者たちは守る。護る。そこは曲げたくは無いんだよね」
「オマエも、色々なんだな」
「けっこう内に抱えてるのね」
「うん、まあ、ね」
振り向いて、窓を背に逆光で笑う正太郎。その笑顔は影になって、何かしら光の反射で輝いている瞳と、そして白い歯だけが浮かび上がっている。一瞬息を飲み、そして息を
「……オマエはソレでいいんじゃね? 手の届く範囲、衝動的に味方したいと思った人間、あまり手を広げすぎなきゃ」
「そうね。ただ、できるなら吉田さんや小嶋君、円谷君は見捨てないで欲しいわね」
「見捨てるつもりは無いさ。確かに『事件をかっこよく解決して有名に~』みたいな台詞でカチンとは来たけど、あの子らはマジモンの子供でしか無いからさ。素直に反省もするし。まあときどき反省したの忘れてまた調子にも乗るけど、ガキだから仕方ないさ」
正太郎はソファに座る。逆光で一種異様な雰囲気を発していた影になった笑顔が、普通の笑顔に戻った。
「さて、あともう1つだね」
「もう1つ?」
「ああ、アレね。工藤君が証拠掴むために魔法使って
「うん。指摘しようとしたのはその件さ」
「ちょ、あ、いや。ああ、仕方ない事だとは理解してるさコレも。だから時間があれば納得するさ」
「時間かけるなって言ったばかりだろ」
「ヴ」
轟沈するコナン。
「だいたいさ。エドガーは既にいろいろヤっちゃってるじゃないか」
「え?」
「薬事法違反」
「え゛?」
「エドガーの腕時計の麻酔銃。あれを毛利小五郎探偵に撃ったら、ヤバいだろう。エドガー、医者や看護師の資格ないだろ。あと文字通り針先レベルとは言え、傷害罪」
コナンは顔を引き攣らせ、顔面蒼白になる。どうやら無自覚に犯罪を犯していたらしい。
「あと、たかだか麻酔針程度の薬量で、数秒で人間の大人が昏倒するって、どんだけヤバい麻酔薬だよ。そんだけ強い麻酔薬打ったら、毛利探偵死んだらどうするんだよ。死ななくても後遺症残ったらどうすんだよ。と言うか数秒で昏倒させてしかも後遺症も死亡もしないなら、阿笠博士即刻製薬会社に売り込んで臨床出せよ」
「「……」」
「熊撃ちのとき、麻酔銃使えってタコがいるけどさ。麻酔銃って、猟銃免許と獣医師免許両方無いと撃てない上に、熊に命中しても効果無かったり効くまで1時間以上熊暴れた事例もあるんだよ? それが人間とは言え、数秒で昏倒ってナニ?」
ぐうの音も出ないコナン。正太郎は更に続ける。
「あと、麻酔銃だけど僕はその構造知らないし調べた事無いから分からないけどさ。それ銃刀法違反にならんの?」
「あ、た、たぶん」
「たぶんじゃないよ。阿笠博士に確認しときなよ。それとスケボー。道交法違反。動力付きだから、下手すると車両扱いになるし。免許普通必要になると思う。もろ無免許運転だあね」
「……」
「他にも
そして正太郎は、大きく息を
「あと、阿笠博士は共犯。いや自分で率先して作ってるから正犯かな? エドガーは
「あうあうあう」
「まあ、そんなわけでさ。結局のところナニが言いたいかって言うとだ」
コナンの眼鏡の奥の瞳を見据えて、正太郎は言い放つ。
「『正義』のためって理由で、既にこれだけヤり散らかしてるんだからさ。今更になって気にするだけ無駄無駄無駄ァ!! って事だよ。エドガーに必要なのは、納得よりも諦め?」
「ぐはぁっ!(吐血」
応接セットのソファに横たわり、ひくひくと麻痺しているコナン。それを横目で見つつ灰原はコナンの隣に座った。彼女は
「……東君、ありがとう」
「なんで?」
「役得だから」
「ああ、そういや既に灰原サン、気持ちは伝えてたんだっけ。エドガーの一番の悪徳は、女を騙してるところかな」
「いえ騙されてないけど。わたしはわかった上だし」
「毛利蘭さんの話」
「騙してるわね」
とりあえず正太郎はハント探偵の姿に変わり、浮気調査に出掛けて行く。
コナン君が色々山の様に犯罪を犯してしまっている事は、既に読者の方々からすれば周知の事実なのですが。コナン君にしっかり認識してもらいました。というか、いつかはやらんといかんですわ。
特に麻酔銃の件は絶対に。
なんで阿笠博士はあの薬品を実用化して製薬会社に売り込まんのか。売り込んだら、コナン世界の医療技術、というか外科的治療がトンデモないレベルに進歩しますのぜ。
あと灰原サン。コナン君もですが彼女は原作以上にずっと歳を経ているので、ちょっとずるい側面もあります。純な側面も多々ありますけど。コナン君はまだまだ純情な側面多く残してますがね。