『オ・メ・ガ』
瞬間、エメラルドの炎と共に風圧で彼女の周囲の一切を押し出した。
氷奈は察した。身体が修復され、それに伴い自分が人間ではない何かになっていると。
だが、この時点で氷奈による自由意志は消えていた。そこには氷奈以外の誰かが居座っていたのだ。
エメラルドの炎が治った時、そこに居たのは氷奈ではない。
別の何かであった。緑色の鎧とも言えない表皮。赤いバイザーの奥に細長い瞳がが此方を睨んでいる。
それは正義の味方では決して無かった。
『ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!』
それは叫ぶ。
特に叫ばなくてはならない理由はないけど、アマゾンオメガは叫ぶだろうから叫んだ。
まるで血に飢えた野獣の様に…
ちなみにベルトはCSMの仕様であり、変身する前に変身後に流れる様にしていたのか『モグラー』が流れている。
もうここまででわかると思うがイッチは今、凄く充実していた。
目の前にはボコボコにして殺しても全く良心が痛まない敵。自分は本当に好きだった仮面ライダーになっている。こんなのファンだったら大歓喜待ったなしだ。
ただ一つ未練があるとするならば、喉が潰れていたせいで「アマゾン!」と叫べなかった事くらいだろうか。
だが今のコンディションは過去最高と言って良いほどに良かった。
『な、なんだ。貴様は……』
ナイト星人が呆然と呟く。ああ、そうだ。そう言う反応が欲しかった。褒美としてお前の首を刎ねてやろう。
『い、行け!騎士団よ!』
手を伸ばし、出陣だとばかりにナイト星人が叫べば、地面から這い出す様に黒い影達が出てくる。
さっきの赤い空の下現れた戦闘兵達と同じ洋装をしている。多分、先程赤い空もコイツのせいなのだろう。
「イイイーーー!!!」
一人目。
殴り掛かってきた戦闘員の拳を最少の行動で避けて、膝カックンの要領で膝の裏に蹴りを入れ、その落ちた頭を腕部に装着されたアームカッターで切り裂いた。
二人目。
一人目を殺した瞬間に狙いを澄ませたかの様に刃で襲い掛かって来たが、その刃を脚部に装着されたフットカッターで切り裂くと怯んだのでその瞬間に腕を腹部に突っ込み、上部へ袈裟斬りにし真っ二つにした。
三人目。
二人目の死に様に狼狽えていた所を襲い掛かり、首筋にアームカッター押し当てて切り裂く。
血飛沫があたりに散らされた。
そうして四人目、五人目、六人目と順に殺してやる。段々と単純作業となっていくがその実、散らされた血飛沫が馬鹿にならない。暫くすれば最後ノ審判の最終決戦の様に血塗れになっていた。
『ヴア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!』
最終的には一人殺すのに1秒もいらない程に効率化されていった。
とは言え、まだメインディッシュが残っている。
『な、なんなのだ貴様は!!』
この銀ピカ野郎だ。
彼女の記憶を読み取らせてもらったが随分と舐めた真似しやがったようだな。
俺だってヒーローに憧れを持ってた身だ。正義感は当然ある。
女子供に手ェ出した上で騎士道を語るなんざ言語道断。騎士以前に男としてクズだ。
簡単に生首になれると思うなよ。
『死ねェェい!!!』
ナイト星人は剣を振り上げると、俺の頭に振り下ろしてくる。避けるのは簡単だ。
だが、良いだろう。お前の矜持に乗ってやる。
剣を両腕のアームカッターで受け止める。
ガキィィン!!
と鉄が跳ねる音が響く。
正しくそれは鍔迫り合いの体を成していた。
『ふははは!貴様の様な卑怯者でも戦いを判るとはな!力と力の拮抗!!これが戦いよ!!』
ああ、コイツは勘違いしている。
俺は左手を添えてその剣を
ガラスが割れるかの様な甲高い音が響く。
思わず唖然としたナイト星人の「は?」と言う声が響いた。
『僕はお前と戦う気なんてない。』
呟く様に俺は言った。
ちなみに俺の一人称は『俺』だ。決して『僕』などではない。
だが、今は成り切っている。成り切っているが故に歪みを残したくない。
『はっ、戦う気が無い?
ならば、貴様は我を殺す気が無いと?』
呆れる様にそう言うナイト星人が再び破壊した剣を再生し始めた。
そう言う能力か。
だが、もう意味がない。
『勘違いするな。これは戦いじゃない。
ザクッと。
次の瞬間には奴の両腕は切り落とされていた。
『ヌッ!!??』
『お前との力の拮抗なんてあり得ないんだ。だって……僕が出た時点でお前はもう、死んでるんだから…』
一度は矜持に乗ってやった。だが、これ以上乗ってやる必要もない。
だって、こいつも先程の戦闘員たちと同じ。
一撃で倒せる相手なのだから…
『バイオレント・パニッシュ』
捻ったハンドルが返ってくる。
心臓から熱い何かが押し上げてきた。
腕のアームカッターが畝り、飛び出した。明らかに先程よりカッターの長さが伸びている。
それを飛ぶ様に跳ねた一撃で
『ガッ!?』
首を切り裂いた。
文字通り、一撃で狩った。