Little Gold, Little Light   作:のらもこ

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新たなオリキャラです。

リヴィアナ・アヴァリン:理知的で冷静。無愛想に見られやすいが、感覚的なフィービーとは相性が良い。あだ名はリヴィ。


第14話 ギルド・テゾーロ/魔法と音楽

 

 

 図書室で椅子に腰掛けたまま、羊皮紙にインクを垂らすことなく羽ペンを手持ち無沙汰に弄る。机の上に置かれた課題の本は、開かれたまま1ページも捲られていない。

 トントンと机の上を羽ペンの先で叩く。ぼんやりと宙を見ていたテゾーロは、徐にペン先をインクへとつけた。

 

『音に反応する』

『金粉シャワーを降らせる』

『光が弾け飛ぶ』

『歌と連動する』

 

 課題に使うはずだった羊皮紙へ、魔法道具案を書き出していく。脳裏に思い浮かぶ夢の舞台――一際明るいスポットライトに立つ人影が、片手で天を指す。弾ける歌。赤、青、緑と光が交錯する。

 

(……やっぱり作りたいのは、あのショーだ)

 

 フリットウィックは音楽が魔法の始まりであるという説を話していた。この図書室に関連した本もあるという。

 羽ペンから手を離すと、椅子から立ち上がった。

 

 

 

 

 

 丁度、テゾーロが音楽に関わる魔法書を見つけて、3冊ほど抱えて棚を抜けて来た時だ。図書室の入口近くで、サイラスと鉢合わせた。目が合ったサイラスは小走りで近づいてきた。

 

「テゾーロも課題?」

「あー……」

 

 テゾーロは言葉を濁して、視線を泳がせた。

 

(悪戯グッズ作りに協力する、なんて言っていいものか?)

 

 それは、あの双子と仲間だと思われるのではと、思い浮かんだ可能性に唇がひん曲がる。顔の中心に寄りかけた皺を、どうにか押し戻した。

 本を抱え直すフリで誤魔化そうとしたとき、ふと視線を感じた。サイラスが通り過ぎた先に顔を向け、本棚の影に見えた姿に少しだけ目を丸くした。

 

「フィービー?」

「え?」

 

 テゾーロの呟きに、視線の先を追ってサイラスが振り返った。黄色い裏地のローブに、ふわふわと広がったベージュ色の髪――フィービーだ。隣には黒い髪の女の子がもう1人いる。青い裏地のローブはレイブンクローだ。目があったサイラスに、レイブンクローの女の子は肩を大きく跳ねさせた。

 

 テゾーロ達が見つめていることに気がついたフィービーは、レイブンクローの女の子の背後に回り背中を押し始めた。押されている本人は、振り返ってフィービーに小声で何か言っている。なぜか、頬が赤く染まっているように見えた。

 フィービーは肩を竦めて首を振ると、テゾーロ達に視線を向けた。

 

「久しぶり! テゾーロ、サイラス!」

「ああ」

 

 笑いかけてくるフィービーに、テゾーロは頷く。サイラスは少し戸惑った空気を出したが「うん、久しぶり」と笑い返した。

 

「入学してから全然話す機会がなかったから、会えて嬉しい!」

「まあ……寮が違うと授業以外で行動することもないからな」

「授業中はついていくのに必死でそれどころじゃないよ」

 

 頬を膨らませてフィービーがぼやく。1年ぶりとなるが、人に物怖じしない性格は変わっていないようだ。

 サイラスはレイブンクローの女の子が気になるのか、目線を横にずらして見つめている。テゾーロも釣られて視線を向けた。レイブンクローの女の子は自分に視線が集まったことに怯んだが、フィービーは笑って肩を押した。

 

「あ、この子は私のお友だちなの! ほら!」

「ちょ、ちょっと……!」

 

 押しやられたレイブンクローの女の子は、テゾーロとサイラスの前へと躍り出た。焦ったようにフィービーを見て、それから目線を彷徨わせた。少しして、眉をきりりと引き上げた。きゅっと唇を噤み、それから開く。アーモンド型の目が強く光っていた。

 

「レイブンクローのリヴィアナ・アヴァリンよ」

「……アヴァリン?」

 

 どこかで聞いた気がしてテゾーロは首を傾げる。リヴィアナの背後からひょこりと顔を出したフィービーが口を挟む。

 

「リヴィは入学式の組分けで一番最初に呼ばれたの」

「ああ、それで……」

 

 なるほど、と頷く。改めて、目の前のリヴィアナに視線を落とした。リヴィアナは長い黒髪を背に流していて、上がり気味の眉尻が気の強さを感じさせた。背はフィービーよりは高いが、テゾーロ達よりは低い。

 テゾーロがリヴィアナを眺めている横で、サイラスが一歩前に出た。

 

「僕はサイラス、こっちはテゾーロだ」

「え、ええ。知っているわ」

 

 リヴィアナは戸惑った様子を残しながらも、サイラスに頷き返した。

 

「? どこかで会ったことがあったか?」

 

 名前は聞き覚えていたが、顔を見たのはこうして対面した今回が初めてのはずだ。それとも既に顔合わせしていただろうか?

 テゾーロの言葉にリヴィアナは首を横に振った。

 

「いいえ。でも、有名ですもの」

「……」

 

 サイラスが唇を噤んで、眉を寄せた。ペニントン家の噂を思い返しているのだろう。

 テゾーロが口を開こうとして、フィービーに遮られた。

 

「そうね! 貴方達あのスリザリンとグリフィンドールで仲が良いって有名だもの!」

「「えっ」」

 

 テゾーロとサイラスが揃って目を丸くする。

 

「……俺とサイラス、2人で有名なのか?」

「そうに決まっているじゃない! 赤と緑のローブが一緒に揃っているところなんて他で見ないわ」

 

 フィービーの明るい声に何とも言えない顔を浮かべる。好奇の目を向けられているのは感じていたが、有名と言われるほどとは思っていなかった。ちらりと横を伺うと、サイラスも百味ビーンズで鼻くそ味を当ててしまったような顔で、こちらを見ていた。

 そんな2人にフィービーは腰に手を当てて、首を傾げた。

 

「それはもう目立ってるわよ。自覚していなかったの?」

「一時的なものかと……」

 

 サイラスが肩を竦めるのに、フィービーは呆れた表情を浮かべた。会話を横で聞いていたテゾーロもがりがりと頭をかいた。そんな中、リヴィアナはちらちらとサイラスの顔を覗き見ていた。

 

「そうだ! ここで会ったのだし、皆図書室に用事があったのでしょう? 一緒に勉強しない?」

「フィーフィ!?」

 

 手を叩いて声を上げたフィービーに、リヴィアナは悲鳴のような声をだした。テゾーロとサイラスは再び顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤、緑、黄、青のローブを纏った生徒が一堂に集まって席に着いた。周囲からは声にださないまま驚愕の視線が送られた。

 

 テゾーロは手に持っていた本をどさりと机の上へと降ろした。サイラスは隣で羊皮紙と羽ペンを取り出している。向かいに座ったフィービーもいつのまにか持ってきていた本を開いていた。リヴィアナだけはきょろきょろと周りを伺いながら身じろぎしている。

 フィービーの瞳が、テゾーロの持ち出してきた本に向かった。その目は好奇心に彩られている。

 

「ねえテゾーロ、その本はなあに?」

「あ? ……ああ、これは音楽と魔法にまつわる本だ」

「音楽?」

 

 きょとんとしたフィービーに、サイラスも隣から興味深げな目を向けてきた。無言ながらも、気になったのかリヴィアナも顔を上げている。

 

「あー、フリットウィック先生から音と魔法には関連があると聞いてな。音楽は魔法の始まりとも言われている……らしい」

「えっそうなの!?」

 

 思わずといった風に上がった甲高い声に、ゴホンとマダム・ピンズの咳払いが続いた。ジロリと向けられる視線にフィービーは肩を縮めた。

 サイラスは腕を組んで、テゾーロの手元の本に視線を落とした。

 

「へえ、音楽が魔法の始まりか……」

「といっても、一説にすぎないけどな」

「でも面白い学説だ。魔法の学びは必ず詠唱から始まる。勿論、無言呪文もあるが効果が薄まってしまうし、何にせよ詠唱できることは大前提だ。声に出しているということは、音と無関係ではいられない」

 

 ぱちりと瞬きする。テゾーロは音楽との結び付きだけに気を取られていたが、言われてみれば詠唱も音だ。

 斜め向かいで、リヴィアナが考え込むように顎に手を当てた。

 

「なるほど……そう言われると、詠唱の発音やリズムを間違えるだけで、魔法は不発になるわ。詠唱を音楽と捉えることもできるのかもしれない」

「うん、中々に興味深い話だと思う」

 

 サイラスは小さく頷くと、テゾーロに顔を向けた。その瞳はきらきらと輝いていて、どこぞの双子を思い浮かばせた。

 

「テゾーロ、よくこんな仮説に行き着いたね」

「い、いやいや! 言っていたのはフリットウィック先生だから! 俺は音と魔法に関係はあるのか尋ねただけだ」

「それでも、音と魔法を結びつけただけでも凄い」

「そんな大層な話じゃない! それに、今から調べようとしたのは悪戯グッズ開発の参考にしようとしていただけで……!」

「「悪戯グッズ?」」

 

 フィービーとサイラスが声を揃えた。あっと口を閉じたがもう遅い。フィービーの視線が冷たくなっていった。

 

「……テゾーロ、悪戯グッズなんて作るつもりだったの?」

「あー、いや……作るというか……」

 

 「フレッドとジョージの協力を、しようかと……」ともごもご呟く。フィービーに続いてリヴィアナの目も白けた色を帯び始めた。2人の視線から逃げるように顔を逸らす。

 

「……テゾーロって悪戯好きなの?」

「うっ、別にそういう訳じゃねえんだけど……悪戯グッズ、とは言ったけど実際にはもっと色んな物を売ろうと考えているんだ。だから、本当に悪戯グッズを作るわけじゃない」

 

 フィービーの責めるような口調が突き刺さり、顔を戻して慌てて手を振った。テゾーロがつらつらと並べ立てた言葉に、フィービーが疑わしげに「ふぅん?」と鼻を鳴らした。

 変わって、横からは静かな声が落ちた。

 

「魔法道具作りか」

 

 サイラスは未だに腕を組んだまま、考え込むように目を少し伏せた。切れ長な目を縁取るまつ毛が頬に影を落としていた。その横顔に、こいつイケメンだな……と、どうでもいい事が今さらながらテゾーロの頭を過ぎった。

 サイラスの様子を伺っていたのか、リヴィアナが上ずった声で話しかけた。

 

「ま、魔法道具作りに興味があるんですか?」

「うん……魔法道具作りはいい経験になるかな、と思って」

「いい経験?」

 

 サイラスの言葉にフィービーは首を傾げた。リヴィアナは口を閉ざして続きを待っている。サイラスは組んでいた腕を漸く解くと、顔を上げた。

 

「魔法道具を作るには理論を組み立てて、実際の対象物に魔法を入れ込む。作り上げるだけでも相当な技術と知識が必要だ」

「グリフィンドールのウィーズリー達は、碌でもないアイテムを次々と作り上げているわよ」

 

 サイラスの答えに、ツンとフィービーが顎をあげる。……随分とあの双子は嫌われているようだ。新学期が始まってからの、悪戯グッズの蔓延具合を考えると仕方がないのかも知れない。

 

「彼らはそれだけの能力を持っているということだ。そして、新しい悪戯グッズを作るのに試行錯誤して更に洗練されていく」

「……くだらないことばかりに能力が使われているわ」

 

 リヴィアナは溜息をついて、頬杖をついた。サイラスは苦笑を返した。

 

「まあ、彼らの使い方はともかく。魔法道具を作ることは魔法を修練する上でとても効率的ではないかと思ってね」

「!」

「理論と実技が同時に積み上がっていく」

 

 サイラスはリヴィアナに目を合わせて、口元に笑みを浮かべた。リヴィアナがビビッと目を丸くして、ピンと背筋を伸ばした。

 

「それは、確かに……! 流石はっ」

 

 はっとしてリヴィアナは口を噤んだ。中途半端なところで言葉が途切れる。

 

(流石は?)

 

 続きは紡がれず、リヴィアナは少し顔を赤らめて、ゴホンと咳払いをした。

 疑問に思ったものの、ひとまずリヴィアナのことは置いてサイラスに声をかけた。

 

「それなら、サイラスも一緒にどうだ?」

「ちょっと!」

「僕?」

 

 口を挟むフィービーを意識的に視界から外して、サイラスの反応を伺う。サイラスはぱちりと瞬きした。

 もともと双子に誘われた時、サイラスもいればさらに多様な魔法道具を開発できるのではないかと考えていたのだ。本人に興味があるというのであれば、いい機会だ。

 

「悪戯グッズ作り。やってみないか? 嫌なら断ってもいい」

「僕は……」

 

 サイラスは眉間に皺を寄せて、暫し黙り込んだ。

 

「……ちょっと考えさせてくれ」

「構わない。好きなときに答えを聞かせてくれ」

「ああ」

 

 眉を下げて、申し訳なさそうにサイラスは笑った。その顔を見て、テゾーロは早まったかもと口を開きかけて、閉じた。

 

 

 

 その後、フィービーは頬を膨らませてジト目を向けていたが、やがて諦めたように首を振り、自身の勉学へと手をつけ始めた。リヴィアナは何やらサイラスに話しかけては、メモを取っていた。やけに熱心にサイラスへと視線を向けていたが、何だったのだろうか。

 テゾーロはというと、課題は放ったまま、持ち出した本を捲っては参考になりそうな部分を書き出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空き教室のドアからさっと廊下を見渡す。誰もいない。テゾーロは首を引っ込めて扉を静かに閉じた。

 

 並べられた机と椅子を浮かせて教室の隅へと移動させると、開けた教室の中央に、抱えてきた本と羊皮紙をどさりと落とした。すぐ近くにサイラスから借りた簡易魔法薬調合道具を設置する。

 それからねじ曲がったフラスコに、大きなレンズの周りに小さなレンズが沢山ついた虫眼鏡、2本が渦巻いた1メートルほどの支柱……今回の実験のために、集めた魔法器具を次々と広げていく。

 散乱した物の中心に、ドカリとテゾーロは座り込んだ。さっそく本を開いて、羊皮紙と睨めっこし始める。

 

 あれからフレッドとジョージ、それとサイラスの助言をもらいながらも、どうにか魔法道具の案を纏めることができた。

 テゾーロの勢いよく跳ね上がった文字がびっしり書かれている羊皮紙には、魔法道具の計画が記されている。この1枚を作り上げるだけで、1週間はかかってしまった。あんなにぽんぽんと悪戯グッズを作り出す双子の才能を改めて思い知った。

 また、この時間帯に使われておらず、人も余り寄り付かないという空き教室も双子に教えて貰った。あいつらの興味あることへの熱意はどこから来るのだろうか。

 

 誰もいない教室でひとり、テゾーロは何度も羊皮紙を見直しながら、手を動かし続けた。

 

 

 

「――よし」

 

 屈めていた背筋を伸ばす。長時間同じ体勢をしていた背中から、バキバキと骨の鳴る音がした。首をぐるりと一度回して、手元へと視線を落とす。

 手の中には、金色の紐がカタツムリのように渦巻いた薄べったい円盤がある。ガッチリと固まっていて、ほつれる気配はない。テゾーロ初のオリジナル魔法道具だ。上手くできるか不安だったが、どうにか形にはなった。あとは効果が発揮されるかどうかだ。

 

 テゾーロは散らかった床で立ち上がると、「んん」と喉を鳴らした。魔法道具を持った左手を上空に向かって振りかぶる。ひゅんっと軽い音を立てて、金色の円盤は教室の天井近くまで投げられる。落ちてくる前にテゾーロは大きく口を開いた。

 

 

「ほら集まれ、新しき子らよ

 杖もローブも まだ馴染まぬままに

 君たちの胸を 私は見通す

 誰にも言えぬ 心の声まで

 

 剣も杖も 振るわぬけれど

 頭にのせれば わかるだろう

 隠した望みも 怖れもすべて

 私は逃がさぬ 逃がさない

 被れば 君に教えよう

 君が行くべき 寮の名を――」

 

 

 組分け帽子が歌った今年の歌だ。すうっと息を吸っては、喉を震わせて歌声を響かせる。歌うこと自体に口角を緩めそうになる中、顔を上げる。視線の先で、金色の円盤は落下する速度を緩めていった。動きを見逃さないように食い入るように見つめた。

 円盤は宙に留まり、ぶるぶると震え始める。ガッチリと固まっていた紐が徐々に柔らかくほぐれていく。そして――

 

 ――パンッ

 

 弾ける音とともに、幾筋もの金色の糸が教室中に広がり、シャワーのように降り注いだ。思わず途切れそうになる声を耐えて、歌い続ける。

 魔法器具に本と羊皮紙に、隅に寄せられた机や椅子にも、黄金の糸がつきることなく降り注ぎ、粉のように崩れていく。声を張り上げれば、床に積もっていた黄金の砂が再び舞い上がった。

 

(できた!)

 

 テゾーロは両腕を広げて、黄金の光を浴びる。自然と歌声も跳ね上がった。……が、空中に上がった黄金の砂は歪に一塊に凝縮し始めた。

 まずい――と思うよりも先にそれは爆発音を立てて弾け飛んだ。

 

「うわっ!!」

 

 慌てて頭を抱えてしゃがみ込んだが、庇った腕に鋭い痛みが走った。バンッバンッと何度か激しい音が起こり、やがて静けさが戻った。

 恐る恐る顔を上げると、床や壁、それに本と羊皮紙に黒い焦げ跡がついていた。テゾーロのローブにも小さな穴が空いている。教室を満たしていた黄金の光はどこにもない。深く溜息を吐いて、がくりと肩を落とす。

 

「やっちまった……」

 

 まだまだ先は長い。

 

 

 

 テゾーロは久しぶりに歌った爽快感も忘れて、杖を振り回してレパロを唱えまくり、どうにか教室と本、ついでに自分のローブを修復した。

 ちなみに、あれだけの爆発音を起こしたが、ついぞフィルチが教室を覗き込みに来ることはなかった。そこも承知の上で双子はこの教室を紹介したのだろう。本当に侮れない奴らである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんよりとした雲が常に空を覆うようになり、湖には分厚い氷が張られては巨大な触手に割られる時期となった。周囲がクリスマスに向けて、帰宅準備を進めている中、テゾーロは変わらず魔法道具作りに精をだしていた。あれこれと案を出しては修正し、試行錯誤して製作に移る。

 頭の中は次のアイデアばかりで占められていた。残った分は今年のクリスマスパーティに出される料理への期待ぐらいである。

 

 

 

 今期最後の変身術の授業を終えて、荷物をまとめているとマクゴナガルから教室に残るよう指示された。マクゴナガルの表情は明らかに強張っており、テゾーロは眉を寄せた。

 教室から生徒達がいなくなり静かになると、教壇に立つマクゴナガルの元へと向かった。振り返ったマクゴナガルは、険しい顔で重々しく口を開いた。

 

「貴方が住居としている荷置き場に関してですが……」

「?」

「……昨日、誰かが侵入を試みたようです」

「!」

 

 目を見開く。マクゴナガルは一度強く唇を引き締めてから、再び開いた。

 

「防犯魔法に拒まれて部屋の中には入れなかったようです。しかし、無理矢理押し入ろうとしたのは事実です」

「っ」

 

 ――誰が、何のために。

 

 テゾーロが住んでいるのは『《ブラックウッド薬舗》脇 旧荷置き場』というただのボロ小屋だ。数年は放置されていた小屋に、今さら何の用があるのか。

 

「何処の誰が、ということまではわかりませんが、私がかけた防犯魔法は侵入しようとした時点でわかるようにしています。……Mr.ギルド、一度家の様子を見に行きますか?」

 

 ぐ、と一度息を飲み込む。それからマクゴナガルを見上げ、目を合わせたまましっかりと頷いた。

 

「はい、確認しに戻ります」

「わかりました。そうしましたら、私も一緒に参りますので今からポモーナと調整を……」

「いえ、家には俺1人で戻ります」

「何を言っているのです!?」

 

 首を横に振ると、マクゴナガルは悲鳴のように声を荒げた。

 

「まだ侵入を試みた人物が近くに潜んでいるかもしれないのですよ!?」

「わかっています。でもあそこのことは俺の方が詳しい。もし不審人物がいたとしても、隠れる場所も、逃げる道も知り尽くしてます」

「しかし……!!」

「確認するだけです。危ないと思ったら戻ってきます」

 

 畳み掛けるように言葉を重ねる。テゾーロの目を見て、マクゴナガルは唸るように喉を鳴らした。眉間の皺が深くなる。

 

「本当に、危険なことはしませんか?」

「はい」

「……絶対に、無茶はしないように」

「ありがとうございます」

 

 マクゴナガルは肩を強張らせたまま、小さく息を吐いた。テゾーロは拳を握りしめる。

 

(確認に戻るだけだ。それに……あそこは俺の住処だ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




金の糸でできた円盤:金粉がシャワーのように降り注ぎ、歌声に合わせて何度でも舞い上がる(予定だった)

次回、事件が起きます。
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