日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。 作:wakaba1890
ーーーーーーピーンポーン。
「....でないですね。」
「あぁ...」
ピンポーンしても応答しないのを確認した才亮は慣れた手つきで糸を器用にロックに潜らせてドアを開けた。
ーーーカチッ
「....あの、令状は」
「ん、叫び声が聞こえなかったか?」
「えぇ、召喚獣に襲われているかもしれません。」
「なら行くしかないな。」
時雨がそう聞くと汐留と才亮との慣れたやり取りで家に入り、一階のリビングへと向かった。
「....え」
すると、何列にも連なったソファーの真ん中で天を仰ぎながら大学生は黒い卵を持った状態で死んでいた。
「外傷なし、心臓発作。死後1時間くらいでしょうか」
シゲモチさんで大学生の首とガウンの中身を確認した汐留は大体の死因を特定した。
「....ぁ、それ触って大丈夫ですか?!」
「あぁ、俺は大丈夫だ。.....召喚獣にしては小さいな」
「ん、スマホありました。っ!」
彼が持っていた黒い卵をイッタンモンメンの糸で吊るしてみていると、汐留が彼の携帯を発見し、才亮へと渡した。
「あぁ...ん」
捜査権限を持っている者のみ持てるマスターキーを使ってロックを解除し電話履歴を見ると、直近で独立系SNS経由でとあるアカウントに何回も連絡していたことがわかった。
そして、彼はカメラロールから、大学生の声がわかる映像を探し当選記念パーティーで楽しんでいる様子を見つけて再生した。
ーーーシャアぁ!FIRE最高っ!!今日は俺の奢りだっジャンジャン飲めー!!
「「.....」」
首に下げている金色の卵にキスしながら人生上がった気でいた大学生の映像に横目で見ていた時雨や、汐留は引いていた。
「手がかり有りました?」
「あぁ、今から電話する所だ」
「.....」
それを聞いた時雨は口を膨らませて口を閉じた。
『もしもし』
『何度かけたとて、俺は助けられねぇ。』
さっきの大学生の映像からその声をコピーし、声真似した才亮に相手は気づいていない様子だった。
(...ん、こいつ)
『どこで手に入れたか知らないが、後は神社にでも行くしかない。すまない...ッ』
「どうします?今の所、何の手かがりも...」
「いや、一縷は掴めた。」
前の通話時点で結構話し込んでいたそうで、すぐに切られてしまった彼に汐留がこれからどう動くかを促したが、20秒ない時間でも一歩前進できたようであった。
そうして向かった先は関東庁からそう遠くない雑居ビルの屋上階にて、今度は何の前座もなしにドアの鍵をピッキングしてドアの隙間から他のロックを解除して中へと入った。
「おい、いるんだろ?出てこい。」
埃っぽい空気と積み上げられた本の匂いが外の新鮮な空気と混じる中、まだ明るい外の光を逆光に当てられながら普通に土足で中へと押し入る。
「お前がどこに逃げてもどの道見つけ出す。今回は殺しに来たわけじゃない。いくつか聞きたいことがあるだけだ。」
「....信じられるかい」
どこぞのアシカタのような抑揚でそういう彼に、傍の陰からぬるっと現れた帽子を被った壮年の髭面男が現れ、クナイを彼の首元へと突き立てる。
「殺気はないだろ」
「寸前まで消せるだろ..旦那ぁ....とて、サムライ野郎は来てねぇだろうな...」
男は才亮の後ろの方をちらっと見て恐る恐るそう聞く。
「あぁ、ただ汐留は来てる。」
「っ....ツゥ、何用だ?」
もう囲まれてるんかい...と観念した彼はクナイを腰に仕舞って話を聞く気になったようだった。
「獅子岡が死んだ。」
「....そうか。」
10億円を当てた大学生の名前を言うと、彼は少し後ろめたそうにそう言う。
「知り合いか?」
「まぁ...古い知人の子供って所だ。助けてやりたいんだが...時間と人手がな...」
「そうか、これについて何か知らないか?」
その様子から少なくとも容疑者から外れたのを直感し、才亮は話を進めた。
「....あぁ、それについてだが。おそらく鳥型の変異種。三重近郊の山間の村にて古い慣習でしか変異しない鳥型だな。母体の鳥型が卵を介して寿命と願いを等価交換する。」
「うへー、それなら母体は何を目的に....」
「....誰だこいつ?」
「あ、初めまして即応科隊員の時雨と申します。」
クリア報告を受けた時雨はベランダの方で待機していた時雨は屋上を伝って玄関へ向かって、彼らの話を聞いていた。
「あ、あぁ....俺は百地 善十郎。便利屋をやっている。」
即応科ってこんな小娘を雇わないといけない程人材不足なのか...と言う目で才亮の方を見ながら、自己紹介を返した。
「で、母体は何が目的なんですか?」
「っ...おそらく取引手数料として寿命を取っている。もう一つは黒い卵から子供を生み出すためだ
ろう。」
「寿命を延ばして、低確率をカバーしようってところか」
汐留にいい思い出がないのか百地は一歩下がって、そう説明すると才亮らは大体を理解した。
「ちなみに、その村ってどうなったんですか?」
「あぁ、古い伝承からの情報でしかないが、その村は地割れに巻き込まれて村人と召喚獣全員ペシャンコになった。」
時雨がそう聞くと最悪の事態への懸念が露見した。
「....ロクなことにならないな。これ系は」
「あぁ、全くだ。とて、母体を見つけないとだが....今何個持ってる?」
「あぁ、これと....もう一個。ん...あれ...」
願い玉系に嫌な思い出しかない才亮は百地にそう聞かれ、取り出そうとするが青狸のようにポケットの中身や携帯槍、煙玉、携帯、装備品などを出して探すがまさかの感じであった。
「....落としました?」
「いや、イッタンモンメンでガッチリと....」
召喚獣の能力的にそういった無くし物や落とし物など無縁で有り得る訳なかった彼ゆえに、冷や汗をかいていた。
「おい....っ」
「ん...っ...スゥ...」
百地は一心不乱にどこからか物を取り出しては戻している才亮の肩をトントンして、時雨たちの方を指さすと、彼は小さく息を吐いた。
『...なぁー...ん』
「あ、クゥさんっ...ちょ」
犯人は身近にいるもので、いつの間にかクゥさんが勝手に卵?をおもちゃにしており、時雨が取り返そうとするが、器用に避けて頬にすりすりしていた。
「うーむ、形跡探知でも反応しない辺り、相当対策してるな。」
「あぁ、完全にポツンと現れた感じだな。」
『ナっ...んな』
「...って、おいっ...っと、持ってくな...っう」
才亮がずっと起動していた探知データを共有し、クゥさんが抱いている黒い卵と、朝ドラ女優卵をスキャンして再度起動するが期待する出力は得られず、ただ探知機がクゥさんのおもちゃになっただけであった。
「こっちがおじゃんなら....猫っころに探してもらえばいんじゃないか?」
「ん、できるのか?」
「あー..んー...多分できます。」
「...多分?」
汐留は即答でなかった返答に首を傾げながら聞く。
「んー...結構、気分屋さんなので途中で飽きなければ突き止められます。」
クゥさんに探知してもらうのは片隅にはあったようだが、それを言い出せずにいたのはクゥさんの特性によるものもあった。
「急かすようで悪いが...頼めるか?」
「はい!...クゥさん、ここに来るまでにこれと同じ匂いは何回感じました?」
『んー...ナァ』
彼女がそう聞くとクゥさんは一拍程目を瞑ってそう答えた。
「ふむふむ、その中でこれの濃いやつはいましたか?」
『ンな。』
「居たそうです。」
時雨は顔をすりすりしている卵を指してそう聞き、クゥさんが答えた事を翻訳してキリッとした表情を彼へと向けた。
「案内できるか?」
『んなぁー』
彼女を通さずともそれはYESであった。