目が覚めたら知らない天井だった   作:モカチップ

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重いし重いし…重いんだよ

「目覚めはどうかな?」

 

「君は……」

 

 ヒガナですよね。エピソードデルタの主要人物。本編でもアクア団かマグマ団のしたっぱに変装して侵入していた。

 

「本当に記憶喪失なんだね。わたしのヒガナ。こっちはシガナ」

 

「マァ」

 

 ヒガナの視線の先にはゴニョニョ。

 そいやシガナってゴニョニョもいたなぁ。

 

「よろしく。…名前は」

 

「カナタでしょ? 知ってるから大丈夫だよ」

 

 あー…まぁ、知り合いだよな。

 

 ただうろ覚えでエピソードデルタのクリア後にはヒガナは旅に出たとか言ってなかったか? そんな事を言っていたおじいさんかおばあさんがどっかにいた記憶があるんだけど。

 

 なんでここにいる? 

 聞けばわかるか。

 

「ヒガナさん」

 

「ヒガナでいいよ。カナタはそう呼んでたし」

 

 そうなの? 仲が良かったんだろうか。

 どういった経緯で知り合い仲良くなったのか…ヒガナって結構特殊な子だから関係築くの難しいと思うんだけど。

 

「ヒガナはどうしてここに?」

 

「それはもちろん親友が心配だから見に来たんだよ。ねーシガナ?」

 

「マー」

 

 ヒガナに同意し左右に揺れるシガナ。

 親友と言える間柄にまでなってるの? 

 

 てか窓から外を見れば深夜じゃないか。

 色んなことが起きすぎて眠りが浅かったんだろう。…こんな時間にヒガナはどうやって病室に…あ、侵入したんですねわかります。

 

「全く…隕石を食い止めてもキミがこんなことになったら意味がないじゃん」

 

 背を向けて心底呆れた声で言われる

 それはその通り……世界は救われたけど代償がなぁ。

 

 結果だけ見たら1人を犠牲にしたようなもの。

 特殊なスーツはマグマスーツかアクアスーツのどちらかとして…どんな衝撃も耐えられるはずなのに故障したのも不思議な話だ。

 

 主人公補正とかそういうのが働いたのかね。

 そもそもヒガナが選んだのが主人公のユウキくんではなく立ち位置不明のカナタくんなのも謎。

 

 情報が足りな過ぎる。

 名前はカナタで両親は他界しオダマキ博士の養子で助手。ハルカちゃんとは義理の兄妹。

 手持ちはサーナイトが確定していて他にもいる。バッジを8個持っているってことはフルパだと思うけど。

 

 エピソードデルタでメガレックウザと共に隕石の破壊ってことはレックウザも所持している可能性がある。デオキシスはどうなっているか不明。……属性詰め込みすぎない? もう1人の主人公みたいなもんだろこれ。

 

 ユウキくんはグラードンとラティオスをハルカちゃんはカイオーガとラティアスを捕まえているらしいしハルカちゃんも主人公みたいなものか。

 

 …改めてこの世界はカオスだな。

 病院にいる間は問題ないけど退院してからは身の振り方を慎重に考えなければならない。

 

 カナタくんが誰と交流をしていたかもわからない状態。ヒガナみたいに意外な繋がりがあるかもしれない。

 

 …退院前にカナタくん復活してくれて俺が元の世界に戻れりゃ大正解なんだけど…期待薄だよな。…いや、待てよ? 奇跡に近いがひとつだけ方法があるには──

 

「マーマ」

 

 シガナがベッドをよじ登り上に乗る。

 俺の服を握りクイクイと引っ張る。何かを訴えているように見えた。

 

「どうしたのシガナ?」

 

「…マァ」

 

 あー…ゴニョニョの目は変わった形をしている。だから表情が読めず意図を汲み取れなかった。目として機能してる…? 

 

「わたしさ…嬉しかったんだ」

 

 …はい? 

 ヒガナが背を向けたまま語り出す。

 

 なにを? と思い口を開くがヒガナの言葉は続いていく。

 

「わたしの話を信じてくれたこと。一緒に戦ってくれたこと…他にもたくさんあるけど」

 

 信じた、は隕石の飛来する予言。戦ったは…多分、アクア団やマグマ団…ハルカちゃん達のメガストーンを奪ったことかな。

 

 なるほどヒガナ側に着いていたってことか。

 …ということはエピソードデルタ前には出会っていて隕石を止めるために暗躍していたことになる。

 

 よく隠し通せたな。本編から忙しかったのかカナタくん三足の草鞋はやべぇよ。

 

「…おかげで人生が変わったのにさ。大切なものってなくしたときにどれだけ大切だったのかって……気づくんだよね」

 

 ヒガナさん? どうし……!? 

 振り返ったヒガナの顔はグシャグシャと歪んでおり涙が頬を伝ってぽたぽたと床へ落ちていく。

 

「…嘘だよね。記憶喪失とかさ…本当はドッキリなんでしょう? ヒガナさんとか他の人達を驚かそうとしてるだけなんだよね?」

 

 ゆっくり詰め寄られ両肩を掴まれる。

 …それ流行ってるんですか? と冗談を吐きたくなるけどこんな空気じゃ言えないです。

 

「…マー…」

 

 シガナはこの事を言いたかったんだろうな。

 ……余裕そうに見えて心はボロボロ。…なんたってボロ泣きするほどだ。

 

 ハルカちゃんは付き合いが長いだけあり突然の反応だったと納得していた。だけどヒガナは予想外だって…なに? どういうコミュニケーション方でこんなに仲良くなれたん? 

 

 コミュ力お化けやんけ。

 人たらしにポケモンたらしだって? ……荷が重すぎるって。

 

「…なにものにもなれなかったわたしに道を示したのはキミでしょ? …なんとかいってよ…!」

 

「…マー!」

 

 ハルカちゃんに負けず劣らぬ握力で肩を握られる。痛い普通に痛い。シガナが止めに入ってくれているが聞く耳持たずの状態。

 

 俺はなんて言葉をかけたらいいかわからない。わかるわけないでしょ! 下手に突っつくとボロがでる! 己から地雷原に突っ込む趣味はない。もうチキンレースが開催されているのでほぼ手遅れだったりするけど! 

 

「…なにもいわないんだ。…いってくれないんだね。…………してよ…」

 

 顔を俯かせ動きを止めた。

 シーツと病衣には雨のように落ちた涙の数だけ濡れ染み込んでいく。

 

「…え?」

 

 今なんていい…っ!? 

 

「思い出してよ! 思い出しなさいよ…! なんで! …なんでよ! …わたしを置いていかないでよ……!」

 

 視界はヒガナの顔で覆い尽くされる。

 近い…! 眼前とかのレベルじゃない! 

 

 こっちだって思い出せるなら思い出したいさ。まぁ思い出す以前の問題で記憶そのものを元なら持ってないから思い出せるはずもない。

 

 ただ…ひとつだけ方法がある。

 ORAS版アクア団ボスのアオギリがカイオーガを蘇らせようとした原因であり理由…団創立にも関わるポケモン。

 

 ねがいごとポケモンの()()()()

 1000年間のうち7日間しか目覚めないという極めて稀少なポケモンと言われている、が定かではない。

 

 起きている間は出会った者の願いを叶えてくれると言われ存在が明るみになれば…嫌でも想像できてしまう程の幻ポケモン。

 

 もし願いを叶えて貰えるのならば…カナタくんを生き返らせることができるかもしれない。それとも記憶を思い出す? 俺が元の世界に戻る? …願い方で変わりそうではある。

 

 この情報は小ネタとして扱われ匂わせに近く可能性は限りなく低いと思われていたが…スマホゲーにてほぼ確定している。けどマツブサとアオギリの両方ともカイオーガとグラードンを復活させていることから純粋なORAS軸とも言い難い。

 

 カナタくんがいる時点で矛盾している。

 ……正直ヒガナがこの様子だと他の知り合いもヤバいと思うわけです。この身体を使って好き勝手するつもりはハナからない。

 

 元の世界でありきたりの日常の中で画面越しからポケモンをやるだけ十分だって。普通の転生ならまだやりようはあったけどさ。

 

 その為にも…なんとかアオギリに接触する必要が出てきた。ただ立ち回りから印象は良くなさそうなんだよな。…多分、メガストーン保持者に辻バトル仕掛けてメガストーンを奪ってるわけでして。

 

 結果的には世界を救うことかできたが過程が悪過ぎる。メガストーンは返してはいるだろうけど…一人で行っても門前払いされると思う。

 

 必死に考えるがヒガナの泣き顔至近距離は心が辛い。…カナタくんヒガナに何を言ったのさ。これはもう好意を持ってるというか…依存に近いかもしれない気がするよ? 

 

 ハルカちゃんもだよね? …マジで他は大丈夫か? ユウキくんは大丈夫そうだったけど…。

 

 …足音? こっちに向かってくる。

 あ、深夜の病院。ヒガナは侵入していてさっきの叫びに近い大声。

 

 これ…不味いのでは? 

 来てるのは警備員では……? 

 

「…マー」

 

 シガナも気づいた。

 問題はヒガナだけど……。

 

「……なんでよ…」

 

 ダメそう。

 生気のない瞳で呟いている。

 

「…ママー!」

 

 シガナが腕を掴み声をかけてくれるが反応はない。その間も刻々と時間は迫り近づいてくる足音。どうする? このままだと見つかるし確実に面倒なことになる。

 

 今も面倒この上なかったりするがそれ以上に展開が……マジで恨むぞカナタくん。もし全てが元に戻って運命的な邂逅を果たせるなんてことがあれば助走をつけながらぶん殴らせてくれや。

 

「ヒガナ」

 

「…なに…っ!?」

 

「シガナも」

 

「マー!?」

 

 2人をベッドの中に引きずり込んだ。

 動くなよ…ホンマに動かないでくれ…! 

 

 当然の出来事で抵抗していたが次第に落ち着いたのか動きを止める。…布団からひょこっとシガナが顔を覗かせ目と目が合う。

 

「静かにしてね」

 

 頷くと引っ込んでいくシガナ。ほぼ同時にドアが開かれた。咄嗟に狸寝入りにする。

 

「誰もいない。患者も寝ている。水滴? 雨は降ってないが…」

 

 病室に足音が響き少し経つと足音は遠ざかる。ドアの閉まる音が聞こえ自然と息が零れる。

 

「…マ!」

 

「いきなりごめんね。もう大丈夫だから…ヒガナ…ヒガナ…?」

 

 また布団から頭だけ出したシガナに頭を下げてヒガナに声をかける。またもや反応がない。……布団を捲る。

 

「…すぅ……んぅ…」

 

 しがみついて寝息を立てていた。

 泣き疲れたんだろうね。…しかもガッチリとホールドされてるし。あれ、これ起き上がれないやつ? 

 

「ごにゃぁ…」

 

 おっと…シガナも眠たそうにしている。

 ……ヒガナもこれだしなぁ。

 

「シガナこっちにおいで」

 

「…マー」

 

 反対側に招くと腕の中にすっぽりと収まるシガナ。腕を枕にし耳を垂れ落とすと直ぐに独特な寝息が聞こえてきた。

 

 良い子は寝る時間。…こうなった以上は寝かせるしかない。あー…やることが多すぎる。

 明日…もう今日か。見舞客が来るだろうから情報集めとアオギリの事を聞かなきゃな。

 

 …おやすみなさい。

 目蓋を閉じて意識を閉じる。

 

 ……一瞬の様に目が覚めた、けど。

 

「なんであなたがここにいるの?」

 

「……キミには関係ないよね?」

 

 ンンンンンンンッ! 

 これは寝たふり…いや二度寝した方がいいですねはい。

 

 なんとか気合いで二度寝した。

 次起きたのはお昼すぎだった。




またしても何も知らない主人公
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