あるアメリカンポリスのラブストーリー   作:masayumi

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レオンの部屋まで行ったことがクリスにバレた クレアは、クリスからお説教を受けます。レオンとクレアは初めてのドライブインシアターでのデートでハプニングが起きます。甘酸っぱい アメリカン青春 ドラマ風、ゾンビ事件が解決して平和になった パラレルワールドのラクーンシティの物語です。


星降るドライブイン The starlite drive_in.

「で? 昨日はどこに行ってきたんだ、クレア?」

 

「ただのデートよ、クリス。野球見て、夕食して……普通のやつ」

 

「……それだけか?」

 

クレアはソファにぼんと乗り、兄のじっとした視線にため息をつく。

 

「しつこいなぁ。レオンとは普通に楽しく過ごしただけ。クリスが心配するようなこと、ないから」

 

「……キスはしたのか?」

 

唐突な問いに、クレアは思わず顔を赤らめる。

 

「……っ! し……したけど!」

 

「したのかよ!」

 

思った通りの反応に、クレアは額に手を当てた。

 

「大げさよ……恋人なんだから、当たり前でしょ!」

 

「妹がそういう段階に入ったってことがな……兄としては落ち着かないんだ」

 

「心配性すぎ! しかもレオンはクリスの後輩なんでしょ? 変なことするわけないじゃない」

 

一瞬言葉を飲み込んだクレア。

 

レオンの部屋に行ったことまで言えば、クリスが確実に取り乱す。

そう確信して、口を閉ざす。

 

だが兄の鋭い勘が働く。

 

「……おい。なんか隠してないか?」

 

「な、何も隠してないってば!」

 

「怪しいな……まさか、レオンの部屋に行ったとか……」

 

「コ……コーヒー飲んだだけよ!」

 

「やっぱり行ったのか!」

 

「だから! 本当にそれだけ! コーヒー飲んで話して帰ってきただけ! 清いにもほどがあるでしょ!」

 

そんなクレアに対して、クリスの目がキラリと光る。

 

「本当に本当にそれだけか…?まさかセッ…」

 

「してないってば!サイテー!それ、妹に対して 聞くこと?!」

 

クレアは真っ赤になって叫ぶ。

 

「クレア……兄さんの目をよく見ろ…。もう一度聞く。まさか レオンと……」

 

「だからしてない!しそうになったけど…未遂よ!」

 

クリスがブフォッ!と吹き出して立ち上がる。

 

「やっぱり!!お前何やってんだ、独身の男の部屋に行ってそんなことを!それに レオンのヤツめ……何がコーヒーだ…!」

 

「だから未遂 だってば!それに私19歳よ……。もう子供じゃないって!」

 

「アメリカでは21歳までは子供だ!それに 俺からしたら、お前は永遠に子供だ…!」

 

クレアと睨み合うクリスだったが、やがてしばらく沈黙した後、眉間を押さえながらため息をつく。

 

「……レオンに釘は刺してある。だが……お前のことは俺が一番わかってる。突っ走るなよ」

 

「だから子供扱いしないで。私は自分でちゃんと考えてる」

 

クレアはソファに座り込み、頬を膨らませてテレビをつける。

クリスはその横顔を見て、やれやれと肩を落とす。

 

[newpage]

 

 

午前中の署内。書類整理をしていたレオンが、背後から声をかけられる。

 

「レオン。ちょっと来い」

 

緊張感のある低い声。

リクリとして振り向いたら、やはり クリス・レッドフィールド、愛する クレアの兄がそこに仁王立ちしていた。

 

2人は署の廊下を抜け、人気のない会議室に入る。ドアが閉まった瞬間、空気がさらに重くなる。

 

「……なんでしょうか、クリス先輩」

 

レオンは唇を噛みしめ、しかし クリスの顔をまっすぐに見る。

 

「昨日、クレアがお前の部屋に行ったそうだな」

 

レオンの表情がわずかに硬くなる。

だが視線は逸らさず、真っ直ぐに返す。

 

「はい。……コーヒーを飲んだだけです。何もしていません」

 

「……本当か?」

 

「ええ。俺は彼女を軽んじるようなことは絶対にしません」

 

しばしの沈黙。

クリスは机に手を置き、低い声で続けた。

 

「レオン。お前が真面目なのはわかってる。警官としての仕事ぶりも、俺は信頼してる。だが妹のことは別だ。クレアは……俺にとって一番大切な家族だ」

 

「わかっています。俺にとっても、クレアは……守りたい人です」

 

一瞬だけ、クリスの眉が動く。

レオンの目は、嘘や冗談ではなく、本気の光を帯びている。

 

「……そうか。ならいい。だが忘れるな。もしクレアを泣かせたら……俺はお前を後輩としてじゃなく、男として叩きのめす」

 

「……心配しないでください。俺は彼女を泣かせません。誓います」

 

しばらく向き合った後、クリスは鼻を鳴らし、踵を返す。

 

「……まったく。妹を任せるってのは、兄貴にとって一番難しい仕事だな」

 

去っていくクリスの背中を見ながら、レオンは深く息をつき、拳を軽く握り締める。

 

「彼女を泣かせない」

 

その言葉が、心に重く沈み込んでいた。

 

[newpage]

 

夕食後のリビング。

テレビをつけてくつろいでいたクリスの前に、コーヒーカップを手にしたクレアがどっかりと腰を下ろす。

 

「今日一日で、何をしたのか聞かせてくれる」

 

クレアがソファに座ってクリスを見つめる。

 

「……いや、今日、署でレオンに会った」

 

「……また!彼に何したの?」

 

クレアは怒りを潜めた声で答える。

 

「別に何も。ちょっと男同士の話をしただけだ」

 

「どうせ、泣かせたら承知しないとか言ったんでしょ?」

 

図星を突かれ、クリスは言葉に詰まる。

 

「……まあ、似たようなことは言った」

 

「やっぱり言ったのね!兄さん、私の彼氏に何やってんの!」

 

「彼氏って……お前、本気でそう思ってるんだな」

 

「当たり前でしょ! 彼氏だもの!」

 

クリスは頭を抱え、うめき声をあげる。

 

「俺にとっては昨日までただの後輩だった奴が、妹の彼氏って言われても……」

 

「だからって職場で脅すとか、ありえないでしょ! レオンだって気ますいじゃない!」

 

「脅してない。ただ……」

 

「ただ?妹を泣かせたら叩きのめす!とか言ったわけじゃないの?」

 

「ま、まあ確かに、それらしいことは言った……」

 

「言ったんじゃない!」

 

クレアは兄に対して説教 モードに入った。

クリスはうつむいて、今までにない 真剣な顔をして言う。

 

「俺は……レオンの男としての覚悟を確かめただけだ」

 

クレアはさすがに 怒りをあらわにした。

 

「ほんっっと、余計なことするんだから!!」

 

クレアはクッションを掴んで兄に投げつける。

クリスは受け止め、苦笑しながら肩をすくめた。

 

「いいじゃないか。お前のことを大事に思ってるって、あいつはちゃんと答えたぞ」

 

クレアの頬が一瞬で赤くなる。

 

「……っ! ……も、もう、そういうことまで報告しないで!」

 

彼女は顔を背け、クッションを抱えてソファに埋もれる。

クリスはそんな妹を見ながら、やれやれと息をついた。

 

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土曜の夕暮れ。

赤く沈む陽が、街のビルの輪郭を金色に染めながら、ゆっくりと地平線に沈んでいく。

 

郊外の小高い丘の上、広大な空き地に設けられたドライブインシアターには、すでに何台もの車が並び、ポップコーンやホットドッグの香りが漂っていた。

 

大きなスクリーンの前で、音響テストの低い重低音が夜の空気を震わせている。

 

車を停めたレオンが、窓越しに外の喧騒を見ながら小さく息を吐いた。

 

「……こういうデート、実は初めてなんだ」

 

運転席の隣で、クレアはにっこりと笑う。

 

「意外。レオンって、ドライブインとか似合いそうなのに」

 

「いや、これまでそんな余裕なかったからな。学生の時は勉強で忙しかったしし、警官になってからは任務続きで……」

 

「うん。だからこそ、今日はちゃんと休もうね」

 

そう言ってクレアは、助手席のドリンクホルダーにコーラを置き、カップのストローをレオンの方に差し出した。

 

「はい、ひと口どうぞ。冷たいうちに」

 

レオンは少し笑って受け取り、ストローをくわえる。

 

一瞬、彼女の口紅の跡が視界に入り、思わず視線を逸らす。

 

「……間接キス、ってやつかな?」

 

「なにそれ、今さら?」

 

クレアの軽い笑いに、レオンは顔を少し赤らめた。

 

映画が始まる。 

 

古いSF映画のオープニングテーマが流れ、夜の闇に青白い光が広がった。

レオンはハンドルから手を離し、背もたれに身体を預けながら静かにスクリーンを見つめた。

 

ふと横を見ると、クレアがサイドウィンドウから夜空を眺めていた。

 

「星がすごいね。街だとこんなに見えないもん」

 

「……そうだな。君より長くここに住んでる俺でも、こんな夜空はなかなか見たことない」

 

少しの沈黙。

 

映画の中の主人公が冗談を飛ばし、車の外から笑い声が聞こえる。

でも、車内だけは別の静かな空気が流れていた。

 

クレアが少し身体を寄せる。

シートの間に置かれた肘が触れ合い、微かな熱が伝わる。

レオンの喉が、ごくりと鳴った。

 

「……ねえ、レオン」

 

「ん?」

 

「この前の夜、止めた理由……まだ聞いてない」

 

レオンは一瞬だけ目を伏せた。

 

「……君に触れたら、止まれなくなりそうだった」

 

「……」

 

「俺は、君を大切にできる男でいたい。焦ったら、それを壊しそうで」

 

クレアはゆっくりと息を吐き、レオンの手に自分の手を重ねた。

 

「……そうね、私も壊したくない。少しずつ確かめながら行きましょう……」

 

レオンの指先が、彼女の手をそっと握り返す。

スクリーンの光が二人の横顔を照らし、淡い影を落としていく。

 

静かな夜風。

ポップコーンの甘い匂い。

そして、誰にも聞こえないほど小さな「好き」の息づかいが、車の中に静かに溶けていった。

 

映画のクライマックスを迎える頃、クレアの頭は自然とレオンの肩に寄り添っていた。

 

レオンは動かず、ただその重みを受け止める。

もう言葉はいらなかった。

ただ、この夜を、永遠に閉じ込めておきたかった。

 

[newpage]

 

映画が終わり、エンドロールの音楽が夜空に消えていく。

 

車の中でしばし余韻に浸ったあと、二人は駐車場を出て街へ向かった。

道路の片側にはネオンの明かりが連なり、遠くから酔客の笑い声が響いていた。

 

「久しぶりに、ちゃんとしたデートだったな」

 

運転席のレオンが、少し照れたように言う。

 

「うん。……あんなに笑ったの、ほんとに久しぶり」

 

クレアは窓の外を見ながら、穏やかに微笑む。

 

その時だった。

狭い駐車場の入り口に差しかかった時、前方に数人の若者が立ちふさがった。

タトゥーとピアス、酒瓶を手にした不良グループ。

そのうちの一人が車のボンネットを拳で叩いた。

 

「おい兄ちゃん、いい車乗ってんな。どこ行くんだよ?」

 

「なにするのよ!」

 

クレアが怒りをあらわにした。

しかし、不良たちは彼女の声を無視して近づいてくる。

 

レオンはドアを開けて車から降りた。

その静かな動きに、空気がわずかに変わる。

 

「悪いけど、通してもらえるか?」

 

「通す? 代わりに彼女、置いてけよ」

 

その一言で、レオンの目の奥に熱い光が宿った。

次の瞬間、路地に乾いた音が響く。

 

レオンの拳が、最前列の男の顎を正確に打ち抜いた。

倒れた男を皮切りに、他の不良たちが怒声を上げて襲いかかる。

 

しかし、レオンの動きは無駄がなかった。

回し蹴りで一人を地面に沈め、もう一人の腕を取り投げ飛ばす。

夜風の中、彼の体はまるで訓練場のように静かに、正確に動いていた。

 

「クレア、大丈夫か?」

 

最後の1人を倒すとレオンがクレアを振り返る。

 

振り返ったレオンの目に飛び込んできたのは、不良の一人を見事に膝蹴りで倒すクレアの姿だった。

彼女の足元には、さらに何人かの男がのびている。

 

「おいおい……クレア!?」

 

「何よ、私だって昔から兄さんの訓練受けてるんだから!」

 

クレアは息を切らせながらも、笑って見せた。

 

レオンが男の一人を壁に押しつけ、低く言い放つ。

 

「次に彼女に手を出そうとしたら、ただじゃ済まない」

 

男たちはうめき声を上げながら、夜の路地へと逃げていった。

 

静寂が戻った。

街灯の下で、レオンがクレアに歩み寄る。

 

「怪我は?」

 

「平気。むしろ、スッキリしたかも」

 

クレアの頬に小さな擦り傷があり、レオンはそっと指で触れた。

 

「……強いな。俺が守るまでもなかった」

 

「でも、守ってくれたでしょ?」

 

「それは当然だよ」

 

ふたりはしばらく見つめ合い、静かに笑った。

緊張と興奮が混ざった空気の中で、

互いの呼吸が重なるほど近づく。

 

だが、レオンは一歩だけ後ろへ下がった。

 

「……このままじゃ、また止まれなくなりそうだ」

 

「……レオン」

 

「送ってく。今日は、もう十分ドキドキした」

 

クレアは微笑みながら頷く。

ふたりは並んで車に戻り、夜の街を抜けていった。

 

遠ざかる街灯の光の中、

レオンの横顔はどこか柔らかく、そして誇らしげに見えた。

 

[newpage]

 

「……すごかったな、さっきの」

 

ハンドルを握ったまま、レオンが小さく笑う。

 

「何が?」

 

「君の蹴り。完璧だった」

 

「兄さんに仕込まれたのよ、昔ね。護身術は必要だって言われて」

 

「護身ってレベルじゃなかったよ。俺のバディ(相棒)になれる」

 

レオンの冗談に、クレアは照れたように笑った。

ふたりの間に、柔らかい静寂が落ちる。

 

赤信号で車が止まると、レオンはゆっくりと顔を向け、クレアの頬に手を添えた。

 

「今夜は、ありがとう」

 

「何が?」

 

「俺に笑顔をくれた」

 

次の瞬間、二人の唇が触れ合った。

最初はほんの軽く、けれどすぐに深く、静かに重なる。

 

戦いの後の高ぶりも、緊張も、すべて溶かすようなキスだった。

 

長い呼吸のあと、レオンは唇を離し、穏やかに笑う。

クレアは頬を赤らめ、シートに体を預ける。

夜風が少しだけ窓から吹き込み、髪を揺らした。

 

車が再び走り出す。

街の光が流れ、遠くの空に星がにじんでいた。

 

クレアはそっとレオンの手に触れ、小さな声で言った。

 

「……このまま、どこか遠くに行けたらいいのに」

 

「そのうち、行けるさ。俺たちなら」

 

彼の言葉に、クレアは微笑む。

夜の道を、二人の車がゆっくりと走り抜けていった。

 

[newpage]

 

 

翌日。

ラクーンシティ警察署の前で、夕焼けに染まる通りを見上げながら、レオンは一度深呼吸をした。

 

昨日の出来事が、まだ体の奥に残っている。

クレアと過ごした時間、笑顔、そしてあのキス。

あの瞬間を思い出すたび、胸の奥が熱くなる。

 

「……浮かれてるな、俺」

 

自嘲するように呟いたとき、背後から軽やかな声がした。

 

「浮かれてるの、顔に出てるわよ」

 

振り返ると、バイクのヘルメットを片手にクレアが立っていた。

風に揺れる髪と、無邪気な笑顔。

昨日と同じように、彼女の姿を見た瞬間、言葉が出なくなる。

 

「クレア……もう帰るところ?」

 

「うん。兄さんが今日は遅くなるって。だから迎えに来たの。……ちょっとだけ話せる?」

 

レオンは慌てて制服の上着を整えた。

 

「もちろん。なんだい?」

 

クレアは少しだけ言葉を探すように視線を落としたあと、いたずらっぽく笑う。

 

 

「ねえ、今度の週末、時間ある?」

 

「え? ああ……一応、非番の予定だけど」

 

「じゃあ、行かない? ちょっとした旅。2人で一度 ラクーンシティ 以外のところに行ってみてもいいかも」

 

彼女はポケットから折りたたまれたパンフレットを取り出し、彼の前に広げた。

 

『アリゾナ州 キャニオン・フェスト』

そこには、赤い岩山と青空が写っていた。

 

「これ、週末に行われるフェスなんだ。キャンプもできるし、星もすっごく綺麗。1泊2日で行ける距離。……どう? 一緒に行かない?」

 

レオンはパンフレットを見つめたまま、無言になった。

乾いた大地、遠い地平線、そしてその中で笑うクレアの姿が、頭の中に浮かぶ。

 

「……いいのかい? 兄さん、許すかな」

 

「兄さんには、護衛兼運転手付きの旅行、って言っておくから大丈夫」

 

レオンは小さく笑った。

 

「便利だな、その言い訳」

 

「でしょ? でも、私……あなたと行きたいの。

 昨日の夜、思ったの。レオンって、いつも守る側にいるけど、ちゃんと自分が癒される時間も、必要なんじゃないかって」

 

彼の胸の奥に、何かが静かに響いた。

彼女の言葉は、軽いようでいて、どこか本質を突いていた。

 

「……ありがとう。行こう、クレア」

 

「決まりね!」

 

クレアは嬉しそうに両手を叩いた。

 

「じゃあ金曜の夜に出発。夜のうちに走れば、朝には着く。星空の下でコーヒー、飲もうね」

 

「星空の下でコーヒー……悪くないな」

 

彼女の笑顔を見ながら、レオンはふと思う。

これが単なる旅行ではなく、自分が誰かと過ごしたい、と心から願う、初めての時間になるかもしれないと。

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