個性『ウマ娘』でヒロアカ世界の最速を目指す 〜転生したらステータスが見えたので、限界突破してヒーローになります〜   作:雪乃 宿海

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続きました。
天馬VS爆豪です。


No.19

 常闇くんとの試合を終え、私は控え室でUIのステータス画面と睨み合っていた。

 

【体力:■■■■■■■□□□】

 

(……やっぱり、連戦でスタミナの回復が追いついてないか。まぁ許容範囲内か)

 

 『ウマ娘』の回復力は常人を凌駕しているが、それでも限界はある。

 特に、USJでの『サイレンススズカ』の継承、そして先ほどの『スペシャルウィーク』の継承と、短期間で燃費の悪いフルスロットルを連発しすぎた。

 息を吸い込むと、肺の奥が微かに熱を帯びているのがわかる。

 

 モニター越しに、準々決勝の第4試合と、準決勝の第1試合の結果が流れる。

 

 切島くんの『硬化』の限界を、容赦のない爆破の連打でこじ開けた爆豪勝己。

 飯田くんの『レシプロバースト』による超加速を、マフラーを凍らせることで完全に封殺した轟焦凍。

 

(……轟くんが、決勝進出)

 

 圧倒的だ。隙がない。

 だが、今の私が見据えるべきは、その前にそびえ立つ凶悪な壁だ。

 

『さァさァ! 息つく暇も与えねェぜ! 準決勝第2試合!!』

 

 プレゼント・マイク先生のシャウトが、スタジアムを震わせる。

 私は立ち上がり、軽くアキレス腱を伸ばしてゲートへと向かった。

 

『圧倒的戦闘センス! 隙を見せたら即爆死! ヒーロー科、爆豪勝己!!』

『対するは、圧倒的スピード! 彼女の背中を捕らえられるか!? ヒーロー科、駿河天馬!!』

 

 大歓声の中、私たちはフィールドの中央で対峙した。

 爆豪くんは、入場の時からずっと、獲物を狙う猛禽類のような目で私を睨みつけている。

 両手のひらから、チリチリと小さな爆破の火花が散っていた。

 

「……言ったよなぁ。全力で来いって」

「挨拶代わりから注文が多いね。……でも、出し惜しみするつもりはないよ」

 

 私は腰を落とし、地を蹴る構えを取る。

 相手は爆豪勝己。

 機動力、攻撃力、そして何よりセンスがズバ抜けている。

 中途半端な様子見は、即座に場外()に直結する。

 

(開幕トップギア(ぶっぱ)で叩き潰す!)

(まずは様子見ッ!)

 

『START!!!』

 

 開始のコール。

 私は即座にスキルを起動し、地面を蹴ろうとした。

 

 【スキル発動:『集中力』】

 ――が。

 

「死ねェッ!!」

 

 爆豪くんが動いたのは、私に向かってではない。

 彼自身の足元の地面に向けて、全力の爆破を叩き込んだのだ。

 

 ドゴオォォォォン!!!

 

「なっ……!?」

 

 フィールドのコンクリートが粉砕され、凄まじい土煙と瓦礫が巻き上がる。

 一瞬にして、私の目の前のコースが「クレーターだらけの悪路」へと変貌した。

 

「馬は足場が悪ィと走れねェだろォが!!」

「……ッ、この戦闘狂(バカ)!」

 

 ただキレているだけじゃない。私の「直線での加速」という最大の武器を、フィールドを破壊することで物理的に封じてきたのだ。

 崩れた足場に足を取られ、私の初速がわずかに鈍る。

 

 その一瞬の隙。

 土煙を突き破り、爆風を推進力にして宙を舞った爆豪くんが、私の頭上から強襲してきた。

 

「上……!」

「隙だらけだぜ馬女!!」

 

 ドガァァン!!

 

 顔面すれすれでの爆発。

 私は間一髪でバックステップを踏むが、爆風に煽られて姿勢が崩れる。

 そこへ追撃の右フック、さらに左手からの至近距離爆破!

 

(速い! 動きに無駄がない!)

 

 私は腕をクロスして爆炎をガードする。

 ジリジリと腕が焼ける匂い。痛みが脳を刺激する。

 この男、空中にいるのに爆破の反動を使って、まるで地面にいるかのように自在に軌道を変えてくる!

 

「どうしたァ! テメェの自慢の脚は逃げるためだけか!!」

「うるさいっ!!」

 

 私は瓦礫を蹴り、強引に前へ出る。

 爆破の雨を掻き分け、彼の懐へ。

 右ストレート。

 だが、彼は私の拳を躱すどころか、左手でいなすと同時に、右手のひらを私の腹部に密着させた。

 

「……しまっ」

「甘ェんだよ!!」

 

 ドバァァァン!!

 

「がはっ……!?」

 

 至近距離からの直撃。

 私は吹き飛ばされ、フィールドの端までゴロゴロと転がった。

 胃袋がひっくり返りそうになる。咳き込むと、口の中に血の味が広がった。

 

『おーっと駿河、爆豪の猛攻に防戦一方だァ!!』

 

「……ハァ、ハァ」

 

 私は膝をつき、睨み上げる。

 爆豪くんは着地し、苛立たしげに舌打ちをした。

 

「……おい。舐めてんのか」

「……」

「出し惜しみしてんじゃねぇ! 体力温存のつもりか?! テメェはここで負けんだよ! だからそんなクソの役にも立たねぇもんさっさと捨てて全力で来い! ゴラァ!!!」

 

 怒号がスタジアムに響き渡る。

 彼は本気で怒っていた。私がこの後の決勝を見据えて、奥の手である『継承』を温存し、スタミナを節約しようとしていることに。

 自分と対等に殺し合う姿勢を見せないことに。

 

「……ほんと、ムカつく」

 

 私は口元の血を手の甲で拭い、ゆっくりと立ち上がった。

 スタミナの消費を抑えようなんて、ケチな考えは捨てる。

 この男を黙らせるには、正面から、力でねじ伏せるしかない。

 

「出し惜しみしてたわけじゃない。……ただ、君のペースに合わせるのが癪だっただけ!」

 

 私は深く息を吸い込み、魂の底にあるゲートを開いた。

 

「文句言えないくらい、ボコボコにしてあげる!!」

 

 カッ!!!!

 

 私を包み込む、青白い光の奔流。

 体操服が光の粒子となり、白と紫の勝負服へと再構成されていく。

 

 【継承:スペシャルウィーク】

 

「……ハッ。やっとかよ」

 

 爆豪くんの顔に、底知れぬ歓喜の笑みが浮かんだ。

 待っていたと言わんばかりに、彼もまた両手の爆力を高める。

 

「行くよ!!」

「死ねェッ!!」

 

 フィールドの中央で、再び激突する。

 今度は負けない。

 彼の爆破を掻い潜り、私は彼の顎目掛けて蹴りを放つ。

 爆豪くんはそれを腕でガードするが、総大将のパワーが乗った一撃は、彼の身体を後方へ弾き飛ばした。

 

「ぐっ……おもッ……!」

「どう!? 私の全開は!」

「……最高にブッ殺し甲斐があるぜ!!」

 

 吹き飛びながらも、彼は空中で体勢を立て直し、私に向けて両手を突き出した。

 ただの爆破じゃない。光が、一点に収束していく。

 

「目ェ、良いんだろ? 馬女」

 

 嫌な予感がした。

 ナガンさんの石礫を避けた時のような、本能的な危機感。

 

「『閃光弾(スタン・グレネード)』!!」

 

 ピカーーーーッ!!!!

 

「なっ……!?」

 

 爆発ではなく、視界を完全に奪う強烈な閃光。

 聴覚と視覚が鋭敏なウマ娘にとって、この至近距離での閃光と轟音は最悪のデバフだった。

 目の前が真っ白になり、平衡感覚が狂う。

 

「もらったァ!!」

 

 見えない。

 けれど、右側から迫る凄まじい殺気と熱!

 

(目に、頼るな……!!)

 

 私は目を固く閉じ、UIの感覚と、肌を刺す風圧だけを頼りに身体を捻った。

 

 【スキル発動:『危険回避』】

 

「チッ、避けるかよ!!」

「まだまだぁっ!!」

 

 私は見えないまま、気配に向けて裏拳を放つ。

 それが爆豪くんの脇腹にクリーンヒットし、彼の「ぐふっ」というくぐもった声が聞こえた。

 だが、彼もまた私の足首を掴み、そのまま至近距離で爆破を放つ。

 

「きゃあっ!?」

 

 互いにダメージを負いながら、距離が離れる。

 視界が徐々に回復してきた時、私は息を呑んだ。

 

 爆豪くんは、空高く舞い上がっていた。

 両手で円を描くように爆破を繰り返し、空中で自らを回転させている。

 竜巻のように周囲の酸素を巻き込みながら、その威力を極限まで高めていく大技の予備動作。

 

(アレは……ヤバい!)

 

 直撃すれば、間違いなく意識が飛ぶ。

 でも、逃げ場はない。スタジアム全体を巻き込むほどの広範囲攻撃だ。

 

「これで……終わりだァァァ!!」

 

 弾丸のように、彼が私目掛けて突っ込んでくる。

 

 『榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)』!!!

 

 迫り来る、死の暴風。

 なら、私の選択肢は一つしかない。

 逃げない。

 その暴風を、さらに上回る速度とパワーで、真正面からぶち抜く!!

 

「ナメんなあああああッ!!」

 

 【レアスキル発動:『ロケットスタート』】

 【スキル発動:『直線巧者』】

 【スキル発動:『末脚』】

 

 そして。

 継承した魂が、私に力をくれる。

 

 【固有スキル発動:『シューティングスター』】

 

「うおおおおおおおおっ!!!!」

 

 私は紫色の流星となって、天空から降り注ぐ爆炎の竜巻へと真っ向から飛び込んだ。

 爆炎と、青白い光が空中で激突する。

 

「消し飛べェェェェ!!!」

「貫けェェェェ!!!」

 

 互いの意地とプライドが交差する。

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!

 

 スタジアム全体を揺るがす、今大会最大の大爆発が巻き起こった。

 閃光と爆煙が、私たちの姿を完全に飲み込んでいく――。

 

 大技と大技の激突。

 その閃光と爆炎の中心で、私の意識は極限まで研ぎ澄まされ、世界がスローモーションに感じられていた。

 

(重い……! 痛い!)

 

 私の『シューティングスター』の突進力と、爆豪くんの『榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)』の爆発力。

 真っ向から衝突した瞬間、私の「賢さ」が冷酷な計算結果を弾き出した。

 

(……噓でしょ!?力負けしてる!)

 

 スペシャルウィークの圧倒的なパワーをもってしても、回転と遠心力、そして何より爆発という化学反応の威力を極限まで圧縮したあの大技には、正面からでは勝てない。

 意地を張って押し合えば、間違いなく私が場外へ弾き出される。

 

(なら……!)

 

 私は咄嗟に攻撃のベクトルをずらした。

 真っ向勝負を捨て、即座に両腕をクロスして防御姿勢へ切り替える。

 全身を焼くような爆炎のダメージを、スペちゃんの『根性』だけで強引に耐え抜く。

 そして、爆風の威力を利用してあえて自ら吹き飛ばされる瞬間――すれ違いざまに、私の体を押し潰そうとしていた爆豪くんの胴体へ、渾身の回し蹴りを叩き込んだ。

 

「がはっ……!?」

 

 爆豪くんの目が見開かれる。

 私の蹴りをモロに食らった彼は、技の勢いそのままに、私とは逆方向へと弾き飛ばされた。

 

 そして私もまた、ハウザーインパクトの凄まじい余波を受け、暴風の葉っぱのように吹き飛んだ。

 

「ぐっ、うおおおおおおッ!!」

 

 私は空中で体勢を立て直し、地面に両足の蹄鉄を思い切り突き立てる。

 ガガガガガガッ!! とコンクリートを削りながら後退していく。

 止まれ、止まれ、止まれッ!

 足の筋肉が悲鳴を上げる。限界を超えた負荷に膝が砕けそうになるが、スペちゃんの不屈の意志が私を支える。

 

 ピタリ、と。

 靴の踵が、場外ラインの白線をわずかに踏んだところで、私の体は停止した。

 

「……ハァッ、ハァッ……!」

 

 砂煙が晴れていく。

 反対側を見ると、爆豪くんもまた、場外ラインの数センチ手前で踏みとどまっていた。

 私の蹴りで吹き飛ばされ、そのまま場外へ落ちる軌道だったはずだ。

 だが彼は、空中で咄嗟に自身の背後へ向けて爆発を起こし、その反動で強引にブレーキをかけていたのだ。

 

『りょ、両者ァァァ!! 場外ラインぎりぎりで踏みとどまったァァ!!』

 

 プレゼント・マイク先生の絶叫に、スタジアムが割れんばかりの歓声に包まれる。

 しかし、フィールドの上の私たちに、その声は届いていない。

 

「……チッ。あの土壇場で防御に切り替えて、カウンター合わせやがったか。だが今のはテメェの負けだ。テメェは俺の榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)を防ぐ術がねぇ」

 

 爆豪くんが脇腹を押さえながら、憎々しげに私を睨む。

 彼もまた、私の蹴りである程度ダメージを負っているはずだ。

 

「……そうだよ。でもさすがだね。あそこから落ちないなんてさ」

「ったりめぇだ!クソが!」

 

 私は荒い息を吐きながら、UIのステータス画面を確認した。

 結構食らったが余裕があるように振る舞う。

 そして何より、先ほどの激突で一つの事実を悟っていた。

 

(スペちゃんのパワーでも、あの大技には押し負ける……)

 

 真正面からの殴り合いでは、分が悪い。

 私が勝つためのピースは、パワーじゃない。

 彼が反応すらできない、絶対的な『スピード』だ。

 

「……変えるよ」

 

 私は深く息を吸い込み、意識の奥底へアクセスする。

 総大将の力を手放し、代わりに呼び覚ますのは、異次元の逃亡者の魂。

 

 ――お願い、スズカさん!

 

 ふわり、と私の体を包む光の色が変わった。

 白と紫の勝負服が光の粒子となり、流線型の緑と白の勝負服へと再構成される。

 

 【継承:サイレンススズカ】

 

「……あ?」

 

 爆豪くんの眉がピクリと動いた。

 USJで脳無を翻弄した、あの姿。

 

「また逃げ回る気か、馬女」

 

 爆豪くんが、両手に再び爆破の火花を散らしながら低い声で威嚇する。

 私は重心を限界まで低く落とし、彼を見据えた。

 

「逃げるんじゃないよ。……ただ、君の爆発が届くより速く、君を沈めるだけ!」

 

 私は沸き上がる闘志を全てを、両脚の「速度」へと変換する。

 爆豪くんもまた、両手に最大火力の火花を散らし、私を見据えて獰猛に笑った。

 

 互いに大技を食らったが体力自体はまだ多少余裕がある。

 けれど、私たちの胸の奥底で燃え盛る闘志は、衰えず未だ心をメラメラと燃やしている。

 

 自然と、私の口角が吊り上がる。

 目の前の暴君もまた、最高に楽しそうに牙を剥き出しにして笑っていた。

 

「さぁ、続きしようか」

「ケッ!続かねぇよ!秒殺だッ!」




作者「どうしたものか」
天馬「この戦いの勝敗まだ決めてないの?」
作者「いや、それは決めてる」
天馬「じゃあ、何?」
作者「天馬がカップリングの種を蒔きまくってることに気づいた自分に驚いたんだよね」
飯・爆・轟・常「「「「!?」」」」
天馬「他責ッ!!!」
続く?
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