氷の女王、アドマイヤグルーヴ。愛を凍てつくす彼女の瞳の奥に植え付けられたものは。

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蒼炎、愛を燃やして

 私アドマイヤグルーヴは悩みがある。最近、走っていると心臓がおかしいのだ。走っているとすぐ呼吸が乱れ目に映る世界がぼやけてしまい、心臓が早鐘を打つというのに走る脚は何事もないかのようにスムーズに走っていく。何ならこうなってから自己記録はドンドン伸びている。

 記録が伸びるのはありがたいが、体に明らか悪影響な為いい状態とは言えないだろう。

 

「(っ…!またっ…!)」

 

 また心拍数が異常に上がる。こんな不調に惑わされるわけにはいかない…今度こそ…!今度こそあの子に勝たなきゃ行けないのだから…!

 思考を抑えつけながら走る。先の秋華賞ではスティルさんに3連敗を許してしまった。次のエリザベス女王杯では…!次こそは、あの子に負けない!

 

「あら、美味しいじゃない」

 

 !?

 今のは…、一体…?

 

「アルヴさん!大丈夫?」

「…大丈夫です。離れて。始めるから」

 

 いつの間にか走る脚すら止めていたらしい。そんな私を心配して駆けつけたトレーナーを軽くあしらって再び走り出す。

 今の感覚は何…?あの声は…誰の声?私の声なのに私じゃないみたいで…。それにあの雰囲気、どこかで聞き覚えがあるような…。

 

「お疲れ様アルヴさん。…あれから大丈夫?」

「はい。大丈夫です。それではまた明日」

 

 それ以来声が聞こえることもなく、ましてや心臓がおかしくなるなんてこともなくトレーニングは終わった。なんだったのだろうかと不思議に思いつつもそれ以上特に気に留めることもなく、彼女に別れを言って寮へ戻る。

 …空に赤い満月が光っていることになんて気づきもせずに。

 

 

______

 

 

 

 後日、昼休み中のカフェテリア。混雑して人がごった返す構内に辟易しながらも座れる席を探しているとスティルインラブさんとそのトレーナーを見つけた。

 

「あの人たち…また…」

 

 今日もひっそりと、それでいながら大胆に食べさせあいっこなんてしながら昼食をとっている。イライラする。こんな往来で見せつけるように…彼を独占して。 

 心臓が疼き視線が彼女のトレーナーに釘付けにされる。

 

「お いで」

 

 また…。また、知らない声が囁く。嘘。知らない声じゃない。聞いたことが…どこかで…。そう…丁度…。

 

「…っ!」

 

 思考にふけっていると彼女のトレーナーと目が合った。そこ目にはなぜか…期待が混じっていて。熱烈で、まるで求めているよう。

 

「トレーナーさん?」

「んっ?あ〜ごめんごめん。フェアメニューにしても良かったなーってさ。あはは」

 

 視線が別なところに向かっていたのをスティルさんに勘づかれ慌てて取り繕う彼。ふふっ、取り繕い方が下手な人。そんな所も可愛らしくて…愛おしい…。

 

「っ!?」

 

 何を思ったの!?

 自分の中の感情に戸惑い、お盆をひっくり返してしまった。

 

「大丈夫ですか…?アルヴさん?」

「アドマイヤグルーヴ、大丈夫か…?」

「なに…なんなの…」

 

 突如現れた変化に、私は戸惑うしか無かった。

 

 

______

 

 

 

 あれから数日、何度かあの謎の声に苛まれながらようやく理解してきた。私の中に…もうひとりいる。随分と強欲で…愛に飢えた…

 

「獣じゃない…」

 

 分かったことがある。このもう1人の私は走っていると気まぐれに顔を出す。軽いジョグとかじゃ決して出てこず、走りへの気持ちが昂りすぎると私を押しのけるかのように表に出てくる。そしてもうひとつ。スティルさんのトレーナーさんが近くにいると私を侵食してくるかのように熱烈な気持ちを向けてくる。

 

「嫌ね…略奪愛なんて………愛なんて…」

「嘘つき」

 

 またっ!

 

「アナタは何よりも愛を望んでいる。愛されたいと…ね」

 

 今日は普段と違う…私に語り掛けてくる。私と…コンタクトを取ろうとしている?

 

「いいえ。愛なんていらないわ。私に愛なんて…ないわ!」

 

 ニヤリと笑みが見えた。私が笑っている。私は、笑っている。

 

「彼なら満たしてくれる。『ワタシ』の運命の人。あの人なら…愛を満たしてくれる。抱きしめられたいのでしょう?私だけが特別って言って欲しいのでしょう?私だけの愛しい人を、求めているのでしょう?」

「なら…()()を喰らって証明してみせなさい」

 

 

______

 

 

 

 突き刺すような夕日、舞い散る紙切れたち、鼓膜を突き動かす大喝采。それらすべてを意識の外に排しただ一人、目の前に愕然と崩れる好敵手を見つめる。

 エリザベス女王杯。これまでのティアラ三冠の雪辱を晴らすかの如く彼女…スティルインラブから勝利を奪い去った。圧倒的走りで叩きのめし決定的差を見せつけた。

 

「っ……アルヴ…さん?今の走り…っ…」

 

 スティルさんが見開いてこちらを見つめる。何?そんなに驚くこと?こっちとしては貴女に驚きっぱなしよ。秋華賞のあの走りはどこに行ったの?そんなに情けない、押さえつけた走りをする方だったの?

 

「みぃつけた♡」

 

 もう興味はない。観客席に目をやれば、私を呆然と見つめるあの人。あぁ…わかる?今…ここにいるわ。おいで?アナタも求めていたはずよ。

 

「どうして…アルヴさんを…?」

「どうしてって……あなたより、()()()を望んだからよ。吸血鬼は増えるもの。知らないわけじゃないでしょう?」

 

 …あの人、もう観客席にいないわね。なら…あぁ…。 

 

「いつの間に…」

「じゃあね。もう貴女に興味はないの」

「待って…!」

 

 彼女の制止する声を無視してコースを後にする。きっと、地下バ道には愛しい彼がいる。今すぐにでも彼が欲しい。

 あぁ…愛して?愛して?愛するわ。愛するから。愛してる?愛してる。愛してよ…愛されればワタシはきっともっと…

 

最強だもの




読んでりゃ察せるとは思いますが明言してないので一応ここで
紅ちゃんがティアラ三冠取得後にアルヴさんにも芽生えたら…ってストーリーです。これ増えた、とか芽生えたって表現使っているのはスティルの紅ちゃんも残ってるから逆転ストーリーの布石にもなってるっていう理由ですね。完全にスティルの負けを突きつけるような真似は…できないっ…

オカルトが当たり前に存在する世界なので何とも言えませんが、紅ちゃんポップの原因ってなんなんでしょうかね。スティルはレースを見て以来って言ってるのでウマ娘の本能的部分かもしれませんがトレーナーは恐らくスティルに噛まれたことが原因っぽそうなんですよね。
自分の中では2つ説があって1つはウマ娘人間とは別の種族の血が悪さしている説。いわゆるドラキュラの子孫というか遺伝子持ちがスティルで、トレーナーには噛んだ時にその血が逆流しちゃった説
もう1つが因子持ちが伝播させていく説。スティルが初めてみたレース出走者の子の中に因子を持ってる子がいて、本能の刺激と同時に因子に感染してしまったのではという説ですね。トレーナーも初手から紅ちゃんに惹かれてたし因子持ちだった可能性はあると思います。
普遍性はなさそうだから考察むず~。今回は後者の説をアルヴさんに当てはめて書いてみましたが…まだまだ新説は生まれそうですね。皆様の考察も感想に書いてくださるとうれしい

ここまでのご拝読ありがとうございました!お気に入り登録評価感想くださると幸いです!

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