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バレンタイン
「はぁ……またこの季節か」
雪がぽつぽつと降るこの季節、2月14日の朝は静かに雪が降っている。ホワイトデーに雪が降っている訳だ。
世の中の男子共であればチョコが貰えるかどうかのわくわくドキドキ、期待と不安に入り混じる日だろう。
そんな俺は今現在━━
“ん?どうしたの?チョコが貰えるか不安?”
━━今現在、シャーレの当番に来ている。
何故俺なのだろうか。別に応募はした記憶もないし、何なら昨日の夜に突然━“明日当番ね!”━と、言われたのである。解せぬ。本来なら家でぬくぬくこたつの中でみかんを食べつつ過ごしていたはずなのに。
「いや、それ以前に俺は家でぬくぬく過ごすつもりでしたが。チョコだなんて貰えると思いませんよ」
“……はぁ”
「何ですかそのため息。ちょっとどころか普通に心外なのですが?」
本来の予定を伝えただけでゲヘナ給食部の部長さんみたいな呆れ顔をしてきた。本当に解せぬ。何故呆れ顔をしてくるんだ。
“世の中の男は!気になるあの子からチョコをもらえるかなと!下駄箱の中を注意深く見たり!机の引き出しをさりげなく漁るのに!
君はどうだい?家でぬくぬく?君は今日という日を舐めている!”
「……はぁ」
今度はこちらが同じような呆れ顔をすることとなってしまった。今日という日について語りながら、こちらを貶してきたのだ。何だよこの先生。
“ 君の周りにはのんびりした同級生を含めた素晴らしい後輩が合計5人もいるじゃないか!なのに何故君は家に篭ろうとするんだい?”
「……いや、俺寒いのが苦手なんですよ。だから基本家から出ないし、ある程度暖かい部屋でも上着を着るほどですよ。」
夏であればそれほど気にならない為、日焼け防止のために薄い長袖を着るぐらいだ。だが冬は違う。
正直に言っていつもの教室の気温は、寒がりである俺にとって地獄そのものなのである。
なので必ず登校しないといけない日以外は基本的に家に篭っている……のに
なのに何で外に出してきたんだこの先生は。
“はぁ〜……わかっていないねほんと。”
「わからなくて結構ですよ。それに、そう言う先生はどうせ生徒から貰うんでしょう?」
“私は今日誰からももらえないことが確定してるけど?”
「……あ、え、えぇ……なんかごめんなさい」
どうせ百単位で貰ってるだろうと思ったらまさかの0だったらしい。あれ?ホシノ達アビドス組はあげると言っていたはずなんだが。
「それで、何でもらえないんですか?」
“連邦生徒会がシャーレの混雑を防ぐ為に今日だけ特定の人以外の出入りを禁止にした挙句、この仕事量だからだよ。”
「……うっす。」
まぁ何とも正気のない目である。あんだけ熱弁していた先生が外に出られないと言うのはまぁ……その、なんだ?とてつもなく可哀想である。
かく言う俺もこの先生の手伝いをするのでほぼ1日が無くなったわけなのだが。
“まぁでも私のことはいいんだよ!それよりもアヤト!君がチョコをもらえるように何とかする方が大事!”
「んなバカなこと言ってないでさっさと終わらせてください。そしたらアビドスに行けるんですから」
“何言ってるのさアヤト。こんな量を2人で終わらせれるわけないでしょ?”
「終わる終わらないじゃなく、終わらせるんですよ。目標は17時、今から本気でやればギリギリ間に合うはずです。」
先生が流石に可哀想……と言うことなので、できる限りの書類業務をこなして、先生をシャーレからアビドスへ連れ出すことを決める。
現在時刻は10時、書類の量は170を超える高さのものが三つほど。
約7時間で、これ程の量が終わるのかは不明だが、終わらなかったら終わらなかったで連れ出そう。その後に泊まり込みで手伝えばいい。
“……わかった、アヤトがそこまで覚悟を決めたなら私も覚悟を決めるよ!”
「その粋ですよ先生。じゃあこれお願いしますね」
そう言って書類の束を先生の前に置く。先程の会話中にちょくちょく進めていたものだ。あとは確認のみなので先生に任せるだけだ。
先生に書類を預け、景気づけるように妖怪MAXを一気飲みする。
「んじゃ、訂正くらって仕事を増やしたくないので書類作成やら何やらは俺がしますね。」
“う……うん、分かった……”
先生の承諾を貰った(?)ので早速作業用デスクに座り早速始める。
「さて……始めるか。」
そんなこんなで、およそ7時間の殆どを集中して業務に取り掛かった。そのおかげか、八割程の書類を片付けることができた。その代わりに妖怪MAXを4本以上飲む結果となったが……
「うへぇ……終わった……ついでに俺の健康状態も終わった……」
“お……お疲れ様、アヤト。これ以上はアヤトの体が心配だしさ、もうアビドスに行かない?”
「……なら行きましょうか。」
先生の声を合図に準備(バックを背負うだけ)を終わらせ、すぐにアビドスへと向かう。
はっきり言ってこんな当番はもうこりごりである。今度からはしっかり終わらせてもらおう。
「ってことで、俺の健康を犠牲に先生を連れてきた。眠いから俺は仮眠してくる。」
「あっ、う、うん……行ってらっしゃい……?」
「ん、アヤト先輩お疲れ様」
そう言ってアヤトは学校の中へと入っていった。まぁ、7時間も集中していたので疲労が溜まってしまったのだろう。本当にアヤトには感謝してもしきれない……
“アヤトには本当に感謝してもしきれないよ……今度お返ししなくちゃ。”
「うへ〜、やっぱり先生もアヤトにはお世話になりっぱなしなんだね〜」
「アヤト先輩は世話焼き。アヤネと同じくらいには世話を焼いてる」
“あはは、確かにアヤトはよく世話を焼いているよ”
そう、ここのメンバー全員、なんだかんだアヤトによく世話を焼いて貰っているのだ。
と、言ってもアビドスの全員が世話を焼いて貰っているのだが。
「それでせんせ〜。アビドスに来た理由、何かあるんじゃない?」
“……バレた?”
「そりゃあこの時期、この季節でわざわざ仕事を終わらせてくると言うことは
そう言ってホシノが脇腹を突いてくる。
まぁ確かに、アヤトに熱弁して結局私は貰えないと言ったのは期待していたからなのかもしれない。
“まぁ……その、男としてはまぁ期待しちゃうよね。男だし。”
「ん、だったらこれあげる。」
そう言ってシロコがバックから出したのは、一つのチョコであった。それは手作りなのかハート型になっていた。
“ほんと!?ありがと〜シロコ!”
「いいよ。私も先生に渡したかったから。」
「も〜、先生もやっぱりモテてるねー。はい、おじさんからもあげちゃうよ〜」
“ほんとに!?ホシノからも貰えるなんて嬉しいなぁ〜!”
ホシノから貰ったチョコは、やっぱりと言うか想像通りというべきか、クジラの形をしたチョコであった。
ホシノの趣味がわかるいいチョコである。正直食べるのが勿体無い……勿論食べるけどね
「いいよいいよ〜。それは勿論いつものお礼だからさ〜。」
“やった〜!ほんと今日は貰えないと思ってたから、アヤトには感謝してもしきれないよ〜!”
「それじゃあアヤネちゃん達からも貰っちゃお〜!」
“お〜!”
「ん、ちなみに私のは本命だからね」
「……ふぁ、今何時だ……?」
どうやら寝過ぎたらしい。時間を見るともう20時を過ぎている。おかしいな、アビドスについたのは18時より前のはずだったなのだが。
「まぁいいか……とりあえずさっさと帰るか」
「……って言っちゃってるけど、本当にいいのかな〜?」
後ろから声がした。俺はそれに対して、首をゆっくりと動かす。コメディー系のアニメであれば、ギギギ……と音がしそうなほどである。
「……何でいるの?」
「ん〜?相棒の寝顔を見る為にだよ〜?」
「……こわっ、さっさと帰りなよ。俺の寝顔なんて見たところでだろ。」
「いやいや相棒の寝顔って見ているの飽きないんだよね、ふっしぎ〜。」
「ふっしぎ〜なのは俺の方だよ……」
ある種のホラー体験をしたところで、本題に戻すことにした。
「それで、何でこんな時間まで残ってるんだ。何か用があったなら起こしてくれても良かったんだぞ?」
「いやぁ……だって相棒幸せそうな顔で寝てたから、何だか起こすのが申し訳なくって。」
……そういや寝顔を見られていたんだったなと思い出す。そう考えると少々小っ恥ずかしい。
「それで要件だったね、要件はね〜?これだよ!」
「……チョコ?」
ホシノから何かの袋を渡される。その中身はどうやらチョコのようだ。
……チョコ?
「なぁ、何でチョコなんだ?」
「今日ってバレンタインでしょ?だから頑張って作ったんだよ〜?」
まぁ作ったと言っても溶かしただけだけどね。と、舌を出しテヘペロとでも言いたげな表情をする。
……まぁ、この際チョコを貰えるのはいい。だが、その形が……
「何でハート型なんだ?お前ならクジラの形にでもすると思ったんだが」
「……はぁ。」
おい、なんで呆れた表情をするんだと言いたくなる口を抑えた。
そんなことを言ってしまえば、更に呆れた顔をするに違いない。
「まぁいいよ、そのチョコは相棒が好きな味にしてるからね〜」
「そうか、そりゃありがたいな」
俺の好きなものは苦めのチョコだから、それ相応の苦さをしているのだろう。ありがたいものだ。
「んじゃ、私は先に帰るね〜。相棒も気をつけて帰るんだよ〜?」
「わ〜ってるよ、お前のほうこそ気をつけろよ」
「もっちろん。何てったって、あの
「はいはい、暁のホルス様なら大丈夫ですね」
そんな軽口を叩き終われば、ホシノは帰っていった。
それを見計らい、渡されたチョコを取り出す。起きたばっかで腹が減っているのでこのチョコはありがたい。
ってことで、早速一口頂いた。
「……あっま、ものすごく甘いじゃんか」
……苦い味付けと思っていただけに、少々残念である。
だがまぁ仕方ない、ホワイトデーのお返しも考えないとな
あとがき。
実はチョコの甘さにも意味があり、甘さは相手との関係性を表す。
アヤトが好きな苦めの
逆にホシノの渡した甘めの
……実際にホシノがどう思っているのかは知りません。