レオンがバイオハザード2のあと、そのまま警察官をやっている世界線。女子大生クレアとの甘々、アメリカ青春ドラマを目指しました。
「私もね…実は、南極で、忘れられない出会いがあったんだ」
クレアの瞳が、遠い記憶を辿るように揺れる。
レオンは、クレアが南極での出来事を話すたびに、どこか心を閉ざすような雰囲気を感じ取っていた。
しかし、今はその理由が知りたい。
「南極で?一体何が…」
レオンは、少し身を乗り出した。
クレアは、ふっと寂しげに微笑んだ。
「バイオハザードに巻き込まれた時、私を助けてくれた男の子がいたの。名前はスティーブ。私より少し年下で、でもすごく勇敢で…」
レオンの心臓が、ドクリと不規則な音を立てた。
クレアの口から語られる「男の子」という言葉に、レオンの胸に言いようのないざわめきが広がる。
「彼はね、私を助けるために、自分の命を顧みずに戦ってくれたんだ。最後は、私を守って…」
クレアの言葉が途切れ、その瞳に涙がにじんだ。
レオンは、彼女が言葉にできないほどの深い悲しみを抱えていることを察した。
彼は口を開こうとしたが、言葉が出なかった。
クレアが誰かをそこまで強く思い、そしてその誰かを失った悲しみに暮れている姿に、レオンの心臓は激しく締め付けられる。
「本当に、大切な人だったんだな…」
絞り出すようなレオンの言葉に、クレアは静かに頷いた。
「うん。私にとって、スティーブは…忘れられない存在。彼がいなければ、私は今ここにいなかったかもしれない」
クレアの言葉が、レオンの心に重くのしかかる。
彼女の言葉の一つ一つが、レオンの胸に刃物のように突き刺さった。
忘れられない存在。
彼がいなければ、自分はここにいなかった。
それは、レオン自身がクレアに対して抱いていた感情と、あまりにも似ていた。
口にこそ出さないが、レオンの胸の中では激しい嫉妬の炎が燃え上がっていた。
目の前のクレアが、自分以外の誰かにそんなにも深く心を寄せていたこと。
そして、その相手が、彼女を命がけで守ったという事実。
レオンは、自分のちっぽけな恋愛経験が、クレアの壮絶な過去の前ではいかに取るに足らないものかと思い知らされたような気がした。
ピザはすっかり冷めきっていた。
レオンは、クレアの悲しみに寄り添いたい気持ちと、どうしようもない嫉妬の感情の間で、複雑な感情を抱えていた。
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クレアのスティーブとの別れの告白は、レオンの心に重くのしかかった。
嫉妬の感情が渦巻く一方で、彼女の深い悲しみに寄り添いたいという気持ちもまた、強く存在した。
重苦しい空気を破るように、レオンは意を決して言った。
「…よし。気分転換に、どこか別の店に行かないか?ちょっと騒がしいかもしれないけど、いいバーがあるんだ」
クレアは、顔を上げてレオンを見た。
彼の顔に、いつもの朗らかさが戻っていることに、わずかな安堵を覚えた。
「いいの?疲れてない?」
「大丈夫。むしろ、少し体を動かしたい気分だ」
レオンがクレアを連れてきたのは、ラクーンシティの若者たちが集まる、ロックの生バンドが演奏しているショットバーだった。
ドアを開けると、爆音のようなギターとドラムの音が二人を包み込む。
薄暗い店内は熱気にあふれ、多くの人々がグラスを片手に体を揺らしていた。
「ここ…すごいね!」
クレアは、少し圧倒されながらも、どこか楽しそうに言った。
レオンは、クレアの耳元に顔を近づけ、大声で話した。
「たまに、ここで気分転換するんだ。普段の仕事から離れて、何もかも忘れられるから」
二人はバーカウンターに陣取り、強めのカクテルを注文した。
グラスを傾けながら、レオンはクレアの横顔をちらりと見た。
彼女の表情には、ピザレストランでの沈痛な面影はもうない。
むしろ、どこか開放的な雰囲気が漂っていた。
バンドの演奏が一段と激しくなり、フロアでは踊り始める若者たちがいた。
レオンは、クレアの手を取り、少し強引に引き寄せた。
「どうだ、踊ってみないか?」
クレアは一瞬ためらったが、レオンの真剣な眼差しに、ふっと笑って頷いた。
二人はフロアの端に移動し、ぎこちなく体を揺らし始めた。
最初は互いの動きを探り合うように控えめだったが、音楽のリズムに身を任せるうちに、二人の体は自然とシンクロしていく。
レオンは、クレアの細い腰にそっと手を回し、彼女の動きに合わせてステップを踏んだ。
クレアもまた、レオンの肩に手を置き、時折彼の胸に頭をもたれかける。
汗ばむ肌、高鳴る心臓の音。
大音量の音楽が二人の間の言葉を奪い、代わりに体が会話を始めた。
レオンは、クレアの笑顔が、照明の中でキラキラと輝いているのを見た。
彼女の髪が踊るたびに、甘い香りがレオンの鼻腔をくすぐる。
激しいリズムの中で、レオンはクレアを抱き寄せ、耳元で囁いた。
「クレア…君といると、本当に楽しい」
クレアはレオンの言葉を聞き取れたかどうか分からないが、ただ満面の笑顔で彼を見上げた。
その瞳には、かつてレオンが抱いた嫉妬の影を払拭するような、純粋な喜びと、そして信頼の光が宿っていた。
時折、レオンはクレアの過去に触れたくなる衝動に駆られたが、この瞬間だけは、何もかも忘れて彼女との時間を楽しむことに集中した。
二人にとって、このロックの夜は、過去の傷を癒し、互いの存在をより深く感じ合うための、大切なステップとなった。
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バーの熱狂から抜け出し、レオンとクレアは夜風に吹かれながら、レオンが昼間案内した公園へと向かった。
賑やかな街の喧騒は少し遠ざかり、代わりに穏やかな夜の空気が二人を包み込む。
公園の小道を進むと、柔らかな街灯の明かりの下で、ストリートミュージシャンがアコースティックギターを爪弾いていた。
その少し先では、数人のストリートダンサーが、軽快なビートに合わせてしなやかな動きを見せている。
その先ではバスケットのゴールが一つあり、数人の少年たちがバスケットを楽しんでいた。
ラクーンシティの夜の顔は、昼間とはまた違った表情を見せくれる。
「レオン、ここっていつもこんな感じなの?」
クレアが目を輝かせながら尋ねた。
「ああ。日によってはもっと色々なパフォーマーがいる。この街も、少しずつ活気を取り戻してるんだ」レオンは、どこか誇らしげに答えた。
二人はしばらく立ち止まって彼らのパフォーマンスを眺め、自然と笑顔がこぼれた。
バーでの熱気は冷めたものの、心地よい興奮がまだ残っている。
レオンは、クレアの手を取って、公園の奥へと進んだ。
少し小高くなった場所にある展望台だ。
そこからは、再建されたラクーンシティの街並みが、宝石を散りばめたように輝いて見えた。
「ここが、俺のお気に入りの場所なんだ。こうして街を眺めていると、色々なことを考える」
レオンは、夜景を見下ろしながら静かに言った。
クレアは、レオンの横顔を見つめた。街の光が、彼の横顔を柔らかく照らしている。
「私も、ここからの景色、好きだな。なんだか、この街がすごく頑張ってるのが分かる気がする」
しばらくの間、二人は言葉もなく夜景を眺めていた。
今日一日、レオンが案内してくれた街。
彼が守ろうとしている日常。
クレアの心に、レオンへの新たな感情が芽生えていくのを感じていた。
「今日は、本当にありがとう、レオン」
クレアが静かに言った。
「パトカーでのツアーも、ピザも、バーも…全部、すごく楽しかった」
レオンは、クレアの方に振り返った。
彼の瞳は、夜景の光を映してキラキラと輝いている。
「俺もだよ、クレア。君といると、時間があっという間だ」
二人の視線が絡み合い、互いの心に秘めた想いが、夜風に乗って伝わっていくような気がした。
「また、会えるかな?」
クレアが、少しはにかむように尋ねた。
レオンは迷わず頷いた。
「もちろん。次にラクーンシティに来る時は、必ず連絡してくれ。今度は、もっと色々な場所に案内するよ」
クレアは笑顔で頷き、その瞳は期待に満ちていた。
高台に吹く夜風が、二人の髪を優しく揺らす。
今日この場所で交わされた約束は、二人の間に芽生え始めた新たな関係の、確かな始まりを告げていた。
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真夜中を過ぎた頃、クレアはクリスのアパートメントに戻った。
玄関のドアを開けると、リビングのソファで腕を組み、不機嫌そうな顔で座っているクリスの姿があった。
テーブルの上には冷めたコーヒーカップが置かれており、クレアを待っていたことが伺える。
「クリス、まだ起きてたの?ごめんね、遅くなっちゃって」
クレアが謝ると、クリスはゆっくりと立ち上がり、妹の顔をじっと見つめた。
その瞳には、心配と安堵、そして説明のつかない感情が入り混じっていた。
「心配したんだぞ。どこをほっつき歩いてたんだ」
「ほっつき歩いてたんじゃないわ、レオンが街を案内してくれたのよ」
クレアは、少し楽しそうに言った。
クリスはため息をつき、ソファに深く腰を下ろした。
「…分かってるさ。レオンが迎えに来たのを見てたからな」
クレアはクリスの隣に座り、今日の出来事を話し始めた。
パトカーでのツアー、美味しいピザ、そしてロックバーでのダンス。
レオンと過ごした時間がどれほど楽しかったかを、生き生きと語った。
クリスは黙ってクレアの話を聞いていたが、その表情は複雑なままだった。
レオンとの楽しい思い出を話すクレアの顔が、パンデミックを経験する前の、無邪気だった頃の妹に戻っているように見えたからだ。
「それでレオンね、彼氏の有無とか、過去の恋愛の話とかもしてくれたの。すごく大変だったみたいで…」
クレアがレオンの過去に触れると、クリスの眉間にわずかにシワが寄った。
彼は、妹がレオンに心を開いていることに、どこか割り切れない感情を抱いていた。
「クレア。レオンはいい奴だ。それは俺も認める。だがな…」
クリスは言葉を選びながら言った。
「お前も、あの事件の後、色々とあっただろう。あんな地獄を乗り越えて、ようやく日常を取り戻しつつあるんだ。だから、ゆっくり、慎重に、信頼関係を築いていけ。安易に深入りするな」
クリスの言葉は、兄としての忠告であり、妹を心配するがゆえの言葉だった。
しかし、クレアには、その言葉の裏に、クリスが自分たちに抱いている嫉妬心が隠されているのが分かった。
兄として、妹が自分以外の男性に心を開くことへの、複雑な感情。
クレアは、ふっと笑みをこぼした。
そして、クリスにそっと手を伸ばし、家族として、そして兄として、彼女をずっと支え続けてきたクリスへの感謝と、そして「心配しないで」という気持ちを込めて、唇に優しくキスをした。
それは、恋人同士のキスとは違う、兄妹の絆を再確認させるような、温かく、そしてどこか切ないキスだった。
「分かってるわよ、クリス。私だって、もう子供じゃないんだから」
クレアは、キスを終え、クリスの目を見つめて言った。
「でも、クリスが心配してくれるのは嬉しいわ。ありがとう」
クレアの行動に、クリスは一瞬、呆然とした表情を見せた。
唇に残るクレアの唇の感触に、彼の心の中の複雑な感情は少しだけ和らいだ。
しかし、同時に、妹が大人になったこと、そして自分だけの存在ではなくなっていくことへの、かすかな寂しさも感じていた