現代版宿儺みたいな清楚系天才美少女呪術師が、バタフライエフェクト的により良いハッピーエンドを連れてくる   作:五条を救いたい

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お待たせしました。

次からは原作の時間軸に飛ぶ予定でしたが、主人公なのにまったく目立ってない人がいたので間話的なものを。
京都高専2年、4月ごろ。
藍花が特級になったキッカケの話です。

黒閃未経験、反転術式未習得、領域未習得のよわあいか(当社比)をお届けします。


神・巨人

「龍神信仰ですか?」

 

「はい。そのようです。この島では古くから、嵐や地震、津波といった災害が多く。それを鎮めるために龍神を信仰し始めたようです」

 

「ふむ。龍神信仰はよくある話ですが。その畏れが特級呪霊になるほどに育つというのは」

 

「外界から閉ざされた島という環境ですから、私たちとは自然に対する感覚が違うのでしょう。それに…………どうやらこの時代になっても生贄をしているとか」

 

「時代錯誤ですね」

 

 補助監督の話に藍花は顔をしかめる。

 

 生贄というのは、現代ではほぼ行われることのない慣習だ。だが、世界中で古くから行われていた普遍的な歴史のひとつでもある。

 生贄、とくに生きた人を捧げたもの。

 それはすなわち命を掛けた縛りであり、呪術的に大きな意味を持ち、莫大な負のエネルギーを生み出す。

 

 そんな慣習が、古くから続き今へと。

 どれほどの人数の生贄が捧げられたのかはわからないが、おそらくそういったものが積み重なって呪いが集積していき、特級呪霊が発生するに至ったのだろう。

 

「できれば生贄をやめさせたいのですが」

 

「それは我々の仕事ではありません。任務完了後、警察に任せることになるでしょう。廿楽一級は、他のことは気にせず呪霊の祓除にのみ集中を」

 

「そうですね。おそらくかなりの強敵ですから」

 

 補助監督の話が終わり藍花は気合を入れる。

 

 つい先日、学年が上がって呪術高専京都校の二年生となった藍花は、拠点である京都からかなり離れた遠方の地での任務に臨んでいた。

 今回の任務地は日本列島から離れた、南東の海に浮かぶとある島。

 そこで確認された推定特級呪霊の討伐任務だ。

 

 本来、特級呪霊の討伐となればたとえ一級術師であっても極めて危険であり、藍花のように単独で派遣されることはかなり珍しいことだ。

 しかし、藍花は環境に大きく依存して力を発揮する。

 今回の任務地は離島。

 海に囲まれた環境であり、彼女の水を操る術式――流水操術は極めて有効に力を発揮する。

 ゆえに、一級でありながら単独による特級呪霊討伐任務が下されたという事情であった。

 

 同時にそれは、廿楽藍花という一人の呪術師に掛けられた期待の大きさでもあるだろう。

 

「島民たちに龍神の祠と称される場所は島の中心にある山間部、その中腹にあるみたいです。呪霊が根城にしているのもそこかと。ご案内します」

 

 補助監督の案内で藍花は訪れた島を歩く。

 港を出て、住宅地を抜け、森へ入り、山へと。かなりの距離を歩いたところで、補助監督が立ち止まる。

 

 目の前には赤い鳥居があり、百段はありそうな階段が先が見えないほどに伸びていた。

 

「この先です」

 

「では、帳を」

 

「了解しました――『闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え』」

 

 補助監督が祝詞を唱え、空から帳が降りてくる。

 

「廿楽一級。どうか、ご武運を」

 

「いってきます」

 

 一言交わし、補助監督が見えなくなった。

 

 帳に隔てられた暗い結界の中で、一人になった藍花は目の前の階段を登り始める。

 特級呪霊との戦いは初めてだ。

 少し緊張しているが、ここまで来たのならばもうあとはやるだけやったるしかないわけで。

 

 がんばるぞ、と藍花は拳を握りしめた。

 

 やがて、階段を最後まで登りきる。

 そこにあった光景は、どこか寂れた雰囲気のある簡素な神社であった。

 手入れはされている。

 しかし、かなり年季が入っている感じだ。

 

 事前に人払いはされている。

 

 誰もいない神社の中で、しかしそいつは我が物顔で座して藍花のことを待っていたようだ。

 

『呪術師だな』

 

「喋ることができるのですね」

 

 それは、龍だった。

 トカゲのような顔、蛇のような長大な体、背中からは大きな翼を生やし、手足は短く。

 何よりもその大きさは、見上げるほど。

 

 龍の姿をした呪霊だから、そう畏れられ祀られることになったのか。

 あるいは、そうあるようにと龍神への畏れと信仰が形を成して生まれた存在であるのか。

 

 それは藍花の知るところではなく。

 ただ、まさしく幻想に語られる龍の姿をしたその呪霊からは、疑いようもなく。

 特級に相応しいと一瞬で理解できる力が感じ取れた。

 

『今度の生贄は呪術師か。食い出のなさそうな体だが、今までで一番の極上だ。生娘なのも良い。我は生娘の肉を生きたまま喰らうのが好きなんだ』

 

「ぺらぺらと。危機とは思わないのですか」

 

『貴様が、我を? クハハハハハッッ!!!!』

 

 これほどおかしいことはない、と言わんばかりに目の前の呪霊が大声で笑い出す。

 たったそれだけで、風が吹き荒れた。

 大音声の笑い声に空気がびりびりと振動し、嵐が近づいたかのように木々が揺れる。

 

『寝言は寝て言え、小娘』

 

「そちらこそ、寝言を言っているみたいなのでわたしが手ずから眠らせてあげましょうか」

 

 上空から、大きめの一軒家ほどのサイズ感の巨大な水球が藍花の背後へと降りてくる。

 この島に入る際、術式を発動した藍花が海水を操って取り出し、上空に控えさせていたものだ。

 

「もっとも。永遠の眠りに夢は訪れないでしょうけど」

 

 水球の一部が離れ、4体の水竜が顕現する。

 

「みんな、ごはんですよ」

 

『気に食わん、紛い物が! 喰うのは我だ!』

 

 4体の水竜が、藍花の指示を受けて龍神を腹の中に収めようと大きく口を開いて食らいつく。

 対して龍神は、激昂し、まとわりつく式神へと暴風を叩きつけ、吹き飛ばした。

 

「風を操る術式?」

 

『違う。我は神、自然の化身なり! あらゆる自然は、この我に首を垂れる! 貴様もだッ!!!』

 

 龍神が叫ぶ。

 

 直後、藍花の術式の操作下にあるはずの背後の水球が、波のように激しく揺れ始める。

 

『フハハハハッ! 神である我の所有物を我が物顔で支配するなど、不遜が過ぎるぞ小娘』

 

「水もですか」

 

『我が力は天候を支配する! 風、雲、雷、雨、そしてそれにまつわるすべてッ! 水を支配するだけの貴様とは、格が違うのであるッ!!!』

 

「術式の開示、ですね」

 

 術式の開示によって龍神の力が強まる。

 背後の水球が、さらに大きく波打ち暴れ始め――

 

「問題ありません」

 

 ――凪いだ。

 

『何ッ!?』

 

 龍神が驚愕の声を上げる。

 

 しかし藍花は、驚愕する龍神を見ながら当然のことと言わんばかりにくすりと笑った。

 

「あなたの術式が、わたしの術式の上位互換で。まさしく神のごとく自然を司る力で。そしてわたしの水を操るだけの術式が、いかにちっぽけで普遍的なものであろうと」

 

 傘を差す。

 

「支配の取り合いになんてなりません。わたしとあなたでは、術式以前に力の差が天と地ほどにあるみたいです。端的に、出力が足りてませんね」

 

 そして藍花は、術式を発動した。

 

「――――『ゆらゆら』」

 

 背後の水球から、小さな水球が分かれるようにして次々と吐き出されていく。

 それらは直後、宙を泳ぐ海月(くらげ)の姿をとった。

 

『また式神か!?』

 

「いいえ」

 

 この水でできた海月は式神ではない。

 

「術式の発動を介する媒体として作り出したものです。ただの水球でもいいのですが、それだとイマイチ味気がないですからね。かわいいですし」

 

 現れた海月の数は10体。藍花の周りに浮かぶそれらが一斉に動き出す。

 龍神へと向かい、その傘の部分を向けた。

 

 そして。

 

「ビームが撃てます」

 

『グオッ!?』

 

 海月から超極細の水流が放たれ、一閃。

 それは龍神の体を貫き、海月の動きに合わせて射線を変えることによって鋭利な刃物のように斬り裂いた。

 

 驚き、すぐさま射線から離れる龍神。しかし、この場には10体の海月がいた。

 逃げることなど不可能だ。

 

 同時に放たれ、幾度も閃く水流。

 それらはすべて龍神へと照準を向けられ、その体を瞬く間に寸断していく。

 一瞬にして龍神の巨体は100以上の肉片へと分割され。

 

 切断された頭部が、ごとりと落ちた。

 

 抵抗などする余地もない。

 龍神が術式を発動しようにも、止まらない水流の前ではまともに呪力を練ることも難しく。

 その術式が発動するわずかな起こりすら、的確に潰され邪魔されて。

 結果として特級呪霊であるはずの龍神は、ただ無抵抗のままに解体された。

 抵抗など、藍花は一切許さなかったのだ。

 

 ただ、頭部だけは全力で守ったのだろう。

 上顎、鼻、眼球、下顎の半分を消し飛ばしたが、完全に破壊するまでには至らなかった。

 とはいえ、この状態ではもはや詰みだ。

 

「加圧された水を極細の水流として放ち、対象を貫き切断する。要するにウォータージェット――呪術的に言うと、赤血操術の奥義である穿血に似たものですね。流体を操るという点では同じですから。参考にしました」

 

『…………だから、どうしたというのだ』

 

「あなたがわたしにどうやって殺され、死んでいくのか。わからないままではかわいそうでしょう?」

 

『クハハ、お優しいことだ』

 

 首だけとなった龍神が、発生器官すらも破壊されているはずなのに笑い声を上げた。

 

 直後、斬り離されたその腕が密かに動き出し呪力を練り始めたのを藍花は見逃さなかった。

 

「させませんよ」

 

 動き出し印を結ぼうとするその手が、両手とも海月の放つ水流の集中砲火によって消し飛ばされる。

 

 おそらく領域を展開しようとしたのだろう。

 目の前の呪霊がそのレベルにある存在というのは驚きだったが、藍花は冷静に対処した。

 領域展開の対策はいくつかある。

 その中でもとくに確実で、効果的なものはそもそも敵が領域を展開することを許さないこと。

 基本に忠実に。

 藍花は学んだことを実践した。

 

 しかし。

 

『貴様は強いが、若いな』

 

 半壊した龍神の頭部。

 だらんと垂れ下がる長い舌に印が浮かび上がった。

 

『領域展開――――――――』

 

 景色が、塗りつぶされるように変わっていく。

 

 生得領域の展開。

 呪術戦の頂点。必中必殺の最終奥義。

 

 本来ならば、これを発動するには掌印を組む必要があるはずだが、目の前の龍神は自らの体に印を刻むという呪霊ならではの方法で代用。

 こんなの、藍花は聞いたことなかった。

 

 予想外の状況だ。

 しかし、そこで思考停止する藍花ではない。

 

 展開されていく必中必殺の結界の中、彼女はこの状況を切り抜けるために即座に対抗策を実践した。

 

「簡易領域!」

 

 藍花の周囲に領域が広がる。

 

 領域展開にはそれを構成する結界自体に術式が組み込まれており、すなわちこの結界内に飲み込まれた時点で術式が命中していることになる。

 ゆえに、必中必殺とされる呪術の奥義だ。

 

 対して簡易領域は、自らの周囲に簡易的な領域を広げることで敵の結界を中和し、領域に付与された術式の必中効果を無効化するという技術だ。

 難易度も強度も領域展開とは比べものにならないほど低いが、対領域においてある程度の効果がある。

 これは弱者の領域。

 領域を持たない者の数少ない領域対策のひとつだ。

 

『クハハ、そのような軟弱! 消し飛ばしてくれるッ!』

 

 暴風、雷鳴。

 雨が降っていないのは、藍花の術式を警戒してのことなのだろう。

 荒れ狂う領域の中で龍神は高らかと笑う。

 

 バラバラにされたはずのその体は、何事もなかったかのように元通りとなっていた。

 呪霊の肉体は呪力で構成されている。

 そのため呪霊は、自らの回復に反転術式を必要とする呪術師と違って呪力さえあれば肉体を修復できる。

 領域が展開され、その呪力の出力が上がったことで瞬く間にその体が修復されたのだろう。

 

 油断した、と藍花は反省する。

 だけどそれはそれとして、あんな風に領域を展開するなんて思わないでしょとイラッとしていた。

 

「領域の押し合い。持ち堪えられるのは、良くて数分」

 

 龍神の領域と、藍花の簡易領域。

 

 お互いに押し合うことになるが、さすがの藍花といえど本物の領域との押し合いは厳しい。

 領域と簡易領域では完成度が違いすぎる。

 

 持って数分。

 藍花は冷静に分析し、そう判断した。

 

十分(じゅうぶん)ですね」

 

『抜かせッ!』

 

 暴風が吹き荒れ雷鳴が鳴り響く。

 

 広範囲の暴風が藍花の操る水を無差別に散らしていく。

 龍神の領域内であっても、水の支配力ではやはり藍花の方がはるかに強く、奪われることはない。

 だが、常に吹き荒れる暴風で水を散らされていく状況では操作がかなり難しくなる。

 海月の照準も合わせるのは困難だ。

 

 ならば、術式での攻撃は捨てる。

 防御に使おう。

 

 操作する水をひと塊にまとめ、藍花目掛けて襲ってくる雷を自動で防ぐように即席でプログラムを組む。

 海水は電気をよく通す。

 だが、電気を通したとて藍花自身が直接水に触れていなければとくに問題はない。

 

 風の方はどうでもいい。

 藍花自身の呪力の防御を風では突き崩せない。

 

「術式がダメなら。直接、殴りましょう」

 

 廿楽藍花の能力は突出している。

 

 まず、底なしとも言えるほどに膨大な呪力総量。

 特級を含めた他の術師や呪霊と比較したとしても、おそらく二番手に数倍の差をつけるだろう。

 現状、呪力総量において彼女の右に出る者はいない。

 

 そしてその膨大な呪力総量を、完全にコントロールする優れた呪力操作技術。

 これもまた、呪術界において屈指。

 明確に上回っていると言えるのは、原子レベルでの呪力操作を可能とする六眼を持つ五条悟のみ。

 膨大な呪力総量と極めて優れた呪力操作、ロスの少ない呪力効率によって藍花に呪力切れはない。

 

 呪術センス、体術センス。

 ともに最高峰。

 

 弱点があるとすれば、小柄な体格によるリーチの不足と筋肉量の少なさ。

 そして特別強力ではない普遍的な術式。

 しかし、そんな弱点を補ってあまりあるのが藍花の最も大きな強みである呪力出力。

 単純明快。

 他の誰よりも速く、硬く、強い。

 

 藍花は、爆発的な踏み込みで地を蹴った。

 

『――――ッ!』

 

 一瞬だ。

 声を上げさせる間もなく、龍神の目の前へと移動。

 

 膨大な呪力総量と、それを持て余すことなく万全以上に活かすことのできる呪力出力。

 強化された肉体、生み出される力。

 それはたとえ敵の領域という、極めて不利な環境であっても圧倒的な破壊力を実現する。

 

 拳を握り、龍神の顔面を殴り抜いた。

 

『グブ――ラ――――ッッッ!』

 

 空中から地面へと。

 藍花に殴られた龍神の巨体が吹き飛び、叩きつけられて大地に巨大なクレーターを作り出す。

 

 追撃。

 藍花は空中にて、自身の周りに羽衣のように浮かべた水をジェット噴射の要領で放出し。

 推進力を得て空中機動。

 くるり、と方向を転換し上空から大地へと。高速で落下し横たわる龍神へと踵を叩き込んだ。

 

 さらにクレーターは広がり。

 龍神の体が、ひび割れるように砕け血を吹き出す。

 

 が、即座に再生。

 

「なかなか耐えますね?」

 

『ナメる、なァ!!!!!!』

 

 龍神の全身から、雷光が迸る。

 ゼロ距離。

 防御は不可能。

 

 怒れる自然の化身が放つ、全力の雷が藍花の体を貫き焼き焦がさんと轟く。

 領域内、出力の上がった一撃。

 さらにその直前に、龍神は藍花の周囲に雨雲とそれに付随した雨水を生成する。

 

 雷の熱に触れた水は瞬時に沸騰、蒸発。

 その体積が一瞬にして約1700倍にまで膨れ上がり、大爆発を引き起こす。

 水蒸気爆発だ。

 その爆心地の中心は、藍花。

 

『クハハッ!!!! 油断したなァ!!!!』

 

 全力の雷、次いで誘発された水蒸気爆発。

 その威力は山をも崩すだろう。

 

 勝利を確信し、龍神は笑う。

 

 爆発によって発生した煙が、領域内を吹き荒れる風によってすぐに霧散していく。

 死んだであろう藍花の姿が煙の中から現れ――それを見た龍神は、驚愕した様子を見せた。

 

「びっくりしました」

 

『な、なぜ生きてるッッッッ!?』

 

「結構、効きましたよ。わたしが戦いの中でまともに血を流したのは初めてかもです」

 

 しかし、その程度。

 藍花の隔絶した呪力総量と呪力出力、それらによって齎される強度を前にしてはまだ、足りない。

 

 無傷ではない。

 全身の至る所から血が流れ、複数箇所を火傷し。しかしそれでも致命傷には程遠かった。

 

『な…………クッ……!!』

 

「えっと、怖いですか。もしかして怯えてます?」

 

 藍花の口元が嗜虐的に笑む。

 

 言葉を失い動揺し、ともすれば()()()()()()であるはずの呪霊が小さな人間に対して怯えて。

 特級呪霊が、圧倒的な強者が、神を豪語する自然の化身が。

 年端もいかない少女に怯えて。

 なんともそれは、滑稽に見えてしまった。

 

「ふふ。お可愛いこと」

 

 ただ、龍神の情けない姿を楽しむのもほどほどにしないといけない。

 なぜなら、時間がない。

 簡易領域の維持可能時間はあと1分ほどだった。

 

「終わらせましょう」

 

 藍花は龍神の尻尾を掴み、ぶん投げる。

 

 自らもそれを追いかけるように跳んで、全力の呪力を込めた拳を握った。

 そして、振り絞る。

 

「なんだか、今ならできる気がします」

 

 ――呪力戦において、その現象はごく稀に発生する。

 

 打撃との誤差0.000001秒以内に、呪力が衝突した際に起こる空間の歪み。

 狙って起こすことは不可能。

 呪いに愛された、幸運のみがその条件。

 

 その瞬間、呪力は黒く輝く。

 

 ――――――黒閃。

 

『ゴッ――ァパ――――ッッッッッ!!!!??』

 

 黒く輝くその拳を叩き込まれた龍神の顔が、ぐちゃぐちゃになって弾け飛ぶ。

 

 それを見て藍花は、喜悦を漏らす。

 

「あは、やっっっっと出ましたっ!」

 

 藍花は今まで黒閃を経験したことがなかった。

 

 理由は単純。

 今まで相手してきた呪霊の中に、藍花の攻撃を何度も受け止めることのできる存在などいなかったから。

 ほとんどの呪霊は殴れば一撃で消し飛ぶ。

 術式で祓うのであれば、そもそもチャンスがない。

 

 そも、最低限特級でないと戦いにならない。

 

 だから初めてだったのだ。

 黒閃が、それが起こる可能性のある相手との戦いが。

 

「すごい。世界が変わって見えますね」

 

 黒閃はきっかけ。

 付随して掴むのは呪力の核心、呪術師としてさらなるレベルへと踏み込む一歩。

 本来持ち合わせていたポテンシャルの解放。

 

 今なら、なんだってできると思わせる全能感。

 

 藍花の体が傷ひとつ残さず癒える。

 できるという確信を得て即座に実践、当然のように彼女は反転術式の習得をした。

 

「ふ、ふふ…………冷静に、冷静に」

 

 高揚していく頭と体を、なんとか鎮める。

 

「潤、紺、蒼、碧。出番です」

 

 藍花は、これまでの戦闘には参加させずにいた式神たちを再び呼び出す。

 彼女の周りを囲むように集まる4体の水竜。

 

 そして、膨大な呪力を式神たちに注ぎ込んだ。

 

「今度は跡形もなく、消しましょう」

 

 4体の水竜、それぞれの口元に藍花の分け与えた膨大な呪力が結集し、呪力の球体を形作る。

 

「単純な呪力による砲撃。術式と比べれば無駄の多いものですが、呪力総量と呪力出力さえ伴っていれば十分に効果的で純粋な力になります」

 

 藍花は龍神に問いかけた。

 

「言い残すことはありますか?」

 

『ハッ、バケモノが。覚えておけ、貴様にはいずれ神の裁きが降るだろう』

 

「神の裁きですか」

 

 4体の水竜が呪力砲を同時に放つ。

 

 膨大な呪力が込められたそれらは龍神の体を呑み込み、蹂躙し、破壊し、焼き尽くし。

 血の一滴すら残らぬほどに、消し飛ばした。

 

 そして領域が崩れ去る。

 

「神は死んだ、とでも言えばいいのでしょうか? 意味は違うと思いますけど」

 

 ――――勝者、廿楽藍花。

 

 

 

 

 

 完全に呪霊を祓ったことを確認してから、藍花は来た道を戻っていく。

 階段を降り、帳の外へ。

 

 補助監督へと任務完了を報告し――ようとして、そこにあった光景に目を瞬かせる。

 

「えっと……?」

 

 そこにいたのはたくさんの人だった。

 

 この島の島民だろう。

 怒りや焦り、尋常ではない様子で顔を恐ろしく歪めて補助監督へと詰め寄っている。

 補助監督は必死で宥めているが、効果がない。

 

 その中の一人と目が合った。

 

「あ、おい! 出てきたぞ!!」

 

「お前がッ!!!」

 

「龍神様はどこだ!!!」

 

「よそ者が、神聖な場所に土足で踏み込みおって!!!」

 

「罰当たりめ!!」

 

 聞こえてくるのは罵倒。

 

 藍花は困惑するも、その優秀な頭脳で彼らの声と状況からなんとなくだが理解する。

 どうやら島民たちは、信仰する対象である龍神を害されたと怒っているみたいだ。

 さもありなん。

 本来の事情がどうであれ、あの龍神と名乗る存在が神聖なものではなく呪霊であれ。

 そんなことは、呪術を知らない島民たちにはわからない。

 

 こちらの立場は完全に侵略者。

 神に仇なす叛逆者。

 実際、藍花は龍神を討伐してしまったし。もっとも、彼らはまだそれを知らないだろうが。

 

「廿楽一級、ご無事で!」

 

「状況はなんとなくわかりました。彼らに詳しいことを説明することはできませんし、わたしたちが何を言ってもきっと無駄なのでしょう」

 

「そうですね。しかしこれは…………彼らは本来廿楽一級に感謝するべき立場なのに!」

 

「仕方のないことです」

 

 藍花は苦笑する。

 

 島民たちは真実を知らない。

 彼らは彼らの身の丈で生きていて、この島のルールの中で正しく育ってきた。

 龍神は信仰対象。

 自然の脅威から島を守る守り神。

 きっと本心から、そう思っているのだ。

 

 そんなものは幻想であったとしても、それを知らない彼らに罪はない。

 無知は罪というが藍花はそうは思わない。

 

 呪いのことなんて非術師が知る必要はない。

 その方が幸せだ。

 

「帰りましょう」

 

「は、はい! 直ちに――危ない!」

 

 藍花はとっさに、飛んできたものを掴む。

 

 石だった。

 

「帰すわけがないだろう!!!」

 

「死ね!!」

 

 藍花はため息を吐く。

 

 とにかく、早くこの場を立ち去った方がいいだろうと藍花は判断した。

 今後この島がどうなるのかはわからないが、それは自分の関知することではなく。

 警察や呪術総監部がどうにかする話だ。

 

 補助監督と合流し、さっさと立ち去ろうとする藍花。

 しかしその直前。

 

「――神の裁きだ!!!」

 

 藍花の目は信じられないものを写す。

 

 島民の中の数人が、藍花と補助監督それぞれの方へと体当たりするように向かってくる。

 藍花は距離を取り。

 間に合わなかった補助監督は島民に掴み掛かられ。

 

 そして島民が――――爆発した。

 

「…………へ?」

 

 突如のことに一瞬思考が停止する。

 

 だが、すぐに我に返った藍花は慌てて補助監督の元へと駆ける。

 

 ――なんかわからないけど、島民が爆発した!

 

 怒りで爆発、みたいな比喩ではない。

 文字通り爆発。

 体が弾け飛び、爆弾のように衝撃を撒き散らした。

 

 巻き込まれたのは補助監督。

 おそらく藍花にも同じように自爆攻撃をしようとしたのだろうが、それは回避することができた。

 しかし、安心はできない。

 これで補助監督が死んでしまう事態など認めない。

 

「か、神の裁き…………!」

 

「ひえぇ、罰が当たったんじゃあ!!」

 

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏!」

 

「じゃま、です!」

 

 どうやら、人間が爆発するなんてことは他の島民にとっても予想外だったらしく。

 固まったり、腰を抜かしたり、涙を流したり。

 

 だけどそんなことに拘っている場合ではなく、藍花は補助監督に近づくのに邪魔な島民を適当に跳ね除けて、真っ直ぐに補助監督の元へと着く。

 

 ひどい怪我だった。

 全身に火傷を負っていて、顔の皮膚が爛れ頭蓋骨が見えている場所もある。これだけの外傷だから、おそらく骨もどこかしら折れているだろう。

 だが、死んでいない。

 気絶しているが、たしかに心臓は動いている。幸いなことに、四肢の欠損もなかった。

 

 これなら治せる。

 

「反転!」

 

 藍花は呪力を掛け合わせ、覚えたばかりの反転術式を補助監督へとかけた。

 火傷が癒え、爛れた皮膚も戻っていく。

 

 さっき習得したばかり。

 当然、反転術式のアウトプットなんてやったことがなかったが上手くできた。

 自身にその適性があったことに藍花は安堵する。

 

 しかし、不可解な状況はより混迷していく。

 

「…………裁きを」

 

「――裁き」

 

「神よ、裁きを」

 

「さ、さささ裁き、裁き裁き裁き」

 

 さっきまで、藍花と同じく予想外の状況に動揺していたはずの島民がうわごとのように繰り返す。

 ふらふらとした足取りで。

 生気の感じない虚ろな視線で。

 藍花たちの方へと、まるでゾンビのように向かってくる。

 

「もー! なんなんですか!」

 

 藍花は意味のわからない状況に憤慨し、叫ぶ。

 

 また爆発されたらたまらない。

 そう判断して、術式を発動する。

 龍神との戦闘後も、一応と量を減らした水球を維持していた。

 それを人が2人乗っても問題ないサイズの海月型に変化させ、自身と補助監督を乗せて空へと逃れる。

 

 空へと脱出した藍花たちを、島民は見上げるだけ。

 どうやらここまでは来られないらしい。

 

 いや、そりゃそうだけど。

 人は飛べない。

 

「何か、仕掛けがあるはずです。呪詛師か、あるいは新手の呪霊か」

 

 とりあえず爆発する島民から離れた藍花は、冷静に混迷を極める状況を探ることにした。

 誰かの仕業なら、そこに呪力の痕跡があるはず。

 

 それを見つけることができれば。

 

 ゾンビのような爆発する島民たちが持つのは微弱な呪力。

 とくに変哲もない、非術師だ。

 

 しかし、そこに違和感を覚えた。

 

「これは――」

 

 巧妙に隠された呪力。

 島民たちのものではなく、その体の中に紛れ込んでいた微かな呪力があった。

 本気で探らないとわからないほどに微かに。

 

 しかし島民の全員がそれを持っていた。

 いや、よく見ると島民だけじゃない。もっと広範囲で、ありとあらゆる――()()()()()

 

 その呪力はパスのように伸ばされていて。

 ある一点へと繋がっていた。

 

「地下、深く。何かいますね」

 

 ――その時、島が大規模に揺れ出した。

 

 

 

 

 

 

 その呪霊は頭が良かった。

 

 特級として分類されるだけの力を生まれ持ちながらも、頭が良く慎重だった。

 己は強いが、それよりも強い人間がいると知っていた。

 呪霊を狩る存在がいることを知っていた。

 

 ゆえに地下に潜った。

 本土から離れ、己の身に危険が及ばないだろう遠く離れた離島へと身を隠した。

 

 強くならねばならないと思った。

 己は強いが、もっと強く。

 それは生存本能であり、人を襲う呪霊としての本能の発露でもあり。

 頭が良いからこそ、より多くの人を。

 より強い人を殺すことのできる力を得ることを望んだ。

 

 その呪霊には生まれ持った術式があった。

 同化の力だった。

 自身の呪力を浸透させた対象を支配し、その存在と呪力を己の体へと同化させ力を奪う。

 その力を使って、より強くなろうと動いた。

 

 まず、島の地下から地上の人々へと呪力を浸透させて支配する。

 同化はしない。

 それはまだ、必要ない。

 支配した人間は、その意思を完全に消失させるほどに操ることができるがそれもしない。

 

 ほんの少し、思考を誘導させただけだ。

 『龍神信仰』

 その思考を人々に植え付けた。

 嵐が多いその離島では、この信仰は軽く思考を誘導するだけで容易く浸透していった。

 

 そして次に呪霊は海棲生物を支配した。

 何日、何ヶ月とかけて、多数の海棲生物を支配下に置いた呪霊はある日、それらを同時に爆発させた。

 体内に浸透させた呪力を暴発させたのだ。

 それだけで、生物は弾け飛ぶ。

 

 多数の海棲生物が同時に爆発すると、そのエネルギーは海を大きく揺らした。

 そうして発生するのは津波。

 離島は、巨大な津波によって深刻な被害を受ける。

 

 さらに、呪霊は島そのものを支配した。

 その呪霊の術式対象は生物だけに留まらず、無生物――島そのものすらを支配下に置ける。

 時間をかけて少しずつ島を支配した呪霊は、島の大地を激しく揺らした。

 地震だ。

 津波によって被害を受けた島は、復興を始めたところで今度は地震によって大きな被害を受ける。

 

 すると、自然の化身である龍神への信仰はより大きなものへと変わっていく。

 嵐を、津波を、地震を治めよと人々は祈る。

 そこで再び、思考を誘導する。

 

 思考を誘導されたのはその当時この島の代表となっていた男だった。

 呪霊が誘導した思考は生贄だった。

 龍神へと生贄を捧げ、災害を治めるのだと思考させた。

 

 これには、島民もさすがに躊躇した。

 しかしそんな最中に、呪霊はまたも津波と地震を起こし島を文字通り揺さぶった。

 それからはすぐだった。

 反対の意見はなくなり、生贄が捧げられた。

 

 これにて島民たちの純粋な『龍神信仰』は歪められ、信仰という名の呪いへと転じた。

 

 島民たちは年に一度、生贄を捧げた。

 一年が経つ直前あたりから地震や津波が発生し始め、生贄を捧げることで災害が止む。

 嵐はコントロールできなかったが、地震や津波が生贄によって治まるだけで効果は明らかに見えたことだろう。

 

 生贄という莫大な呪いのエネルギー。

 焚べられる歪められた信仰、畏れという呪い。

 

 それらが集積し100年ほど。

 あるときそれが――特級呪霊、龍神として顕現したのだ。

 

 計画通りだった。

 呪霊は、己がより強くなるために強力な力を持った呪霊を生み出すことを望んでいた。

 それを取り込み、同化し。自らの力とするために。

 

 目論見は見事叶った。

 しかし特級呪霊を支配下に置き、同化するには時間がかかる。

 途中でバレるわけにもいかない。

 密かにことを進めたい。

 構わない。

 龍神の誕生まで100年待った。であればさらに100年待つことなど、どうということなく。

 少しずつ、少しずつ。

 決して気づかれないよう。

 龍神へと呪力を浸透させていくことにした。

 

 100年後、龍神と同化しその力を奪う。

 そうすることで、己は呪霊として現状の倍以上の力を得ることになるのだ。

 人間にも、呪霊にも。

 他の何者にも負けない存在へと新生する。

 

 その、志半ば。

 突如現れた1人の人間が龍神を祓った。

 

 ――――その呪霊の計画は、無に帰した。

 

 

 

 

 

 

『も゙うい゙い゙い゙ッッ!!!!! オ゙マ゙エ゙を゙食わ゙せろ゙ォォォオ゙オ゙ッッッッ!!!!! 龍神よ゙り゙も゙強い゙人間ヺヺヺヺッ゙ッ゙ッ゙!!!』

 

「な、なんですかそれ!?」

 

『オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ォォォオ゙オ゙ォォォオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!!!』

 

 藍花は目の前の光景に目を疑った。

 

 島が動き出した。

 揺れたとか、そういうレベルの話ではなく。

 

 山に木々、建物や人間、動物、あらゆるすべてが島に飲み込まれそれは姿を現したのだ。

 まるで、巨人だった。

 土塊の肉体に岩石や木々でできた鎧を身に纏った、人間の上半身を模した巨人だった。

 

 そのサイズはとてつもなく。

 文字通り、島が動き出したと言えるほどに。

 

「二体目の、未確認の特級呪霊!!」

 

 藍花の判断は早かった。

 

「蒼! この人を乗せてできるだけ遠くへ!」

 

 呼び出した水竜に補助監督を預ける。

 

 これでこの場に残るのは藍花と、目の前の島巨人とでも仮称すべき特級呪霊だけ。

 残念だが、島民たちは助からないだろう。

 あの呪霊に取り込まれてしまった。

 

 せめて、安らかに。

 藍花は静かに祈りを捧げ、島巨人を見下ろした。

 

「内陸だったら最悪でしたね。でも、ここは運良く海のど真ん中ですから」

 

 そして、この場には悲しいことに被害や呪術の秘匿を気にするべき人もいない。

 

 つまり全力だ。

 藍花の全力を持ってこの呪霊を屠れる。

 

 海月に腰かけ上空に浮かぶこちらへと手を伸ばす呪霊に対して、藍花は冷酷に見下ろし告げた。

 

「海の藻屑にしてやります」

 

 海が、動き出す。

 

 大量の海水が、持ち上がり上空へと。その総量は、まるで山のような大きさへと。

 藍花の恐るべき呪力出力。

 それは術式によって海を持ち上げることすら可能とした。そうして放たれるのは、この世でもっとも単純でありながら極めて恐ろしい力。

 ただただ、桁はずれに圧倒的なだけの。

 

 質量攻撃。

 

「落ちて」

 

 海が落下する。

 

『オ゙、オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ォォォオ゙オ゙!!??!』

 

 巨人の体が海に呑み込まれる。

 

 破壊され、砕かれ、削られ、流され、潰され、剥がされ、割られ、破られ、崩され、損なわれ、粉砕され、欠け、失われていく。

 抗うすべはない。

 ただ、海という脅威の中に消えていくのみ。

 

 やがて、落下する海の質量攻撃が終わったとき。

 

 そこにあったのは、先ほどまでとは比べ物にならないくらいにまで小さく消耗した巨人の姿だった。

 

「耐えましたか。なら」

 

 藍花が術式を発動する。

 

 再び、海が上空へと持ち上がっていく。

 

「――――何度でも、です」

 

 海が落下する。

 

 藍花はこの攻撃を、巨人が完全に消失するまでいくらでも繰り返すつもりだった。

 宣言通り、海の藻屑へと。

 呪霊の息の根が止まるまでひたすら続ける。

 

 しかし、ふと。

 藍花はここで閃いた。

 

 思うのは、さっきの龍神との戦いの一幕。

 

「今のわたしなら、もしかしたら」

 

 藍花は模索していた。

 自らの持つ、流水操術のさらなる可能性を。

 

 水には相転移という現象がある。

 水が固体、液体、気体へとそれぞれの状態へと変化していく現象を指す言葉だ。

 端的に言うと、水は0℃以下で氷へと姿を変え、100℃以上で水蒸気へと変化する。

 液体、水。

 固体、氷。

 気体、水蒸気。

 状態が移り変わる現象、それが相転移だ。

 

 流水操術が術式対象としているのは、この中において一般的に水と呼ばれる液体状態だ。

 氷、水蒸気。

 これらは流水操術において水とは扱われず、術式対象とすることはできない。

 

 だけど、逆に水であればかなり無理ができる。

 

 自由に形を変える、加圧してウォータージェットを放つ、意思を持った式神を作り出す。

 であれば、他にもできることはあるだろう。

 

 呪力の核心へと触れた今なら、なおさらに。

 

 例えば、そう。

 操作する水の水温を100℃以上まで急激に上げて意図的に蒸発させる、とか。

 水蒸気は術式対象外。

 だけど、術式対象の水が水蒸気に変わる温度まで変化させることは――――できる。

 

 操る海水の一部へと。

 やりすぎないように慎重に調整して。藍花は、確信を持って()()を行った。

 

「――――――――ばーんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾️呪術総監部より通達

 一、廿楽藍花の任務完了を確認。

 二、任務地に現れた未確認の呪霊(仮称『巨人』)を特級呪霊として認定。祓除を確認。

 三、廿楽藍花が任務にて見せた力は単独での国家転覆を成し得ると認定。同人を特級に認定する。

 

 

 

 

 

 

 

 







◾️龍神
 自称、神。
 だいぶ強めの特級呪霊。
 でも藍花の方がもっと強かった。誕生経緯から、藍花に祓われるまで全体的になんか可哀想。
 でも本人はわりと崇められ生活を満喫していた。

 好きなものは生娘の踊り食い。



◾️巨人
 頭の良い呪霊だった。
 本体はモグラと人間が合わさったような、想像上の地底人じみた姿。
 地下に潜るためモグラと同化してそうなった。

 特級呪霊を取り込んで、より強くなることを計画し龍神を意図的に誕生させる。
 しかし藍花に祓われる。
 ならば、と龍神以上に強い存在である藍花を取り込むことで代替とすることにした。
 祓われた。

 普通、あんな理不尽な強さしてるとは思わんやんか。こっちは島取り込んでめっちゃ強なっとるし。
 海を持ち上げるって…………えぇ?

 最後は藍花の思いつきで爆散。
 可哀想な呪霊。

 好きなものは、自らの手のひらの上で滑稽に踊る人間たちや龍神の鑑賞。



◾️補助監督
 藍花のファンになった。
「可愛くて強くて、優しくて、たまに見せる意地悪さが…………推せる!! 藍花ちゃんカワイイヤッター!!!」
 ちなみに女なので安心してほしい。

 ロリコン。

 好きなものは廿楽藍花。



◾️呪術総監部
 目を掛けていた将来有望そうな高専生が、突如としてとんでもねえことをして白目を剥いた。
 とにかく危険人物をどうにかしたい。
 特級なんて別にいらんのよ。
 五条悟の存在に頭を抱えているところ、新たな爆弾が投げ込まれて腐ったミカンな脳内をフル回転。

総監部「特級はダメ! 死刑! 有罪(ギルティ)! 没収(コンフィスケイション)! 死刑(デスペナルティ)!!」
禪院家「ちょ、待てよ」

 五条悟に対抗心を燃やす禪院家による密かな働きかけによって、藍花の存在は見過ごされる。
 本人は真面目だし。
 そもそもどうやって拘束する問題だし。

 とりあえず、藍花を危険人物としてマーク中。

 好きなものは権力。




◾️廿楽藍花(よわあいか)
 高専二年、4月。弱かった頃の姿。
 パワー系ロリ。

 まだ黒閃経験がなく、反転術式は使えず、領域展開ももちろん未習得。
 なお、今回で前者2つはクリア。
 領域展開もこのあと半年足らずで習得する。

 龍神を瞬殺、かと思いきや意味のわからん手法で領域を展開されてしまう。ピンチかと思ったけど、わりとなんとかなったので蹂躙した。
 と、思いきや今度は新たな特級出現。
 でも周囲への配慮とかが必要なくなったので、めちゃくちゃやって海の藻屑にした。
 一応、本土への被害がないようにその後ちゃんと海を鎮めたりしているので大丈夫。

 島民に石を投げられた時は悲しかったけど、仕方ないことだと割り切った。
 罵倒され石を投げられたけど、それでも巨人に取り込まれた彼らを悲しみ冥福を祈る。
 龍神をいぢめて愉しむような暗黒の一面を見せた気がするが、優しい女の子です。

 実は初めての特級呪霊討伐ですごく緊張してた。
 がんばった。

 成長途上でこれはさすがに盛りすぎたか?
 これからまだ強くなる感じやけどあかんかな?
 (タイトルを見て)まぁ、ええか。

 好きなものは甘いもの。



◾️流水操術(魔改造)
 水を操る術式。ただし水を生成する術式ではないので、別途操作する水を用意する必要がある。
 本来、術式自体の価値はそれほどではない。
 藍花の場合は本人の呪いの王スペックによって津波とか起こせるレベルの出力になってるのでバグ。

 保守派からは好かれるタイプの術式。
 でもなんか、廿楽藍花の流水操術は違くねと保守派からも疑問を持たれている。
 というか、マジで違う。
 本物の流水操術はこんなアホみたいな術式じゃない。藍花は日本中の流水操術持ちに謝罪するべき。



◾️使用技
 『ゆらゆら』
 ビームを撃ってくる海月が出てくる。この任務の後、さらに強化されて自爆機能を追加された。
 藍花の基本技。
 この当時は同時に10体、高専卒業時で20体くらい出せるようになってる。
 爆発しても水があればすぐ補充可能。
 基本的に藍花が敵味方を判別した上でフルオートで敵を攻撃し、マニュアル操作もできる。
 これを出しといて優雅に突っ立ってるだけで、藍花はほとんどの敵に勝利することができる。
 ぷかぷかしてて可愛い。

 本来流水操術にこんな技はない。



 『流々竜』
 東洋竜の姿をした水の式神。
 某カードゲームのウォータードラゴンみたいなやつ。
 強さは特級呪霊相当だけど漏瑚みたいな上位の特級呪霊には勝てないし、花御や陀艮にも及ばない。
 特級呪霊の実力幅広すぎ問題。
 さすがに虫ケラ君にはかなり余裕を持って勝てる。
 数は4体。
 藍花はそれぞれ『(あお)』『(うるる)』『(こん)』『(へき)』と名付けて可愛がっている。
 竜たちも藍花のことが好き。

 破壊光線を撃てるらしい。
 実は全身が流体なので、ほとんどの物理的な攻撃を無効化する性質を持っていたりする。
 炎や氷は苦手。
 サイズも水量によって可変。
 水があれば再生できるし、破壊されても水があれば復活することができる。
 この話な時点では未習得だが、実は『流々竜』から接続して発動する『極ノ番』があったりするらしい。

 本来流水操術にこんな技はない。



 『簡易領域』
 藍花のそれは三輪のような縛りはなく、完成度が極めて高い。しかし、日下部のようにこれ自体を技や奥義として昇華しているわけでもない。
 純粋に領域対策として運用。
 強度は相当なもので、強めな特級呪霊の領域にも数分間持ちこたえることが可能。
 ちなみに藍花はシン・陰流ではない。
 見て盗んだ。



 『ひらひら』
 ヌルッと使ってた技。
 自身の周囲に羽衣みたいな水を浮かべ、防御と機動力を得るために使う。
 これによって藍花は空を飛べる。
 ヒロアカの爆豪みたいな。

 流水操術にこんな技ねえって言ってるだろ!!!



◾️メロンパン
「ファーwwwwwなんかやばいやつおって草ッ!!」

 この一件で藍花を捕捉した。
 一旦不貞寝を決め込んで、100年後とかにコンニチハしようかと考え始める。
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