転生龍園さん(関西弁) 作:やーやーやーやーやーやー
自分は、どうやら輪廻転生と呼ばれる現象に巻き込まれたらしい。オカルト的な話はあまり信じているタイプでは無かったが、こうも分かりやすく巻き込まれるとさすがに信じざるを得ない。
あれは、齢3歳の時だった。それ以前の自分は、なんともぼんやりとしている子供だったらしいがパッと目が覚めたように、前世の記憶なるものを思い出した。前世の両親の顔も、己の名前も人生も創作物のように何かがかけているということもなく、初めからそこにあったかのように思い出した。
前世では関西圏に住んでいたのだが、今世では東京圏…即ち、首都、大都会と呼ばれる地に産まれたらしい。これが、古代ヨーロッパ風味の異世界とかであれば、心のひとつでも踊ったのかもしれないが、さすがにそこまでのオカルトは存在していなかったらしい。
ともかく。俺は新しい生を受け、もう一度人生という長い旅路を歩み出したということだ。前世の名前はもう存在しない人間の名前なので、今世の名前だけは覚えていって欲しい。今世での俺の名は龍園。龍園翔だ。かっこいいでしょ?
さて、長々とした自己紹介はここまでにして、現状と言うやつを話そう。生まれ変わったからには、エリート街道突っ走ってやろう!なんて理由では無いが、何となく前世とは違う生き方をしてみたかったので、勉学に励み、この国で最も有名な高校、高度育成高等学校に入学することが出来た。
なんでも、俺はCクラスということらしく、入学式当日である今日、そのCクラスの教室で静かに席に座っているというわけです。──周りは楽しそうにされてますけどね。俺は一人ぼっちですよ、ええ。
あのね、違うんです。コミュ障とかそういう訳じゃなくてですね、中学までが荒れ果てた感じの学校だったんで、こういうちゃんとした学校が久しぶりなだけなんです。マジで。ホンマに。
「参ったで、ホンマに」
みーんな楽しそうに話してる中、俺は1人でぼんやり外を眺めてる。悲しい生き物みたいになってしまってるわけだ。兎にも角にも、動かなければ何も始まらないので、横の席にいる生徒に話しかけてみることにする。
ちらりとそちらを見ると、静かに本を読んでる美人さんが座っていた。今世では前世と比べてみんな顔が整っているとは感じていたが、正直彼女は別格に可愛い。凄いな高度育成高等学校。
「あー、本読んでる時に邪魔してすんません」
「…なんでしょう?」
こちらを見て、こてんと首を傾ける少女。俺が前世持ちでなければイチコロだっただろう。まじかで見る美少女の眩しさに目を細めつつ、何とか自己紹介をゴリ押していく。
「今日からクラスメイトになる訳やから、挨拶くらいしとこうかと。龍園翔って言います。よろしく」
「ああ、なるほど。…椎名ひよりです。これから、よろしくお願いしますね」
ふむ、椎名さんね。龍園、名前、覚えた。しかし、女の子と話すには話題が無いな、と彼女が手に持つ本を見てみると、見た事のある名前の本だった。
「風の影?ええ本やね」
「ご存知なんですか!?」
「あ、うん。親父が本読むの好きでその流れで…」
見た通りの文学少女だったらしく、本の話題を出した瞬間に食いついてきた。アニメなら、両目がキラキラ輝いているエフェクトが出ていただろう。何故だか、現実なのに輝いて見えるが。
その後も会話をしていくと、随分と読書に造詣が深いようで今後いい小説を教えてくれる、という話をしたところで扉が開く音がする。そちらを見てみると、スーツ姿の男性…おそらく教師と思われる男性が立っていた。
「細かい話はまた今度にしよか、椎名さん」
「そうですね…先生からも話がありそうです」
やんちゃそうな生徒もクラス内には見受けられたが、入学式当日であるが故か、はたまたそれ以外の理由か、先生が教卓の前に立つと、しん…っとクラスが静かになる。
「おはようございます、皆さん。一人の欠席者もなくこの日を迎えられたことを心から喜ばしく思います。私の名前は坂上和馬と言います。三年間、皆さんの担任となりますので、どうかよろしくお願いします」
丁寧に自己紹介を述べた坂上先生は、学生証のようなものをクラスメイトに配布し始める。配られてきたそれを手に取ってみると、質感はクレジットカードに近い材質で作られている。
「皆さんに行き渡りましたか?…よろしい。では、軽くその端末についての説明を。それは学生証カードとなります。名前の通りの学生証ですが、普通の学生証とは違い、この学校内で必要となった生活費等の支出はそちらのカードで支払って頂くことになります。つまり、クレジットカードがくっついていると考えていただいて結構」
本当にクレジットカードなんかいというツッコミはともかく、支払いはどうするのだろう?もしや、後払いだったりするのだろうか。…そこら辺も今から説明されそうだな。
「施設内では、支払いの際にそちらの学生証を通す、または提示することにより使用可能です。使い方は簡単ですので、迷うことはないでしょう。現在、皆さんには10万ポイントが振り込まれており、この施設内では、そのポイント1ポイントにつき1円の価値があります」
なんだって?10万ポイント?つまり、1人につき10万円のお小遣いってことか?さすが、国の運営する学校、と言うには、あまりにも莫大な支出になる気がする。周りも軽くざわついていたが、坂上先生が咳払いをすると、少し落ち着いた。
「ポイントの支給額に驚いたかもしれませんが、もう少し説明を聞いてください。ポイントの支給に関しては毎月1日に振り込まれる仕組みになっています。皆さんに振り込まれた、そのポイントは今皆さんにはそれだけの価値があると判断されたが故のものなので自由に使っていただいて結構です。…さて、なにか質問は?」
10万ポイントのインパクトで周りは少し固まっていたようなので、面倒だが気になることを聞いてみる。
「質問いいですかー?」
「キミは…確か、龍園くんだったね。どうぞ」
「えーと…まずなんすけど、このポイントって卒業する時余ってたらどうなるんすか?」
「ああ、説明し忘れていましたね。全て回収されます。なので、卒業後に現金に変換するために取っておくというのはオススメしませんね。」
ふん、なるほど?あくまでここの中での通貨だからこんなインフレじみた金額が振り込まれたと言いたいわけだ。
「じゃあもう一個いいすか?」
「どうぞ」
「来月俺らはいくら貰えるんすかね。今月と同じ10万?それとも月ごとに変わる?」
俺がそう質問した瞬間、ほんの一瞬驚いたのが見える。そしてニンマリと微笑んで先生はこう言い切った。
「そうですね…来月にポイントは振り込まれる、とだけはお伝えしておきましょう」
「なんやそれ…ま、いいですわ。ありがとうございます」
「いえいえ。それではそろそろ入学式の時間ですので、皆さん準備の方をしてください。」
なんの質問だったんだ?というクラスメイトたちの視線を華麗にスルーしながら体育館の位置をこれまた配られた端末で確認すると、立ち上がる。
「一緒に行きませんか、龍園くん」
「お、ええで。みんなもそろそろ用意した方がええんちゃう?」
声かけてくれた椎名さんと体育館に向かいつつ、クラスメイトたちにそう告げる。しっかしまあ…なんとも、怪しい学校だ事で。キラリと無機質に輝く監視カメラに目を向けて、俺はため息を着いた。
龍園翔
学力 A
知性 A-
判断力 A
身体能力 A-
協調性 C
学力、身体能力共に非常に高い数値を叩き出した生徒。中学時代の教師たちからの評判も良く、Aクラス入りが妥当かと思われたが、度々暴力事件を引き起こしているなどの懸念事項から、Cクラス入りとする。
原作よりもスペックが高いのは、転生者故の知識アドバンテージと成熟した精神性によるものです。"勝つ"という一点ならば、圧倒的に原作より上です。