もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら 作:ガチタン雷電
アビドス砂漠前線基地奮闘記
アビドス砂漠前線基地
後にスターゲートタウンと呼ばれる場所
――本来「仮設」のはずだったもの
最初に立ったのは、ただのテントだった。
砂嵐に備えた、簡易式の観測拠点。
スターゲートの周囲を囲うための、最低限の警備線。
誰もがそう認識していた。
「数週間で撤収する」
そのはずだった。
■ 一週間後
テントは増えた。
無線アンテナが一本立ち、発電機が唸り始めた。
誰も「基地」とは呼ばない。
ただ、
観測用設備
整備スペース
休憩所
そう言い換えていただけだ。
■1ヶ月
大分前に退役したチーフテンが続々配備され、退役軍人が続々と配置された。
■半年後
英国側の困惑
駐屯地司令は、ある日、報告書にこう書いた。
「当初、治安維持は目的外であったが
結果的に周辺安定化に寄与している」
部下が小声で付け加える。
「……住民、増えてますよね」
「屋台、増えてます」
「生徒が普通に通り抜けてます」
司令は頭を抱えた。
「我々は“暫定”のはずなんだが……」
必要な鉱物は各自治区と交渉が進められていた
■ 3年後
砂漠の地面が均された。
最初は、車両の轍だった。
次に、補給車両が同じ経路を使い始めた。
結果、平坦地ができた。
「滑走路ができそうだな」
誰かが言った。
数週間後、
SA330ピューマが降りた。
その後、
旧式ハリアーが並んだ。
「一時的な配置」
「代替が来るまで」
そう書かれた。
数カ月後コンクリートの滑走路が出来き輸送機も配備された
■ 9年後 西暦2011年
砂漠の地面が均され、
コンテナが並び、
滑走可能な平坦地が自然と形成された。
SA 330 ピューマ12機、
そして航空機のハリアーが96機+複座型13機、
「とりあえず」置かれた。
置いたのではない。
置いてしまった。
というのが正しい。
■ 3か月前
アビドス側の生徒が、基地の存在を通称スターゲートを“風景”として扱い始めて十年後
ホシノは欠伸をしながら言った。
「このあたりに来ると砂嵐より、あの基地のほうが先に見えるんだよね〜」
シロコは望遠鏡越しに、淡々と。
「夜間照明、安定してる。
ここは、道が分かりやすい」
アヤネは記録を取りながら。
「……アビドスよりもここは治安がよいですから。」
■ “治安の歪み”
キヴォトスにはブラックマーケットが存在する。
それは公然の事実であり、
どの自治区にも程度の差こそあれ、影はある。
だが――
アビドスのスターゲートの周辺だけは、少し違った。
理由は単純だった。
アビドス自治の治安巡回
イギリス基地の周辺警戒
両者の情報共有
互いに“勝手なことをしない”という暗黙の了解
結果、
犯罪が入り込む余地がなかった
■ ブラックマーケット側の評価(噂)
「やめとけ、スターゲートは」
「生徒だけじゃない。
あそこ、外の連中も見てる」
「銃を出した瞬間、
どっちから飛んでくるか分からん」
「しかも、誰も怒鳴らない。
淡々と捕まる」
皮肉にも、
“一番割に合わない街”
それが、スターゲートになった。
■ アビドス側の結論
セリカが腕を組んで言った。
「結局さ、
銃が多いから平和になったんじゃなくて」
ノノミがにこやかに続ける。
「“見てる人が多い”から、悪いことができないんですわ」
ホシノは地面に座り込み、空を見上げた。
「仮設ってさ〜
長く置くと、だいたい本設になるんだよね〜」
シロコは短く。
「ここはもう、基地がある前提で回ってる」
■ いつの間にか
誰も宣言しなかった。
条約も、正式な合意も、後回しだった。
だが現実だけが先に進んだ。
舗装された道
定期補給
共同巡回
そして、静かな夜
全自治区を見渡しても、
これほど事件が起きない場所は、他にない
そう評価される頃には、
もう誰も「仮設基地」とは呼ばなくなっていた。
■ ナレーション(締め)
こうしてスターゲートは、
戦車と銃と砂漠に囲まれながら、
キヴォトスで最も平和な街の一つ
という、
誰も予想しなかった称号を得た。
そして、基地は今日もそこにある。
最初から、ずっと、
あったかのように。