ある夜、野球観戦に出かけた二人。
帰り道で初めてレオンのアパートに誘われたクレアは……
二人の関係を、さらに一歩、前へと進めていくロマンティックな夜です。
レオンがバイオハザード2のあと、そのまま警察官をやっている世界線。女子大生クレアとの甘々、アメリカ青春ドラマを目指しました。
クリスのアパートメントのリビングは静寂と緊張感に包まれている。
光が窓から差し込み、テーブルの上のマグカップがぼんやりと光っている。
クリスはソファに深く腰掛け、腕を組みながらレオンをじっと見つめていた。
レオンは緊張で少し落ち着かない様子で、指を組み合わせて膝の上に置いている。
「……で?話ってのは、クレアのことか?」
クリスは声を低く、簡潔に問いかけた。
その声には、少しの皮肉と兄としての警戒心が混じっている。
レオンはゆっくりと息を吸い込み、言葉を選びながら答えた。
「はい。クレアと…付き合ってます。俺は…彼女を本当に大事に思ってます」
「それは分かってる」
クリスは鼻先に力を入れて笑みを浮かべた。
「でもな、口で言うのは簡単だ。実際にお前はどれだけクレアのことを守れる?」
レオンは少し目を伏せたが、すぐに視線を戻した。
「まだ…まだ何も証明できてないと思います。俺はまだまだ経験も浅い。だからこそ、真剣に向き合いたい」
クリスはソファから身を乗り出し、鋭く言った。
「このラクーンシティでバイオテロが起きた時…お前、何人も人が亡くなるのを見たんだろ?そのたびに何を感じて、どうした?」
「……正直、悔しくてたまらない部分もあります。自分がいかに非力だったか」
レオンの声は小さく、しかし真剣だった。
「だけど、クレアがいると強くなれると感じるんです。彼女の笑顔を守りたい」
クリスはしばらく黙り、そして深いため息をついた。
クリスはゆったりとソファに身を沈め、少し遠くを見るように視線を泳がせた。
「レオン、お前に話しておきたいことがあるんだ」
レオンは真剣な表情で頷き、クリスの言葉に耳を傾ける。
「俺がまだ若造だった頃、ラクーンシティのあの洋館で起きた事件がある」
クリスは語り始めた。
「あの時は、今と何もかもが違った。情報も武器も乏しく、手探りの中で進むしかなかった。自分が何のために戦っているのか見失いかけたこともあった」
彼の声には、当時の緊張と重圧がにじんでいる。
「でもな、そこで気づいたんだ。戦いは銃弾だけじゃない。恐怖や絶望に負けずに、自分を見失わないこと。それが本当の強さだって」
レオンは黙って聞き入りながら、クリスの言葉を胸に刻む。
「俺は何度もくじけそうになった。でも、俺の背後には大切な人たちがいた。守るべきものがあったから、なんとか耐えられた」
クリスはレオンの目をじっと見つめた。
「世の中は簡単じゃない。守るってのは銃を撃つことだけじゃない。時には諦めも、我慢も必要だ」
「それでも…俺はクレアだけは諦めたくない。他の全てを諦めても」
レオンは拳を固く握りしめ、声を震わせた。
「クレアを悲しませたくないし、そのためには何でもしたい」
クリスの目が一瞬だけやわらいだ。
「そうか。なら、俺はお前を試す。…だが、何があってもクレアを泣かせるなよ」
「それだけは、絶対に」
レオンは誓うように頷いた。
二人の間に沈黙が流れた。
それがお互いに対する信頼の証だった。
クリスは最後に苦笑しながら言った。
「まあ、気負うな。俺も昔は若かった。…兄貴としてお前を認めるよ」
レオンは安堵の笑みを浮かべ、少しだけ肩の力が抜けた。
[newpage]
今日は楽しみにしていた野球のナイターを見に行く日だ。
ラクーンシティ·ラプターズ。
ラクーンシティの住民が愛してやまない 地元の野球チーム。
運よくチケットが取れたレオンは『ラクーンシティの市民としては、君に絶対に見て欲しいんだ』と言ってクレアを誘ったのだ。
夕暮れの空を背に、レオンとクレアはスタジアムの大きなゲートをくぐった。
周囲には興奮した観客のざわめきが満ち、太陽の残光が巨大な照明塔をオレンジ色に染めている。
「ここ、いつ来ても本当にすごいな……」
レオンは感嘆の声を漏らす。
クレアも笑顔で頷きながら、つないでいた レオンの手を手をしっかり握り返した。
「うん、ラクーンシティの誇りみたいね、ラプターズ」
試合開始まで少し時間があったので、クレアはグッズ売り場へと足を運んだ。
店内には色とりどりのキャップやTシャツ、フェイスペイントのコーナーが並び、ファンたちの熱気に包まれている。
「これ、似合うかな?」
クレアは鮮やかなネイビーブルーのラプターズTシャツを手に取り鏡の前で当ててみた。
隣で売り子のお姉さんが微笑んだ。
「その色、よくお似合いですよ。今の試合にピッタリ!」
クレアは嬉しそうにシャツを買い、すぐに着替えブースへ向かった。
Tシャツに袖を通すと、不思議と気持ちが引き締まった。
「これで私も立派なファンね」
心の中で呟き、レオンの待つ座席へ戻った。
一方レオンはスタジアム内の屋台へ向かっていた。
辺りはもうすっかりナイターの灯りで照らされ、観客の笑い声や歓声が響いている。
「ホットドッグか……いや、今日はポップコーンとコークだな」
レオンは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
カウンターには山盛りのポップコーンと冷えたビールやコーラの瓶が並び、隣には他のファンたちが列を作っている。
「コーク2本とポップコーンください」
レオンが注文すると、店員は笑顔で手早く袋と瓶を手渡した。
手に持ったポップコーンの袋と冷えたコーク瓶が、今日の特別な夜を実感させる。
ふと後ろから声が聞こえる。
「ねえ レオン、どう、似合う?」
ネイビーのラプターズ T シャツを着た クレアが笑顔で立っている。
レオンは目を奪われた。
『可愛い……いや、子供扱いしてるようで 失礼かな?でも可愛い……』
無言になったレオンに目をぱちくりさせるクレアだが、彼の顔が徐々に赤く染まっていくのを見て満足げに頷くいた。
レオンとクレアは人波をくぐり抜けてゲートをくぐり、チケットを手に座席へと向かう。
「今日の席、いい場所だな」
レオンが微笑みながらチケットを見せると、クレアも目を輝かせて頷いた。
スタジアムの空気は活気に溢れている。
屋台からはホットドッグやナチョスの香りが漂い、子供たちの歓声がこだまする。
「見て、あそこにいるチアのチーム、地元の女子高生かしら?」
クレアが指差す先で、若くて元気いっぱいのチアチームが鮮やかな衣装で踊り、観客の声援を浴びている。
その中に、一際目を引く金髪の美少女がいる。
チアリーダー、いわゆるところの学校のクイーン·ビーか。
ラプターズのロゴ入りTシャツをラフに着こなし、笑顔を振りまきながら一生懸命パフォーマンスを続けていた。
観客席の近くには、同じラプターズTシャツを着た男子グループが集まっている。
彼らの中で、一人のハンサムな青年が、金髪のチアリーダーに熱い歓声を送っていた。彼女のボーイフレンドらしい。
「チェルシー、マイハニー。最高だ!君はアメリカ 1のクイーンビーだ!」
「おいアル!、うちょっと声出せよ!聞こえてねえみたいだぞ。チェルシーのやつ 他の男の方見てる!」
グループ内の一人がからかうように声をかける。
「うるせえ、黙ってろケビン!ナードのくせに気持ち悪い。」
アルが負けじと返す。
「でもさ、見てみろよ、チェルシーのパフォーマンス!ピラミッドの下にいた方がいいんじゃねえの?何であいつがスクールカーストの上にいるんだよ!」
別の男子がアルの肩を叩きながら、さらにからかう。
彼らは、どうやらアルが美少女チェルシーのボーイフレンドなのが相当気に食わないらしい。
ついに怒りが爆発したアルと他のグループの少年がつかみ合いを始めた。
口論がエスカレートし、他のメンバーも巻き込んで言い合いに発展し、周囲の観客の視線が少しずつ集まり始めた。
その騒ぎに気づいたレオンが、すっと彼らの間に入る。
「おい、みんな、やめろ。ここは試合を楽しむ場所だろ?」
レオンの落ち着いた声が、周囲のざわめきを少しずつ静めていった。
「君も ガールフレンドにみっともないところを見せたくないだろう?君のガールフレンドは最高に魅力的だ。君もそれに似合う男になれ」
レオンが笑顔で アルの肩を叩く。
アルも、少し気まずそうに顔を伏せた。
「すまなかった。つい熱くなってしまって」
レオンは軽くうなずきながら、アルに向かって言った。
「アル、ガールフレンドの応援もいいけど、仲間とみんなで楽しむことを忘れるなよ」
男子たちは互いに顔を見合わせ、やがて笑いながら座席に着いた。
クレアは、ちょっと離れたところからレオンの姿をじっと見つめていた。
彼が諍いを静かに収め、場を落ち着かせるその様子はいつもとは少し違って見えた。
ただの若い警官じゃない。
彼の声には、頼もしさと優しさが混じっていて、みんなが彼の言葉に耳を傾むけるのも当然な気がした。
クレアの胸にじんわりと温かいものが広がる。
「レオン……やっぱり、あなたってすごい人ね」
心の中でそっとつぶやきながら、彼女は微笑んだ。
レオンがこちらを振り返り、優しい笑みを向ける。
その一瞬、クレアの胸は強く高鳴った。
[newpage]
試合開始のホイッスルが鳴り響くと、ラクーンシティ・ラプターズの選手たちはグラウンドに集中した。
試合開始だ。
ピッチャーが全力でボールを投げる。
バッターが素早くバットを振り抜き、ボールはライト方向へと弧を描いた。
観客席からは歓声が上がり、レオンとクレアも一緒に拍手を送る。
両チームの攻防は白熱し、ピッチャーの投球にバッターの打撃が応じ、守備陣も鋭いプレーを見せる。
何度もランナーが塁を駆け抜け、スタジアムは一体感に包まれた。
やがて前半が終わり、試合は休憩時間へ。
フィールドには、新たなパフォーマンスの幕が上がった。
ステージに現れたのは、キラキラと輝く大胆な衣装をまとった大人のプロチアリーディングチーム。
彼女たちの動きは滑らかで洗練されていて、華やかな笑顔が観客の視線を一気に引き寄せる。
その中でも、ひときわセクシーな女性がレオンの座る席をじっと見つめて、笑って手を振る。
「そこのハンサムなお兄さん!試合が終わったら会いましょうね」
その言葉に、レオンは少し照れくさそうに笑い、クレアは隣でムッとした表情を見せた。
しかし、次の瞬間、スタジアムの大きな電光掲示板に「キスチャレンジ」の文字が映し出される。
司会者の声が響く。
「おっと!キス チャレンジの開始です!今から画面に映ったカップルは、キスをしてください!」
次の瞬間、並んで座っていたレオンとクレアが電光掲示板に大映しされ、周囲の歓声が一気に高まる。
レオンは急な大事件に目を大きく見開き、硬直していた。
周囲からは歓声と笑い声が飛び交い、視線が自分たちに集中しているのを感じて、心臓の鼓動が速くなる。
しかし、隣にいるクレアは違った。
彼女の瞳はキラリと光り、先ほどレオンに微笑みかけたセクシーなチアガールの方へ、まるで「これは私の彼よ」と言わんばかりに積極的にレオンと唇を重ねた。
そのキスは短くても力強く、周囲のざわめきを掻き消すほどの確かなものだった。
レオンも徐々に顔を赤らめながらも、クレアのリードに身を任せて、自然とキスに応えた。
セクシーなチアガールはムッとした表情でこちらを見つめていたが、クレアの強さを目の当たりにして、すぐに笑みを引っ込めた。
周囲の観客からは拍手と歓声があがり、二人の間には確かな絆のようなものが生まれた夜だった。
休憩が終了し、選手たちがグラウンドに姿を見せると歓声がスタジアム中に響き渡る。
風が心地よく吹き抜け、夜空に星が瞬き始めた。
[newpage]
試合終了のアナウンスがスタジアム内に響き渡り、観客たちが続々と席を立ち始めた。
クレアは着替えを終えて、少し汗ばんだ髪をかきあげながらレオンのもとへと戻ってくる。
その時、視界の隅に先ほどのセクシーなチアガールが、挑発的な笑顔でレオンに近づいているのが見えた。
彼女は軽く腕を絡めて、レオンに何か楽しそうに話しかけている。
クレアは一瞬、目をぱちくりさせてから、むむっと唇を引き絞る。
2人に駆け寄ると、自分の腕を素早くレオンの腕に絡めてグイッと引いた。
「お待たせ!そろそろ帰りましょう。今日はありがとう、 すごく楽しかった……」
レオンは顔を赤らめながらも、照れ笑いを浮かべてクレアの手を握り返す。
「クレア。喜んでくれて嬉しいよ」
チアガールはそれを見て、軽く肩をすくめて、
「やれやれ、負けたわね」
と冗談めかして言った。
帰り道の車内は夜風がそっと窓から流れ込み、街の灯りがふたりの顔を淡く照らしていた。
クレアは窓の外をぼんやり見つめながら、小さくため息をつく。
「さっきは、ありがとう」
レオンはハンドルを握ったまま、そっと彼女の方を見る。
「悪いな、あの時はちょっと動揺しちゃって……でも、リードしてくれて嬉しいよ」
クレアはゆっくりと微笑んで、視線をレオンに戻した。
「あなたがそう言ってくれるなら、私も嬉しい」
レオンは静かに息を吸い込み、決心したように言った。
「……あのもし、よかったら……本当に君が良かったらでいいから……このあと俺の部屋で少しだけコーヒーでもどう?」
レオンのその一言にクレアの顔がみるみる赤くなり、期待を隠せない目で彼を見つめる。
「うん……じゃあ少しだけ」
レオンは微笑み、ハンドルを切って路地へと車を進めた。
夜の静けさがふたりを包み込む中で、わずかな距離がまた少しだけ縮まっていった。
レオンのアパートメントは、控えめながらも落ち着いたインテリアでまとめられていた。
ふたりはソファに腰を下ろし、レオンが手際よく淹れたコーヒーを静かに飲み始める。
カップから立ちのぼる湯気が、部屋の中にほんのりと温かさを広げる。
クレアの指先がそっとカップの縁に触れ、その動きにレオンの視線が自然と引き寄せられた。
ふたりの距離は最初こそわずかに緊張が漂っていたが、言葉を交わすうちに徐々に柔らかくなっていく。
レオンが照れくさそうに笑いながら、些細な日常の話題をぽつりぽつりと口にするたび、クレアも少しずつ心をほどいていった。
「……そういえば、俺、君の笑い声、ほんとに好きだよ。こっちまで嬉しくなる。」
その言葉に、クレアは頬を染めて軽く笑った。
目が合った瞬間、空気が静かに張り詰めて、呼吸が少しだけ重くなるのを二人とも感じた。
ほんのわずかな沈黙の後、クレアがゆっくりとレオンの方へ身体を傾けた。
心臓の鼓動が、ふたりの間の静かな空気を震わせる。
「……レオン」
そのさりげない距離感に、レオンの心臓が強く鼓動を打つ。
彼は視線を落とし、ゆっくりと顔を上げて、クレアの目を見つめ返した。
言葉はなくても伝わる想い。
自然に彼の手がクレアの手を包み込み、指先が絡まる。
そのまま二人は少しずつ距離を詰め、レオンの唇がそっとクレアの唇に触れた。
優しく、確かめ合うように。
クレアの体温が伝わり、甘く濃密な時間がゆっくりと流れる。
しかし、彼はそっとクレアの背中から手を離し、唇もふわりと引いた。
息を整えながら、震える声で言った。
「……ごめん、俺、まだ……」
クレアは戸惑いの色を浮かべて見つめ返す。
「どうして?」
レオンはまっすぐに彼女の瞳を見つめ、誠実に答えた。
「君を大事にしたいんだ。急ぎすぎたら後悔することになるかもしれない。だから、ここで止めておきたい」
静かな部屋の中、切なさと優しさが交錯し、クレアはゆっくり頷いてレオンの手を握り返した。
「そうね、焦っちゃダメね。私たち、始まったばかりなんだもの」
視線が重なり合う。
その瞬間、二人の間に新たな信頼と絆が静かに芽生えたのだった。
[newpage]
クレアがクリスのアパートメントのドアを静かに開けると、いつもは起きて待っていてくれる兄の姿はなかった。
リビングは薄暗く、テレビの明かりも消えている。
「……寝ちゃったのね」
ほっと胸をなでおろしながら、ゆっくりと部屋へ向かう。
足音を忍ばせ、寝室のドアに近づくと、ふとクリスの部屋のベッドの中から低く、しかし確かな声が聞こえた。
「今日の報告は、明日ちゃんとしてもらうからな」
クレアは思わず肩をすくめ、頭を軽く抱えた。
「ああ、そうね……わかったわよ、クリス」
小さくため息をつきながらも、彼女は心のどこかでこのやり取りを愛おしく感じていた。
そして、静かに部屋の明かりを消してベッドへと向かった。