ラクーンシティ警察署の廊下を、レオン・S・ケネディは足早に歩いていた。
バイオハザード後の復興作業は途方もなく、新米警官の彼には、文字通り山のような書類仕事と、時折舞い込む現場への出動が課せられていた。
署内には、彼を「(あの事件の)新人」と見る視線がまだ残っていたが、レオンは持ち前の真面目さと粘り強さで、日々職務に励んでいた。
その日、レオンは先輩警官であるクリス・レッドフィールドに報告書を提出するため、彼のデスクへ向かっていた。
クリスはバイオハザードの英雄であり、レオンにとっては尊敬すべき存在だ。
彼のデスクに近づくと、なにやら楽しげな話し声が聞こえてくる。
「それでね、クリス。南極は本当にすごかったんだ!ペンギンがね、もう……」
懐かしい声に、レオンの足が止まる。
デスクの向こう側、クリスと向かい合うように座っていたのは、紛れもないクレア・レッドフィールドだった。
パンデミックの地獄を共に生き抜いた、あのクレアだ。
彼女は以前よりも少し髪が伸び、カジュアルな服装ではあったが、はつらつとした笑顔はあの頃と何も変わっていなかった。
クレアがレオンの存在に気づき、ハッと目を見開く。
「レオン!」
レオンもまた、彼女の変わらない瞳に吸い込まれるように見つめ返した。
「クレア……本当に、君なのか?」
クリスがにこやかに二人の間を取り持つ。
「なんだ、レオン。まだクレアが来てるって言ってなかったか?」
レオンは呆れたようにクリスを見たが、すぐに視線はクレアに戻った。
まさかこんな形で、しかもクリスの職場で再会するとは。
驚きと、そして微かな安堵が彼の胸に広がる。
クレアもまた、再会を喜んでいるようだった。
「ごめんね、レオン。クリスに会いに来たんだけど、まさかここでレオンに会えるなんて!」
クレアは嬉しそうに立ち上がり、レオンに歩み寄る。
あの悪夢のような日々から、少しずつ日常を取り戻しつつある世界で、二人の運命は再び交錯し始めた。
それは、まだ始まったばかりの、静かな恋の予感だった。