なんか転生した!
 う、うわぁ!転生者特有の頭脳引き継ぎチートで人生の選択肢が無数に脳内を練り歩いている!?
 これは稼ぎまくりモテまくり無双しまくりの勝ち組人生だ!

 そうはなりませんでした、俺はしがない三流個人記者です


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三流記者は自己満記事が止められない

 現代日本での記憶を持ったまま再び人間として生を得た時は、輪廻転生と言うやつは本当だったんだなと感動したものだ。

 

 今度の人生は何をやろうか、そんな事を考えていた俺はカレンダーやテレビの情報からここが俺の死後の現代ではなく、過去であることに気付いた。

 

 小説だったか論文だったか、過去に転生する可能性なんてものを見た記憶があるが、まさか自分がそうなるとは思っていなかった。

 

 俺は過去に経験した災害、スポーツの勝敗、宝くじ、等の記憶を必死に思い出そうとした、聞こえは悪いが金儲けに利用出来るからだ、しかし残念ながらこの世界は前世の過去ではなく、ウマ娘と言う存在が現実となった世界だと知った。

 

 俺自身はアニメの二期開始の前に一期を見た後、二期、ゲーム、シンデレラグレイと目を通しただけのにわかで、原作とも言える競馬には興味がなく、辛うじてディープインパクトが強かったらしいくらいの知識しかなかった。

 

 それはさておき、前世の記憶のお陰で勉強の大切さを知り、俺を誘惑する娯楽の数々も細部は違うが俺からすれば新鮮味のない、レトロゲーやパチモン同人誌【機動戦士ガーンダモ、ツーピース等】に思えてしまい只管に勉学に励み娯楽三昧の青春にはならなかった。

 

 前世の様な、就活直前に自分の能力で選べる職を選んだのではなく、就職したい職の為に能力を伸ばす事が出来た。

 

 一般的には俺は無趣味のガリ勉にしか思われていなかったかもしれないが、贅沢し新たな娯楽を見つけるのは自分で稼げる大人になってからの方が金銭的な自由がある、だからこそ安い給料と少ない休みの中で生活費を削り、それを娯楽に回す生活なんてまっぴらだった。

 

 とは言え、仕事にもやりがいと言うものを感じてみたかった俺が最終的に選んだのは出版社だった。

 

 地道にWebサイトやSNSを使ったネット記事等から始め、最終的には好みの漫画を集めた週刊誌を発刊し楽しみたいと言う正直殆ど達成出来るとは思えない半ば以上に冗談の目標を掲げた。

 

 まぁ現状は社長俺、編集俺、記事俺、記者俺、印刷他社委託という趣味全開、不定期更新の小さな会社だ。

 

 出版社の仕事と言うより暇を持て余した成金の道楽だ、これがドラマなら中傷記事を飛ばす嫌な敵役とかで出て来そうだ。

 

 親はごく一般的な会社勤めの共働きだったが、俺が前世の記憶を生かした事で今では億万長者だ。

 

 前世と細部に違いがあるなんて関係ない、SNSや携帯電話、動画投稿、配信サービス等の成長するであろう企業の株や技術に投資を行っただけだ。

 

 金持ちが金を稼ぐのと、貧乏人が金を稼ぐのでは難易度が違う。

 

 企業名等は前世とは違うが、社会の仕組みや取り巻く情勢が前世とほぼ同じなら、今後の発展は容易に想像出来る。

 

 この世界と前世の差違を調べる段階でウマ娘関連は良く調べた。

 

 まず競馬がない、馬がいない、ウマ娘は総じて見目麗しい容姿の為一部のことわざの意味が変わっている。

 

 この辺は直ぐに思い付く、というかアニメ見てれば分かる。問題は過去にも当然ウマ娘が存在していたのに、現在の社会は前世とほぼ変わらない発展をした上でウマ娘ではなく人が支配していると言う謎だ。

 

 闘争においてウマ娘が人間に負ける事はまずない、特に兵器が発展する前ならばウマ娘の勝ちは揺るがないだろう。

 

 争いを好まないとは言え、生命に危機が迫るのを座して待つとは思えず、あの容姿で人がウマ娘に全く手を出さないと言うのも考え難い。

 

 が、それは前世の人類の、いや俺の思考回路の話だ。

 

 今生の人類はそもそもウマ娘に危害を加えようとか、レース以外のスポーツを無理に競わせようとする発想がほぼない。

 

 せいぜいがあわよくばお近づきになりたい程度で、厄介なファンと言うのも前世と比べて極少数で過激でもない。

 

 前世より民度が高い、とでも言った方がいいだろうか。

 

 しかしアニメ二期のライスシャワー関連の描写を見ても分かるが、中には心無い事を言う人間はいるようで、悪人が全くいない訳ではないようだ。

 

 俺は被害を被った訳でもないのに、何故か努力している人を批判する頭のおかしい奴が嫌いなので、アニメでライスシャワーが批判されていた事を思い出し、俺くらいは絶賛する記事を飛ばしてやろうとこの会社を立ち上げた時から考えていた。

 

 はっきり言ってウチの会社の記事は売れていないし、webの閲覧数も伸びていない、完全に赤字だがそんなもん全然気にならなかった。

 

 本当を言うと、俺はトレーナーになろうかと考えた時期があった。

 

 しかし人に何かを教える為には、実際に自分が経験する必要があると考えた、プロの選手が監督やコーチになるのは自分の経験と言う実証データと経歴がそのまま説得力として武器となるからだ。

 

 確かに経験者の指導とは言え、たまたま体が頑丈で、無茶で無駄なトレーニングをこなしたのに奇跡的に大成した人物はいるだろう、昭和の根性論、真夏でも練習や試合で水を飲むなと言っていた事や、トレーニングで行われていたうさぎ跳びの様に科学的に効果が薄く怪我に繋がると否定されるケースもあるだろう。

 

 だがそもそもボールを投げ、バットを振った事がないインテリが資料片手に『俺の指示に従えば勝たせてやれる』と、自信満々に言える神経を理解出来なかった。

 

 少なくとも俺は、自分が体験していない事を人に教える事が出来る程に器用ではなかった。

 

 ましてや相手はウマ娘、性別も能力も違う、前世では学生の頃しかまともに走った事のない身で何を自信に相手を導けと言うのか。

 

 だから俺は走った、短距離走、長距離マラソンと距離を選ばず走った。

 

 人間とウマ娘の差は人と車並みに違う、一緒に走った事はなかったが絶対に勝てないと言うのは鍛える程に実感した。

 

 徹底した自己管理、栄養、休息、トレーニング、全て最先端の現代医学やスポーツ工学に則って行ったその行き着いた先に待っていたのは、トレーナーとしての自信を身に着けた自分の完成などではなく、アキレス腱断裂と言うくだらない結末だった。

 

 足が治るまでの間俺はずっと考えていた、足に違和感はなかった、管理は完璧だった、オーバーワークでも、オーバーペースでもない、地面に凹凸があっな訳でもない。

 

 では何故怪我をした?わかっていた、簡単な話だ。

 

 俺は、自分の足の違和感にさえ気付けなかった、管理が不十分だった、オーバーワークだった、オーバーペースだった、俺の体に耐えられる負荷ではない事を、見極める目がなかった。

 

 自分の体さえ完璧に把握し、トレーニングする事が出来ない。

 

 その仮定を否定するならば、言い訳の行き付く先はウマ娘のレース人生を共に背負うトレーナーが、絶対に受け入れてはいけないもの、『完璧にこなしても故障する、運が悪かった』、と言う最低の開き直りだけだ。

 

 俺はそんな事を考え、怪我等は時の運だ、などと言うトレーナーにはなりたくなかった。

 

 俺には才能がなかった、だが出来る人間は確かに存在するのだろう、ならば俺の夢はここで終わり。

 

 俺はトレーナーを諦め、せめて他の事でウマ娘と関わる事にした、だが近すぎるとかつての夢が胸の奥で疼いてしまわないかと不安もあった、適度に近く、だが交わる事のない第三者。

 

 そうだ、記者なんていいんじゃないか、そんな思い付きで始めたのがこの出版社というわけだ。

 

 そして絶賛炎上中であり、事務所と言う名の自宅でパソコンに届いた今まで付き合いのあった他社からの、今後の付き合いや契約の見直しの話が綴られた文章に目を通し返信する生活をここ二週間ばかり送っていた。

 

 エゴサなんてしていない、やる意味もないし聞く気もないからだ。

 

 記事の評判は閲覧数と売り上げが教えてくれる、俺がするべきは読者の機嫌取りではなく俺の伝えたい事を俺の言葉で届け、その記事に責任を取ることだ。

 

 だから俺は記事には必ず実名を載せているし、ホームページには顔写真も公開している。

 

 インタビューした相手にも実名と所属を公表する契約を交わし、よくある『○○の関係者が語った真実!』の様な発言に信憑性がなく、矢面に立たず、責任を取る気もない、隠れたまま一方的に投げつける記事にならないように徹底していた。

 

 そんな自分ルールの中、今回大炎上中の記事は『帝王!有馬で1着になるウマ娘!!!』だ。

 

 そう、俺は他社がトウカイテイオーの復帰&有馬出走決定の記事を売り出している中、有馬記念はテイオーが最有力、絶対に勝つと記事を飛ばしてしまったのだ。

 

 勿論前世の記憶任せの記事ではなく、綿密な取材を行った上でトウカイテイオーならやると判断したのだが、どうやら世間の認識ではトウカイテイオーは引退を見据えた記念出走であると受け止められており、俺の記事はトウカイテイオーに対しての煽り記事だと思われてしまっているらしい。

 

 どうも世間には自称テイオーファンや有識者といった連中が大勢いる割に、ドイツもコイツも節穴しかいないらしい。

 

 これがトレセン学園のトレーナーともなれば、全員がテイオーの有馬制覇が現実的だと受け止め、同じレースを走る担当ウマ娘と対策の一つや二つ真剣に話し合っていることだろう。

 

 前回の炎上は『触れば分かる!!ウマ娘のトモは素質を語る!?』だった。

 

 ベテラントレーナーのトモに触れて来た経験と、そのウマ娘の活躍を綴り、最後にシンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアンのトモを触り比べた感想と、差異による距離や走り方の適正の見分け方の簡単なレクチャーを書き綴ったのだが、どうも俺が触ったと勘違いされたようだ。

 

 三人のトモに触れたのは担当の女性トレーナーであるし、インタビューを受けたベテラントレーナーは担当ウマ娘から許可を得てトモを触っていた訳で、もちろんそれは真面目なトレーニングと体調管理の一環だ。

 

 それを嫌らしい目で捉えクレームを入れる側の方がよほど危険ではないかと思うが、まぁ終わったことだ。

 

 次号の見出しは『捜査!トレセンで噂の5秒でバナナを完食出来るウマ娘は誰だ!?特集!』だ。

 

 まぁどうせオグリキャップだろ。




有馬後、下らないインタビューでトレセンに突撃するテイオー勝利予言記者VS5秒でバナナを食べるウマ娘

続かない

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