「睡眠」とは、その日の情報を整理するため、一日働かせた脳味噌を清掃するために必要な行為であるが、その行為が足りなければ、日中でも夢の世界に入る。

彼も、そんな近現代人の一人。

そんな、他愛もない夢の話。




………本当ですよ?

1 / 1
眠い

眠い。    

ひたすらに眠い。

早く寝ようという時に限って眠りが浅くなるあの現象に名前はあるのだろうか。朝7時半に朝食を摂り、8時半に学校へ行く。この上なく健康良児なタイムスケジュールだ。………起床時間が午前3時半であるということを除けば。「う~……眠……」

教科書を枕代わりにして伏せながらラノベを読もうとしたのだが、頭が重たくて仕方がなかった。幸い今は大講義室での授業、一眠りしてもバレないバレない…。「ZZZ……」

チャイムが鳴っても起きない先生がたまにいるけど、実際に寝る人はなかなかいないと思う。起立して礼をするのにはそれなりの眠気が必要だからだろうか、よくわからないけど。とにかくそんなことを考えているうちに、僕の意識は途切れた。

ーーーーーー

「~~~い……ん~~」

誰かが僕を呼んでる気がする。……だれ?ここ……教室……?僕のクラスは……確か……なんだったっけな……。

「お~い!起きて~!今授業中だよ!」

耳元で誰かが叫んでいるのが聞こえた。同年代の異性の声が聞こえる。やはりそれなりに人が入った場所で爆睡するのは不味かったか。寝ぼけ眼をこすりながら目を開ける。子どもたちの声が聞こえる。はて、ここは大学であってちびっこの出入りは滅多に無いはずだが…。

「おはよ、博人くん!やっぱり昨日ちゃんと寝れてなかったんでしょ~、いけないんだぞ!」

「……は?」

 

見慣れない妙にのっぽな20代女性。隣でうんざりした顔をした小学生男児。その様子をみてクスクスと笑う小学生のちびっこ達。

 

「……おやすみなさい」

 

いやいやHAHAHAまっさか寝て起きたら小学生になっちまったとは大分おかしな夢だ。眼の前の先生と思しき女性も、隣の野郎も自分の小学生時代のものとは一致しない。だからタイムスリップというわけでもなさそうだ。

 

いい加減に目を覚まそう

 

 

「…博十さんは、もう…」

 

「そんな…!」「おい、爺さんの目ェ開いてるぞ!」

 

「じいちゃん!」「お義父さん!」

 

………はい?

 

「この際御祖父様に言いたいことをいいましょう。私、今まで黙っていましたけど本当は男だったの!」

「母ちゃんが、父ちゃんだった…?」

「すまない、あの時叔父さんがとっていた期間限定ドーナツ俺が食ってたんだ!ごめん…!あんまりにも腹が減ってて」

 

白いベッドに寝かされ、壮齢の女性に自分の皺だらけの手を握って暴露大会をしているのは、俺の子孫らしい。

 

「お義父さん、実はあなたの孫の一人は息子なんです…!」

「おまっ…いつ!」

「…お義母様の介護の時、ちょっと♡」

「あん時のカステラも実は…」

「なんで完全性転換のこと黙ってたんだお前…!そのままの方がお得だったのに畜生…!」

「あなた???」

「…もう帰っていいかな?」「大人の秘密暴露会ってこんなに醜いんだね」

 

涙で目を腫らして手を握る一名を除いた暴露会は、正直頭を痛めるものだった。というか子ども達に聞かせるなよ墓場まで持っていけよ…!フラストレーションが溜まり、一言なんか言ってやろうと体を起こしたその時

 

「うっ」

「パパ…?パパ!」

 

「御臨終です」

 

この体はしばらく動かされていなかったのだろう。頭の血管と急激な血圧の変化に、耐えられなかった。

 

 

まあ、そんな体験を目まぐるしく体験した。二度寝、腹上死、バスの車内、公園の地べた、刑務所、サウナ、エトセトラ、エトセトラ…時折視線の下に見慣れない膨らみがあったりするものだから年齢も性別も問わず、とにかく「ハクト」という名前で目覚めてからまた意識が落ちる体験をした。

 

そうして、最後は見覚えのある顔と、今は見られない景色だった。紅葉のような手を伸ばす先には、顔の皺が幾分減った母親の顔。

 

上京してから三年、指で数えるくらいしか言葉を交わすようになってしまった。

抱きしめられ、温もりを感じて再び眠気に誘われる。

帰ったら、電話してみよう。動機なんてなんでもいい。そういう気分になったのだ。

 

頭を撫でられながら、今まで以上に無い安らぎとともに、意識が落ちる

 

 

 

「…………もし……………もしも~し………ふんっ!」

 

「痛っ!」

 

講堂に響く乾いた紙の破裂音。微睡みの中、目を細めて紙の束を丸めた棒を持っている教授の様子を見れば、叩き起こされた事実は瞬く間に脳へと叩き込まれた。

 

「授業はとっくに終わってるのだが……良いかい?君の体調管理にとやかく言うつもりは無いが、せめて聴く姿勢だけはしっかりとするように」

 

「は、はい!失礼します!」

 

授業もとっくに終わり、講堂にはあれだけ居た人が僕と教授だけだった。あれだけ巡った光景は、果たして何だったのか。夢と切り捨てるにはやけにはっきりと覚えている。頓痴気な未来に空想を膨らませるのもまた一興だが………

 

携帯電話を手に取り、連絡先の一覧を開く。画面に指を押下した名前は、もちろん。

 










とまあ、本当に授業中眠すぎた時にぽつぽつと現れただけの、ネタ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。