もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら 作:ガチタン雷電
第7章 アビドス観光ガイド実地訓練編
~この砂漠に観光客なんて来るのか?~
砂嵐の避難壕で一夜を明かした翌朝、アビドスの空は不自然なほど澄み切っていた。風は砂漠とは思えないほど穏やかで、太陽がさっきまでの暴力を忘れたかのように微笑んでいる。
「さて!」
ホシノが胸に手を当て、やや芝居がかった声を張った。
「本日はですね~。アビドス観光復興のため、皆さんには“観光ガイド実地訓練”をしていただきまーす!」
「観光ガイド?」ジェレミーが眉をしかめる。
ハモンド「昨日、死にかけた砂漠で?客なんて来るのか?」
ホシノ「大丈夫……!アビドスはね、やればできる子なんだよ……!」
セリカ「泣くからやめて」
ホシノの適当と希望と謎の情緒に満ちた鼓舞をアヤネが淡々と引き取る。
「こちらをご覧ください。観光名所候補の地図です」
ハモンド「廃坑、遺跡、廃荘、廃線跡……あの、全部“廃”がついてるんですけど」
「はい!」
アヤネが胸を張った。
「アビドスは“廃墟観光”を全面推しにします!」
セリカ「やけくそじゃない?」
アヤネ「でも海外では一定の層に人気が……」
ジェレミー「俺たち、一定の層向けだったのか…?」
ジェームズとリチャードが苦い顔で地図を見てる。
だがもう出発するしかない。
■出発と同時にトラブル①:パトロールは馬鹿みたいに元気
「よし、まずは“旧作業坑道”だ。俺が先導する」
ジェレミーがパトロールのドアをバタンと閉めた瞬間、またしてもエンジンが一発で吠えた。
「お前……なんでここに来てまで健康なんだ……?」
アヤネ「昨日、砂嵐の中で唯一壊れなかったの、パトロールでしたよね」
「イギリス車では絶対にありえない現象だよ!」
パトロールは誇らしげに砂漠へ突っ込んでいく。
■トラブル②:ハマー、たった500mで車高が下がる
「さーて、今日は壊さないぞ、相棒」
ハモンドがハマーH3のボンネットを撫でながら発進する。
ゴン。
「ん今、なんか落ちたけど!?」
ホシノが振り返った。
ゴゴン。
「ほらまた!なんか、下の装甲板が……!」
ハモンド
「違う、これは“軽量化”だ!」
ジェレミー『勝手にやるな!』
砂丘に乗り上げるたびになぜか車高が下がっていくハマー。
昨日より“重厚感”がなくなっていっている。
『ハモンド、それは車高じゃなくて“寿命”が下がってる音だよ』
ジェレミーが無線で言った。
■トラブル③:ランドローバー、今日も絶好調で不調
「さっ、電気の神よ。今日も頼むぞ」
ジェームズが祈るようにランドローバーを発進させる。
ピカッ。
“UK SPECIAL DIAGNOSTIC MODE”
“CHECK EVERYTHING”
「全部チェックすんな!」
「アビドスの空気がイギリス車に刺激的すぎるのかも……」
アヤネのフォローが雑だ。
走行開始から二分後、ランドローバーの助手席に置いた謎の警告灯用外部バッテリーが発熱し始めた。
「ジェームズ、それ、煙出てる!」
「問題ない。電気の精霊が……働いて……あっつ!!」
外へ投げ捨てた。
■アビドス旧作業坑道(観光名所候補①)
「ここが最初の名所、“旧作業坑道”です!」
アヤネが観光ガイドらしく言う。
「……うん、廃墟だね」
ジェレミーが率直に言った。
「廃だからこそ!ほら、アビドスの歴史と文化が……」
ホシノは観光パンフを大げさに広げた。
しかし坑道入口にはでかでかと
“立入禁止:砂で埋まっています”
と書かれた看板が倒れている。
ハモンド「埋まってるのか?」
アヤネ「はい!」
ハモンド「じゃあ観光できないじゃないか!」
アヤネ「そこを……なんとか……!」
ホシノが鍬を持って坑道を掘り始める。
後ろでジェレミーがため息をついた。
「この学校、本当に観光で金を取る気あるのか?」
「実地訓練だよ〜」
「客が来る前にガイドが死ぬだろ」
■坑道の“崩落イベント”
シロコが索敵ドローンを飛ばし状態を把握する。
「ん…天井がところどころ脆くなってる。あまり入らないほうがいい……」
その瞬間。
パサァ……ッ。
坑道の天井から砂が少し落ちた。
ジェームズとハモンドが同時に肩をすくめる。
「始まったな」
「崩壊のカウントダウンだ」
「ちょっと!やめてよ、不吉なこと言うの!」
セリカが不満げに振り向いた瞬間だった。
ゴゴゴゴッ!!
坑道入口が約30%ほど追加で埋まった。
アヤネ「ホシノ先輩!もう無理です、これは観光不可です!」
ホシノ「そんな……アビドスの未来が……!」
■坑道からの撤退&次の名所へ
ジェレミー
「ホシノ、諦めたほうがいい。客より先に俺らが埋まる」
「むぅ……じゃあ次は“アビドス遺跡”に行きます!」
「遺跡って……」
ジェレミーが眉をひそめた。
「昨日の砂嵐でさらに埋まってるんじゃないか?」
「じゃあ掘ればいいんだよ!」
「いやだよ!」
三台の車は再び砂漠を走り出す。
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■向かい風:アビドス遺跡は想像以上にひどかった
「到着しました。“アビドス遺跡”です」
アヤネが淡々と言うが、テンションはゼロだ。
そこには――
砂漠に突き刺さるように石柱の先端が一本だけポツンと出ていた。
「……以上です」
ハモンド「いや“以上です”じゃないよ!これだけ!?」
アヤネ「昨日の砂嵐で……ほとんど……」
ジェームズ「埋まったのか?」
「はい。掘ればワンチャン……」
ホシノが鍬を持ち上げる。
「やめて!」
全員が叫んだ。
■遺跡発掘“ツアーごっこ”
結局、ホシノをなだめきれず、全員で“発掘ツアー”的なことをする羽目になった。
「ここを掘るとですね~、古代アビドス文明のロマンが……」
ホシノが軽快に説明しながらスコップを動かす。
アヤネ「ホシノ先輩、それ本当に古代文明なんですか?」
「多分!」
ハモンド「“多分”で掘るな!」
一方、ランドローバーは盛大に砂に沈んでいた。
ジェレミーがスコップを持って嘆く。
「なんで俺まで掘ってるんだ……?」
「君の車、完全に化石発掘現場みたいになってるしな」
ジェレミーが笑う。
「黙れ!」
■発掘の“成果”
30分後。
「見てください!石……っぽいものが出てきました!」
アヤネが嬉しそうに叫ぶ。
「“っぽい”はもうやめろ!!」
ジェレミーが頭を抱える。
しかしホシノは感動していた。
「アビドスの未来、繋がったね……!」
ハモンド「嘘でも前向きなのが逆に辛いよ」
■“謎の人影”
全員が発掘ごっこに疲れ果てた頃だった。
シロコのドローンが警告音を発する。
「んっ接近……?砂丘の向こう、人影」
ハモンド「観光客?」
「いや、武装してる」
ジェームズ「……え?」
砂の向こうに、
アビドスの子たちが知らない“外部の勢力”
らしき影がゆっくりと近づいてきていた。
ハモンド「えっ、今日って観光ガイド実習だよね?」
ジェームズ「なんで武装集団が来てんの……?」
ジェレミーがパトロールのエンジンをかけながら言う。
「どうやら、観光地よりも先に“問題”のほうが俺たちを見つけたようだ」