あれから2年が経った。
学園都市に来てから俺はレベル4の原石の能力者
そういうわけで落ちこぼれとして第七学区にあるとある高校に通いながら、愉快な日々を過ごしている。
今日は7月20日。夏休み初日ではあるが特にやることもないので、クラスメイトであり、寮の隣室に住む愉快な友人、上条当麻の部屋を尋ねることにした。
上条当麻は俺が学園都市で出会った最も意味不明な人物である。常に体の中から意味不明な気配を垂れ流し、それを自らの右手で打ち消し続けている。最初に出会った時は生まれて初めて死を覚悟したが、関わるうちに自然と気を許してしまった、あらゆる意味で恐ろしい人間だ。
「よー、上条。遊びに来てやったんだから飯を出せ」
「わー、もうなんなんだよ。上条さんに腹ぺこを二人も養う甲斐性はありません!!」
二人?と疑問に思いながら部屋の奥を覗くと、そこには純白のとてつもない魔力を持ったシスター服を身に纏う少女が、ちょこんと正座していた。
「魔術師!?」
俺が驚きの声をあげ臨戦態勢をとると、シスター服の少女はこちらなどお構い無しに上条に向かってドヤ顔でまくし立てる。
「ほら!魔術はあるんだもん!!そこの人だって知ってるんだよ!」
「禪院!?お前も魔術とやらを知ってるのかよ」
「まあ、家庭の事情でな。それよりそのガキは何者だ。事と次第によってはいくらお前の客で見逃せない」
俺がそう睨みを聞かすと、上条はギョッと体を強ばらせながらも少女をこちらから庇うように立つ。しかし、少女はそんな上条の心意気を知ってか知らずかぐいと体を乗り出し、自己紹介を始める。
「ガキじゃないんだよ。私は禁書目録。ここにはね逃げてる途中に落っこちてきちゃって、ご飯を恵んでもらってたんだよ」
その少女の名乗りに、俺はさすがに驚きを隠せず絶句してしまう。確かにあんな凄まじいシスター服の礼装を身にまとっているから只者では無いとは思っていたが、その名は魔術サイドに知らぬ者の無い名だ。
完全記憶能力により10万3000冊の魔導書を記憶した、魔神にも匹敵する知識量を持つ、イギリス清教の虎の子。イギリス清教としては、一番世にだしてはいけないやつだ。ますます意味がわからない
「おいおい、随分なビックネームが出てきちまったなあ。あんたほどのやつが誰から逃げてこんな極東の島国の、それも科学サイドの総本山まで来たんだ」
「私のことを知ってるんだね!もしかして知り合いだったのかな?」
「それはどういう意味だ?俺とお前が知り合いだとして、こちらが忘れていても、お前が覚えていないはずがないだろう」
完全記憶能力を持つ彼女の口から出るには解せない言葉に首を傾げると、彼女は少し躊躇い、そして決心したように口を開こうとした、その瞬間に上条当麻が割って入る
「ちょっと待ってくれません!?そもそもその魔術ってのがあること前提で話が進まれても上条さんはわけが分かりません!!」
その空気の読めない割り込みになにか決定的なものを聴き逃してしまった気もするが、とりあえず上条の言い分もわかるのでその言葉に答えてからにする。
「そうは言われてもよ、俺は実家がそうだっただけで魔術は使えねえし、この禁書目録とやらも見る限り、今は魔術を使えなさそうだ。証明なんてできないんだから黙って聞いてろよ」
「ちょっと扱いが雑じゃねえか!?それに禪院が来る前に話してたんだよ。こいつの服に魔術がかかってるから、俺の右手で触れれば幻想殺しも魔術とやらもどちらも証明出来るって」
「あっ!おいやめろ」
そう言って制止する俺の声も虚しく、上条は少女の服に触れてしまう。
瞬間、服はバラバラになり、少女の怒声と上条の悲鳴が響き渡るも、持ち前の反射神経で俺は背を向け、玄関に向かって歩き出す。
つい流れに任せて色々質問してしまったが、この少女の来訪に俺は関係なさそうなので、聞きすぎてしまう前に帰ることにしよう。
面倒事はヒーローに任せるに限る。
「まあいいや、あんまシリアスにならなそうだし。何かあったら呼べや。金額次第で助けてやる」
「ぎゃー!禪院、いま助けてー!!」
上条の悲鳴を尻目に俺は玄関のドアをわざとらしく、ばたんと閉じた。
それから数時間、カツアゲしてるスキルアウトをカツアゲした金で飯を食ったり、町をうろついたりして学生寮に帰ると上条の部屋の前が血で濡れ、所々焼けただれていた。
「おいおい、なんか不味そうだな」
匂いからして血は禁書目録のものだと思うが、どちらも死んだ気配はなく、また、上条も禁書目録もどちらも近くにいない。
さすがに学友の安否が気になり、電話をかけるも上条当麻って男はこんな時に限って電話に出やがらない。
(考えろ、もしどちらも無事だったとして、禁書目録の怪我も急を要するはずだ。この街で禁書目録が魔術を使わせられて、上条のやつがまっさきに頼る相手)
「仕方ない。タバコ臭くて嫌だが、小萌先生のところに行ってみるか」