Shadow Convergence=影に生きる二人= 作:最上 イズモ
敵側司令部/地下指揮室
モニターに映る砂漠の施設外周。
赤い警告表示が、一つ、また一つと灯っていく。
通信士「第三区画、通信断絶。哨戒班、応答ありません」
司令官は眉をひそめた。
司令官「反政府勢力か? それとも……例の特殊部隊か」
参謀が端末を操作しながら答える。
参謀「熱源反応は確認されています。ただし……銃撃戦の痕跡が少なすぎる」
司令官「少なすぎる?」
参謀「はい。死体も、爆発痕もない。
ですが……全員、戦闘不能です」
司令室に、微妙な沈黙が流れる。
司令官「……眠らされたのか?」
参謀「それも違います。
神経遮断、装備破壊、関節破損……生きてはいますが、戦えない」
司令官は背もたれに深く座り直す。
司令官「……妙だな」
その時、新たな警告音が鳴った。
通信士「中型二足歩行兵器、第一号……沈黙しました!」
司令官「何だと? 一体だけ侵入者がいるだけのはずだろう!」
通信士「映像、出ます!」
モニターに映し出されたのは、破壊された中型兵器。
関節部が正確に破壊され、装甲は無意味な重りと化している。
参謀「……直撃弾は、最小限です。
まるで……壊すべき場所を“知っていた”かのような……」
司令官「偶然だ。
対人用兵器だぞ、あれは」
参謀は言葉を濁す。
参謀「……第二号も、交戦中です」
次の映像。
砂煙の中で、巨大な中型兵器がよろめく。
通信士「砲塔破損! 関節制御ダウン!」
司令官「バカな……あの装甲は、戦車砲でも――」
参謀「関節部だけを、正確に撃ち抜かれています」
司令官の表情が、初めて硬直する。
司令官「……侵入者は何人だ?」
通信士「……二人、です」
司令官「二人?」
参謀「片方は通常の歩兵戦闘員。
もう一人は……」
参謀は、言葉を選ぶ。
参謀「人間の反応速度ではありません」
司令官は机を叩いた。
司令官「化け物か?」
参謀「……分かりません。
ただ、兵士の報告では“恐怖”よりも……理解不能だったと」
モニターに映る、担架で運ばれる兵士。
命に別状はない。
だが、その目は虚ろだ。
兵士(記録音声)
「……撃たれると思った……
でも……来なかった……
気づいたら……銃だけ壊れてた……」
司令室の空気が、じわじわと冷えていく。
司令官「……核の代わりになる兵器を守る施設で、
我々は……何と戦っている?」
参謀は、小さく首を振る。
参謀「少なくとも……国家ではありません」
新たな警告。
通信士「第二中型兵器、完全停止!」
司令官は、ゆっくりと立ち上がる。
司令官「……全兵に通達。
侵入者は“殲滅対象”ではない」
参謀「では?」
司令官「接触回避。時間稼ぎだ」
誰も反論しなかった。
司令官「……核に代わる兵器が完成すれば、
こんな存在に怯える必要はなくなる」
その言葉は、
自分自身に言い聞かせるようでもあった。
彼らはまだ知らない。
この施設にある兵器が、
世界を守る抑止力ではなく、
世界を静かに殺す鍵であることを。
そして――
その“異常な侵入者”が、
すでにその未来を、見通していることも。