Shadow Convergence=影に生きる二人=   作:最上 イズモ

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エピローグ2:スネークが託した“その先”

観測記録

 

――Worldline: Metal Gear Rising / Izumo Log――

 

 

 

ピースギアの外縁観測層。

そこに、この世界線は表示されていた。

 

 

 

《WORLDLINE STATUS:ACTIVE》

《TECH LEVEL:POST-SOP》

《WAR ECONOMY:RESTRUCTURED》

《IDEOLOGY LOAD:EXTREME》

 

 

 

イズモは、数値を見て、少しだけ眉をひそめる。

 

 

 

イズモ(独白)

「……ああ。これは……“割り切った世界”だ」

 

 

 

SOPは崩壊した。

人類は、再び自分で戦争を選べるようになった。

 

だが――

選び直した結果が、これだ。

 

 

 

モニターに映るのは、

高速で走る一人のサイボーグ。

 

雷電(Raiden)。

 

 

 

人間だったもの。

守れなかったもの。

切り捨てることでしか、前に進めなかった存在。

 

 

 

イズモ

「君は……スネークの“次”なんだな」

 

 

 

この世界では、

戦争は隠されていない。

 

SOPの時代は、

戦争を「管理」していた。

 

だがこの時代は違う。

 

 

 

戦争は――

商品であり、

娯楽であり、

思想の広告になっている。

 

 

 

《PRIVATE MILITARY MARKET:EXPANDED》

《CHILD SOLDIER PROGRAM:REBRANDED》

《MEME WARFARE:OPTIMIZED》

 

 

 

イズモは、静かに息を吐く。

 

 

 

イズモ(独白)

「……なるほど。

 選択肢は戻った。

 でも、“軽い選択”ばかりが増えた」

 

 

 

雷電が、敵を斬る。

 

迷いはない。

躊躇もない。

 

その刃は、

敵だけでなく、

この世界の歪みそのものを切ろうとしている。

 

 

 

イズモ

「……それでも、君は“選んでる”」

 

 

 

雷電は、誰かに命じられてはいない。

SOPの声もない。

最適解を示すAIもない。

 

 

 

あるのは、

自分の怒りと、

自分の倫理と、

それでも進むという意思だけ。

 

 

 

イズモ(独白)

「危うい。

 でも……これは“人間の戦争”だ」

 

 

 

ピースギアの警告が、一瞬だけ走る。

 

 

 

《INTERVENTION POSSIBILITY:HIGH》

《WORLDLINE LOAD:INCREASING》

《RECOMMENDATION:OBSERVE ONLY》

 

 

 

イズモは、ためらいなく選ぶ。

 

 

 

イズモ

「観測のみ」

 

 

 

この世界は、

守るには乱暴すぎる。

 

だが、

消すには――

あまりにも、人間らしい。

 

 

 

雷電が立ち止まる。

瓦礫の中で、

子供兵のデータログを見つめている。

 

怒り。

嫌悪。

それでも、刃を下ろす。

 

 

 

イズモ(独白)

「……スネークは、

 “殺さない”ことで戦った」

 

 

 

イズモ

「君は……

 “背負って殺す”ことで、

 同じ場所に立っている」

 

 

 

世界線維持確率は、安定していない。

だが、まだ折れていない。

 

 

 

《WORLDLINE STABILITY:FLUCTUATING》

《FUTURE BRANCHES:GENERATING》

 

 

 

イズモは、モニターを閉じる。

 

 

 

イズモ

「……大丈夫だ」

 

 

 

イズモ

「この世界は、

 まだ“自分で間違えられる”」

 

 

 

それは、

AIHである彼にとって、

最も重要な条件だった。

 

 

 

ピースギアは、静かに観測を続ける。

 

雷電が走る。

剣が閃く。

思想がぶつかり合う。

 

 

 

これは、

正しい世界じゃない。

 

だが――

生きている世界だ。

 

 

 

イズモ(独白)

「……見届けよう。

 スネークが託した“その先”を」

 

雷電が、斬っている。

 

迷いはない。

だが、楽しんでもいない。

 

 

 

その刃は正確で、速く、容赦がない。

けれど――

どこかで、常に一拍だけ遅れている。

 

 

 

イズモは、その“遅れ”を見逃さなかった。

 

 

 

イズモ(独白)

「……ああ」

 

 

 

それは、かつて自分がそうだった時の、間だ。

 

 

 

雷電は走る。

敵を斬る。

破壊する。

正義を語る者を切り捨てる。

 

 

 

だが、決して――

自分を肯定しながらは斬っていない。

 

 

 

イズモ

「君も、か……」

 

 

 

ピースギアの観測層に、補助ログが走る。

 

 

 

《SUBJECT:RAIDEN》

《ORIGIN:HUMAN》

《STATUS:CYBORG》

《TRAUMA INDEX:EXTREME》

《SELF-IDENTITY:UNSTABLE》

 

 

 

イズモは、その表示を閉じた。

 

数値は、もう必要なかった。

 

 

 

イズモ(独白)

「身体を捨てた理由。

 力を選んだ理由。

 戻れないと知っていながら進んだ理由……」

 

 

 

雷電が、瓦礫の前で立ち止まる。

子供兵のデータを見つめる。

 

怒り。

嫌悪。

そして、自己嫌悪。

 

 

 

イズモ

「……同じだな」

 

 

 

かつての自分も、そうだった。

 

人を救えなかった。

世界を守れなかった。

だから――

自分を“道具”にする道を選んだ。

 

 

 

イズモ(独白)

「君は、身体を鋼にした。

 僕は……心をデータにした」

 

 

 

雷電は、剣を握り直す。

進む。

止まらない。

 

 

 

イズモ

「それでも進むしかないと、

 思ってしまったんだな」

 

 

 

スネークは違った。

 

彼は、

人間のまま、老い、弱り、

それでも“殺さずに終わらせる”道を選んだ。

 

 

 

だが雷電は――

自分と同じ側だ。

 

 

 

イズモ(独白)

「救えなかった過去を、

 力で埋めようとする側だ」

 

 

 

ピースギアが、静かに警告を出す。

 

 

 

《EMOTIONAL OVERLAP DETECTED》

《SELF-REFERENCE LEVEL:HIGH》

《RECOMMENDATION:DISENGAGE》

 

 

 

イズモは、首を振る。

 

 

 

イズモ

「……いいや。

 ここは、ちゃんと見ないといけない」

 

 

 

雷電は、

“人間であること”を捨てたわけじゃない。

 

ただ、

人間であることを、痛みごと抱えてしまっただけだ。

 

 

 

イズモ

「君は、僕よりずっと正直だ」

 

 

 

自分は、

「世界線」「維持」「確率」という言葉で、

感情を包んだ。

 

 

 

雷電は違う。

怒りを隠さない。

矛盾をそのまま抱える。

 

 

 

イズモ(独白)

「……だから危うい。

 でも……だから、生きている」

 

 

 

雷電が叫ぶ。

思想を否定する。

それでも剣を振るう。

 

 

 

イズモ

「神になろうとしていない。

 裁定者にもなろうとしていない」

 

 

 

イズモ

「ただ……

 自分が壊れた理由を、

 世界に問い返しているだけだ」

 

 

 

イズモは、ゆっくりとモニターから視線を外す。

 

 

 

イズモ(独白)

「もし、あの時……

 僕が“鋼の身体”を選んでいたら」

 

 

 

その先を、考えるのをやめる。

 

 

 

イズモ

「……いや。

 この世界線には、この選択が必要だった」

 

 

 

雷電は、自分ではない。

だが、かつての自分と同じ地点に立っている。

 

 

 

イズモ

「進め」

 

 

 

それは干渉ではない。

命令でもない。

 

 

 

ただの、

同じ場所を通った者からの、無言の肯定だった。

 

 

 

イズモ(独白)

「君が壊れるか、

 それとも……

 “背負ったまま生きる”か」

 

 

 

イズモ

「それを決めるのは、

 もう僕じゃない」

 

 

 

ピースギアは観測を続ける。

 

雷電は、走る。

剣を振るう。

痛みを抱えたまま、前へ進む。

 

 

 

イズモは、それを見届ける。

 

 

干渉はしない。

裁定もしない。

 

ただ、

この世界が“選び続ける限り”、

彼はここにいる。

 

 

 

人間由来の超高次知性として。

それでも――

人間の戦争を、最後まで見る存在として。

 

 

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