目が覚めたら血鬼でした   作:角砂糖(おそらく塩)

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ハッピーニューイヤー!!!

と、いうわけで!ロリ血鬼ちゃんに新年祝いのサプライズを用意してあげたよ!




全く嬉しくないサプライズってあるよね

 

 

 

「お待たせしました!店長さん!」

 

「やっと来たか、今は客が少ない時間帯だから直ぐに始めるぞ」

 

「わかりました!よろしくお願いします!」

 

 

 ハロー!トントン拍子で採用が決まりそうでウキウキしてる私だよ!まだ研修中の身だけど、既にテンション爆上がりです。

 今は店長さんの後ろをとてとて歩いて追尾しながら、ここはこう、あれはこう、と簡単な説明を受けている真っ最中。店内の構造を改めて把握しながら、それにフムフムと頷いて脳内メモに書きこんでいます。

 ただ、なんか店長さんの説明が所々雑というか、子供には理解しずらくなるように細かいところを端折った説明をしてるっぽい。最初は大雑把な性格なのかなーと思ってスルーしてたんだけど、素人にもわかるくらい穴だらけの説明しかされてないから絶対わざと。

 

 これはアレだな?どうにかして私の就職を阻止しようとしてるな?さっきの終わり際に「ダメだと判断したら追い出す」とか言ってたし、どうせ杜撰な説明をして私が何かしらミスをするのを狙ってるんだろう。

 クソがよ……と思いはするけど、そうしたくなるのも分からないでもない。こうして研修受けさせてるのも、迎え入れたんじゃなくて「こうすれば諦めるだろう」っていう魂胆があるんだろうし。

 

 けど、甘いよ店長さん。こちとら地獄のデスワークが平常運転な毎日を過ごしてきた元ブラック企業勤めやぞ?その程度のやり方で私は屈しないっ、私を辞めさせたいなら毎日残業浸けと同等くらいのモノを用意しなッ!!

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

「これでだいたいは説明したけど、理解できたか?」

 

「はい、問題ありません!」

 

 あんたの説明には問題しかなかったけどね!!!

 まあそれは置いとくとして…… これで全部の説明が終わったらしいんだけども、ついでに店内を観察していた結果ヤバイ事実に気付いてしまいました。

 なんとこのスーパー、そこそこ広い店内に対して店員がたったの6人しかいません!当然目の前の店長さんも含めてなので、結構深刻な人手不足を抱えております。そこへ私を加えたとしても戦力は7人、どう考えても焼け石に水ですありがとうございます。

 ここの休みがシフト制かどうかは知らないけど、仮に休みの人を合わせたとしても大した人数にはならないだろうし、とんでもないブラックの香りがしてきた……

 

「あ、あの、店長さん」

 

「なんだ?」

 

「ここ、広さの割に店員が少ない気がするんですけど、何人くらいの人がいるんですか?」

 

「俺を含めると6人だ」

 

「そんなに少ないと、一人一人の負担が大きそうですね。休みの人に出てもらうことも多かったりするんですか?」

 

「そんなものは無い」

 

「……はぇ?」

 

「そもそも、休める奴なんていない。今いる6人で全員だからな」

 

「はいぃ!!?」

 

 なんと、()()()()()()()6()()じゃなくて()()()()()()6()()でした!もう終わりだ猫の店。

 店より先に人が潰れそうなくらい終わってて涙も出ないね。オールウェイズオーバーワーク、ブラックホールが未来で私を待っている。

 まあだからってキャンセルする気はありませんけどね、だって働かないと死ぬだけだから。飢えて死ぬより過労死のほうが多分マシ、その精神で挑みますよ!人はこれを破れかぶれと言います。

 

「大体覚えられただろうし、早速仕事を始めてもらうぞ。今日は品出しと検品だ」

 

「わかりました!では……」

 

「ああ、俺はこれから自分の仕事を片付けないといけないから、1人で頑張れよ」

 

「……はぁい!」

 

 あいつ、全部放り投げていきやがった!そうまでして追い出したいのか、私を!

 ……いいよ、それならとことんやってやる。私の手綱を自ら手放したこと、後悔するといい!!

 

 

 

 

 

 

 店長が私を置き去りにしていってから暫く後、脳内メモを頼りに任された仕事を開始した。いくつか箱を乗せた台車を押しながら商品棚の端から端まで、上は届かなかったので他の店員さんに脚立を貰って、一列ずつ丁寧に確認していった。

 不足している商品は補充して、賞味期限が切れてるものは回収用の箱にホールイン、あと少しで切れるものは値下げして売るから別の箱へ丁寧に入れておく。

 初日だからかやる事はこれだけで、とても単純でわかりやすい。厄介な点があるとすれば、棚の高い位置の商品に微妙に届かなかった時に毎回下に降りて脚立を微調整する必要があるってくらい。

 

 えー、はっきり言って物凄く暇です。もっと理不尽な量を押し付けられると思ってたから拍子抜けだし、無駄に広いから棚の数も多くて、単調作業の繰り返しに早くも飽きつつあります。

 片手間に他の作業ができたら良かったんだけど、そんな事はできないし………

 

「なあ、悪いんだけどそこの棚にある商品取ってくれないか?」

 

 お、良いところに仕事の味変イベントきちゃ!誰かは知らないけどナイスタイミングだったよ!えーっと、お客様がお求めの商品はこれかな?

 

「はい!こちらでs」

 

「よお、昨日ぶりだな、まさかこんなところで働いてるとは思わなかったけど」

 

 

 ……………へ?

 

 

「あ、あぇ、ぁっ、ぅ……」

 

「何やってるんだ?降りられないなら投げてくれてもいいから、とりあえず商品渡してくれよ」

 

 

 ど、ドンファンさん……?なんで、なんでまた私のところに来たの?

 まさか、私の正体に気付いたからここまで殺しに……!?

 

 

「こ、こ、ころ、しに……きたの……?」

 

「買い物だよ」

 

「お、おね、がい……何も、しないから……命だけは……」

 

「いや、だから買い物だよ」

 

 

「こ、殺さないで………!」

 

「だから!!買い物だって言ってるだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 どうやら今回のドンファンさんは私を殺しに来たわけでも、そういう依頼を受けたわけでもなく、ただ普通に買い物をしに来ただけらしい。

 それはそうだよね、スーパーは買い物する場所なんだから、普通に考えて人殺すために訪れるわけがないよね!

 ……じゃあ何であんなにビビり散らかしてたのかって?都市に来て早々に遭遇して、しかも明らかに私を殺せる構えをしてたもんだから軽くトラウマになってただけですけど?クッソビビってましたけど何か文句ありますか!?

 

「全く、顔見ただけであんなに怯えるとか失礼だと思わないのか?」

 

「いきなり刃物を見せつけてくる人と出会ったら、誰だって怖がると思います……」

 

「あのな、何が潜んでるのかも分からないのに無警戒で近寄るわけがないだろ。もしお前が出会い頭に俺を殺しに来るような奴だったら、直ぐに対応しないと無様に死ぬだけだからな。だから仕方のない事なんだよ」

 

「そ、それでも!怖いものは怖いんです!!」

 

 いや、だってねぇ……?あの時はそうする必要があったからそうしたってのは理解してるよ。でもそれって、必要性があればいつだって殺せるって意味でもあるでしょ?

 一応謝ってくれてるし、今も威圧感はそんなに感じないから怖さは減ってるけど、いきなり遭遇したら警戒するのは当たり前の事だと思う。

 ていうか、何でこの人さっきからじーっと突っ立ってるの?まだ取りたいやつあるんだったら早く言ってほしいんですけど。

 

「あの、なにか……?」

 

「いや、改めて確認しておきたくてな」

 

「確認って、何を―――」

 

 

「お前、血鬼だろ?」

 

 

 その単語が飛び出た瞬間、私は全身の鳥肌が立つ感覚を覚えた。身体が硬直して、言葉を発することもできなくなって、この先で何が起きるのか…… いや、良くないことが起こるであろうことを確信して、強烈な恐怖感に襲われた。

 壊れたブリキの玩具のようにぎこちなく見上げると、何て事のないように平然としているドンファンの顔がそこにはあった。威圧感も殺気も無く、あくまで何気ない会話をしただけとでも言うかのように。

 それが逆に恐怖を煽ってきて、自分が立てているのかどうかさえ分からなくなる程に自分の感覚があやふやになってしまった。

 

「な、なん、で……?」

 

「血鬼の特徴の一つに目が赤いっていうのがあるんだが、それを隠しもしてなかったから直ぐに気づいたんだ。それから、さっき脚立に乗ってたお前を見上げてた時、口の中に僅かに牙が見えたからな。それで確信した」

 

 あぁ、そっかぁ、下から覗き込めば牙も見えるよね…… また就職できたと思ったのに、こんな終わり方なんて……

 

「わ、わたし、殺されるんですか……?」

 

「それはそっちの返答次第だ。じゃあ、幾つか聞かせてもらうぞ」

 

 拒否権があるはずもない私は黙って頷くことしかできず、それを見たドンファンは表情を変える事なく口を開いて、静かな声で私に問い掛けた。

 

「お前、昨日は何を食った?」

 

「………」

 

 

「…………ほえ?」

 

 

 きっと、その時の私は人生で一番間抜けな顔をしていたと思う。だって仕方ないじゃない、あんなに緊張感を高めておいて、お出しされたものが「ご飯何食べた?」って……

 え、なに?これドッキリ?私の知らない都市流の新人歓迎法なの?

 

「えっと、古着屋のおばあさんに作ってもらったスープを……」

 

「……血は?」

 

「そんなのご飯に混ぜられてるわけないじゃないですか!おばあさんに謝ってください!!」

 

「…………どういうことだ?」

 

 いやあの、それこっちのセリフなんですよドンファンさん。何で私が血を食べる怪物扱いされなきゃいけないんだ、私は普通の……

 

 あっそうだ、私血鬼だった。うん、そりゃそんな反応にもなるわ。意味分かんないもん、血以外食べても飢え満たせないやつが普通のご飯食べてるとか。私本当に血鬼か?

 

「あー……」

 

「えっとぉ……」

 

 どうするんですか、この空気。めっちゃドヤ顔で血鬼判定してたドンファンさんがすっごい微妙な顔してるし、私も何言ったら良いのかわかんないし、誰か助けてくれ私にはどうにもできぬ。

 

「はぁ、ちょっと待ってろ」

 

「はぇ?な、なにを………」

 

 そう言ってドンファンが突然腰から武器を取り出して、自分の腕にあてがって……

 ん?ちょっと待てお前何するつも

 

ブシャァッ!

 

 ぎゃぁぁぁぁ!?!?

 お、おま、お前何やってんの!?なに、そういう特殊性癖でも持ってんの!?幼女の前で自傷行為見せつけるとかわいせつ物陳列罪とほぼ同じだよ!?

 というか服!せっかく作った私の服が血みどろなんですけど!?何してくれてんだお前ェ!!!

 

「どうだ?」

 

「どうだ?じゃないですよ馬鹿なんですか!?馬鹿ですよね!?ばーか!!!」

 

「……血を浴びてもその反応って、お前本当に血鬼か?」

 

「ええ本当に何なんでしょうね!そして人の職場で血をぶち撒けたあなたは何なんでしょうね!?」

 

「というか、さっきと態度違くないか?さっきまではもっと子供らしく……」

 

「人の服に赤い斑点模様つけといて良くそんな事言えますね、張り倒しますよ?」

 

 初対面の時の謝罪撤回します、お前は全世界のプロムンユーザーのおもちゃにされてしまえ。一生好き放題されてれば良いよこんちくしょう。

 

「その、悪かったな?服とか汚したりして」

 

「悪かったで済むならツヴァイは要らないんですよ、ドンファンのくせに」

 

「はいはいわかりま…… 待て、何で俺の名前を知ってるんだ?」

 

 あっ、やっちまった。

 

「………てへ」

 

「今更可愛い子ぶっても意味ないからな?」

 

 色々なショックのせいでうっかりやらかしちまったぜ☆

 さーてどうしようか、多分これ逃がしてはくれないだろうし、かといってこのまま話し続けてたら店長に見つかってクビになるし、どうにか穏便に済ませる方法は………

 

 あ、そうだ。良い方法思い付いた!

 

「わかりました、何でドンファンさんの事をしってたのかはちゃんと話します。その代わりに、私のお願いを一つ聞いてもらえませんか?」

 

「お願い?なんだ、口封じでもするつもりか?」

 

「いえ、そんなんじゃありません。ドンファンさん、私の………」

 

 私は都市について、知っていることがあまりにも少ない。ここがどの会社の巣なのか、家賃や土地代はどこに支払うのか、フィクサーになるために行かなきゃいけないハナ協会の場所だって知らないし、私自身の事だって知ってる事は殆ど無いといって良い。

 そう考えると、この状況はある意味とても好都合だ。だって私の目の前にいるのは……

 

 

「私の家に、来てくれませんか?」

 

 

 都市に精通した、あの1級フィクサー様なんだから。

 

「………はぁ!?お、お前何考えてるんだ!?」

 

「さっき私に色々聞こうとしてましたよね。私も、聞きたいことが色々とあるんですよ。それを教えてもらいます」

 

「それならここで言えば良いだろ!何でお前の家に行く必要があるんだ!?」

 

「誰かに聞かれると困るんですよ。私はかなり特殊な状況に置かれているので」

 

 ネタキャラとしての印象が強いけど、ソロで活動する1級フィクサーという時点で実力はかなり高い。なら、色々聞いて回るよりこの人に聞いた方が手っ取り早い。

 何より、私が血鬼であることを既に知っているからね。不特定多数に正体がバレるリスクを犯すことなく情報を得られるんだから、私にとってこれ以上無いくらい都合が良いんだよね。

 

「それに、私をこんなに汚したんですから、その責任も取ってもらわないと」

 

「はぁ………臆病なのか図太いのか、良くわからないやつだな」

 

 ドンファンは暫く頭を押さえて悩んでいたけど、少しして盛大なため息をついた後、「わかった」と答えてくれた。

 よし!ドンファン(情報源)、ゲットだぜ!

 

「ありがとうございます、それで、いつ頃来れそうですか?」

 

「今日は無理だ、知り合いと会う約束があるからな。明日なら空いてるが…… それでどうだ?」

 

「わかりました、なら夜に会いましょう」

 

 

 

 

 

 

 話を終えて、ドンファンはまだ買う物があったみたいで別の商品棚の裏に消えていった。まさか、こんな形で問題解決の糸口を掴めるなんて思わなかったなぁ……

 最初はとんでもない厄日だと思ったけど、就職の機会を得られたし情報源も得られたし、今日だけで信じられないくらいの成果だった。幸い店長には見つからなかったし、ここなら監視カメラにも映ってないだろうし、本当に見つかる前に早く仕事に戻らないとね。

 

「よーし、話してて遅れたぶん、気合い入れて仕事に取りかからないと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、隣の商品棚で検品中だった店員さん

 

 

 

 私の家に来て………

 

 誰かに………困るんですよ

 

 私をこんなに汚………責任も取って………

 

 

 

「あ、あの男……あの子と何を……!?」

 

 

 

ドンファンは、あらぬ疑いをかけられていた

 

 




その後のドンファン
 
「お客様、先ほどあの女の子と何を?」

「あー、ちょっと内緒話をな」

「……その血は?」

「これは、その、あれだ。そうする必要があったんだよ」

「ちょっとこっちに来てください、話があります」

「は?いや、俺は何も―――
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