目が覚めたら血鬼でした   作:角砂糖(おそらく塩)

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前回の投稿から2ヶ月半ほど……
長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。

感覚を思い出しつつ書いていたので違和感がある箇所があるかもしれませんが、どうかご容赦を……


えっ、ここから入れる保険は無いんですか?

 

 

 エッホ、エッホ、時間がヤバイぞ走らなきゃ!

 

 どうも、これまでにないレベルで街中を全力疾走している私です。フォームもクソも無い無茶苦茶な走り方してたせいで喉と脚が破裂寸前、走ってるのか倒れながら進んでるのか判断つかないくらい必死だけど、気合いだけでどうにか足を動かし続けています。

 どうして私がそんな事をしてるのかといいますと、つい先ほど社会人成り立てが絶対にやってはいけない大罪ランキングNo.1、『就職直後に遅刻』をやっちまってることが判明したからですね。

 

 古着屋で割とシリアスな話をして、おばあさんに見送られながら外へ出たところまでは良かったんですよ。でもその後、隣を歩いてた人の腕時計が偶然目に入りましてですね………

 何となく覗き込んでみたら、スーパーの営業開始時刻を30分ほど過ぎているのが見えて、直後に全身の血の気がサーッと引く感覚を覚えましたよ、ええ。

 自分が遅刻してることに気付いたのが古着屋を出て少し歩いたくらいの所、スーパーからそこそこ遠い場所だったのもあって焦燥感は一瞬でMAXに。周囲の目も気に留めずに風と1つになりましたとさ。

 

「どうしよう、どうしよう……!絶対怒ってる、絶対クビにされる………!」

 

 ゼェゼェ言いながら走る私の脳内に流れてきたビジョンには、般若の面を被った店長と死神の鎌を携えたケンピさん。方や高速貧乏ゆすり、方や暗黒満面笑顔、RPGでラスボス張れちゃう圧倒的な圧を放っております。

 クビにされるか首を飛ばされるか、お好きな方を選ぶのじゃ――― そんな最悪の二択が聞こえてきた気がするよ。

 

 とはいっても、遅刻したのは私の完全な自業自得だし、そんなに遅れたくないなら失礼を承知でおばあさんの話をぶった斬れば良かったわけだし……… ここは潔く、某エ○ァのパイロットに習って逃げちゃダメだの精神で受け止めねばなるまい。

 そもそも都市に、というか社会に逃げ場なんてものは存在しないからね………はは……

 

 

 

 

 

 「やっと着いた、着いてしまった………」

 

 疲労の限界を迎えて何度かウォーキングデッドみたいな事になりつつも、ようやく到着私の職場。途中からゔぁぁぁ……っていう呻き声しか出せなくなってたけど、自動ドアの前に立った瞬間意識が完全覚醒して血の気さんは再び旅に出ました。

 何故だろうね、昨日までは何気なく通過できてたこの自動ドアが私の首を切り落とすギロチンに見えてきた。断頭台の前に立った死刑囚みたく、恐ろしさに脚がガックガク震えまくっております。

 まあ実際罪人みたいなもんなんですけどね、社会人が遅刻やらかすっていうのは学生が学校に遅刻するのとは訳が違うから。しかもよりによって新人の立場でやらかしてるから本当に救えないよ、終わりだね私。終わらせたくないから足掻きはするけど。

 

「………よし、行こう」

 

 ここをくぐり抜けた先に待っているのは活火山の如く燃えたぎる怒りか、氷河期のように冷えきった視線か、どちらにせよ私の未来は地獄が確定してる。

 何度も深呼吸をした後、バクバクとうるさい胸を押さえつけながら自動ドアへと向き直り、ぎゅっと目をつぶったまま、そろーりそろりと足を進めます。

 これが前世含めて人生初遅刻になるんだけど、遅刻した日の職場ってこんなに恐ろしいものなんだね。日常の一部になり始めてた入り口の時点でSAN値がごっそり削られたし、目に映る全てが精神を削り取ってくるし、多分今の私の心は鰹節みたいにペラペラになってると思う。

 

「ぉ、ぉはよぅございまぁぁ……

 

 ゴゥン…と開いた自動ドアにすらビビって身体を震わせながら、モスキート音以下の挨拶と共に入口の足拭きマットの先へと勇気の一歩。その一歩すらとてつもなく重く感じて、かつて日常的に感じていた胃痛がリターンズしてきました。帰って。

 

「よ、良かった……ここにはいないみたい」

 

 ゆっくり店内を見渡してみたけど、ちらほら客の姿が見えるだけで店長さんもケンピさんも見当たらない。それに安堵してホッと胸を撫で下ろし、へっぴり腰だった姿勢を真っ直ぐに治した。顔を合わせて謝罪する覚悟は決めたけども、それはそれでこれはこれ、怖いものは怖いのだ。

 さっきから胃がアイアンクローでもされてるのかってくらい締め上げられて金切り声上げてるし、心臓もとち狂ったビートを刻み始めてさあ大変。体内で開催された阿鼻叫喚のリサイタル、もう私の臓器でデスメタル演奏できちゃうよ。

 

「……もう一度深呼吸しとこう」

 

 いつ2人とエンカウントするかもわからないし、今のうちにメンタルリセットを一つまみ。こんなの続いたら心臓保たないし、早く覚悟決め直してささっと謝罪を済まs……

 

 

「何やってんだ、そんなところで」

 

「……ぴゅぃぃっ!?」

 

 

 アイエエエ!!テンチョ!?テンチョナンデ!?

 さっきまでどこにもいなかったよね!?見渡したけど姿形も無かったよ!?というかリセット挟んで気が緩んだ直後に奇襲仕掛けてくるんじゃないよホラゲー世界じゃないんだぞここは!!

 

「1時間近く遅れてきたと思ったら泥棒みたいにコソコソ入ってくるとか、ふざけてるのか?」

 

「い、いえ、その……ご、ごめんなさい……」

 

 店長の怒り満点な熱視線!私に効果抜群だ!叩きつけられる真っ当な言葉に事前に考えてた謝罪文を出す余裕が全くありません!!

 どうすんのこれ、仮に謝罪文言えたとしても逆に悪化する予感しかしないくらいご立腹なんですけど。助かる余地が私から全速力で逃げていってる、一応私幼女なんだからもうちょっとくらい手加減してくれてもいいじゃんっ。

 

「て、店長さん。これには理由があって……」

 

「一週間も経たないうちに遅刻してくる全うな理由があるとは思えないんだけどな」

 

 ごめんなさいそんな目で見ないでください。このままじゃ過負荷で全身の臓器が爆発四散してしまいます。

 いやあの、本当にどうすりゃいいのこれ。活路がどこにも見当たらないし、口開いたら直後にアッパーカットで下顎粉砕コースにご招待される予感しかしないんですけど。私の人生いつの間にオワタ式になったんですか?平和だったあの日々を返して……って、元からこんなもんだったわそういえば。前世含めて、悲しいねわたし。

 

「あ、あの、それは、その……」

 

 どうしようもない事情があったと昨日の出来事を説明するべき?いや、確実に出鱈目だと断定されて蹴り飛ばされる。でも何か言わなきゃバッドエンド直行だし、でもでも下手なこと言っても即終了だしっ!

 どうする、どうすれば切り抜けられる……?何とかこの場をやり過ごす方法は………

 

 

「あら、こんなところで何をしているの?」

 

「ぴゃぁぁぁっ!?」

 

 

 わーにん!わーにん!!私の生存ルートが完全に潰えました!!!

 

 何なの!?死角から奇襲するのが最近の流行りなの!?そんなに私の心臓を破壊したいのかこんちくしょうっ。臓器はオモチャじゃないんだぞ!

 

「何でこっちに来たんだ?まだ向こうの作業が終わってないだろ」

 

「この子の声が聞こえましたから、それで何を話していたんですか?」

 

「遅刻した上に不審者みたいな動きをしてたから、呼び止めただけだ」

 

「あらあら、まあ……」

 

 前門の店長、後門のケンピ。職場の上役2人が私を挟んで暗黒微笑。万力を越えた圧がメンタルと心臓をサンドイッチ。

 呼吸は不規則、視界はぶれぶれ、SAN値は急速急降下。今の私の心電図を見られるなら、きっと剣山のような針地獄が生成されていることでしょう。

 こういうのは前世で嫌と言うほど体験してきたハズなのに、前と比較して苦痛が倍増してる気がするんですがどう言うことですかこれ。他人のタスク押し付けられようが急に部下が辞めようが『あー、まあ仕方ないかぁ』って受け流せてたのに、襲いかかる全てが避ける余地も無く私のハートを容赦なくぶち抜いていく。

 思い返してみれば、前なら耐えられてたストレスにも異様に脆弱になってたし、やっぱり子供になったついでにメンタルもちびっこ基準に修正されてるよねコレ。

 くっ、誰だよ私の人生をこんなハードモードにしやがったやつは!前から地獄だったから大差無いけど!!

 

「それで、さっきから黙ってるけどそのまま何も言わずに突っ立ってるつもりか?」

 

「そんなに責めなくても良いでしょう?こういう時はゆっくり聞いてあげるべきよ。さあ、遅刻した理由を話してくれる?」

 

 どうしよう、更に圧が強まったせいで初就活でいきなり圧迫面接を受けた時の記憶が甦ってきた。これが遅刻したものが踏み入る世界か………。

 もう、こうなっては仕方がない。結果がどうなろうと話さなければ物理的に人生オワタさせられてしまう。というかその前に私のメンタルがフィニッシュしてしまう。

 戯れ言と蹴り飛ばされようが命を飛ばされるより遥かにマシ、みっともなくても少しでも可能性がある方に賭けるしかない。

 

「……今から私が話すことは、にわかには信じがたいものだと思います。ですが、どうか最後まで聞いてくれませんか」

 

「ああ、聞いてやる。あまりにもふざけた内容だったらただじゃ済まさないけどな」

 

 ただじゃ済まさない?安心して、既にただで済んでないから。胃が蜂の巣、心臓はF1エンジン、今朝のダメージも含めると何でまだ生きてられるのか不思議なくらいの重体だよ。でもこれがまだ底じゃないってことを私は知ってるからね、生き残るため、本当のどん底へ行かないためにも文字通り決死の覚悟で語ってやる……!

 

 

 

………………………

 

………………

 

………

 

 

 

「―――と、いうわけなんです」

 

 ストレスでズキズキと痛む胸の奥を押さえ、まるで罪を告解する罪人のごとく跪いて昨日の出来事のほぼ全てを2人に話した。

 流石に人を殺したことは伝えたくないのでそこだけ隠して、夜中に出歩いてたら人攫いに襲われたこと、それを一緒にいたフィクサーが何とかしてくれたこと、その際に血を浴びて服が台無しになったから、替えの服を買いに行って遅刻したことを………

 

 なるべく要点だけまとめて伝えたつもりではあるけど、それでも情報量はとんでもない。頭がパンクしてるのか揃って黙り込んでるし、そのせいで気まずい空気が辺りに満ち満ちしております。

 店長は言いたいことを言い出せなくてモゴモゴしてる感じだし、ケンピさんは顔面蒼白で手が震えてるし、処理しきれなくてオーバーフローしてるのかもしれない。

 

「その話、本当のことなの?」

 

「はい、全て本当のことです。血だらけで出勤するわけにはいかないと思ったんですけど、もっと急ぐべきでした」

 

「そう………だったのね」

 

 どうしたんだケンピさん、センブリ茶飲んだ芸人より酷い顔の歪み方してるけど。それは一体どういう感情から出力された表情なの?

 

「すまん、理由も聞かずに責めて」

 

 あの、店長?さっきまでの殺意満点なオーラは何処へ?閻魔にも並ぶ怒り顔が今や萎びたノーマルおっさんになってるよ?燃え尽きたあしたのジョーみたいに色々抜け落ちてるし………

 

「あのぅ、お二人ともどうしたんですか……?」

 

「「…………」」

 

「せ、せめて何か言ってくれませんか……」

 

 直前までガンガン詰められていたはずなのに、何故か私より目の前の2人の方が大ダメージを受けてるカオスな現在。とりあえず声をかけてみたけど、返事はないし屍より顔色悪いです。この世の終わりを通り越して三途の川渡航中ってくらい生気がありません。

 こういう時にかけるべき言葉は何かしらあるんだろうけど、人を慰めた経験が一度も無いからどういう言葉が適切なのか全然わからない。自分の心を守る術は熟知してても他人のメンタルケアは未知の領分、セルフケアだけで手一杯な社畜に誰かの心を癒すなんて到底無理な話なのだ。

 とはいえ原因が私なのは明らかだし、放っておくのも気が引ける。

 

 ………とりあえず、謝罪して様子を見ようか。

 

「ごめんなさい、こんな事になるって予想できなくて……… 悪いのは全部私なんです。どんな罰でも受ける覚悟はできてます」

 

 私の脳内フォルダに保管されてる対上司用対応マニュアルにおいて、上司の機嫌を損ねた時はまず謝罪から始めるのが鉄則。その後にどんな言葉を付け足すかは状況次第だけど、今回は非が私にあることを強調して伝えてみる。

 こうすることで上司である自分に責は無いと思わせることができ、下手に出ている私を見せて溜飲を下げさせ、追加の暴言や投擲アタックを回避できる確率を大幅に上げられる……過酷な会社での日々を生き抜くために身につけた私の生存戦略の1つだ。

 店長もケンピさんも怒ってはないけどめっちゃ落ち込んでるし、謝ってる私を見れば少しは気分も晴れるんじゃなかろうか。

 

「や、やめて……!あなたは何も悪くないの! どうしようも、なかったんでしょう………?」

 

 ………うん、思いっきり選択肢を間違えたね。冷静に考えてみればクソ上司に対する対処法をそのまま流用したら上手く行かないに決まってるし、この人たちの感性は腐っても終わってもないのにこれで喜ぶわけないでしょうが馬鹿なのか私は!

 ていうか、さっきからケンピさんの様子が尋常じゃないんだけど一体何があったんだ。目の焦点が合ってなかったのが突然泣き出しそうになってるし、明らかに情緒不安定なんですけど。

 

「……落ち着け、そんなに感情をぶつけてもこいつを困らせるだけだろ。後は俺がやるから裏で休んできてくれ」

 

「ごめんなさい、私……暫く頭を冷やしてくるわ」

 

 別人なんじゃないかと思うくらい取り乱していたケンピさんは店長に宥められて少し落ち着きを取り戻したみたいで、さっきより悪くなった顔色のまま奥の方へと歩いていった。その後ろ姿が放っておいたら消えてしまいそうなくらい危うく見えて、私はだんだん小さくなっていく背中から目を離すことができなかった。

 

 その場で立ち尽くし続けて、去っていく足音が他の客や店員のものに紛れて聞こえなくなった頃、まだ目線を動かせないでいた私の方に店長が振り返って「あー…」と頭をかきながら口を開いた。その顔には疲れや心配が色濃く出ていたけど、これまで私に対して一度も見せなかった優しさが微かに混じっているような気がした。

 

「今日のお前の仕事は無しだ、家に帰って休んでこい」

 

「えっ…… な、何でですか?わたし怪我とかしてませんよ?人が一人減ったなら、そのぶん誰かが働かなきゃ……」

 

「普通ならそうするのが正しいんだけどな、お前が働いてるところを今のアイツが見たら、いよいよ本当に壊れかねないんだよ。完全にこっちの事情だし、それで振り回すことになるのは……悪いと思ってる」

 

 店長は心から申し訳なさそうにそう言って、この場から逃げ出すようにして私に背を向けた。ケンピさんと同じように大きな影を背中に乗せたまま、弱々しい足取りで。

 一人取り残されて、頭の中がいっぱいいっぱいになっている私は暫く動くことができずにいたけど、後ろから新しい客が入って来たのに気付いてようやく身体を動かせた。

 

「………いよいよ壊れかねない、か」

 

 あの2人の様子を思い返して、ふと私の同僚の事を思い出した。私とほぼ同じ時期に入社して、無茶振りにも何とか答えようと毎日毎日頑張り続けて、最終的に壊れる寸前まで追い込まれてしまった…… ブラック企業の哀れな被害者の一人だ。

 毎朝来る度に元気な声で挨拶して、ごく普通に振る舞ってたんだけど、ある日突然ダムが決壊したみたいにおかしくなって、その翌日から会社に来なくなったんだっけ。

 

 ああいう根が真面目な人って、精神的、肉体的な負担を限界を超えて溜め込みがちなんだよね。本当はどれだけ苦しくても周りには気付かれないよう隠し続けて、平静を装う裏でどんどん苦痛が膨らんでいくんだ。

 で、そうなるともう終わり。何かの弾みで抑え込んでたものが一気に弾け飛ぶ危険極まりない爆弾を抱えたままの状態が続くから、心が更に削れていくことになる。

 発散しようにも、溜め込み続けた苦痛が自分の心を押さえつけちゃうから発散できず、いつか完全に壊れるまでその状態が続く。その後に待ってるのは、もちろん破滅だ。

 

 店長さんとケンピさん、あの2人もおそらく同じ。ヒビだらけの蓋で力一杯押し込んで、その上から普通っぽく見える表情を張り付けてるんだと思う。

 過去に何があったらあんなに悲痛な表情を浮かべられるのか気にはなる、でもそれを探るのは絶対にダメだ。今日ここで起きた出来事は何があっても踏み込むべきじゃない。

 

 何かしらのケアをしてあげたいのが本音ではあるけど、私はあの2人にとって部外者でしかないんだ。恩はあるけど仲が良いわけではないし、そもそも上司と新入りという関係なんだから、プライベートな部分に首を突っ込むのは失礼になる。この事はなるべく触れないようにして、そして早く忘れてしまおう。それがきっと、お互いのためになるから。

 

「今日、こんなことばっかりだなぁ……」

 

 朝からずっと気分が晴れないことばかり続いてるせいか、また頭が痛くなってきた。殆ど気の休む暇もなかったし、家に帰ったらどうにか切り替えて一息つきたいところ。その後は………休んだ後に考えようかな。

 

 ああ、でもその前に買い物だけしておかないと。確か昨日でほぼ使い果たしてたはずだし、帰る前にもうひと頑張りだ。

 

 

 

 

 

 都市に来てから今日までお腹を満たすために何度もお世話なっている生鮮食品コーナー、そこの鶏肉が置いてある場所の前で私はうんうん唸っていた。

 目当ての鳥むね肉のパックを見つけはしたけど、いつも買ってる消費期限が近い低価格のパックが奥の方に置かれていて、手が短い私の身体では後少しというところで届かず、カサッと端の方を爪が掠るだけというのをもう何度も繰り返している。

 手前の届く範囲にあるものを買っても良いんだけど、それは消費期限が長いから値段が50眼~100眼ほど高め……金銭面に余裕がない今、できればそれは買いたくない。

 

「あと、すこ……し………!むぅぅぅ……」

 

 腕とつま先を限界まで伸ばし、体重を支えられるギリギリのところまで身を乗り出す。端から見ればこれほど滑稽な姿は無いだろうなと自分を客観視して恥ずかしくなるけど、少しでも節約しなければ給料日まで持ちそうにないからやるしかない。

 にしても、絶妙に届かないなこのパック。あと1センチ伸ばせれば届くかどうかってとこまではいけるんだけど、その1センチが絶望的に遠い。そろそろ体力の限界だし、こんなことなら踏み台でも借りてくればよかったな………。

 

「それ、取りたいのか?」

 

「あえ?あ、はい、この一番安いやつを……」

 

「取ってやるからどいてろ」

 

 おおっ!ちょっぴり諦めかけたところで、後ろからまさかの救いの手が!理不尽ばっかりな都市だけど、良いこともたまにはあるから捨てたもんじゃないって思えるね。

 

 ただ、まあ……

 

 

「あ、ありがとうございます……ドンファンさん」

 

「なんでそう微妙な反応なんだよ」

 

 

 まさか昨日の今日で会うとは思わないじゃん。

 

 





※これより、長い文章が続きます。興味の無い方はスクロールして飛ばして大丈夫です。


前書きでも書きましたが、2ヶ月以上の間を空けてしまって申し訳ありませんでした。
遅れた理由は、ちょっとリアル側で発狂してしまったせいです。今はもう復帰できたので、今後は前のように更新していけると思います。

更新を止めていた間、とても有り難いことにお気に入り登録や高評価をいただきまして、そのおかげで自分の作品に自信を持てましたし、重かった心が軽くなりました。なのでこの場で感謝の気持ちを伝えさせていただこうと思います。

この作品を読んでくださり、ありがとうございました!
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