スカード・スワロウ・アンド・サンベリーナ・ドロイド   作:nallowship

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スカード・スワロウ・アンド・サンベリーナ・ドロイド #5

◆カラテの高まりを感じる◆

 

 

『トラブった アツコヒヨリはシャーレ頼む オーギュギア来るな』

青白い光、一点。オブツダン前のセンコめいて目元のみを照らす。

発信から3時間遅れで届いた、ハイクめいたメッセージ。未だ続きはない。送り主を思えばおそらく、これからも。

「……そう言われて、来ないとでも思ったのか?」

メンポめいた黒い防塵マスクの内で、錠前サオリは寂しげに呟く。

ーー電光。メッセージが消え、戻る。そして雷鳴。

「スッゲエな!」「スッゲエ!」「コワイ!」「テストに出ないぞ!?」「アハハ!アカチャン!」「今の落雷は近いですね」「ダヨネー」……喧騒とは言えない程度の声。にわか雨で逃げ込んだ暗室めいた空の倉庫には、装甲車やスクーターが無秩序に停められ、生徒が思い思いにたむろする。ーーフルフェイスヘルメットを一様に被った生徒たちが。

学園という秩序からドロップアウトしたヤンクの徒党、中でも頭数が多いのが彼女らヘルメット団だ。サオリの傭兵稼業の常連でもある。今も。そして昨夜も。

皮肉なものだ。より深く、遥かに腐爛した裏社会の汚泥に身を置いていたが故に、それがかえって身の明かしとなるとは。

「ヨー! 頼りにしてるぜバイト! お前がいりゃあノーリスクでキンボシ・オオキイだ。他の信頼できるチームにも声かけてるからな。ハハッ、お前の家族も助かる。家族が大事、だろ?」

団のリーダーが勧めるドリンクを、奥ゆかしく断る。

ヘルメット団は今回の一件について、不干渉と称する放任と決めた。不審な案件には近寄らない計算高さやアリウスへの同情ではない。ヤクザクランとの競合回避、リスクマネジメントだ。当然こういう団も出る。ーーだがサオリには幸運だ。無用な戦闘を避けてミサキを追える。

幸運と言うなら、彼女たちも。

『任せて』

アツコとヒヨリを頼んだ際の、先生からの返信。ーーその上のメッセージ。

『任せなさい。見かけたら匿うわ』

便利屋68の社長から。短い文面にも確かなソンケイがある。静観だけを頼むつもりだったが、言ってみるものだ。

(大丈夫だ)

希望はある、諦めなくていい。運命に慈悲を乞うにはまだ早い。

夏の浜辺、潮風とまばゆいネオン光の中で、カメラを前にして細い指が遠慮がちに触れた己の腕に、確かめるように爪をくい込ませる。

(……大丈夫な、はずだ)

それでも身体の震えは止まらない。喪失の恐怖、冷たい焦燥が背を這い上がってくる。

「早まってくれるなよ……ミサキ」

 

 

【スカード・スワロウ・アンド・サンベリーナ・ドロイド】#5

 

 

VROOM! VROOM!

古びた中型輸送トラックから30秒遅れて、違法改造モーターサイクルが緩やかな下りのヘアピンカーブを曲がった。車体には256色に変化する偏光塗料で描かれた「カナリハヤイ」「小銭」「ドラッグ自己責任」の極太オスモウフォント。市民や金庫をバイク牽引チェーンで引きずり、セキュリティを破壊して金品を奪う、ヒッタクリ強盗行為を生業とする悪名高き無軌道騎乗ヤンクである。

「ヘイヘイヘイヘイ!」

「ヘイヘイヘイヘイ!」

4台のバイクは、危険な蛇行運転を繰り返しながら速度を上げる。乾いた木の葉がタイヤにすりつぶされ、白い排気ガスに混じって宙を舞った。

「見つけたァ!」

先頭のリーダーが歓声を上げた。

つづら折りのカーブを曲がるためスピードを落とすトラックの、赤いブレーキランプ。賞金首の情報拡散と時を同じくして、逃げるようにオーギュギア港を発った1台……その直前にアリウス生徒の目撃情報。彼女らにとっては怪しむに充分な行動だ。

リーダーともう1台がスピードを上げてトラックに追い付き、残る2台は距離を取り連続パッシング、バックでの逃走を許さぬ。イルカに銛を打ち込まんとする違法改造漁船めいて、エンジンを空ぶかししながら運転席の少女を威嚇する。

「やめてください。アブナイです。初心者ですよ!」

「シラネ!」

「ヨー、アリウス生徒いるんだろ? 分かってんだよオラー!」

「アイエエ……」

サイドミラーを掴んで凄む。

ハッタリだ。彼女らにはアリウス生徒の見分けなどつかない。効率的な狩り場に割り込めなかった、期待値計算などできないスローポークが、目についた候補を追ったに過ぎない。それに彼女らにとっては、相手が弱く奪う金品があれば構わないのだ。ナムサン! 何たる場当たり的行動か! ーーしかも目の前で怯える少女こそが実際キンボシとは!

「隠すとタメにナラネッゾコラー!」

「な、何で私に聞くんですか!? ヒッチハイクの人なら本人に聞いてくださいよ! 荷台の!」

「ア?」

ハンドサインで指示、1台が速度を落として荷台を見る。……空だ。激昂したヤンクが、ハンドガンの銃床を窓に叩きつけて威圧する。コワイ!

「ザッケンナコラー! 誰もいねえぞオラー!」

「アイエッ!? そんなはずは……」

ーーその時である!

KABOOOOM!

「「グワーッ!?」」

突如、トラックの後方で爆発! 激しく吹き出した炎に巻かれて後続のバイク2台が転倒、道路を転がるヤンクたち! 衝撃で折れた枝、木の葉が降り、残り火に触れて燃え上がり、揺れる紅葉を血のように赤く照らした。

「「ワッザ!?」」

「アイエッ!? ごめんなさい許して!」

恐怖にかられた少女ーー6時間前の反応を機械的に再現するケイはアクセルを踏む。加速するトラック、それに目もくれず振り返ったヤンクが見たのは、赤い煙に浮かぶ黒い人影。そしてーー

BLAM!BLAM!BLAM!

ハンドガンの3連射。それを2回。

「ザッケンナコラー!」

「ダッテメッコラー!」

激昂、タイヤ痕を刻んでターンし襲撃者に迫る。ーー既に攻撃を終えたミサキへ。

KABOOOM!

「「グワーッ!?」」

打ち上げていたグレネードが2つの後輪の間に着弾、爆発した。撥ね飛ばされたヤンクは縦に3回転して墜落。ミサキは2歩歩き、1人に銃弾3発を撃ち込んで昏倒させた。残るリーダーの携帯UNIXを抜き取って顔・指紋認証を本人のもので解除、IRC-SNSへのログイン確認と同時に3連射。制圧完了。

「……ん?」

自分を追う賞金稼ぎたちのIRC-SNS情報交換に指を走らせ、ミサキは高速スクロールする履歴を読み取る。その表情は僅かに怪訝……そして確信へと変わる。

携帯UNIXを操作し、48時間後の再起動と救援発信コマンドをタイプしてシャットダウン、藪の中に投げ込む。銃と銃弾を奪い携帯UNIXを破壊、拘束したヤンクたちとバイク3台も投げ落とす。道路からは見えないことを確認。残るバイク1台に近射、悪趣味な装飾を外して同様に廃棄。

「……ま、これでいいか」

そしてミサキはバイクに跨がり、ケイを追った。

灰と硝煙は夜霧とともに消え、後にはタイヤ痕とグレネードの爆発痕が2つ。――珍しくもない、キヴォトスのチャメシ・インシデント。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ケイは不機嫌だった。

トラックが行く夜道はすでに平坦なものとなり、まばらな街灯が点々と照らしている。その明かりももう必要ない。山の端はすでに白々として、さえずる鳥の影も露出補正なしに見てとることができた。

(……そろそろ24時間、ですね)

天候の差はあるが、ちょうど自分が今の身体で目覚め、ミサキと会ったのと同じ明るさだ。特に何かがある訳ではない。だが1つの区切りを越えたことは、ケイの不安と焦燥を少なからず掻き立てる。

アリスは……ゲーム開発部は……ミレニアムのみんなはどうしているだろう? 自分は果たして無事に帰れるのか? 意思の先に答えが出せない。5マイル先まで霧。……ひとえに己の無知と無力故に。

ケイの隣にミサキはいない。彼女のバックパックだけが、助手席の足元に置かれている。当人はーー

「……なんなんですか、彼女は」

バックミラーに映った小さな光を、ケイは眉をひそめて睨む。一定の距離を置いて追ってくる、送り狼めいたバイクの明かりーー

 

『……何で待ってたの?』

 

最初の襲撃の後、ミサキはそれだけ言って、ケイ1人で先に行くよう促した。

ーー失望したような目だった。

(ミサキが心配だから待っていたのに……)

囮になった際に無関係を装った以上、それを貫くのが合理的なのは分かる。だが……合理的なのだろうか? 彼女は。リオとは違うようだが。

ーーその後に3回の襲撃があり、いずれもミサキが難なく返り討ちにした。その間、ケイは知らないふりをしていた。銃弾1発も撃つことなく、言われた通り囮として。

 

 

ウシミツ・アワー、僅かな休憩の間に説明を受けた。

追手を撃破する度に、ミサキはそのUNIXから賞金稼ぎたちの情報を収集している。数が多い訳でもないアリウス生徒の確かな情報は少なく、交戦は常に散発的だった。組織だった「狩り」が少ないのも、割に合わないからだろう。実際「狩った」という書き込みも、現状はない。

ーーアリウス分校。連邦生徒会非加盟の「存在しない」学園。生徒は事実上の無学籍、荒事に長け、素性を隠すか傭兵・裏稼業を生業とする。ミサキは上澄みだろうが、それ以外も相応の実力がある。ーーケイの認識はその程度だが、確からしい。

ただ、重要なのは「話題になっていない事柄」だ。すなわちーー『シャーレ』『ミレニアム』、そして『オーギュギア港』。

シャーレ、そして先生への言及は「警戒」のみ。具体的な行動の情報はない。ケイは大いに不満だったが、ミサキは安堵していた。匿われている仲間の無事、その傍証だからだ。

残り2つは偶然そこにいた、賞金稼ぎと、無関係のアリウス生徒の情報のみ。ケイとミサキとおぼしき情報もあるが、扱いは噂の域を出ない。実態は知られていないと見ていい。

「……ここからは、私の推測だけど……ケイを追ってる相手は…ケイを追う気がないーーいや…なくなってる」

「自分が何言ってるか分かってます?」

「当然。……初めて会った時、ヤクザは確かにケイを探してた。今も…諦めた訳じゃないと思う。でも…賞金稼ぎに流してる情報が少ない。特にスタートとゴール……オーギュギア港とミレニアムは…捕まえたいなら真っ先に出す情報。表向き私がターゲットだから…ケイのこと不必要に知られたくないとしても……出し惜しむ必要はないはず」

「わざと泳がせてる、ってことですか? ミレニアムから連れ出されて、ミレニアムに帰るのは分かりきってるのに」

「それなら監視がつく。……でもその気配はない。目的が本当に私に移ったのか、それとも……」

ミサキは道の向かいの看板を指さす。「新発売」「今売れています」と極太オスモウフォントで書かれた健康食品ーー10年以上前に違法覚醒成分混入とその偽装で表向き販売禁止、密かにブラックマーケットで流通する薬物だ。継ぎ目から漏れだした赤錆が、炎めいてグラフィティを覆っている。

「炎上マーケティング。騒ぎにできればそれでいい、か」

「最新鋭テックとかいう報酬ですか。悪趣味な」

「それはそれで詳しい中身が出てないのが変……でもないかな。それが、ケイなんだろうね。ハッキングの成功例。『ミレニアム攻略法売ります』って」

「悪趣味です」

 

夜明け前、閑散とした幹線道路。廃業寸前の無人給油スタンドで、ケイは色褪せた看板の指示どおりに、クレジット素子を端末に挿し、給油ノズルを外す。高密度バイオ燃料がチューブを流れる抵抗感が、小さな手に伝わってくる。

ミサキはーー200メートル後、かろうじて路線バスの停留所と分かる小屋の前にいる。この一夜で随分と煤けて、余計に狼じみた風体だった。戦闘のみならず、何度かカーブで転倒していた。意外に不器用なのだ。

「休憩のときくらい、こっちに来ればいいのに……」

貰った水がまだ1本、手付かずで助手席にあるが、ミサキは受け取らない。彼女の手元には銃火器と弾薬、給油用の小銭のみ。財布丸ごと預かるのはやり過ぎだと言ったのだが。

「充填完了ドスエ。釣銭が必要な場合はセルフで精算を重点……」

ノイズまみれの音声案内が、骨董めいた釣銭精算機を指し示す。駄菓子も買えない額だが、貴重な他人の金だ。素子を抜き、精算機からパフ・センベイめいた薄い硬貨を出す。

(釣銭……)

……不器用? 自分が言えた台詞だろうか。

『生きること』、それが自分の生きる意味だ。作られた意味など今さらどうでもいい。終わったことだ。最低限。疑う余地のない自明の定義だ。不足だとは思わない。ーーでは、その前は?

神を騙ったAIがいた。迅速正確な計算のための機械として、自己定義とスペックの分不相応な拡張の果てに、無謬の存在へと至ろうとして滅んだ。自己しか持ち得なかったが故に。

自分は違う。間違ってはいない。絶対に。……ただ、程度の問題だ。

思うままに生きること。ーーそれは否定し、欠落した「作られた理由」の代替として、過剰なものになっていないか? 適度とは難しい。だからAMASの筐体や、囮役に甘んじることが歯がゆく、ゲーム開発部や先生にも自分同様に厳しくし過ぎているのではーー

(……いや、でも私にも我慢の限度というか常識的な判断というものが)

もはや懐かしいゲーム開発部とその部室の醜態……あれは妥協してはいけないと思う。エンジンをかけながら天をあおぐ。

ーーそのとき、ふと、ケイは窓の外を見た。

見たことのない黒い車がスタンドに停まり、中から3人分の人影が現れた。

同じ顔。

同じ服装。

同じ埋め込み型サイバーサングラス。ーー1人と目があった気がした。

同じタイミングで顔を見合せる。

同じチャカ・ガンを抜く動作。

同じ動きでタンを吐く。

(……何ですか? これは)

この身体は器用だ、と思った。寝ぼけることもできるのか。まるでゲームのエネミーだ。カトゥーンのニンジャが使う分身ニンポだ。3つのチャカ・ガンの銃口が、同じタイミングで自分に向いてーー

 

ーーBLAM!

 

銃声だけは聞こえた。それ以外の音は絶えた。

黒いスーツ姿の3人、その一人のこめかみが砕けた。オジヤめいた肉と骨の断面から、緑色の体液がばらまかれ、霧となって風景を歪める。ーー直後、散開した黒服ーークローンヤクザとケイの間を横倒しのバイクが通過し、バルク品アサルトライフルを構えたミサキが立ち塞がった。

声は聞こえなかったが、ミサキの言いたいことは分かった。

ーー逃げろ、と。

気付けば、ケイは逃げていた。

ミサキに従ったのではない。何も考えられないまま、反射的にアクセルを踏んでいたのだ。

恐怖だった。

 

ケイは知らなかった。

アリウスという地が、分校が、その生徒たちに強いてきたものがーーキヴォトスの禁忌、「悪意」と「殺意」であることを。

 

背後で爆発音が聞こえた気がした。だが、熱も、光も、ケイは感じなかった。車体を貫通したチャカ・ガンの1発が右腕の防弾シリコンを抉った痛覚だけが、意味のある感覚だった。

 

 

ーー耳鳴りが止む。発砲の反動も同時に肩から腕へと抜け、指先に僅かな痺れだけが残っていた。

「……ア……ぐ……ーー」

声が出ない。息ができない。爆発の熱を吸ったか? ーー頬が濡れている。額に傷。他にもいくつか。

(……かなり食らった。この銃弾、裏でも見たことない……かなりキツい…かな)

バイクを支えに身体を起こし、バイクを起こす。ただ重いだけの身体を、痛覚がかろうじて繋ぎとめているようだ。

顔が熱い。めまいがする。目の前には爆発炎上したスタンドーー死体は全て炎の中だ。あのヤクザには見覚えがある。ケイを追っていた相手と同じだ。全く同じ姿……クローン兵士か。キヴォトス外から持ち込まれたものだろう。

(大丈夫、通信はさせなかった。……仲間は呼ばれてない、問題ない……ケイの方は問題ないはず)

天に昇るブラックドラゴンめいた黒煙を見上げる。さすがにこれは目立つ。賞金稼ぎが昨夜以上に寄ってくるはずだ。

(今度は私が囮か。……まあ、自業自得だよね。どうせならコート出しておいてもよかったかな……適当に目立ちながら、適当なところで撒いて……それでーー)

「それで……何の意味があるの?」

呟く。

無意識だった。自分の声を耳にして、初めて気付いた。ーーだがミサキが疑問を抱くことはない。

「……意味なんてないよ。私には、何も」

いつもと同じだ。

ーー昨日も、そうだったから。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……アーハ? やっぱり、妙な動きしてるのがいるなぁ……」

UNIXに囲まれたタタミ1枚の空間、ケミカル臭が充満した安楽椅子で、若い女の声がした。毒蛇めいてしなやかな指が、ZBRとメン・タイをカクテルした違法成分含有ドリンク剤の瓶を摘み、底に残ったざらつく一滴を舌に乗せて、捨てる。

全方位からログを吐き出すUNIX画面を、柿色のブレザーを着た女は従僕のように見下す。取引先からのリクエスト、退廃的レディオ、ダークウェブの暗号通信、過剰消費扇動コマーシャルプログラム、等、等……

ーーピポッ!

『#893_SHINOGI:MADFROG:エメツ所望。継続的な取引を要求する』(0.17sec)

ノーティス。女は一瞥、鼻で笑って……僅かに目を細める。

ーーピポッ!

『#893_SHINOGI:HANDBILL:話にならない。薬物以外に使い道のない相手にはネコにコーベイン、取引の旨味がない。もっと欲張れ、ましな企画を寄越せ』(0.01sec)

手を動かす必要はない。首の後ろ、生体端子から引き出されたケーブルが、マネキネコ型端末に繋がっている。ニューロンの電気信号がコード変換され、思考の速さでタイプする。違法サイバネによるLAN直結だ。

「構築は済んだし、暇潰しに一回見に行こうかなぁ? ……ア? そこまで付き合う気はないっての。クライアント? たかが相乗りが図々しいのよ、文句あるなら自分でやれば?」

半ばトリップしてタイプ済みの文字列を口にしつつ、気だるげに爪に息を吹きかけ、角度を変えて、ビビッドな紫のマニキュアの出来を確かめる。細長い指の根元で、UNIXモニタの明滅にあわせて、蜘蛛の意匠の指輪が光を弾いた。

 

 

(#6に続く)




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