もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら 作:ガチタン雷電
第10章 アビドス砂漠レース:誰が最速か?
観光案内の翌朝。
アビドスの空は、嘘みたいに澄み渡っていた。
■レース形式
スタート地点:アビドス砂丘(小)
折返し:大砂丘の“ホシノ岩”
ゴール:アビドス観光案内所(廃墟)
距離は約12km。
直線・砂丘・沈み込み、全部盛りの砂漠コースだ。
■スタート前:各車の自己主張
●ジェームズの NISSAN パトロール(6代目)
安定の砂漠王者。
ジェームズ「パトロールはね……砂漠こそホームなんだよ。」
アヤネ「昨日点検した限り、機関系は完璧です。」
セリカ「逆に“普通すぎる”のが心配だよね。」
エンジンは静かで力強い唸り声。
ジェームズ「今日もご機嫌だ。」
●ジェレミーの ランドローバー
毎回どこかがおかしい車。
ジェレミー「砂を吐いたが、まだ走る。
つまり走るために生まれてきたんだ。」
シロコ「ん……ジェレミー、今日は電気系統が大人しい。」
ジェレミー「その言い方が一番怖い!!」
●ハモンドの ハマー H3
見た目は最強。中身は市販SUV。しかも中古。
ハモンド「H3だろうが関係ない!!
ハマーの名を背負ってる時点で勝ちだ!!」
ノノミ「下回り、昨日補強しましたけど……
正直“気合で走る車”ですね。」
ホシノ「雰囲気オフロードってやつ?」
ハモンド「雰囲気があれば十分だ!!」
■ レース前:不穏すぎるハンデ調整
スタート地点の砂丘脇。
ジェームズの NISSAN パトロールの横で、
アビドス側メンバーが何やら無言で動いていた。
ゴトン。
ゴトン。
ゴトン。
車内に次々と積み込まれていくのは――
水の入ったポリタンク。
しかも一つや二つではない。
アヤネが淡々と数を数える。
「……8、9、10。
はい、水タンク10個、積載完了です。」
ジェームズは運転席のドアに手をかけたまま、動きを止めた。
「……アヤネ」
「はい、ジェームズさん」
「これは……何かな?」
アヤネは一切の迷いなく答えた。
「ハンデです。」
■ 英国人、理解が追いつかない
ジェレミーがランドローバーから顔を出す。
「ちょっと待て。
なんで“水”なんだ?」
ホシノがにこにこしながら言う。
「だってさ~
パトロール、強すぎるんだもん。」
ノノミも元気よく頷く。
「砂漠ですし!
水は大事ですからねっ!」
ジェームズはゆっくりと車内を見回した。
後部座席。
ラゲッジスペース。
全部、水。
「……つまり」
彼は静かに結論を出す。
「僕の車は
移動式給水車になったというわけだね?」
セリカが肩をすくめる。
「そうなるわね。ちょっと座る場所が狭いけど」
■ 物理的に重い沈黙
ジェームズが試しにドアを閉める。
――ズン。
明らかにいつもより重い音。
ジェームズ「……」
アクセルを軽く踏む。
エンジンは唸るが、
明らかに反応が鈍い。
ジェームズ「……重いね」
アヤネ「はい。
満水ですから。」
ジェレミーが吹き出した。
「満水って言うな!!
車に使う言葉じゃない!!」
■ 英国的な抗議(無駄)
ジェームズは冷静に、しかしはっきり言った。
「これは競技として不公平だと思う。」
ホシノは即答する。
「でも昨日、
『パトロールは砂漠の皇帝』って言ってたよね?」
ジェームズ「……言った」
ノノミ「皇帝には重たい王冠が必要です!」
ジェームズ「そんな比喩は聞いたことがない」
■ 最終確認
アヤネがチェックリストを見ながら言う。
「水タンク10個
総重量、およそ200kg強」
ジェレミー「普通に人3人分だぞ!!」
ハモンドがH3……ではなく今回は横で見ているだけだが、ニヤニヤしながら言う。
「安心しろジェームズ。
俺の車はもっとひどい。」
ジェームズ「それは慰めにならない」
■ それでもジェームズは乗る
ジェームズは一度、深く息を吐いた。
そして静かに運転席に乗り込み、
シートベルトを締める。
「……いいだろう」
皆が少し驚く。
ジェームズ「水を積んだ状態で勝てば、
それは“本物”ということだ。」
セリカ「その発想、嫌いじゃないけど無茶だよ!」
アヤネ「記録、残しますね。」
■ レース直前
ホシノが旗を持ち上げる。
「じゃあ――
給水車も含めて!」
ジェームズ(小声)
「僕は今、
給水車でレースをやらされている……」
砂漠の風が吹き、
3台のエンジンが唸り始めた。
重すぎるハンデを背負ったパトロールと共に、
アビドス砂漠レースは始まろうとしていた。
■レース開始!
ホシノが観光案内所の旗を引きちぎり、高く振り上げる。
ホシノ「☆よーい……スタートっ!!☆」
ドォォォン!!!
3台が同時に砂煙を巻き上げ、飛び出した。
■序盤:パトロールの安定感が異常
パトロールは跳ねない。沈まない。ブレない。
アヤネ「速度が落ちません……!」
ジェームズ「これが“普通に強い”ということだよ。」
セリカ「地味に一番ずるい性能だよね。」
■中盤:ランドローバー、電気の反乱
突然、計器盤が赤く光る。
《UK MODE:HIGH-RISK DRIVING》
ジェレミー「また何か出た!!何だこの表示!?」
シロコ「ん……“英国式・高リスク運転モード”。」
ジェレミー「そんな機能聞いたことない!!」
だが、急にスピードが伸びる。
シロコ「ん……アクセル信号、固定された。」
ジェレミー「固定!?戻らないのか!?」
シロコ「戻らない。」
ジェレミー「ただの暴走だ!!」
■後方:ハマーH3、必死に食らいつく
H3は砂丘で左右に揺れながらも前進する。
ハモンド「よし!走ってる!走ってるぞ!!」
ノノミ「エンジン音が悲鳴寄りですけど!」
ホシノ「H3でここ走らせてるの、だいぶ無茶だよねぇ。」
ハモンド「無茶こそ男のロマンだ!!」
■中間地点“ホシノ岩”で異変
折返し地点の大砂丘。
先頭のパトロールが侵入した瞬間——
ズボッ!!
沈んだ。
アヤネ「え!?沈みました!?」
ジェームズ「おかしいな!?理論上は沈まないはずだ!」
セリカ「燃料満タン+予備燃料+観光装備フルでしょ!!」
ジェームズ「それは想定外だ!!」
ジェレミーのランドローバーが横を暴走通過。
ジェレミー「すまんジェームズ!止まれん!!」
シロコ「ん……ごめん……」
■終盤:H3、意地の追い上げ
ハモンドは歯を食いしばる。
ハモンド「オンボロだろうが……
ハマーはハマーだ!!」
エンジンを回し、砂丘を力任せに突破。
ノノミ「パワー不足を気合で補ってます!」
ホシノ「それ、褒めていいのかな……?」
ハモンド「走ってるなら勝ちだ!!」
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■最終ストレート:三つ巴
砂煙の中、3台が横一線。
ジェームズ:沈みかけながら必死
ジェレミー:アクセル全開固定
ハモンド:部品が今にも外れそう
ジェームズ「冷静さが勝敗を分ける!」
ジェレミー「知るかあああ!!」
ハモンド「頼むから壊れるなああ!!」
エンジンの悲鳴が重なる。
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■ゴール!!!
廃墟の観光案内所に突っ込み、3台同時に到達。
結果は——
1位:ランドローバー(暴走勝利)
2位:ハマーH3(気合と根性)
3位:パトロール(沈没)
■レース後
ジェレミーはギアを落とすと、砂の抵抗で徐々にランドローバーのスピードが落ちていくがエンジンの叫び声が酷くなる。
そのままUターンしてニュートラにしてブレーキを踏みながらゴール地点に戻ってくるなりジェレミーは両手を上げて叫ぶ。
ジェレミー「見たか!?俺のドライビング!!」
シロコ「ん……運転じゃなくて、車が勝手に……。」
ジェレミー「勝ちは勝ちだ!」
ハモンドはH3を撫でる。
ハモンド「よくやった……!
市販SUVにしては上出来だ……!」
ノノミ「ネジ、また増えて落ちてましたけどね。」
ホシノ「オンボロでここを走ればそうなるよねぇ。」
ジェームズは沈んだパトロールを見て肩を落とす。
ジェームズ「……車は悪くない。
砂と装備過多が悪いんだ。」
セリカ「はいはい。」