赤鼻のトナカイは寒さに震えていた。
赤鼻のトナカイは善良だった。
他のトナカイ達も善良だった。
もちろんサンタさんも善良だった。
みんな善良だった。それでも赤鼻のトナカイは苦しんでいた……。

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匿名掲示板サイト、「めぶきちゃんねる」にて作者が投稿した作品を改変したものです。
ハーメルンにも投稿させて頂きます。


赤鼻のトナカイが救われるには

 

 

 赤鼻のトナカイは震えていた。

 吹き荒む吹雪の中で凍えながら、自分に言い聞かせていた。

 

 「自分が我慢すればいい……。そうすれば丸く収まって上手くいく。」

 

 彼はそう呟きながら、全身を襲う寒気に耐えて、赤鼻を光らせていた。

 

 

 

 

 

 

 「また彼が最下位か……。」

 

 サンタクロースは次のクリスマスに備えて、トナカイ達にソリを引かせてどれくらい速く空を飛べるかを確認していた。

 サンタクロースは、一夜で世界中の子供達にプレゼントを届けなければいけない。

 だからこそ、ソリを引くトナカイ達がキチンと速く飛べるかが大事だったのだ。

 

 そして、赤鼻のトナカイはいつも最下位であった。

 

 サンタクロースはため息をついた。

 夜は暗い……故に頼りになるのは星と月の明かりだけだ。

 だがサンタクロースは赤鼻のトナカイを見た時、心から喜んだのだ。

 

 「彼の鼻は夜道を照らせる。もっと安全に、速く、世界中の子供達にプレゼントを届けることができる。

 彼が居れば、プレゼントを渡し損ねて子供達を悲しませることは無くなるはずだ。」

 

 サンタクロースはそう考えた。

 しかし、赤鼻のトナカイはいつもビリだった。

 

 サンタクロースは赤鼻のトナカイをよーく観察した。

 

 するとサンタクロースは、赤鼻のトナカイがとても眠そうで、おまけに風邪まで引いていることがわかった。

 

 「これは一体どういう事だ?」

 

 サンタクロースは赤鼻のトナカイに詳しく話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 気づき

 

 「サンタさん……。僕が孤児だったことは覚えてますよね?

 僕の両親は正しい判断をしたんです……僕はいらない子だったんです。」

 

 赤鼻のトナカイは消え入りそうな声で言う。

 

 「僕はサンタさんに拾ってもらって、このクリスマスにソリを引くトナカイ候補に選ばれました。

 でも……僕はダメな子だから、他のトナカイ達から疎まれてるんです。

 

 『本当にごめんね。君がいると迷惑だから、出来るなら小屋じゃなくて外で寝ててくれないかい?』

 

 そう言われたので、僕はいつも小屋の外で寝てるんです。

 でも……外で寝てると寒くて、あまり眠れないんです。」

 

 それを聞いた時、サンタクロースは心を痛めた。

 

 「そんなのは間違ってることだ。

 お前のピカピカの赤鼻は役に立つんだ。夜道を照らして、私たちが安心てしプレゼントを届けられるようにしてくれる力があるんだ。」

 

 サンタクロースは力説した。

 

 そしてその言葉を聞いた時、初めて赤鼻のトナカイは自分の価値に気がついたのだ。

 

 サンタクロースは赤鼻のトナカイに約束した。

 

 「私がお前にどれほどの価値があるかを、他のトナカイにも説明しよう。

 約束する。もう決して、君を一人寒空の下で寝かせたりなんてしないと……。」

 

 

 

 

 

 改革

 

 そして、サンタクロースは約束を守った。

 

 サンタクロースは他のトナカイ達に、いかに赤鼻のトナカイが役に立つかを語った。

 そしてサンタクロースは言った。

 

 「私は願う……全ての子供達を幸せにしたい。

 全ての人や動物達を幸せにしたい。

 全ての人や動物が、友達として仲良く過ごせる幸せな世界を作りたいんだ。

 だから私は、仲間が仲間を苦しめるようなことはあってはならないと思っている。

 

 どうか……彼を、赤鼻のトナカイを仲間として、友達として認めてくれないか?

 一緒に小屋で寝られるようにしてくれないか?」

 

 その演説を聞いたトナカイ達は感動して、赤鼻のトナカイを一人、寒空の下で寝かせていた事を恥じて改心した。

 

 「赤鼻のトナカイ君、今まで本当にごめんなさい。

 今更許してくれるとは思わない。でも……もう一度だけ僕たちにチャンスをくれないか?」

 

 トナカイ達は赤鼻のトナカイに頭を下げて頼んだ。

 赤鼻のトナカイは喜んでその謝罪を受け入れて、再び友として迎え入れられたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トロッコ問題

 

 一匹の優れたトナカイと沢山の普通のトナカイのうち、どちらを選ぶか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  副作用

 

 赤鼻のトナカイと、他のトナカイ達が和解して仲直りした後、赤鼻のトナカイは小屋で眠れるようになった。

 

 そして赤鼻のトナカイは寝不足にも寒さにも苦しめられる事なく、本来の実力を発揮できるようになり、どんどんソリを引くスピードは速くなった。

 そして瞬く間に他のトナカイ達の順位を追い抜いて、トップに躍り出た。

 

 赤鼻のトナカイは健康になり、ソリを引くスピードもどんどん速くなった。

 

 

 

 それに反比例するように、他のトナカイ達は不健康になり、ソリを引くスピードが落ちていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 赤鼻のトナカイは救われない。他のトナカイも救われない。

 

 凍てつく吹雪が吹き荒れる夜、小屋の中はそれらの冬の寒さから厚い壁で守られて、ふかふかの干し草のベッドのおかげで暖かった。

 しかし、トナカイ達は眠らなかった。

 否、眠れなかったのだ。

 それは赤鼻のトナカイのピカピカ光る鼻の光が眩しすぎるせいだった。

 

 「ごめんね……本当にごめんね。」

 

 赤鼻のトナカイは、他のトナカイに申し訳なさから謝った。

 

 「大丈夫だよ、気にする必要なんてないさ。

 ちょっと眩しいけど、僕たちが我慢すれば問題ないさ。」

 

 他のトナカイ達は、赤鼻のトナカイに気を遣って空元気で答えた。

 トナカイ達…彼らは皆優しいトナカイであった。

 彼らは赤鼻のトナカイの光で、夜に眠れずに睡眠不足になっていたのだ。

 それでも彼らは我慢した。

 サンタクロースに言われて気がついたのだ。

 自分たちがいかに、赤鼻のトナカイに酷い事をしていたのかを……。

 彼らは昔、赤鼻のトナカイの鼻が眩しくて睡眠不足になり、困っていた。

 そしてその解決策として、赤鼻のトナカイに小屋の外で眠ってくれないかと頼んだのだ。

 だが、それは赤鼻のトナカイに一人寂しく寒空へと追い出す、残酷な考えたらずの行為だったと、サンタクロースの言葉で気がついた。

 

 そして彼らは誓ったのだ。もう自分たちは赤鼻のトナカイを苦しめてはならないと。

 

 「僕たちが我慢すればいい……。そうすれば丸く収まって上手くいく。」

 

 その言葉を聞いて、赤鼻のトナカイは救われない気持ちになった。

 

 

 

 

 

 

 もっといい世界を求めて

 

 赤鼻のトナカイは、サンタクロースと他のトナカイ達に集まって貰い、話し合いのための時間を作って貰った。

 

 「集まってくれてありがとう……。

 僕は思うんだ。こんなのはきっと正解じゃないって。

 僕が一人寒空で過ごした時、それはとても辛かった。

 でも、今はみんなが僕の鼻のせいで苦しんでいる。

 

 僕は思うんだ。どっちも間違いで、きっとどこかにもっといい方法があるんじゃないかって。」

 

 赤鼻のトナカイの目は、決意の光に満ちていた。

 きっと解決策がどこかにある。

 ここにいるのがみんな優しい人達で、世界をよくする為に頑張れる人達だ。

 あと足りないのは一つ、世界を良くする方法を知る事だけだ。

 

 そしてサンタクロース達は、みんなで一生懸命話し合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず最初に出てきたのは、だいぶアクセルを踏んだ提案だった。

 

 「僕の鼻が眩しくてみんなが困ってるなら、僕の鼻を切り落としてみるのはどうかな?」

 

 それに対して、他のトナカイ達は慌ててその案を却下した。

 最初赤鼻のトナカイは「それでも…」と食い下がったが、サンタさんの

 

 「赤鼻の光で夜道を照らして欲しいから、その考えは最後の手段にしよう」

 

 と言う言葉で、赤鼻のトナカイは他の考えに目を向けた。

 

 

 そして次に他のトナカイ達のうちの一人が

 

 「毎日我慢して寝て、赤鼻のトナカイの光に慣れるのはどうか?」

 

 と提案した。

 

 しかし、他のトナカイ達は1週間経っても光に慣れることはなかったという事実があったので、その案は結局却下された。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてサンタさんは提案した。

 

 「他のトナカイ達は今まで通りに小屋で寝て、

 赤鼻のトナカイがワシの部屋で眠るというのはどうじゃろう?」

 

 それに対して赤鼻のトナカイは

 

 「それだとサンタさんが眩しくて寝れないよ。」

 

 と言った。

 

 それに対してサンタさんは

 

 「それならワシが小屋の外で寝るのはどうじゃろうか?

 ワシはたくさん服を持っておる。

 それらの服を重ね着して眠れば、暖かく眠れるかもしれんぞ?」

 と言った。

 

 他のトナカイ達は、慌ててサンタさんを止めようとした。

 

 しかし、サンタさんは譲らない。

 

 トナカイ達とサンタさんが話し合ってる最中、赤鼻のトナカイはサンタさんの言葉を考えていた。

 

 そして閃き、大声で言った。

 

 「そうだよ!それだよ!服を着ればいいんだよ!」

 

 他のトナカイ達は驚いた。

 

 「赤鼻のトナカイ君……。サンタさんが万が一でも風邪をひいたら大変だよ!他の方法があるはずだ!」

 

 それに対して赤鼻のトナカイは言った。

 

 「そうじゃない、僕が服を着るんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 解決策

 

 

 そして、その話し合いをした日の夜。

 みんなはぐっすり眠ることができた。

 

 サンタクロースはベッドですやすやと眠っていた。

 他のトナカイ達も小屋の中で、干し草のベッド上ですやすやと眠っていた。

 

 だが、小屋の中は闇に包まれていた。

 そこに、赤鼻のもたらすピカピカした光は一切なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがしかし、小屋の中に赤鼻のトナカイはいた。

 トナカイの赤鼻には、サンタさんの手作りの帽子が掛けられていて、その帽子が赤鼻の光を覆い隠して、漏れ出ないようにしていた。

 

 

 赤鼻のトナカイは、自分の鼻に帽子を被せて、光を隠す方法を思いついたのだ。

 

 

 これは大成功だった。

 サンタクロース達は、みんな健やかに眠ることができた。

 

 

 そして全てのトナカイ達は、みるみる健康になり、ソリを引く速度も早くなり、みんなご機嫌で楽しいムードに包まれていた。

 

 

 

 

 そして訪れたクリスマス、赤鼻のトナカイの光のおかげで、安全に素早くプレゼントを配ることができた。

 その年のクリスマスは、世界中のすべての子供がプレゼントを貰えて、みんなが笑顔のクリスマスでした。

 

 

 

 

 

 めでたしめでたし

 

 

 トロッコ問題への回答

 

 誰も犠牲になんてしない、その方法があるはずだ……。

 きっと見つけることができるはずだ。


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