あるアメリカンポリスのラブストーリー   作:masayumi

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クレアとレオン、両方の視点から。初めてのデートの成功に興奮が止まりませんが、次のデーティングは…?レオンは署の先輩女性警官。クレアは友達の、クリスの元同僚の大学助手に相談します。
レオンがバイオハザード2のあと、そのまま警察官をやっている世界線。女子大生クレアとの甘々、アメリカ青春ドラマを目指しました。


それぞれのunrequited love

レオンは帰宅して部屋の灯りをつけた瞬間、空気の違いに気づく。

 

自然の匂いも、クレアの柔らかな香りももうない。だけど、その感触はまだ全身に残っていた。

 

ライダースジャケットを脱ぎ、無造作にソファへ身を沈める。

天井をぼんやり見つめながら、今日一日の断片が頭の中で何度もリピートされていた。

 

笑い声。

湖の冷たさ。

クレアが見せた、あの無邪気な笑顔。

そして、最後に頬へ触れたあの温もり。

 

静かな部屋に、ふっと微笑みがこぼれる。

 

「……まいったな」

 

こんなにも穏やかな気持ちになれたのは、いつぶりだろう。

心がゆっくりほどけていく。

 

テーブルの上にそっと置いたヘルメットの横に、四つ葉のクローバーが見える。

さっきまで、クレアの指先にあったもの。

彼女が見つけて自分にくれた。

 

レオンはそれを見つめながら、ぽつりとつぶやいた。

 

「……また、会いたいな」

 

恋という言葉はまだ早いかもしれない。

でも、今日の空気が、笑い声が、あの瞳が、心を確かに動かした。

 

目を閉じれば、あの湖の風がまた、そっと頬をなでていく気がした。

 

 

[newpage]

 

シャワーを浴び、髪をタオルに包んだまま、ベッドに腰掛ける。

部屋は静かで、窓の外には夜の街の灯りがかすかに滲んでいた。

 

今日は……夢みたいだった。

 

ふと、机の上に目をやる。

レオンからもらった四つ葉のクローバーを、栞にしようと小さなノートに挟んだところだ。

彼が見つけて、自分にくれたもの。

 

笑ってくれた。

ちゃんと、目を見て話してくれた。

触れ合って、言葉を交わして、沈黙さえも苦しくなかった。

 

レオンといるとき、自分が自分でいられる。

無理して明るくしなくても、気を張らなくても。

ただ、そこにいるだけで、心がふっと楽になる。

 

そして…最後に、頬に触れた彼のあたたかさ。

あれは、少しだけ勇気を出してみた自分への、ささやかなご褒美だった。

 

クッションに顔をうずめるようにして、クレアはそっと息を吐いた。

 

「……なんか、ちょっとずつ近づけてる気がする」

 

恋、というにはまだどこか不確かで、おぼつかない。

けれど、今日の一日は確かに、レオンと自分の間にひとつの“記憶”として積み重なった。

 

そう思うと、胸が少し温かくなる。

 

まぶたを閉じると、バイクの振動と、風の匂いと、レオンの背中の感触が、すぐそこにあった。

 

「また、会いたいな。……すぐにでも」

 

誰にも聞こえない、小さな声でつぶやいてから、クレアは静かにシーツへ身を横たえた。

 

心はまだ、今日の湖のほとりにいるようだった。

 

[newpage]

 

 

 

 

「で、デートは…その、普通だったと思うんですよ。楽しかった、すごく…」

 

レオンは少し頬を赤くしながら、コーラを一口飲む。

ジルは彼の様子に気づいて、クスッと笑った。

 

「へぇ、レオン。言い方の割に顔がめちゃくちゃ緩んでるよ。」

 

「いや、違うよ、そんな…!」

 

ジルはナプキンで指を拭きながら、にやにやしてピザの端をかじる。

 

「それで?彼女って、あの…赤いシャツの子だっけ?クレア?」

 

「はい。あの、すごく優しくて、でも芯があって…。なんていうか、すごく安心するんです、一緒にいると。」

 

「ふーん。それ、ちゃんと本人に言った?」

 

「言えないよ、そんなの…!俺、そういうの、慣れてないし…」

 

ジルはピザを置いて、レオンの目を見る。

 

「レオン、好きな子の前で完璧でいようとしなくていいの。むしろ、そういう“うまくできない感じ”が、可愛く見えたりするんだから。」

 

「俺が…可愛く見える…?」

 

「まあ、年上の女性にはモテそうだけどね。」

 

「やめてくださいよ。」

 

ジルは冗談っぽく笑って、少しだけ真剣な声になる。

 

「クレアみたいな子なら、レオンのそのまんまの感じ、ちゃんと見てくれるよ。変に構えずに、普通にいてみなよ。」

 

レオンは少しの間黙って、それからゆっくり頷いた。

 

「…はい。次、また会う時、ちゃんと素直に話してみます。」

 

「よし、それでいい。あ、でもハンバーガーのチケチャップ、口につけたままはダメね。恋が冷める。」

 

「えっ、マジですか!?さっきついてました!?」

 

「うん、がっつり。」

 

「うわっ、やばい…!」

 

ジルの笑い声が、ダイナーに心地よく響いた。

 

 

[newpage]

 

 

大学のカフェテリアの混雑が少しおさまった頃、クレアは自分のゼミの助手の女友達とランチをしていた。

 

「で?デートどうだったの?」

 

レベッカがフライドポテトを口に入れながら、わざと軽い感じで聞いてくる。

クレアはうつむいて、顔を赤く染めた。

 

「うう…聞かないで…!」

 

「え、なにその反応!まさかやらかした!?店予約してなくて公園でホットドッグとか…」

 

「ちがうちがうちがう!」

 

クレアは頬を真っ赤にして首を振る。

 

「むしろ…すごく良かったの。静かな場所でピクニックして、少し湖で遊んだりして。なんか…ちゃんと話せたの、ちゃんと目見て。」

 

「あら、いいじゃないレオン。」

 

「なんていうか…なんていうか…落ち着くの。全然気取ってなくて、でも礼儀正しくて。あと、なんか変に頑張らなくても一緒にいられるっていうか…」

 

レベッカはふーん、と言って、ポテトを咀嚼する。

 

「なるほど、それってもう…けっこう本気ってやつじゃない?」

 

クレアは顔をしかめる。

 

「ええ…まだ1回目だよ?そういうの、考えるの早すぎない?」

 

「いやいや、だからこそでしょ。1回目でそこまで『落ち着く』って思えるって、そうそうないよ?」

 

クレアは黙ってコーラを一口飲んで、少し遠くを見る。

 

「…そうなのかな。なんか、彼の目ってちょっと寂しそうで。でも無理に明るくしてるところもあって…見てたら、放っておけないっていうか…」

 

「はい出た、クレアの『ほっとけないスイッチ』。」

 

「も〜またそれ言う!」

 

2人は笑い合う。

 

「でもさ、クレア。次また会うときは、ちゃんと自分の気持ち話してあげなさい。」

 

「え?」

 

「レオン、ちょっと不器用そうだし。気づかないかもよ。『今日のあなた、すごく素敵だった』ってちゃんと伝えてあげたら、彼、すごく救われると思う。」

 

クレアは少し照れたように、でもゆっくりと頷いた。

 

「…うん。次、会えたら。言ってみる。」

 

レベッカは笑って親指を立てた。

 

「よーし!それまでに『好きな人の前で自然体でいられるメンタルトレーニング』でもやっとく?」

 

「やらない!」

 

笑い声がソファの上に溶けていく。夜はまだ長い。

 

 

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