Shadow Convergence=影に生きる二人= 作:最上 イズモ
警報が止んだ直後――
それでも戦場は、終わってはいなかった。
薄暗い通路の奥。
金属靴が床を踏む音が、複数、重なって響く。
スネーク「……来るぞ」
イズモは一歩下がり、壁際に身を寄せた。
発光していた指先の光は、すでに消えている。
イズモ「ここから先は、君に任せる。
……これ以上、僕が動くと“重すぎる”」
スネークは一瞬だけ視線を向ける。
スネーク「了解だ。
……あんたは、見てろ」
その声には、不安よりも確信があった。
通路の曲がり角から、対人制圧兵器が現れる。
軽装甲、電磁シールド、全自動照準。
人を殺すためだけに最適化された機械。
オタコン(無線)「スネーク!
あれは量産型だ! 正面からやると不利――」
スネーク「分かってる」
次の瞬間、閃光。
スネークは既に、その場にいなかった。
銃声。
弾丸が壁を削る。
スネークは床を滑るように移動し、
遮蔽物の影から一瞬だけ身体を出す。
スネーク「……っ!」
正確な三点射。
装甲の継ぎ目。
センサー部。
そして、脚部の駆動関節。
兵器がよろめく。
オタコン「……当てた!?」
スネーク「機械だろうが人間だろうが、
“癖”はある」
別の兵器が突進してくる。
近接制圧用ブレードが展開される。
スネークは後退しない。
一歩、踏み込む。
爆音。
閃光弾。
視界を奪われた一瞬――
スネークの体が、影の中に消える。
次に聞こえたのは、
金属が鈍く歪む音だった。
兵器は倒れない。
ただ、動かなくなった。
オタコン「……破壊してない……?」
スネーク「止めただけだ」
壁際で、それを見ていたイズモが、
小さく息を吐いた。
イズモ(小声)
「……きれいだ。
“世界線に優しい戦い方”だね」
スネークは返事をしない。
次の敵を見据えている。
さらに二体。
包囲を試みる動き。
スネーク「……ちっ」
彼は床に転がる破片を拾い、
反射的に投げる。
カン――という乾いた音。
敵の照準が一瞬だけ、ズレた。
その瞬間を、スネークは逃さない。
近接。
関節を極め、銃を奪い、
床に叩き伏せる。
兵器の内部回路が、悲鳴のように火花を散らす。
オタコン「スネーク……
対人兵器相手に、CQCで……」
スネーク「戦争は、
“強い武器を持ってる方が勝つ”わけじゃない」
一拍。
スネーク「“生き残る奴”が勝つ」
最後の一体が撤退信号を発する。
だが、通信は届かない。
兵器は、その場で停止した。
静寂。
スネークは呼吸を整え、
銃を下ろす。
スネーク「……終わったな」
イズモは、ゆっくりと近づいてくる。
イズモ「ありがとう。
君が前に出てくれたおかげで、
この世界線は……まだ“軽い”」
スネークは肩をすくめる。
スネーク「俺は、
自分のやり方で戦っただけだ」
朝の光が、通路の奥から差し込む。
破壊されたのは、兵器だけ。
世界は、まだ壊れていない。
イズモ(独白)
「……やっぱり、
戦場を維持するのは、
人間なんだ」
スネークは歩き出す。
次の影へ。
次の戦場へ。
イズモは、その背中を見送りながら、
また一つ、
“救われなかった可能性”を、
胸の奥に静かに積み重ねていた。
警報が止んだ。
だが――それで戦場が終わるほど、甘くはない。
薄暗い通路の奥。
金属靴が床を踏む音が、複数、重なって響いてくる。
重い。
規則的。
人間の歩幅じゃない。
……来るな。
「……来るぞ」
声に出したのは、自分に言い聞かせるためだ。
イズモが一歩、下がった。
壁際に身を寄せる。
さっきまで淡く光っていた指先は、もう何も発していない。
「ここから先は、君に任せる。……これ以上、僕が動くと“重すぎる”」
一瞬だけ、視線を向ける。
「了解だ。……あんたは、見てろ」
不思議と、不安はなかった。
俺が前に出る。
それだけの話だ。
通路の曲がり角から現れたのは、対人制圧兵器。
軽装甲。
電磁シールド。
全自動照準。
人を殺すためだけに、無駄なく作られた形。
「スネーク! あれは量産型だ! 正面からやると不利――」
「分かってる」
次の瞬間、閃光。
俺はもう、その場所にいなかった。
銃声。
弾丸が壁を削る音が、背後で弾ける。
床を滑るように移動し、遮蔽物の影から一瞬だけ身体を出す。
……ここだ。
三点射。
装甲の継ぎ目。
センサー部。
脚部の駆動関節。
兵器がよろめく。
「……当てた!?」
「機械だろうが人間だろうが……“癖”はある」
次の一体が突進してくる。
近接制圧用のブレードが展開される。
後退はしない。
一歩、踏み込む。
爆音。
閃光弾。
視界が白く飛ぶ一瞬――
俺は影の中へ消える。
次に聞こえたのは、金属が鈍く歪む音だった。
兵器は倒れない。
ただ、止まった。
「……破壊してない……?」
「止めただけだ」
壁際でそれを見ていたイズモが、小さく息を吐くのが分かった。
「……きれいだ。“世界線に優しい戦い方”だね」
返事はしない。
まだ終わってない。
さらに二体。
包囲に入る動き。
「……ちっ」
床に転がる破片を拾い、反射的に投げる。
カン――という乾いた音。
照準が、一瞬だけズレた。
十分だ。
近接。
関節を極め、銃を奪い、床に叩き伏せる。
内部回路が、悲鳴みたいに火花を散らした。
「スネーク……対人兵器相手に、CQCで……」
「戦争は、“強い武器を持ってる方が勝つ”わけじゃない」
一拍、間を置く。
「……“生き残る奴”が勝つ」
最後の一体が撤退信号を出そうとする。
だが、通信は届かない。
兵器は、その場で停止した。
静寂。
呼吸を整え、銃を下ろす。
「……終わったな」
イズモが、ゆっくり近づいてくる。
「ありがとう。君が前に出てくれたおかげで、この世界線は……まだ“軽い”」
肩をすくめる。
「俺は、自分のやり方で戦っただけだ」
朝の光が、通路の奥から差し込んできた。
壊れたのは、兵器だけ。
世界は、まだ壊れていない。
「……やっぱり、戦場を維持するのは、人間なんだ」
それは、イズモの独白だった。
だが、俺も同じことを考えていた。
俺は歩き出す。
次の影へ。
次の戦場へ。
背中に視線を感じながら。
あいつは、また一つ、
“救われなかった可能性”を胸に積み重ねているんだろう。
……それでも、前に進む。
それが、俺たちの戦い方だ。