そして、その間に更なる高評価を読者様よりいただいたことで、本作品に初めて平均評価が表示されました!!
まさかここまで評価を貰えるとは思ってもいなかったので、とても嬉しい……
タイトルで感づいてるかもですが、今回の話はこれまでと雰囲気が大きく異なるのでご注意をー
ドンファンの奢りで美味しいご飯をお腹いっぱい食べさせてもらった後、私たちは2人並んで帰路に着いていた。ほどよい暖かさと賑やかな話し声に満たされた店内から一歩出た瞬間、冷たい夜風に肌を撫でられて思わずぶるりと震えてしまう。
とても静かで、どこか不気味な夜の都市。時刻は既に午後10時を過ぎていて、遠くに見えるネオンライトのようなビルの光がここからでも眩しく輝いて見える。
地上の星空みたいに見えて綺麗だなぁと思うと同時に、こんな夜遅くまで働いている人は世界が違ってもいるという悲しい現実を目の当たりにして少し悲しい気持ちにもなってしまった。
「あの人たちは何時になったら帰れるんでしょうね……」
「多分仕事が全部片付くまでは帰してもらえないんじゃないか?巣で何かしらの企業に属してるやつは大抵そうなるし」
「裏路地よりはずっとマシなんでしょうけど、結局苦しいのは変わらないって、何だか虚しいですね」
「仕方ないだろ、それが都市の有り様なんだから」
私の元いた世界と同じように、あのネオンライトは社会の歯車が命を燃やして灯した明かりだ。身を粉にして働き続けて、いつか手遅れになるまでそれを繰り返して…… その削りカスをかき集めて燃やしたものが、夜の世界を照らす光の実態。
夢のような空間の中では忘れられた現実も、結局こうして目の前に突きつけられるのだから、どうやったって完全に忘れることはできない。
この都市で暮らす人々は例外無く使い潰されて、骨の髄まで絞り尽くされることになる。それがどういう形で成されるのかは人それぞれなんだろうけど、そこが巣であろうと裏路地であろうと、最終的にはこうなるって決まっているんだろう。
そう思うと、私は本当に運が良かったんだなと実感する。ここまで親切な人としか出会わなかったし、そういう人達に助けられたからこそ今を幸せだと感じられているんだから。
きっと私一人じゃこうはならなかった。もし誰とも出会わないままだったなら、今頃私は飢えに苦しみ、精神を磨り減らし、いつか人を襲っていたかもしれない。そうして都市を彩る悲劇の1つになって、最後には殺されていただろうね。
「……ドンファンさん、ありがとうございました」
「いきなり何だ?飯の礼ならさっきも言ってただろ」
「私を色々と助けてくれたじゃないですか、だから改めてお礼を言いたくて」
「………そうか」
他者に助けられたのは今回だけじゃない、色んな人の善意によって私は何度も助けられた。だから、せめて言葉だけでもお返しをしなきゃ。古着屋のおばあさんにも、スーパーの人達にも、そして今隣にいるドンファンにも。
助けてもらったのに何も返さないままなんて、そんな失礼なことはしたくないからね。
「しかし、本当に血を飲まなくても平気だったんだな。それどころか美味そうにバクバク食べてたし」
「それは私も不思議に思ってるところなんです、ご飯食べる度に私って本当に血鬼なのかなーって疑問を抱いちゃうし」
「俺は血鬼と何度か出会ったことがあるし、戦ったこともあるんだが…… 血を飲ませてくれと懇願されたり、或いは俺を殺してどうにか血を得ようとするやつしかいなかった。だから、お前と出会った時は心底驚いたな」
「それじゃあ、私みたいなのは前例が無いってことですか?」
「ああ、非常識……その一言に尽きる」
ドンファンの言う通り、この身体は本当に非常識だ。ゲーム知識のある私視点でも理解不能の塊で、どういう存在なのか予想を立てることすらできない。1級フィクサーとして活動してきたドンファンでさえ何も知らないとなると、恐らく私は都市においても唯一無二、もしくは相当稀有な存在なんだろう。
「私って何なんでしょうね……」
「本人がわからないなら、俺にもわからない。今はそれより目先の問題をどうするか考えるべきじゃないか?」
「……そう、ですね。そうします」
今の私が直面している目先の問題、家賃と税金は確かに大事な事ではある。解決の目処が立っていないことを考えるより、その方が有意義だということもわかってる。それでも私は、私自身に対する違和感を捨てられそうにない。
少し前まで夢心地に浸っていた余韻、その時の温もりは身体からも心からも消えてしまっている。何もわからない、そして知りようがない、血鬼でありながら普通の人間と同じように振る舞えるこの身体が、私の心に不安という波風を立ててくる。
ただの人間としてやって来れていたのなら……そんなタラレバが浮かんでくるけど、それこそ意味の無いことだ。この身体で都市にやって来てしまった時点でどうしようもないんだから、諦めて生きていくしかないんだろう。
「それより、ドンファンさんの食べてたやつ美味しそうでしたね!あれ、また今度食べたいです!」
「そう何度もタダ飯食わせてもらえると思うなよ?今回のは俺の完全な気まぐれだから、また食いたいなら自分で金を払ってくれ」
「あはは…… 流石にダメでしたか」
「そりゃそうだろ、俺もそこまでお人好しじゃないんだ」
ぷいっと顔を背けたドンファンは、私に背を向けたまま先を歩いていく。それに置いていかれないように小走りで追いかけようとしたけど……
「あいたっ!?うぅ、なんで止まって……」
前を歩いていたドンファンがいきなり足を止めて、反応が間に合わなかった私は思いっきり背中に激突してしまった。打ち付けたせいでじんじんと痛む鼻先を手で押さえて、一言文句を言ってやろうと顔を上げると、彼はこれまで聞いたことのない低い声で私に問いかけてきた。
「一応聞いておくんだが、これまでに誰かと戦ったことはあるか?」
「えっ?そんな危ないこと、したことありませんけど……」
「そうか、わかった」
態度が急変したドンファンは振り向きもせずにそう返事をして、おもむろに自身の武器を手に取った。見るのはもう三度目になる、鈍く光る刃を。
「あ、あの……なにを?」
ドンファンの雰囲気から、あの時のように脅しの為に取り出したわけではない事を察して、その理由が分からず声がうわずってしまう。
2人ともが黙り込み、静かになったこの場から聞こえるのは震える私の息遣いと、風に揺られた服の擦れる音、そして………
微かに聞こえてくる、背後からの足音―――
「え、足音……?」
「ようやく気付いたか、この程度のことも察知できないんじゃ都市で長生きはできないぞ?」
驚いて振り向くと、私たちが歩いてきた道の奥から幾つかの人影が迫ってくるのが見えた。正面からは数人、左右の脇道からも続々と姿を現して、気付けば私たちと彼らの人数差は5倍以上になっていた。
「ドンファンさん、こ、これって……」
「どうせ裏路地の連中だろうな。あっちで食材が取れなくなったせいか、最近は巣まで来て人を攫おうとするやつが増えてるらしい」
傷だらけの粗末な武器を持った裏路地の住民が、飢えた獣のようにギラついた目を向けてくる。ドンファンよりも私に向けてその視線が注がれているのは、きっと私が若くて新鮮な肉として彼らの目に映っているからだろうか。
もし捕まってしまえば、私は生きたまま身体を切り落とされ、磨り潰されて、食材として加工されてしまう。そう思うと恐怖で身動きがとれなくなり、息が止まりそうな程に胸が締め付けられる感覚に襲われた。
「こうなる可能性を軽視した俺の責任だな。いいか、守ってやるからここを動くなよ」
ドンファンが私と襲撃者の間に立ち、武器を構えて彼らの行く手を阻んだ。一方、恐怖心に押し潰されてしまった私はそれを眺めることしかできず、足を震わせながら立ち尽くしている。
いくら血鬼の身体を持っていても、命のやり取りをしたことのない私に殺し合いなんてできるわけがない。私はどう足掻いても被食者でしかなくて、こういう状況に置かれれた今、守ってくれる誰かがいなければ成す術なく狩られてしまう獲物でしかなかった。
「さて、じっくり相手をしてやるわけにもいかないんでな。さっさと終わらせてもらうぞ」
ドンファンがそう口にした直後、私の全身に強い風が吹き付けた。ただ風が吹いたわけじゃない、襲撃者との距離を瞬間的に詰める為に地面を蹴っただけで、これだけの風圧が発生していた。
「なん……がぁぁ!?」
「どうした、ただ動いただけだぞ?」
一瞬で目の前まで近寄られたことに動揺している隙をついて正面の1人を袈裟斬りに、振り上げる動作でもう1人の胴体も深く切り裂いた。冷静さを取り戻した襲撃者が背後から殴りかかってきたのを流れるような動きで回避して、逆手に持ちかえた武器を脇腹に深く突き刺し、軽く捻ってから引き抜いて…… 血と臓器らしきものが一緒に引きずり出され、どさりと音を立てて襲撃者は倒れてしまった。
最初にドンファンが武器を振ってから10秒も経っていないのに、既に3人が殺された。辺りには大量の血が飛び散って、死んだ人たちの瞳は色褪せていて、その上から新しい血が塗り重ねられていった。
息をするように、或いは流れ作業のように淡々と、私の目の前で人が次々と殺されていく。首を斬られて苦悶の表情を浮かべながら死んで、お腹を裂かれて内蔵を溢しながら死んで、武器を持つ腕を斬り飛ばされた後に心臓を貫かれて死んで………
私にとってはあり得ない、都市ではありふれた光景。その凄惨さから目を逸らしたくても、私の身体は未だに言うことを聞いてくれない。ずっと震えていて、力も抜けて、ついにはその場にへたり込んでしまった。
そうしている間にもまた2人、血を撒き散らしながら倒れ込んだ。ドンファンは襲撃者たちの血を浴びてかなり汚れているけど、身体に傷は1つも見当たらない。終始一方的な戦い………いや、これを戦いと呼ぶことすら難しいくらい、1級フィクサーと普通の民間人は圧倒的な力の差があった。
そうして眼前で繰り広げられるそれを見ているうちに、私の中に暗い感情が芽生え始めた。どうしてこんなにも、私は無力なんだろうか……と。
血鬼という強力な肉体は完全に宝の持ち腐れになってるし、戦えもしないくせに呑気に外を出歩いて、いざ危険な目に遭ったら怯えてばかりで何もできない。
さっき自分でも言っていたじゃないか、私は運が良かっただけなんだって。ここまで上手くいったのも私じゃなくて他人の善意のおかげで、私は最初からずっと無能なままだったのに。
「……私って、本当に弱いな」
直ぐそこで起こっている事すら忘れて、自分の奥深くから溢れ出るどす黒いものに意識を委ねていく。
まるで深い穴の底へと誘われるように私の意識は沈んでいって、何かとても悍ましいものが纏わりつき、外側から蝕んでくるような…………
そうだ、私は何もできないやつなんだ。
誰かに助けてもらわないと前に進むことすらできない。
抵抗すらできずに殺されるしかない、狩られるだけの獲物。
それならいっそ、ここで消えてしまえば………
「おい、右だ!避けろ!!」
「………え?」
霞のように消えていく意識の中で微睡んでいると、ドンファンの鋭い叫び声が私の耳を殴り付けた。
それで正気に戻って横を向くと、私めがけて武器を振りかぶり、迫ってくる襲撃者の姿が見えて………
「あ……ぁ……!」
突然のことに頭が真っ白になって、反射的に身体を動かした私は、目の前の襲撃者に手を突き出した。
「やめて……来ないでッ!!」
すると、周囲から覚えのある異音が聞こえ始めた。昨日、服から血を抜き取る際に何度も耳にしたあの音だ。
グチャグチャと汚泥が蠢くような不快感を覚える音が次第に大きくなり、硬質的な音へと変化していく。その音を耳にして違和感を感じた襲撃者が足を止めた、その瞬間―――
グシャァッ!!
最初、何が起きたのか理解できなかった。何かが割れるような変な音がして、とても大きなものが背後から飛んできたと思ったら、私の前には誰もいなくて……
でも、頭に暖かい液体が落ちてきていることに気付いて、頭上を見上げてようやく理解した。
飛んできたと思っていた何かは血で作られた巨大な木の根のようなもので、私を襲おうとしていた襲撃者はそれに貫かれて、身体を無惨に引き裂かれて死んでいたんだって。
「ぇ、な……なに、これ………」
理解はできた、でも認めたくなかった。自分の手で人を殺してしまったという現実を。他の血鬼と同じように、人に危害を加えてしまう存在だったという事実を。
でも、どれだけ否定しようとしても目の前の光景が覆しようのない結果を突きつけてくる。胸を突き破った血の根に持ち上げられて、力無くぶら下がっている人の影が、確かに私が人を殺したんだと。
「お前、これは……」
「あ………ドンファン……さん……」
お互いに血に濡れた姿で見つめ合う。濃い血の臭いに満たされた場所で、唖然としながら。
「私………わたし…………」
バキバキと音を立てて、血の根が溶けるように消えていく。それを全身に浴びながら震え続ける手を見下ろして、再度ドンファンの方へと向き直す。その目に映る私の姿はどうなっているのかはわからないけど、1つだけ確かなことがある。
「ひ、人を……殺して………!」
私は、越えてはならない一線を越えてしまったんだ。
私が初めて人を殺してから、1時間が経った。自宅の玄関前まで送り届けてくれたドンファンは、今も血だらけの私を無言で見下ろしている。
何を言うべきなのか、これからどうすればいいのか、私には何もわからない。今にも気を失ってしまいそうなほどに意識が揺れて、私が私じゃなくなっていくような錯覚さえある。
そうして黙ったままでいると、ドンファンが頭をガリガリ掻き毟りながら大きくため息をついて、普段と変わらない声色で私に話しかけてきた。
「その………大丈夫だったか?」
「大丈夫って、何がですか」
「あと少しで殴られるところだっただろ、それに俺のせいであんな事になったわけだし……」
「……あれは、わたしがやったことです。私があの人を殺したんです、ドンファンさんは何も悪くないんですよ」
「いや、違う。子供に人殺しをさせるような状況になったのは俺のせいだ、だから悪いのはお前じゃなくて俺なんだよ」
どうして私を慰めてくれるんだろう、どうして私は責められていないんだろう。
私は人を殺したのに、血鬼の能力を使って見ず知らずの人をあんなに惨いやり方で殺したのに、どうしてそんな申し訳なさそうな目で私を見てるの?
やっぱりお前は化け物だったって、そう言われてもおかしくない事をしたのに、なんでそんなふうに優しい声をかけられるの……?
「どうしてドンファンさんが謝ってるんですか。私は人を簡単に殺せるようなやつだったんです、それなのに………」
「だから、それは………」
「目の前で見たじゃないですか!!私はただの子供じゃない、他の血鬼と同じ化け物なんですよ!?」
ここがまだ外であることも忘れて、私は喉が裂けそうなくらいの声で叫んだ。
「さっきみたいにまた誰かを殺すかもしれないのに……おばあさんも、ドンファンさんも、仲良く話してたあの人だって!」
口を挟むこともせず、黙って私を見つめるドンファンと目を合わせ続けることに耐えられなくなって、下を向いたまま心の内をぶちまける。
「こんな化け物、さっさと殺せば良いのに………なんで………!」
息が切れて、もう掠れた声しか出せなくなった。それでもまだ胸の中は重苦しくて、吐き出したいのに何も出てこない苦しさに涙がぽろぽろと零れ落ちていく。
「なんで………私に優しくするの………!」
止めどなく流れ出る涙を拭うこともできず、制御できなくなった感情のままに嗚咽を漏らす。もう何も考えられなくなって、情けなさも恥ずかしさもかなぐり捨てて、本当の子供みたいに大声で泣き叫んだ。
「はぁ、仕方のないやつだな」
不意に、私の頭に硬くてゴツゴツした手が乗せられた。不思議に思って泣きっぱなしのまま放心していると、髪が力強くかき回されて、頭がぐわんぐわんと揺さぶられた。
「あぅぅ……!な、何するんですか!」
「何って、俺なりに慰めようとしてるんだよ」
丁寧さの欠片もない撫で方だったから最初は止めようとしたけど、手のひらから伝わる温もりがあまりにも心地よくて、抵抗する意思はすぐに消えた。
途中からはその温もりを少しでも感じていたくなって、されるがままに撫で回されていた。暫くして撫でるのを止めたドンファンは、私の前に屈み込んで目線を同じ高さに合わせて、ゆっくりと口を開いた。
「あの時、もしお前が無抵抗だったら頭を殴られて意識を失っていたし、最悪の場合は死んでただろう。何の理由も無く殺したのなら悪いに決まってるけど、あれは自分の命を守るための行動だ。後悔するのは良いが、自分を責める必要は無いんじゃないか?」
「でも、だからってあんな……」
「あんなに残酷な殺し方はないって?お前は可能な範囲で確実に助かる方法をやっただけだろ。それに、こう言うのは何だが………お前はまだ殺しただけだ。殺して血を飲もうとするでもなく、自分が何をしたのか自覚した上で反省してるだろ?だからもう気にしなくて良い」
正直言って、ドンファンの言葉は私の心のわだかまりを解消するには足りない部分が多い。それでも、彼なりに私を励まそうとしているのは十分に伝わった。
そのお陰か、荒波のように暴れていた感情がある程度落ち着いてくれて、涙もいつの間にか止まっていた。
「すぅ……はぁ……… ふう、何度も困らせちゃって、ごめんなさい」
「別にいい、仕方ない事だってのは理解してるから。それじゃ、俺はそろそろ帰らせてもらうぞ」
「はい、今日は助けてくれてありがとうございました。………本当に、ありがとう」
「ああ、ゆっくり休めよ」
私が落ち着きを取り戻したのを見て安心したのか、ドンファンは一息ついてからすっと踵を返して、自身の家に向かって歩き始めた。
「ただいま……」
いつものように誰もいない部屋に挨拶をしてから、血濡れの服を脱いでソファ………にダイブしたかったけど身体汚いから我慢。家を出てから数時間と少ししか経っていないのに、このリビングがずいぶん懐かしく感じる。
「とりあえず、お風呂入ろう………」
ただ有益な情報を得られるだけの日になる筈だったのに、予想外の問題が起きたせいで、私はもう疲労困憊だ。
人攫いの襲撃に、初めての殺人。そして私に起きた異変……… 考えなきゃいけないことが一気に増えたけど、それは一旦後回しにして、今は一刻も早く休みたい。
「血の臭い、結構してるなぁ…… 寝る前によく洗わないと」
身体に染み付いた血液の臭いが鼻腔を刺激して、強い不快感を覚える。昨日とは比べものにならない血鬼の力を発揮したから不安だったけど、こうして血を不快に思えるのならまだ私は大丈夫なんだろう。
『いつか本当に化け物になってしまったら……』
一瞬そんな悪い未来が頭の中に浮かんできたけど、すぐに頭を振って気持ちを切り替えた。そんな事を考えていたって、無駄に不安が積もるだけで何も良いことは無いんだから。
ともかく、今は休むことを最優先にして、明日の仕事に備えよう。いつものように振る舞えるかは心配だけど……そこはまあ、何とかするしかないだろうね。
だから、今は忘れていよう。あの凄惨な光景も、吐き気を催す血の臭いも。
私が殺した………あの住民の顔も。
短いながらも初の戦闘描写、それも客観的に見たものを書く必要があったため、どう描写するかでかなり難儀しました。
それに加え、今回は全体通して明るい雰囲気が殆ど無し。主人公のおふざけも無く、書いてて自分でメンタルダメージ受けるくらい息苦しい回に……
これをずっと続けるつもりはありませんが、都市を舞台にする以上は避けては通れない道なので、今回で得た学びは後に活かしていきたいところ。