なんだかとってもヤバいけん~勇者の剣を棄てにいく~   作:陸一じゅん

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アホアホサバイバー

 人が人である限り、自己というものを振り返る。

 

 主観でもって客観的であろうと、『自分がどういう人間か』という考察を、大なり小なりするだろう。

 それが一日に数度の人もいれば、人生のほんとうの節目のときにしか考えない人もいる。

 

 嫌悪、肯定、後悔、反省、達成感、充実感、展望、不安、比較、障害、成長と後退。理想と現実。

 

 自分の後ろに横たわる『過去になりつつある現在《いま》』が、周囲と比べてどのようなものなのか。

 長所は何で、短所は何か。

 

 ちなみにわしは、プロフィール帳の『じぶんのいいところ』と『わるいところ』に『ものはいいよう』って感じのこと書くタイプだった。

 『おしゃべりで明るいところ』と、『喋りすぎてうるさいところ』みたいな?

 

 あと、これといって食べものの好き嫌いはなかったし、ちょっと飽きっぽいところが玉に瑕。

 マイブームは一人笑点大喜利、趣味は映画鑑賞とカラオケ、チャームポイントは錆びにくいト・コ・ロ。

 休日は散歩もしたいかな。

 クノーちゃん♡でもクノーさん♡でもクノー♡でも好きに呼んでね。

 

 あと実は、オバケがいるって信じる派なんだけどー、キミはそこんところどないやの?

 

 

「…………」

 

 

 インドアかアウトドアだったらどっち派ー?

 

 告白は自分からしたいほう? されたいほうー?

 

 甘えんぼ度だったらハート五段階でいくつ~?

 

 

 

「…………………」

 

 

 

 ぼくのこと、どう思ってる?

 

 

「暇人」

 

 

 うーん。ぐうの音も出ん。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 わしの『仲良し大作戦』は、暗礁に乗り上げていた。

 

 このままではわしは、火山の火口にシュートされる。

 害ある呪われた剣ではなく、話がわかる役立つ剣になれば、ちょっとはこう、こう、ないかな~って期待してたんやけど、無理筋な気イがしてきた。

 

 それというのも、なんだかこれお姫ちゃんとその周囲の意思を変えたところで、どうにかなる規模じゃないみたいなんよね。

 

 お姫ちゃんは、わしを抜いた次の日からトレーニングをしている。

 

 やってることはウォーキング。

 なんか彼女、どうやら足があんまり良くないっぽいんよね。

 

 でも、わしを持てるのはお姫ちゃんだけやから、お姫ちゃんはわしを持って旅をするための体作りをしてる。

 たぶん長期戦を見越しとるんだろうけど、お姫ちゃんはもう、やる気がすンごい。漫画だったら目ん玉メラメラ燃えてそうな感じ。

 

 わしは、だいたい車いす(わしが知っとるやつと形が違う。藤椅子にちっちゃい車輪がついてるみたいなやつ)についた、竹刀入れみたいなバッグに入れられて、護衛さんにめっちゃ見張られてる。この護衛、目ヂカラすごすぎて梟みたいで怖いんよ。

 

 お姫ちゃんは、起きて朝トレ、飯食って昼トレ、午後はお風呂とかマッサージとかしてもろて、寝る直前まで夜トレ。

 体壊すでホンマって思うけど、ここは令和の感覚の抜けきらんわしがアカンのよな。何かを成そうとするなら、根性論が正義っちゅうのがこの世界やから。

 午後休みにマッサージタイムが入っとるだけ、貴い身分のお姫さまやからって配慮がある。

 

 やからまぁ、お姫ちゃんほんま忙しいねんな。わしは喋るしか能がない。

 でもまあ、状況は見えてきた。

 

 お姫ちゃんの旅立ちは、この国の一大事業や。さらにそれを越えて、他国とも連携して完遂しなければならないミッションらしい。

 オーダーしたのは神さん。拒否権はナシ。国王はいろんな国や組織? に書状を送って、お后さまとごはん食べながら会議の延長みたいな話をしてたりもする。

 

 お姫ちゃん、どこにでもわしを持ってくから、だいぶ情報は集まったと思う。

 

 いやーそんなん止められんて。

 こうもわし一本のために人が準備してんの見てたらさぁ、大いなる意思とはいわんでも、群と個との影響力の差に圧倒されちまうんよね。

 

 うーん、仕方ない。

 わしは、こう思うことにした。

 

 わしは悪くない。その主張は曲げへん。

 死にたくない。抗う。その方針も曲げん。

 そして、そのうえで、落ち込んだり、ガッカリしたり、悲しくなるんは、しゃあないことや。

 だって落ち込んで当たり前の状況やから。

 

 そう思うことにした。

 

 

 大事なんは自分を見失わんことや。

 さいわいにも、わしはそれがうまい。なんせ三千年選手やから。

 

 わし、お姫ちゃんに八つ当たりとか、したないねん。というか嫌われたくないねんな。

 あの子ええ子やもんな。真面目やし、いろいろ頑張っとるし、大人やわ。

 身の丈にあわん我慢もいっぱいしとるやろ。

 そういう子に当たり散らすんは、いっちゃんわし的にかっこわるい。

 わし、おもろい剣でいたいねん。

 

 なんや思春期の娘できたみたいな気持ちなんやわ。

 こう、ツンケンされてもええかな~って思う。たまに返事してくれたら、それでけっこう嬉しいし。

 できたら、仲良くなってお喋りできたらええな~。そう思うとった。

 

 でもなぁ、だんだん気持ちも変わってきてんよな。

 

 思うねんわし。お姫ちゃんのこと好きになるほど、危ないんちゃうかって。

 お姫ちゃん真面目やからね。こういうのあかんのちゃうかなぁ。

 ごめんなわし、お姫ちゃんには荷が重いな。わかっとんねん。

 

 

 

「まともなことを言わないで。優しい言葉を言わないで。いたわらないで。もっと狂って言葉の通じない馬鹿でいて。どうして、どうして、どうして、剣のくせに……」

 

 

 

 お姫ちゃんは、ある時から、人目を忍んで泣くようになった。

 意志が強くて、善良な真面目ちゃんって、た~いへん。

 なぜならば、こういうことになる。

 

 

 あ~あ。わしのせいやなこれ。

 

 

 ――――そして、旅立ちのときが来る。

 

 

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